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最強の天敵!それはフレンチ・ブルドッグ

Posted by 高見鈴虫 on 01.2015 犬の事情


ニューヨークで一番読まれているフリープレスであるAMNYの第一面。


FrenchBull-AM.jpg


アメリカン・ケンネル・クラブの発表によると、
このフレンチブルドッグが、
ニューヨークにおけるTOP DOGに選ばれた、
ってな記事である。

うーん、フレンチ・ブルドッグかあ、と思わず微妙。

何故ならば、このフレンチ・ブルドッグこそは、
まさに、我が相棒、人呼んでぶっち切りのブッチ、
あるいはピンボール・ブッチ、

このブーくんの、天敵の中の天敵、であるから、なのである。



フレンチ・ブルドッグ。

確かに可愛い。
そのくりくりとしたロンパリ気味の目。
ぱっくりとあいた大きすぎる口。
そしてその愛嬌のある小さな鼻。

その顔つき、その表情は、
犬というよりも、人間そのもの。

ぬいぐるみのような、というよりは、
マンガを見ているような愛らしさである。

このフレンチブルドッグ。

ぷりぷりとした小型犬であり、
ニューヨークのようなアパートで飼うには、
まさにうってつけ。
噛まない、吠えない、そして底なしの甘えん坊。

男に良し女に良し、子供に良し、老人に良し。
愛玩犬の鏡のような犬種であるのだが・・

そんな可愛らしい犬が、なぜに我が犬の天敵なのか。


このドッグランにおいて、
フレンチブルドッグの姿を見かけると、
我が家のブッチの表情がたちどころに曇る。
その気配を感じたがいなや、
おい、帰るぞ、と俺は犬を呼び寄せる。

え?なんで?と懸念な表情を浮かべる我が犬。
だって、まだ来たばかりじゃないか。
まだボール遊び、やってないぜ。

とそんなところに、いきなり走りこんでくるこのフレンチブルドッグ。

まるで縫いぐるみのようなプリプリしたお尻を振りながら、
ブッチに絡みついて来ては、
ねえねえねえねえ、遊ぼう遊ぼう遊ぼう遊ぼう、と盛んにじゃれついて来る。

挙句の果てに、ブッチの咥えていたボールに飛びついて、
うんうんうん、と引っ張り始め、
下手をすれば、身体の上に乗っかり、
或いは、こともあろうに、その尻尾に齧りついて来たり・・

しっぽに齧りつく? まさか・・・

そんなフレンチブルドッグに、始終、いかにも不愉快そうな表情を浮かべていたブッチ君。

いや、だから、やめろって、やめろってば、と何度も繰り返しているのだが、
どうもその、犬同士の会話、というのが、このフレンチブルドッグには通じないようなのである。

だから、だから、やめろってば!
俺はこんな、知りもしないやつとベタベタとじゃれ合う趣味はねえんだってば。

がしかし、フレンチブルドッグのその愛らしさ。その甘えん坊ぶり、まさに底なしの問答無用。

ここまで来て、我がブーくんが俺の顔をじぃ~と見つめている。

どうなんだ?とその目が問いかける。

どうなんだ?え?俺はここまでされても、まだこの仕打に耐えねばならぬ、そう言いたい訳か?


☆ ☆ ☆


オーストラリアン・キャトル・ドッグという牧牛犬の血を引く我がブッチくんは、
まさしくハードコア野郎である。

オーストラリアの牧場において、強情者の牛達を統率するために改良された、
この筋金入りのハーディングドッグ。

そんなハードコアなハーディング・ドッグの血統であるブッチ君は、
まさに世の愛玩犬とは対極を成す輩なのである。

それに加えてこのブッチ君。

子犬の頃からまさに手の付けられないきかん坊で、
ドッグシェルターのフタッフからも、
これまで幾万という子犬を見てきたが、
これほどまでに元気な子犬を見たことがない、とまで言われた、
まさに特異体質、というまでに、とんでもないわんぱく小僧。

公園に連れて行けば犬と犬を引き連れては壮絶な追いかけっこを繰り広げ、
ドッグラン中の犬という犬と大太刀周りを繰り広げては、
ピンボール・ブッチの異名を頂いたこの無法者。

その驚異的な俊足と、恐るべき運動能力、それに加えて、この病癖とも言える強情さ。

ひとたびこう、と言い出したら押しても引いても、トリートで吊ってもガンとして言うことを聞かず、
癖者、と見るや、それがどんな大型犬であっても、果てはそれが人間であったとしても、
問答無用に襲いかかってしまう。

この相棒がやって来てからというもの、まさに飼い主の人生そのものが倒壊、というぐらいにまで
いやというほどの苦労をかけさせられた訳だが、まあここまで苦労をかけさせられたからこそ、
もう後はどうにでもしてくれ、というぐらいにまで腹をくくることができたわけで、
という訳でそう、犬と飼い主、というよりはいまや立派な相棒。
切っても切れないマブダチ、と化してしまっているこのブッチ君。

オーストラリアン・キャトル・ドッグの特性から、飼い主以外の人間はおいそれとは信用せず、
そのつぶらな瞳に魅せられては、頭を撫でようと差し出された手を、ひょいひょいとかい潜ってしまう。

しゃい、というにはあまりにも辛辣そうなその面構え。
そのどんぐり目でじっと相手の瞳の奥を覗きこんでは、
へらへら笑っているかと思えば、
相手をするに足らず、と見るや、プイ、と横を向いてしまう。

