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おじさん怖かったの~小話集 そのにじゅうよん 「ネットオークションで届いた呪いの木箱」

Posted by 高見鈴虫 on 28.2015 大人の語る怖い話
知人のひとりにアンティック・コレクターがいる。

まあ本職、というよりは趣味の類。

兼ねてからの骨董趣味が嵩じては、
ネットオークションを通して、
事によるとちょっと値の付きそうな掘り出し物、って奴を探してきては、悦に入っている。

或いは、ひょんなことから手に入れたその掘り出し物、
場合に寄っては、なんとか正式な鑑定書を取り付けては太鼓判を付ければ、
もしやもしや、いきなり数千倍、あるいは、云万倍、
下手をすればまさに国宝、博物館クラス、なんていう見果てぬ夢を追いかけていたりする。

という訳でそのコレクター氏。

実はちょっとした金鉱を発掘したんだぜ、とのこと。


どうもこちら米国のオークション・サイトに、
オリエンタル・アートなるものと出展されている日本の古美術の数々。
その中に、まさに専門家が見れば腰を抜かしそうな、
美術館どころかもしや国宝クラスにもなる宝物がうじゃうじゃ埋まっている、
という話なのだ。

でよくよく理由を聞いてみれば、どうもこれが「戦争」であるらしい。

太平洋戦争の後、占領軍として乗り込んできたアメリカ軍。

GHQの統制の元、カルト軍国国家であった日本の民主化の為に、
日夜骨身を削って復興支援に尽力、なんてのは勿論、嘘で、

娘は拉致る、物はぶっ壊す、
挙句の果てに、民家やら寺やら神社やらに押し入っては、
それこそお供え物から始まって、仏具から神器から果ては家宝に至るまで、
手当たり次第に強奪の限りを尽くした、というのが本当のところらしい。

で、出征の手土産に、と持ち帰ってきたその戦利品の数々。

訳も解らず分捕ってきたのは良いものの、果たしてそれが何を意味するのか、
さっぱり検討もつかず。

で、そのまま物置の中、あるいは、納屋なんてところに放置してすっかり忘れていた物が、
そんな爺さんがついにお迎えが来てしまっては、この謎の骨董品の数々、
なにがなんだか判らないのだが、とりあえず売ります、欲しい方は勝手にどうぞ、
という具合に、
まさにまったく見当違いの説明の元にタダ同然で売りに出ていることが多々ある、
ってな話。


でその掘り出し物。

下手をすれば正宗、村正クラスの名刀・妖刀の類から始まって、
戦国時代の物と思われる鎧兜の部品から刀鍔から、
仏画、浮世絵、古文書から、果ては古銭に至るまで、
マニアに取ってみればまさに宝の山。

まったくどんな了見でアメリカ人がこんなものを土産にしたのか、
つまりはまあ、とりあえず目ぼしいものである無いに関わらず、
手当たり次第に片っ端から分捕ってきた、
というただそれだけであったのだろうが、
まあその節操の無さに今更ながら目が点々。

という訳で、そんな事情から、
時として二束三文で売りに出されることになる、
そんな日本古美術の掘り出し物の数々。

それを目ざとく見つけてきては、
それとなく売主に詳細な情報を要求しながら、
どこのどの部分にどんなサインがあるか、などと写真を送らせては、
それを独学で学び始めた鑑定知識と照らしあわせ、
とやっているそうで、、

おおお、これってもしかしてもしかしたら大当たり。
5ドル足らずで買ったこの骨董品の金属片が、
まさか、千万、どころか、億、で売れるのではないか、
などと、思わず一獲千金のチャンスに大興奮。

という訳で、そんな戦争略奪品絡みの古美術品。
オークションに出されるたびに買い漁っていた、とのこと。


でそう、そんな中に、
とても美しい日本の人形。デラックスな木箱入り。
ちょっと染みがあり。超お買い得品。

なんて説明のもとに売りに出されていた逸品。

どうも江戸、あるいは、それ以前の物、である可能性が大。

売主の話によれば、死んだ爺さんが日本の戦争に行った際に持ち帰ってきた物で、
長年箱に入ったままだった為に中に何が入っているかは判らず。
もしかして大判小判、と思いきや、出てきたのはただの染みだらけの人形。
だが見たところ出来は良さそうで捨てるには忍びなく、
で、物は試しにオークションに出してみた、とまあそんな事情であるらしい。

詳しい説明を求めてもまったく的を得ないことから、
まあ良い、買った、とばかりに購入してしまった、とのこと。


で、その人形、どうも買ってしまったその時点から妙な胸騒ぎがした、らしい。

もしかしたら、俺、ちょっととんでもないことをしてしまったのではないのか。。

そんな一抹の不安を抱える中、
それを忘れるどころか、日が経つごとに得も言えぬ不安が膨れ上がっていく。
そろそろ届く、そろそろ届く、あれが届いてしまう・・・

その朝、目が覚めた時から、ついそれが来てしまった、と直感した、とのこと。

でその後、泡立つような不安にいてもたっても居られず、
昼を過ぎて、はたと時計を見れば午後2時過ぎ。

来た、と思ったその時に、ブーッと一回の受付からのインターフォン。

小包が届いてます。。。

ああ、ついについに来てしまった、と膝が震えたのを覚えている、という。

エレベーターを降りた配達人のゴツゴツという足音が廊下を近付てくる音を聞きながら、
妙に高鳴る鼓動の中、このまま居留守を使って送り返して貰ったほうが良いのではないか、
とまで考えていたのだという。

