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おじさん怖かったの~小話集 そのじゅう 「虚無僧」

Posted by 高見鈴虫 on 19.2015 大人の語る怖い話


日本でバンドマンであった頃、
ドラマーである宿命で一階の部屋に住んでいたのだが、
一応通りに向けては2メートルぐらいの高さのブロック塀の外壁があって、
外から丸見え、ということもなく、
軽く洗濯物が干せるぐらいの空間があった。

で、朝、オンナが起きて、下着姿のままカーテンを開けたら、
ぎゃ~!と本気の悲鳴を上げて、

こむそ~!!! と叫けぶや、ベッドに飛び込んで来た。




こむそー?
なんのことか判らず、裸のまま飛び出してみれば、
なんとそこに本物の虚無僧、
テレビの時代劇そのままに、あの例の深い籠のような笠を被って、
手には尺八まで構えて、立っていた。

なんだてめえは、と押入れにあった木刀を手に取って、
ぶち殺す、と戻った時には虚無僧の姿はなかった。

あの場所からは玄関へは抜けられず、
逃げるにしても二メートル以上ある塀を飛び越えなばならない。

虚無僧って忍者みたいなこともできるのか?

念のため、木刀を持ったまま付近を探してみたが、姿は見えず。

通りかかった奴に、おい虚無僧を見なかったか?
と聞いてみたが、変な顔をされて逃げられるばかり。

とそうこうするうちにやってきた交番のお巡り。

はあ?虚無僧?ってよりあんた、朝も早くからそんなもの持って、と手に持った木刀。
いや、あの、いや、トレーニング、トレーニング、剣道部なんですよ、ははは、と苦しい言い訳。

こいつ、まさか、シャブ中?というまさに怪訝な目つきのお巡り。

思わず、えいやあとう、と昔とった杵柄、上段から下段からの素振りを披露、
ああ、分かった、分かったからそんなもの通りの真ん中で振り回すな。

という訳で、あとになってアパートの大家に、虚無僧がいた、ってな話をしたら、
ああ、あの虚無僧ね、と言ってそれっきり。

で、なんなの?あの虚無僧、と言っても、はいはい、と相手にして貰えなかったが、
なにか知っている風ではあった。

結局あの虚無僧はなんだったんだろう。
近所にあった老人ホームのボケ老人であろうか。
もしかして、出歯亀が虚無僧に化けて昨夜からずっとあそこにいたのかな。

次に現れたら必ず仕留めてやろうと、いつも窓際に木刀を置くようになったのだが、
もう現れることはなかった。

この話、大して面白くもないこともあって、誰に話しても信じて貰えず、
逆におまえ、まじ頭大丈夫か?本当にシャブ中?などと聞き返されるに至っては、
もう誰にも話すををやめよう、と思ってはいたのだが、いまだに謎である。



プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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