で、困ったことに、その気難しい性格が他の犬への態度にも反映されてしまい、
仲間、といえるのは、心底腹を割って契りを結んだ猛犬パーティの連中のみ。

訳も判らずじゃれついてくる新米の犬達を、一瞥の元に震え上がらせては跳ねのけ、
ベンチの上から居並ぶ犬達を睨めつけては、孤高の無法者を気取っている節がある。

で、足元に置かれたボール。

おい、早くそれ、蹴らんかい、と催促を繰り返す訳で、まったくもって困った物である。

とそんなブーくんであるからして、こと、愛玩犬、
あるいは、ドッグランのルール、犬の掟をわきまえない不届き者には、
得てしてちょっときつ過ぎるぐらいに厳しくあたってしまうことも多い。

とそんなハードコアな、まさに、犬の中の犬、のようなブーくんに取って、
その対極に当たるのが、まさに愛玩犬。

そしてその愛玩犬の中でも、愛玩犬の鏡、とまで言われるこのフレンチブルドッグという輩。

物の本によると、このフレンチブルドッグという犬種。

運動の必要がない、と謳っているものを見かける。

運動の必要がない?そんな犬がいるのか?

ニューヨークという都市生活の究極のような場所において、
犬を飼う、ということはすなわち、
朝な夕なに犬を散歩に連れだしては、
うんちおしっこは勿論、十分な運動をさせてるやるために、
それこそ飼い主自身がへとへとにへばってしまうぐらいにまで、
散歩散歩散歩に次ぐ散歩の日々。

それが犬を飼うものの宿命、と腹をくくって初めて、
健全な犬の育成、及びは、人類最高の友である犬との関係が保てる訳なのだが、

なに?散歩の必要のない犬?

そんなお散歩地獄の日々を生きるニューヨークの犬のオーナーたちにとっては、
まさにドリーム・ドッグ、となりうる訳だ。

つまりはそう、このフレンチブルドッグ。

お散歩の手間がかからない、
それこそがここニューヨークにおいてTOP DOGに成り得た第一の理由ではないのか、と思う。

が、そう、そんなフレンチブルドッグ。

つまりは、人間の住む箱型の居住空間において、まるで猫のように充足してしまえる筈のこのフレンチブルドッグ。

そんな飼い主達に飼われては、まさに猫のように猫可愛がりされて育ってきたそんな愛玩犬。

そんなフレンチブルドッグが、ひとたび、たまーのお散歩に連れだされたが最後、

そこはまさに、未知に満ち満ちた、まさにワンダーランド。

思わずの大ハッスル。
これでもか、とドッグラン中を走り回っては、ねえねえ、遊ぼう遊ぼう遊ぼう、とはしゃぎ切ってしまう訳で。。

普段からこのドッグランを自身の縄張り、とまでに日参する常連の犬達にとって、
この、はしゃぎ切ったフレンチブルドッグ。

まさに、???? の、目が点々。

今やまるでハイパーのブチ切れ状態で無我夢中ではしゃぎ回るフレンチブルドッグ。

犬同士の仁義もルールもまるでお構いなしの大暴れ。

あのなあ、だから、やめろってば、という迷惑顔の犬たちに、問答無用でじゃれついては、

ねえ、ねえ、ねえ、遊ぼう遊ぼう遊ぼう、とやり続ける訳で。。。

そんなフレンチブルドッグの飼い主たちも、まさかドッグランのルールや常識など知る由もなく、

はしゃぎ回る我が犬の姿に大喜び。

えーい、やっちゃえやっちゃえ、本当にうちの子は元気なやんちゃ者なんだからあ、
などと、脳天気に写真など撮っている。

と言う訳で、ブーくんである。

このハードコア野郎な訳である。

まるで気の触れたように走り回るこの子豚のようなフレンチブルドッグ。

この潰れた顔の失礼極まりない乱入者。

馬鹿野郎、気持ち悪いから近くに来るな、といくら言っても、

ねえ、ねえ、ねえ、遊ぼう遊ぼう遊ぼう、とやり続ける訳で。。。

挙句の果てに、人のボールをかっさらっては、フガフガと鼻を鳴らして跳びかかってきて、
転げまわっては、走り回りを繰り返す。。。

ああ、やばい、ちょっとやばい、これはやばい、と思っている側から、

よりによって、その尻尾。

ブッチの自慢のその尻尾に向けて猛ダッシュ。

まるで子猫が羽根にじゃれつくように、捕まえた、とばかりに飛びかかって。

あっと思った時にはもう遅い。

一瞬のうちに身体を翻したブッチ。

目にも留まらぬ早さで首筋を咥えて地面に抑えこんでは、
その失礼な輩に、犬の掟、ドッグランのルールを教えてやる、とばかりに、
てめえ、それやめえねえか、とヤキを入れてしまう訳で。

あまりのことにパニック状態に陥ったこの愛玩犬。

なにがなんだか判らずまさに放心状態。

でいきなり、それはまさに、こなきじじい、あるいは、チビ丸、のごとき、
電光石火、伝家の宝刀のその必殺技たる、大悲鳴。

キャインキャインキャインキャイン。

悲鳴の響き渡るドッグラン。

いきなり半狂乱の飼い主。

我が犬の悲鳴に勝るとも劣らない絶叫を張り上げては、

助けて~、殺される~ 助けて~、と断末魔の大騒ぎを始める訳で。。。


という訳で、はたまた、またもやマッドドッグのレッテルを貼られたブッチくん。

そんな大騒ぎの中、ねえ、僕は悪くないよ、悪くないよ、と必死の弁明を始める訳で。。


このドッグランで、もっとも恐るべきは、

ピットブルでもロットワイラーでも、狼ドッグのシベリアンハスキーでもない。

まさに、このフレンチブルドッグ。

スポイルされ尽くした愛玩犬の中の愛玩犬。

この厄介な輩をおいて他にない。

という訳で、この天敵たるフレンチブルドッグ。

その姿を見れば、早々に退散するに越したことはない。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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