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おじさん怖かったの~小話集 そのにじゅうはち 「オープンハウスの怪 そのよん」

Posted by 高見鈴虫 on 12.2015 大人の語る怖い話


アッパーウエスト 80丁目近くのとあるアパート。
まあウォークアップではあるものの2ベッドルーム。
真ん中にあるリビングを挟んで、西と東にひとつづつの寝室があって、
まさにシェア仕様。

ああ、これならもうあなたに勉強の邪魔をされることもない、とご満悦のかみさん。

がそう、犬の機嫌がすぐれない訳だ。

普段から、のオープンハウス放浪に嬉々として着いてきては、
静止も構わずに勝手に部屋を詮索しては、
気に入った、気に入らない、とやり始めるこの気むずかしい犬。

気に入った部屋だとそこら中を走り回ってはとやり始める訳だが、
気に入らない、となると、部屋の詮索どころか、ドアの前から一歩も動こうとせず、
そんな時、トレードマークのしっぽがいつの間にかへなーと落ちてしまっているのですぐに判る訳なのだが、

という訳で我が家の霊感探知機であるこの馬鹿犬。
もうこの部屋に至っては、
玄関のドアの前に来たところでむむむ、と耳を立てるや、
いや、俺は入らない、と頑張り初め、ともすると、
身体を盾にして、だから入らないで、と邪魔さえもしてくる。

で、しかたなく、廊下に踏ん張る犬に付き合って、
一人ずつが部屋に入って中を覗いてきた訳なのだが、
いやあ、いい部屋だったね。
うん、最高かも。

キッチンも広いしトイレも2つ。

これでようやく別居ができるって感じ、とルンルンのかみさん。

がそう、なぜ?とあらためて省みるブッチくん。
こんな良い部屋を、何が気に入らないの?

敢えて嫌がる犬を無理やり綱を引っ張って部屋に入れてみれば、

その東側の廊下をじぃぃっと睨んだままてこでも動かず。

つまりそういうこと?とかみさん。

たぶん、そういうことなんだろ、と俺。

やれやれ、とかみさん。あたしもう、なんでもいいけどね、とまさにヤケクソ。

幽霊が出ようが、鬼が出ようが、ぜんぜん気にしないけどね。

がしかし、我が家の御曹司はそうそうと図太い神経もしてないようだ。

やれやれ、と思わず。おまえ、本当に俺達の人生を無茶苦茶にしてくれるよな。

とその夜。

なんとこの俺が、妙な夢にうなされることになった。

舞台はまさにあの部屋。

血まみれになったアジア人、たぶんコリアンだと思うその男が、
床に爪を立てては血みどろになって例の東側の廊下を這いずりながら、俺の後を追いかけてくる。

いや、あの、俺はなにも、という俺に、ギリギリギリ、ちょむさちょむさだ~、とまさに鬼のような表情。

いや、だから、俺はなにも知らないって、と逃げ出して、
あの寝室の窓から外に飛び出しては非常階段の手摺にぶら下がってはあわや真っ逆さま。

とそんな俺を、下から見上げてはオンオンオン、と吠えるブッチくん。

バカお前、あっちに行け、危ないからどいてろ、と怒鳴りながら、
こんな状態になってもまずは犬の安全を考えてる俺っていったいなに?という話だったのだが、

なんだよ、嫌な夢見たな、と思わず。

つまりはそういうことか、と。

わざわざ古いニュースを漁って観なくてもだいたい検討がつく。

つまりそう、この狂乱地価のニューヨークで、格安物件なんてのはつまりはそういうのばかりなんだろう、と。

あの部屋に住んだりしたら、まじでこんな夢を毎晩観させられることになったんだろうなあ。

すやすやと眠る犬とかみさんを見ながら、例え貧乏でもなんでも、こうやって安らかに眠れることがまずは第一、と思ってしまったわけだ。


プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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