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ROCKを葬り去る前に 番外編 ~ 「肉の思い出」~そのじゅう

Posted by 高見鈴虫 on 21.2014 ROCKを葬り去る前に ~ 大人のダイエット奮戦記
ちゅうわけでいきなり吉野家の牛丼どころか、「トンカツ」どころか、
フォルクスのビフテキだって好きな時に食べれるようになった。







デリバリの仕事から内勤に移り、デリバリ中のキセル代は入らなくなったが、
その分もっと割りの良い残業代とそして晩飯がついた。
会社の飲み会やら何とかパーティなどで、普通の居酒屋どころか、
ちょっと気取ったカフェバー、あるいは寿司屋。
ホテルの高級レストランから、各種エスニック料理から料亭なんてのにも連れて行って貰えるようになった。

それまで底辺の底辺に暮らしていた俺が、いつのまにかいっぱしの東京人の顔をするようにもなっていた。
ついこの間までゴミを食っていた俺が食通を気取るつもりはさらさらなかったが、
すかした面をした丸井のマネキンそのものの格好をしたような色白の人々の中でも物怖じをしないようにもなっていた。
いつの間にかバイトが忙しくてバンドどころではなくなって、
代わりに食生活が劇的に改善され、そしていつの間にかそんな普通人による普通の生活なんてものに対して未練がでるようになっていた。

この状態を世間では「ケツの毛を抜かれる」というのだが、
ケツの毛を抜かれようがお釜を掘られようが、俺のROCKは揺らいだりはしない、と思っていた。

このまま行けば、もしかしたら給料が上がって、
そして無理をしてでも残業代を溜め込めば自分でアパートを借りることができるかもしれない。
そうなれば好きなだけ風呂にも入れるし、中古でも炊飯器を買えば飯に困ることもない。
そしてなによりもう好きなときに好きなだけ好きな女を連れ込んでおまんこができるのだが。
それはまさに夢の夢のまた夢。がそう思っただけでも最早その夢に抗うことはできなかった。

と言う訳でアパートを借りるまでそれほどの時間はかからなかった。

残業の機会があればできるかぎり首をつっこんで晩飯をせしめ、
たまにタクシーに乗った時には、運転手を脅して空の領収書をせしめる。
飯代は極力省き朝も昼も抜いて残業中の晩飯で一日分の食料を補給。
飲み会があれば必ず着いて行き、皆が酔っ払ったころを見計らって皿の上の冷えたあまりものをひとつ残らず平らげ、
時には店で銀紙を貰って持ち帰ったりもした。
唯一の贅沢と言えばすべてのデリバリが終了して帰り着いた後に立ち寄る駅前のドトールコーヒー。
150円のエスプレッソを飲みながら、真新しいタバコを一本丸々と吸う。

家路を急ぐ人々でごった返す四谷駅の人波を眺めながら、
俺はいったいこんなところでなにをしているのだろう、と思い始めてもいたが、
そういえば今日は給料日だ、と気づいた時にそんな疑問も消し飛んでいた。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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