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仕事を辞めたとたん、犬が場所を譲らなくなった

Posted by 高見鈴虫 on 15.2015 犬の事情
実家の頑固親父、
それまで絶対的な暴君として振舞ってきた親父が、
ひとたび仕事を辞めたとたんに、犬に舐められ始めたんだよ~、
と、お袋がさもおかしそうに笑っていた。




それまで親父が定位置としていたテレビの前の特等席の座椅子。
その席に、親父がいなくなったとたんにしめしめとやってきては座っていた犬。
が、ひとたび親父が戻ってくれば、そそくさとその座椅子から逃げて行った訳なのだが、
晴れて定年を迎えた親父、たとたん、なんとその座椅子から犬がどかなくなった、
と怒っていたらしい。

椅子に座ろうとしてどかない犬に、おい、そこどけ、と命令する親父、と、それ、ちとーっと見上げる犬。 
で、かんしゃくを起こした親父が犬を蹴り、犬はしかし、渋々と席を動きながら、
こいつ、なんだよ、と見るからにふてぶてしい態度。
これまでの暴君ぶりの鼻をいきなりへし折られた親父の、その呆気にとられるさま。
その情景を思えば思うほどにやたらとおかしい。

とか言っていたのだが・・・なんとそれが我が身にふりかかってこようとは・・・

試験が終わったとたんに、犬がどかなくなった、訳だ。

仕事をしていたとき、そして資格試験にパスする間は、なんだかんだ言いながらも、
俺の姿をみるとささっと席譲ってくれていた我が家の駄犬。
これが最近、ぬ?と俺の姿を省みて、そして、再び、ぱたっと頭を落としてしまう、
つまり、どかない・・・

それはソファと言わずベッドと言わず、
ねえ、ちょっとそこどいてくれないかな、俺が寝れないんだけど、と言っても、
ん?ああ、むにゃむにゃ、と寝ぼけるばかりで一向に動いてくれない。
で、なんだよ、おい、どけよ、と押せば、
むぎゅーっとか声を上げながら、それでも手足を突っ張るばかりで
なかなか場所を動こうとはしてくれないわけだ。

そんな事情から、最近、俺は犬と一緒に、どころか、
その足元に身を縮こめて過ごさざるを得なくなってきている訳で、
うーん、これはちょっとかなり肩身の狭い思い。

で、あのなあ、と思わず。
これまでこれだけ可愛がってやって、
雨の日も風の日も、真夏の酷暑も真冬のシベリア日和の日でも、
毎日毎日欠かさず散歩してやって、ボール投げてやって、
足洗って身体拭いて歯を磨いてご飯つくって水やって。
風邪をひけば寝ずの看病、病院までその身体を抱えて行って、
他の犬と喧嘩になれば我が身を捨ててかばってやって、
と、そこまでやってきたこの俺に、
この期に及んで、なにか、お前は、
へ~ん、もう僕の方が立場が上だもんね~、どくのはお前だ、この失業者のニート野郎、と、
つまりは、そう言いたい訳なのか?と。

あのなあ、お前、そりゃないだろう、な訳である。
思わず、なんか、裏切られた、気分なのである。
つまり、俺ってこの愛犬にまさか見捨てられようとしているわけ?

んにゃろ~、とは思いながら、思わず、にやにやと笑ってしまったりもするのは、
やはりそう、俺にだってまだまだ心の余裕ぐらいはある。

こいつ、いまに見てろよ、思い知らせてやるからな、とは思いながら、
今日もこうして、犬の足元に身を丸めて休ませていただいている身分なのでごさいます。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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