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おじさん怖かったの~小話集 そのじゅうなな 「真夜中の花嫁」

Posted by 高見鈴虫 on 19.2015 大人の語る怖い話
先輩のアパートに集まって深夜まで騒いでいたおり、
タバコが切れて、おい、一年坊、おまえ買ってこい、と金を渡された。

アパート出て左に曲がって3つ目の角を右に曲がって、そのまま真っすぐ行くと、
ってな説明を聞いたが酔っ払っている手前、やはり道に迷った。

深夜の住宅街、えーっとえっと、どっちだったけかな、とやっていたところ、
いきなりその目の前を、なんと純白のウエディング・ドレス。


なんじゃなんじゃ、と思わず駆け寄ってその姿を追えば、
片手にブーケの花束を持っては、誰もいない舗道をスキップしながら走ってゆく花嫁さん。

思わず首を傾げて、ありゃなんだったんだ、とやりながら、ようやく辿り着いたタバコ屋の自販機。

でさっそく一本つけて、ぷはー、っとやっていた俺のその目の前に、

いきなりさっきの花嫁さん。が、さっきのスキップ・ラララとは打って変わって、
がっくりと肩を落としてまるで足を引きずるように。

で、ふと見れば、その顔、なんと、老婆。
皺くちゃの老婆が、赤い口紅を塗りたくって、そして俺を振り返ってにまーっと笑った訳だ。

俺もパンクロッカーであった手前、よほどのことがあっても驚かないぐらいの場数は踏んできたつもりだが、
あの真夜中の花嫁の姿。いやあ、シュールだったぜ。

なんてことを、辿り着いた先輩のアパートで話始めたら、

ああ、あれな、と先輩。

俺も見た、ってか、なんども見た。このあたりでは有名、ってな話。

どうも、戦争で許嫁を亡くしたばあさんが、そのまま結婚を阻んであの歳になってまだ生娘。
で、今頃になってから深夜になるとあの格好して街を徘徊しているらしい、と。

ああ、そういうことだったのか。
なんとも、人間の業って奴を感じ入ってしまった。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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