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近所のタバコ屋の猫

Posted by 高見鈴虫 on 13.2015 ニューヨーク徒然
近所のタバコ屋に猫がいる。

通り沿いの小窓から顔を覗かせて、
知った顔を見つけると、にゃあ、と声をかける。



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そんな猫の相棒たるタバコ屋の店番。
ヨルダン人のいなせなあんちゃん風。
お祈りの途中には客がなにを話しかけても返事をしない、
なんてところがあるが、基本的にはとても良い奴。

だがこの猫、
どうも、そのあんちゃんの猫ではないという。

以前ここで働いていた奴が置いていって、
そのままこの店に落ち着いてしまったらしい。

という訳でその猫である。

カウンターの上に座っては、
はい、お金、と出すと、そのお金の上に手を置き、
はい、タバコ、と出されるとまたそのタバコの上にすかさず手を乗せては、
これ、お釣り、とやったが最後、両手で抑えて離さない。

で、おい、それ寄越せよ、とやったとたんに
捕まえた!とばかりに、その手の上に爪を立ててそして齧りついて来る。

これが割りと痛い。
血は出ないにしても、割りとそう、割りと、うっと声が出てしまうぐらいに痛い。

思わず、いてててて、と手を引っ込めたが最後、
ひらりと肩の上に飛び乗ってきては、
よいしょよいしょと頭の上によじ登ってご満悦。

あの・・ 早く降りてくれないと犬の散歩に行けないのだが。

普段から犬に慣れている俺からすると、この猫の暴虐武人ぶりには改めて驚かされる。

子猫という訳ではないだろうに、こいつまったく躾ができてないなあ、な訳である。

タバコ屋に入ったら犬がいきなり飛びかかってきては噛み付いてきて血だらけ、
なんてことがあったら、下手をすれば警察を呼ばれているところなのだろうが、
猫にはそれが許されるのである。
まったく不思議な生き物である。

で、この不謹慎な猫。

ひとたび頭の上によじ登ったが最後、なかなか降りてはくれない。
まるで毟り取るように剥ぎとって、
ほら、と床に放り投げても、
着地するが早いかいきなり飛びついてきては、
するするとよじ登ってきて一瞬のうちに頭の上の定位置を占めている。

これが永遠と続く。
次の客が来るまでの間は。

次の客が入ってきた途端、
猫はひらりと身を翻しては、
何事もなかったかのようにすました顔してまたカウンターに座り、
そしてしっぽの先をくねくねやりながら毛づくろいなど始める訳だ。

という訳でこの店、どういう訳か妙に流行っている。

つまりみんな、なんだかんだ言ってこの迷惑な猫に会いに来ているのかもしれない。

あるいは、窓越しに、にゃあ、とやられると
思わず、おお、お前か、と頭でも撫でたくなって、
で、手を差し出したが最後、頭の上に乗られて離れてくれず。

しかたなしに店に入って、そしてなにかを買わされることにもなるのか。

看板娘、とはよく言ったものだな。

いやはや、猫である。またやられてしまった。


プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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