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弱気の風

Posted by 高見鈴虫 on 29.2015 とかいぐらし
信じられないことにウィンブルドンが始まった。
ってことは、おいおい、失業からすでに一年とプラス一ヶ月。

お前、こんなことしてたら立派な廃人。
もうちょっと普通人への復帰は無理じゃねえのか、
なんて声がにわかに信憑性を帯びてくる。

なあに、その時には、ドッグウォーカーでもデイトレーダーでも、
あるいは、ゴミ食ったって気にはしねえぜ、とは言ってはいたが、
いざそれが現実問題として影を結び始めた今、
こんな俺でさえ、ちょっとした弱気の風に吹かれ始めている。

とそんな中、
おいおい、お前って奴はつくづくついてねえな、内なる声が囁く。

あれだけドブの底を這いずりまわった末に
ようやく転がり込んできたチャンスからもあっさりとふるい落とされて、
そしてあれだけ苦労して取った資格も、こうなってはただの絵に描いた餅。

つくづくついてねえ。
あるいは、この世には神も仏もいねえのかよ、
とそして、
つまり、そう、
この世の中、
もう徹底的に正義やらフェアーなんて概念は、
とっくの昔に茶番と成り果てたってことなんだろ、と。
いまさらながら、
壁をぶん殴る気にもなれねえほどにへたりきっているって訳かよ。


というわけで、俺の敗因とはなにか、と考えてみる。

つまりそれは、許す、ということなのではないか、と思い当たる。



許す?
許す、ってなんだよ。

確かに俺は許すことが苦手だ。
許すということを、妥協、あるいは逃避、そして敗北、と捉えてしまうことは、
つまりは、偏狭ということなののか。

いや、俺はただ、許すことが嫌いなのだ。
許せないもの。
例えば嘘。例えば無知。例えば悪徳。例えば不正義。
がしかし、
それはつまりは俺の視点、俺の美意識、俺の価値観からみた
嘘であり無知であり悪徳であり不正義であるわけで、
違う立場から見方を変えればそれはまさに人それぞれ、
とは口では判っていながらも、
しかし俺の独善が、その逆説を詭弁として認めることができないだけの話なのだ。

判っている。
人間は矛盾の生き物だ。
そして社会は不正に満ち満ちている。
つまりこの世の中ははなから不条理なものなのだ。
努力は報われず、罪もないものが罰せられ、
善人ばかりが貧乏くじを引き、
がしかし、
それを誰かのせい、と思ってしまうと
事態はますますややっこしくなる。

それが例え誰かのせいだったとしても、
嫌な気持ちになりたくなかったら、
それを誰かのせい、とは思わないこと。

それを、世慣れた、あるいは、包容力、
あるいは、強さ、とも言うのかもしれない。

お前なあ、もしかして、この期に及んで、
てめえ自身を、可哀想な被害者ちゃん、とでも思いたいのか?

わかっているだろうがこれは試練だ。

俺はまるで杜子春のように、
自分の内なる声と戦い続けている。

そしてまた内なる悪魔が囁く。

ここまでして、お前はまだ神を信じないのか?

幸運を運ぶ神。
善行を強要する神。
そして、現世利益を約束する神。

くそったれ、と深夜に飛び起きる。

いや、信じねえ、と俺は髪をかきむしる。

俺は、なにがあっても、絶対に、神だけは信じない。
あるいは、お前らの神だけは、と言い換えよう。

だとすれば、俺は俺の神を信じるのみ。

つまり、徹底的に俺なりのやり方で俺なりの正義を貫くだけの話だ。

どうだ、目が覚めただろう、と俺の神がにやり、と笑う。

そう、そういうことだ。

くそったれ、また試しやがったのか?

そう、これは試練だ。
お前という人間を磨き上げるための試練。

そしてこうして削り取られて、俺に残るものとは一体何なんだろう、とも思う。

がしかし、これだけは言わせてもらう。

なにがあっても俺は負けない。
お前にだけは、絶対に負けない。

許すことをなど学んでたまるか。

俺は意固地で偏狭でへそ曲がりのパンク野郎。
それ以上にもそれ以下にもなってたまるか。

能書きを垂れる糞野郎に、
顎を突きあげながら瞳の奥を見据えてものを言う、
どうしようもねえクズのチンピラの、
世界中に向けて中指を突き立てて生きるパンク野郎だ。

それだけはやめられない。やめねえ。やめちゃならねえ。

くそったれ。いつかぶっ飛ばしてやらあと思って生きてるってことだ。

そう、ぶっ飛ばしてやるんだよ。どいつもこいつも。





プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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