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この本、どうにか、と言われても。。。

Posted by 高見鈴虫 on 13.2015 読書・映画ねた

ねえ、この部屋ちょっと片付けない?
とかみさんが口癖のように言う。

片付けるってなにを?
と見渡せば、つまり、端的に言って、
この本をどうにかして、ということな訳だ。

うーん、この本、どうにか、と言われてもなあ。




恥ずかしながらこのマンハッタンの高級コンド。
が、そのドアを一歩でも入れば、
まさに犬グッズと、そして、本。
どこもかしこも本本本の山、あるいは本の渓谷。

糞高い家賃のそのほとんどが、
実はこの本の維持費に消えてしまっている、ということなのである。

ねえ、だから、こんな読みもしない本をいつまでもとっておいてどうするの?
読むさ、と俺。
だって毎日必要って訳でもないんでしょ?
でも必要なときにすぐに見つからないと困るだろ?
見つかるってこんな状態でどうやってすぐに見つけるの?
引っ掻き回しているうちにそのうち見つかるさ。
ねえ、ちょっといい加減にしない?こんな高い家賃払って部屋のスペースのほとんどが本ばかり。
必要なんだよ。
読みたくなったらまた買いに行けばいいじゃない。
金の無駄だろ?
読みもしない本のために高い家賃払ってるほうがずっとお金の無駄でしょ。
なら、勝手にしろよ。なら全部捨てちまってもいいんだぜ。だったら家具からなにからみんな捨てちまって、からっぽの部屋に住めばいい。
と啖呵を切りながら、
じゃあいますぐにでもBOOKOFFに持っていって、
と言われると、うーん、と思わず頭を抱えてしまう。

この本、この人類の知恵と情念の集約を、
目方なんぼで買い叩かれるなんて、
ちょっとそれだけはどうしても許せない。

改めてこの本、というやつ。
つまり俺の人生の中で、片時も離れることなく周囲を埋め尽くしていたこの本。

今更ながら、果たしてこの本、必要か?とも思うのだが、

いやいや、でもさあ、と思わず。
実は俺なんてぜんぜん大したことないんだぜ。
俺の友達、そのほとんどが、まさに床が抜けるぐらいの本もちばかり。
その整理の仕方にはそれぞれの個性や趣味があるのだが、
この本に囲まれて暮らすというライフスタイルを共有するものばかり、
である筈。

が、そう、この時代である。
つまり、クラウドな訳である。
それはつまりは、所有することからの解放を意味する。

大切なものをローカルに貯蔵することから、
どこぞのストーレッジに放り込み、
必要なときに必要な部分だけを敏速に取り出す、

そういう時代である。

事実、俺のあのCDコレクション。
それを引っ張り出してきてガラガラと箱を漁って、とやるよりは、
曲の題名、あるいはアーティスト名さえ判っていれば、
YOUTUBEでちょい、と検索をかけてすぐにでも耳にすることができる。

まあ音質だなんだ、と言い出すと切りがないのではあるが。

という訳でそう、本もすでに電子書籍の時代である。
嘗て、あれほど焦がれ続け、
ああ読みたい、読みたい、読みたい、読み返したい、読み返さねば、とばかりに、
それが理由でついにニューヨークの紀伊国屋にたどり着いてしまったという、
俺がこの街に来る理由のひとつとなった本、

河口慧海のチベット旅行記。

これがいまではなんと青空文庫ですべて読み放題である。

通勤途中、ニューヨークの地下鉄に揺られながら片手のIPHONEで読み耽るチベット旅行記。

なんともおかしな時代になったものである。

が果たして、それで良いのか?なのである。

なんとなくIPHONEでつづら読みするその名作文庫。

どうにもこうにも、
読むというよりはただ、情報を漁っているだけ、と言った感じ。

やはり、なんというか、読書、あるいは、耽読、という、
本読みにとってはまさに猫にマタタビのあの境地には、
到底程遠いような気もする訳だ。

という訳で、性懲りもなく、
資格試験合格祝い、と勝手に銘打ってでかけたBOOKOFF。
また何時読めるかも判らない1ドルの格安文庫本を、
まさに山のように買ってきてしまった訳で・・・

がしかし、夜も更けたベッドに、しめしめと文庫本を片手にもぐりこむときのあの快感。

やっぱりこれだけはやめられまへんなあ、と己の幸せにひたひたと浸されている感じ。

いやあ、幸せだ。俺は本に浸っているときが一番幸せなのだ、と思い知る訳だ。

これだけはたぶん、一生かかってもやめられない、やめる気がない。
うーん、やっぱり、本捨てるのやめた、と、さっそくかみさんに宣言したのだが、
あれまあ、すでに口開けて寝ていた。

つまり俺はそういう男である。そしてそれをやめる気はない。
かみさんには諦めて貰うしかない。



プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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