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笑顔のサムライ

Posted by 高見鈴虫 on 28.2015 ニューヨーク徒然
アメリカにやって来たばかりの移民の子どもたちが、
ESLのクラスに入って一番最初に学ぶことの中に、

歩き方、という項目があるそうだ。

アメリカ人のように歩くこと、それこそがアメリカ社会に順応する為の第一関門である。

言い得て妙なり、というよりもまさにその通り。

そう、
海外からやって来た人々が、自分自身ではまったく気がつかない、でいるにも関わらず、
傍から見ると、まさに一瞥、すぐにこいつはアメリカ社会に馴染んでいないな、と気づかれてしまうもの、
それこそがまさに、この歩き方、なのである。

ではそのアメリカ人の歩き方、というのがどういうものか、と改めて考えてみる。



確かに、これまで幸か不幸か世界中を駆けずり回ってきた経験からしても、
アメリカ人ほどに威張って歩く人々を見たことがない。

この思い切り威張って歩くアメリカ人流の歩き方。

いざマスターしようとするとなかなか難しくもある。

まずは背筋を伸ばす。
腹筋と背筋に力を込め、これでもかと胸を張り、
いつも高みから相手を見下ろすように首を伸ばし、
そして取ってつけたような満面の作り笑い、
つまりはハリウッド・スマイルを浮かべては、
標本のように磨き上げられた白い歯をこれ見よがしにむきだしながら、
交わした握手で思い切り相手の拳を握りつぶそうとするかのような、
あの例の、アメリカ流のビジネスマナーである。

そんなアメリカ流のビジネスマナーは、一種傍から見る滑稽なほどに、
パワー至上主義に貫かれている。
ぶっちゃけ、時代錯誤の軍隊調のマッチョな風潮の現れであるのだが、
地方からの赤首連中は勿論のこと、ニューヨークのパワーエリートの人々の間にも、
このマッチョの美学が、まだまだ大いなるスタンダードとして幅を効かせているのである。

それに対する日本である。

日本こそはワビサビの国である。
能ある鷹は爪を隠す。
万事において表面上は努めて控えめに、
己の姿をなるべく小さく見せては手の内を隠そうとする風潮がある。

それはまあ、礼儀作法というよりは、
相手にイタズラな嫉妬心を抱かせず、
あるいは油断をさせては弱みを探る等の狡猾な作戦が垣間見える訳だが、
なによりもまずは相手に警戒心を与えず、やさしい気持ちでお互いの胸の内を明かし合う、
一種、いい意味での馴れ合いの必要とされる農耕民族的村落共同社会における処世術でもあるのだろう。

私自身も新卒の新入社員として入社した会社において口を酸っぱくしてはお説教を受けたものだ。

お前は態度がでかすぎる。
いいか、サラリーマンの基本は、全てにおいて控えめで出すぎないように心がけること。
決して話し相手の目を直視してはいけない。
ネクタイのあたりを見ながら話すように心がけること。
電話においては声を一段挙げてなるべく謙っては、
何事においてもコレ以上無く控えめな態度を示せることこそができるサラリーマンの第一歩である。

そんな風潮の中で鍛えあげられた日本人ビジネス戦士。
まるで両手にバケツをぶら下げているようなネコ背の姿勢が定着してしまったかの様な
そんな日本人の姿が、ひとたびに世界に出た途端に、
まるでオカマの奴隷を見るように浮かび上がってしまったりもするのである。

という訳で、郷に入っては郷に従え。

ここアメリカにおいては、どれほどの狡猾なビジネス戦士であっても、
やはり、アメリカ流軍隊調の質実剛健さをアピールしたい。

が、しかし、そこで取ってつけたようにそっくりかえっては、腹と顎を突き出して、
となるとまさに田舎ヤクザの葬式行列になってしまう訳で、
あるいは、アメリカ流を気取って、やたらとはしゃぎ回ったその態度というのも、
一種見苦しさ、あるいは、下手をすると媚を感じさせたりもするものだ。

では、ワビサビの国の日本人ビジネスマンは、このアメリカにおいてどういった態度で、
でかい面したアメリカ人に面すればよいのか。

と、おもったところ、そう、日本におけるもう一つの美学。

それは「武士道」である。

アメリカ人と接する時には、自身を「サムライ」と思うこと。

背筋を伸ばし、世界を見下ろすように歩き、
自律精神とストイシズムの塊のような風情を保ちながら、
しかし顔つきだけは笑顔を忘れずに、
そして出会いがしらには相手に大しては最大の敬意を払う。

このサムライの美学が、実はアメリカに妙にマッチしたりするのである。

そここそまさに笑顔のサムライ。

アメリカ人との商談の際には是非ともお試しあれ。



プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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