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おじさん怖かったの~小話集 そのじゅう 「京都外人安宿の怪」

Posted by 高見鈴虫 on 19.2015 大人の語る怖い話
ニューヨークでつるんでいた友人を京都に尋ねた際、
外人旅行者用の安宿に予約をとってくれた。

その宿はいかにも元は学生用の下宿、みたいなところで、
便所はしっかり共同ではあったが、
二階の角部屋。畳8帖ぐらいで割りと広い部屋だった。


その日、夜中まで騒いだ後に酔っ払って帰って来たのだが、
ドアを開けてみると、部屋の隅にあった時代物の白黒テレビの前に、
黄色い通学帽を被った小学生の男の子が、背中を向けてちょこんと座っている。

あれ、部屋を間違えたかな、と思って、
ごめんなさい、とドアを閉め、
一度一階の玄関まで戻ってから、えっとえっと、
いや、確かにこの部屋だぜ、と改めてドアを開けると、
すでに小学生の姿はなかった。

おかしなこともあるものだ、とその日はそのまま寝て、
翌朝、宿を出ようとすると、受付のおやじに呼び止められた。

あんた、日本人じゃないのか?
というので、ああそうだよ。
だがニューヨーク在住で、ってな話をしたら、
部屋を移ってくれ、と言い出す。
なんだよ、外人と日本人で差別しやがるのか?
ニューヨークのジャパレスじゃあるまいに、と腹が立って、
いや、俺はあの部屋が気に入った、絶対に移らない、
と揉めてみたのだが、問答無用に部屋の荷物を集められ、
一階のもっと狭い部屋に変えられてしまった。

なんだよ、このやろう、部屋が狭くなって不満ぶりぶり、
しつこく文句を言っていたら、
あんた、本当に大丈夫だったのか?
と真顔で聞かれた。

あ?なんのこと?と聞けば、いやいいんだ、という。
ただあの部屋は外人専用なんだ。いろいろあってな、
と、物ありげな表現。

その後、一階の部屋に移ったのだが、
どうせ朝から晩まで友達と一緒であったし、
夜は深夜に酔っ払って帰って寝るだけだったので気にもしなかったのだが、
ふと興味本位に押入れの天井裏、
まさかここから山村貞子が、ではなく、
かつての俺がそうであったように、
エロ本、あるいは、鞠花、なんてものが隠してないのか、あるのか、
とこっそりと覗いてみたら・・・・なんとそこには・・

中核VS革マル、やら、
世界革命戦争宣言、やら、
武装蜂起うんたら、やら、
挙句に、例のなつかしの、腹腹時計、なんてものが、
すっかり埃まみれになって積まれていたわけだ・・

な、な、なんだこりゃ・・

なんか幽霊なんかよりもこっちのほうがずっと怖かった。

で、あ、そうそう、で、後日談的に、その数日後、

また遅くになって酔っ払って帰ってきたら、
いきなり、二階からギャーっととんでもない悲鳴が聞こえて、
で、階段をバタバタと白人の女の子たちが駆け下りてきた。

なにかあったのか?と安宿中の奴らが廊下に出てきたのだが、
しゃがみこんで頭を抱えたねえちゃんがふたり、
JUON JUON ぐらっじ~ と繰り返しては震え上がっている。

見上げてみればやっぱあの部屋か。

どうせ外人には日本の幽霊のわびさびなど分からんだろう、
ということだったのだろうが、
例のジャパニーズ・ホラー映画「呪怨」の大ヒットで、
日本の幽霊もすっかりとメジャーになってしまったということか。

ベイビー、俺の部屋に泊まるかい?と言ってみたが、
まったく相手にされなかったのですごすごと引き上げた。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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