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超自己中社会におけるOKの意味するもの

Posted by 高見鈴虫 on 30.2015 犬の事情

このところようやく春めいてきたニューヨーク。
夕暮れを前にリバーサイドの坂道を降って行けば、
いきなり背後から突っ込んで来るサイクラー。

瞬間に飛び退くも、あまりの危うさに息を飲んで、
思わず、なにしやがんだ、バカヤロウ、と怒鳴れば、

I AM OK とにっこりと笑うサイクラー。

OK? 人の後ろからいきなりちゃりんこで突っ込んで来てなにがOKだ。このバカ。

と言えば、え?と不思議そうなサイクラー。

え?なにが、だって俺はOKなんだぜ。

という訳で、この、OK、である。

実は、アメリカにおいてこのOKの意味が、
どうも俺の考える常識的OKとかなり食い違う。

つまり、アメリカにおけるOKは、こっちはOK、ということで、
俺はOKだ、だから俺はOKなのだ、という意味なんだよね、これ。
つまりそこには、自分以外の人々の迷惑は一切含まれていない、
ということが実に多い。

という訳で、今更ながら、あのなあ、と思わず。

そういう時には、お前のやらかしたことで、迷惑を被った側がOKか、と聞くべきなのであって、
俺はお前がOKかどうか、なんかは俺の知ったことじゃねえんだよバカ、な訳で、
お前らサイクラー、完全に世の中の見方、間違っている、となる訳なのだが、
どうもそのあたりが伝わらない、というか、なんというか、
つまりは、超自己中の輩が勝手に超自己中的世界でOKとやってしまうケースが実に実に多い訳だ。

そう、改めて、
そんな超自己中の奴らの中においては、
このOKという言葉、改めてかなり危険な言葉なのである。


夜更けのドッグランにおいて、かの猛犬共が我が物顔で暴れまわっている中を、
事情も知らずにふらふらとやってきた見知らぬ犬の飼い主。

たまに珍しくも気が向いて犬を遊ばせに来たのか、
あるいは、家族に聞かれたくない電話でもしに来たのか、とそんな感じなのだが、

で、慌ててゲートに駆け寄る猛犬の飼い主たち。

あの、悪いけど、ちょっと今、ドッグランに入るのはまずいんだけど。。。

とまあ、それはつまり、俺達の猛犬たちによって君の犬に被害を及ぶのが心許無いから、
と言う意味での忠告、あるいは、お願いな訳なのだが、

そんな時、行く手を阻まれた見知らぬ犬の飼い主は、大抵、OK、と言うのである。

いや、大丈夫。俺はOKだから。

がしかし、彼らの言うOKと、この現状には、実に大きなすれ違いが、あるいは、認識の違いがある。

そう、俺達は、お前が、あるいは、お前の犬が、OK、かどうか、は聞いてはいない。

俺達の犬がOKじゃないから、あんたに、敢えて避けてくれないか、
つまりは隣りにある小さな犬用のドッグランを使ってくれないか、
とお願いしている訳だが、

それを聞くと大抵の見知らぬ犬の飼い主はむっとする。

いや、あんたに指図される気はないよ。
ここは公用のドッグランである訳だし、俺にだってこのドッグランを使う権利がある。
あんたに俺を阻止する権利はないし、良いの悪いの言われる筋合いもない。

そう、その理屈も判る。
それは判っているのだが、だから敢えてこうしてお願いしてるのである。

あんたの犬はOKかもしれないが、俺達の犬がOKじゃないからこういうことを言ってるのだ。
そう言っているにも関わらず無理にでも入ってくるというのであれば、
それはあんたの「自己責任」ということになるのだが、それでもいいのかい?
と言うことなのだが、

そこで事情を知っているひと、つまり、ドッグランは時としてとても恐ろしいことが起こったりもするのだよ、
という犬の玄人の人々は、むむむ、それってつまりなにかあるな、とすぐに事情を察してくれる訳なのだが、
そうでない犬の飼い主も多い。

俺はOKなのだ、俺の犬もOKなのだ、と言い張る。

いや、だから、と猛犬の飼い主たち。

だから、俺達は別に、お前がOKかどうかについてを言ってる訳ではない訳で、
そこに完全に食い違っているのは、
つまり、あんたは徹底的に自分の事情でしか物の考えられない訳だが、
あんたがOKであってもあんたの望まない状況というのも時としては発生してしまうわけで、
あんたはその状況をあんたの事情だけで判断することはできない訳で、

つまりここまで言っても、いや、俺はOK、と言い続ける連中には、

OK、ここまで言ってもお前がOKと言うなら、こっちもOKだ。
だから、何かあった場合は、そちらの自己責任。
お前の犬が猛犬たちによってたかって半殺しにされても、
それはあんたの自己責任、だってあんたは自分でOKって言ったんだからね、
としらばっくれてしまうことも勿論可能なのだが、