ピンポーン、とドアのチャイムが鳴り、はいどうぞ、ここにサインを、と渡された、
高さ50センチ、横30センチほどの箱。

近所のスーパーで貰ってきたらしいドリートスの段ボール箱の中には、
梱包材代わりにくちゃくちゃに丸めたローカル新聞の束。

まあ、破格値であった、とは言うものの、そのあまりに杜撰な梱包。
まさに素人、というか、まあそれが田舎のアメリカの悲しさ。

まあ確かに、そんなどうしようもないトラッシュの元に置くぐらいであれば、
日本美術の真を知るこの俺がしっかりと保管してやる、というのも人類への貢献。

という訳で取り出した桐の木箱。

相当の年代物と見えて一面に黒ずんでいる中、このむっと来る据えた匂い。

これは、確かに線香の匂い。

線香?線香で燻された桐の箱?

でいかにも古めかしい桐の箱。

とりあえず取り出してテーブルの上に置いて見たところ、

むむむ、表面になにか貼ってあるぞ・・と目を凝らしてみれば・・・

?@#$%!!!!!

これ、もしかして・・・・ オフダ。。 魔除けの御札・・・!!

線香の煙に燻されて黒ずんだ半紙の上に薄れた文字の中から、
祈祷やら護摩やらの文字が透けて見える。

思わず胸の鼓動が跳ね上がり、感じてきた胸騒ぎがまさに的中していたことを知ったという。

震える指を抑えながらインターネットで検索。

うーん、やはり、この紙、どう考えても御札のようであるのだが、
で、その御札、見事に引きちぎられた後。

まあ確かに、アメリカ人に御札の意味など判るわけもない。

固唾を呑みながら、ええい、ままよ、と開けたその御札付きの桐の木箱。

箱を開けた瞬間にまさに、息がつまりそうなほどの何か、が、わっと膨らんでは広がり出た、という。

な、な、な、なんだ、これわ・・・

やはりくちゃくちゃにされた新聞紙に二重三重に包まれたその中から、
恐る恐る覗き込むと、それはまさに「人形」であった。

例の怪談話によく登場するなんとか人形、のようなおどろおどろしい雰囲気でもなんでもなく、
ともすれば実にありふれたよく見る日本人形、そのもの。
ガラスのケースに入れれば、日本の家庭の玄関やら応接間やらによく飾られていた
舞踊を踊る振り袖姿の日本人形。

その梱包のあまりの杜撰さから考えて、とりあえず、破損箇所はないか、
と恐る恐る手に取ってみたところ、
本来は白であっただろう顔の肌、あるいは、艶やかな赤い帯を巻いたその振り袖が、
どうにもこうにも黒くくすんで見える。

まるでこれではバービー人形ではないか。
日本人形もここまで染みがついてしまうと型なしだな、とがっかりである。

がそう、この染み、いったいなんだ、とふと考えたところ・・・

それわ・もしかして・・・・・・ 血!?

思わず背筋に、ぞーっつ、どころか、背骨がギチギチとなるぐらいの激しい悪寒。

やばい、これわ、まじで、やばい、とざわつき始めた本能が暴走を初め、

思わず、わーっと叫んで窓から放り投げそうになった、という話。

御札入りの木箱に封印されていた血染めの日本人形・・・

いやはやまったくもって、とんでもないものが送られてきてしまったものである。

多分、寺を寺と知らずに押し入った田舎の兵隊たちが、
その仏壇で供養されていた曰くつきの数々を、
宝物見つけた、とばかりにかっさらってきては、訳もわからず箱を開けてしまったのだろう。

うちのグランパ、と言われたその田舎の兵隊、孫がいるぐらいだから祟りは受けなかったのだろうが、
その後の人生があまり芳しいものではなかったことは十分に想像がつく。

と同時に、手厚く供養されていた仏壇から、
いきなりそんなまったく訳の分からない外人兵に略奪されてしまったこの人形。
もし取り憑いているモノがあったとすれば、それはそれでとても辛い思いを続けてきた筈である。

そうか、そういうことだったんだな。

思わず手を合わせて、もう心配はいりませんよ。いますぐというわけにはいかないですが、
折を見て、必ず日本に送り届けます。そこでまた手厚いご供養をお願いしますからね。

という訳でその人形。

取り急ぎ、インターネットを通じてダウンロードした御札の数々から始まり、
密教の呪文から、十字架から、なにを血迷ったか、シバ・クリシュナの漫画絵からと、
世界中の神様総出動の上、クローゼットの奥深くにまさに封印中である、とのこと。

がしかし。。。 さすがに夢見が悪くなった、というのはまあ仕方がない、というところ。

で、その人形は? ときけば。

おお、見るか?いま持ってきてやる、と言われたのだが、

おいおい、やめろ、やめろ、俺はいい、遠慮しとく。
俺は見ない、俺は見ないぞ!
あっ! ちょっと用事を思い出した、もう帰る、

と早々にお暇を申し上げた訳で、
さしもの俺も、今度ばかりはまじでちょっとまじめに肝が冷えた・・

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。。。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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