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失業ハイパー ~ おいしい仕事って

Posted by 高見鈴虫 on 13.2015 とかいぐらし
このところ、会う人会う人からことごとく、

ねえ、仕事探したの?早く仕事しなよ、と言われる訳なのだが、
うーん、そうだな、そのうちな、と言葉を濁してばかり。

ねえ、あんた、仕事の選り好みもたいていにしておけば?




別にない訳じゃないんでしょ?

ない訳じゃないどころか、毎日毎日、うるさいぐらいにジンハケから電話が来るよ。

で、どうして仕事しないのよ。

だから、と俺。

契約社員、だったり、派遣だったり、仕事が下らなかったり、
ぶっちゃけ、日系ばかりってのがむかつくわけで。

もうさあ、そういうわがままいってる場合じゃないんじゃない?

まあそう、確かにその通り、ではあるのだが。

でもね、と思わず。

そういうあんたがいくら稼いでるのか知らないが、
俺は俺で、あの辛く長い数年間の一流企業暮らしの間に、
それまでの技術屋職の数倍の給料を稼いでいたわけで、
つまり、あの技術屋をずっと続けていたらと仮定したら、
優に数年分の給料を既に稼いでしまっている訳だろう、と。

そう、この道行く労働者の方々が、
自給10ドルで来る日も来る日も働き続けて、
血の出るような思いで稼いだ400ドル。
それを俺は、下手すれば一日、はおろか、半日もしないで稼ぎだす、
ぐらいのことは十分可能なわけでさ。

つまりは、そう、労働がただたんに金を得る手段であれば、
なまじっか自給10ドルの仕事であくせくするよりは、
そんな仕事の一年分の給料を一月で稼げるおいしい仕事を待ったほうが、
ずっとずっと効率が良いはず、と思ってるんだがな。

甘いわね、と人々。
それはあんた、労働そのものを舐めているわね、と。

あのなあ、誰の口から聞いたとしても、
よりによって宇多屋人の口からそんな尤もらしいことを聞かされるとは思わなかったぜ、
と憎まれ口で返す俺。

で、あんた家で一人でなにやってんの?

まあ犬の散歩したり、あと、ゲームやったりエッチなビデオみたり、たまにWEBに下らない書き込みしたり、

まさか、といきなり横からかみさん。

あんた、まさかそんなことやってるの?まるでニート、引きこもりのニートじゃないの、勘弁してよ。

いや、嘘々、と俺。

レジメには書いているんだが、実は既にエクスパイアしてる資格の再取得とか考えて、
まあ引き続き試験勉強ってところなんだけど。

でもさ、それにしては、なんかこの間までと顔色が違いすぎるじゃないの、と厳しいご指摘。

この間まで、あんたまるで悪魔が憑りついたみたいなクマつくって、本当に切羽詰った顔してたものだけど、
いまはほら、ぜんぜん別人。
ねえ、あんた、太ったでしょ?といきなり一番痛いところを突く。

まあそう、この時期だしさ。こんな季節に誰も仕事変わろうなんて思わないだろ。

まあ三月。虫の騒ぎ出す三月までにあとふたつみっつ、資格でも取っておけば、
もうちょっとでも給料を稼げるかな、とか思ってるんだけどね。

という訳で、先の失業から実に9ヶ月である。

9ヶ月もあれば、世界一周どころか、世界そのものを変えることさえできたような気もするが、
なんの因果か、俺は今日も今日とて、この氷の街で犬に手綱を引かれている訳で。

あああ、なんでもいいから、なんか仕事したいな、とは常々思ってたりもする今日この頃。

時給10ドルでも、なにかやることのある人たちが、実は凄くうらやましかったりもする訳だ。

とふとそんな俺を心細げに見上げる犬。

ああ、仕事が始まったらこうしてお前と何時間も散歩してなんて、できなくなるよな。

そう、実は、俺が仕事探しにあまりその気にならない理由は、ただたんに犬と離れたくないだけ、なのかもしれない、

とは実はそこにいるみなが既に十分すぎるほどに気付いていたことなのであった。





プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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