そこはやはり、猛犬の飼い主と言えどもドッグラバーである。

自分の犬ではなくても、犬が被害に会う、
あるいは、自身の犬が他の犬に被害を及ぼしてしまう、のはなんとも良心の呵責を感じる訳で、

いや、だからあんた全然判っていない。まずあんたの言うOKというのは、
とあの手この手で説得しようとすればするほどにこの話は拗れる。

つまりそう、そういう見知らぬ犬の飼い主は、せっかくドッグランまでやってきては、
犬を勝手に遊ばせながら、しめしめと秘め事の電話でもチャットでもしよう、とやってきたのに、
その行動を邪魔されて頭にきている訳で、その気持も判らないでもないのであるが、
まあ、そういう予定外のことも時としては起こる訳なのだが、
どうもその辺りでついつい話をこねてしまう輩が実に多い。

で、もはや完全に意地になっている飼い主。

いや、俺はこのドッグランに入る。意地でも入る、俺には権利が、やらと、
なにやらと要らぬ理屈をこね始める訳なのだが、
自分の言い張っているつまらない意地の為に、
まさか自身の犬が生命の危険がある、なんてことにもさっぱり気がついていない訳だ。

という訳で、面倒になって押さえつけていた犬を放してしまう。

と途端に、ピットブルからマスティフからロットワイラーからオーストラリアン・キャトル・ドッグからが、
一斉にゲートの前に殺到しては勢揃い。

で、ゲート越しに、
おい、なんだよ、見ねえ面だな、おい、てめえ、ちょっとこっち向けや、おいおい、とやり始める訳で、
その騒ぎにちょっとでも怯えの表情が見えた途端に、
いきなり、猛犬たちの、まるで火のついたようなガウガウ攻撃が始まる訳だ。

と、ここまで来て、なんだなんだなんだ、と驚いた見知らぬ犬の飼い主。

だから、今は入らないでくれというのはそういうことなんだよ、と俺達。

つまりは、あんたがOKかどうか、なんて別に気にも止めてやしない。
ただ、あんたの犬がこいつらに襲われてどういうことになるのかあんたが判っているのかどうか、
ということを確認したかっただけで。

といきなり腰の抜けそうになった見知らぬ犬の飼い主。

お前、こんな猛犬たちを公共の場所に連れてくるなんてそれは犯罪だろう。
俺の犬がOKである以上、なにかあった時にはそちらのせいだからな、
とまた要らぬ屁理屈をこね始める訳なのだが、

だから、と。

俺達はそう言ってるのを、いや、俺はOKだ、と言い張ったのはあんただろうが。
あんたがOKと言う以上はあんたの「自己責任」と言ってやりたいのは山々だが、
がしかし、そんな馬鹿な飼い主のために、そんな馬鹿な飼い主に飼われてしまった犬が、
寄ってたかって追い回されてはおもちゃにされまくる姿を見るのは忍びない、
とただそう言っているだけで、つまりはそれは俺達の心遣いなんだが、それを判ってもらえるのかな。

とまあ、そう、そんなすれ違いの会話が縺れに縺れた結果、

いや、それでも、とゲートを押しのけて己の犬を猛犬の中に叩き込んでしまう、とんでもオーナーもいるにはいる。

で、結果的には、あっという間に襲いかかってきた猛犬たち。
いきなり追い立てられては転がされ噛み付かれと散々におもちゃにされた挙句に、
全身砂まみれのままベンチの下に逃げ込んではしっぽを丸めてキュンキュンとなるか、
あるいは、そこに命に関わる事態を察した時には、
猛犬のオーナーたちが猛り狂う犬達を必死になって抑えこんでは、
仕方がない、とばかりにそんな猛犬たちの一同を引き連れては、
小さな犬用のドッグランに移動することになる。

で、なにがあっても俺はOKだ、と言い張っていた見知らぬ犬の飼い主は、

そんな俺達に、どうだ、俺の権利は誰にも邪魔させないぞ、と訳の判らないどや顔を晒すか、
或いは、最悪の場合は警察に電話をして、
もしもしおまわりさん、ここにとんでもない猛犬がいます、と通報する奴まで出てくる訳で、
どうにもこうにもこのアメリカ人という奴は良く判らない。

とまあそんなわけで、そう、この恐ろしき自己中。

いついかなる時にもどんな状況下においても、自分の事情だけが最優先、あるいは、
自分の事情以外はまったく目に入らないというどうにもこうにもという輩が実に多い訳で、いやはやである。

という訳で、このところようやく春めいてきたニューヨーク。

いきなり犬を跳ね飛ばしておきなら、いや俺はOK。だって俺の自転車は傷ついてないからね、

とにっこり笑って走り去っていく、殺人サイクラーたちの季節がまたやって来た、という訳だ。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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