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手の大きな子犬は立派な犬に育つ

Posted by 高見鈴虫 on 04.2015 犬の事情
昔から、手の大きな子犬は立派な犬に育つ、なんて話があって、

で、小学生の頃、近所のおばはんから、犬飼いたいけどどんなんがいい?

と聞かれて、

手の大きな犬は立派な犬になるから、なるべく手の大きな子犬を選んだらいいよ、

なんて聞いたようなことをご忠告申し上げたのだが、

で、言われた通りに、手の大きな、それもやたらと手の大きな子犬を貰ってきたおばはん、

うっしっし、どうどう、見てみて、これは手が大きいでしょ?立派な犬になるわよねえ。

とご満悦。

まあ確かに手がでかいのは良いだが、なんかどうみてもただの柴犬にしか見えない。

だったらきっと、そのうち秋田犬みたいになるかもね、と飼い主のおばはん、

レオ、百獣の王のジャングル大帝のレオ、どういかにも立派でしょ?

とかと言っていたのだが、その僅か三ヶ月後、

育ってみたら、なんてことはない、

ただただ、手ばかりがやたらと大きな柴犬に育っただけ、であった。





という訳でその手ばかりがやたらと大きな柴犬のレオくん。

その手ばかりがやたらと大きい風情に加えて、
栗色の身体に、何故か顔だけが炭で塗ったように真っ黒。
おまけに、尻尾の毛がなぜかいつも剥げていて、
その先っぽのほうにだけ、申し訳無さそうに一房の毛がしがみついているばかり。

なんかこれ、犬ってよりもタヌキみたいで・・

誰がどう考えてもジャングルの王者「レオ」という名前には似ても似つかず、
この余りに壮絶なばかりの名前負け、ここまでくれば立派な悲劇、と言うよりはまさにギャグである。


で、当然のことながら飼い主のおばはんは終始やたらと不機嫌。

俺の姿を見かけるたびに、

ねえねえ、あんたの言うこと聞いたら、こんなみっともない犬になってしまって。
責任とって、あんたが引き取ってよね、

くどくどと小言を言い続ける始末で、俺としてもかなりバツが悪い。

という訳で、
おい、レオ、レオってば、くっそ、この馬鹿犬、早く来んかい、と忌々しげに手綱を引っ張りながらも、

しかし、その手ばかりがやたらと大きな柴犬。

そのまるで吸盤のように大きな手を、いつも持て余すようにボテリボテリ、とやりながら、
その不機嫌な飼い主の気などさっぱり知らぬ風で、そののほほーんとした風体はまさに極楽とんぼ。

それもその筈、

その手ばかりがやたらと大きて、身体ばかりが栗色で顔だけが真っ黒、
まるで頬っかむりしたコソ泥か、あるいはどじょうすくいのおっさんの様。

そのあまりにも極端にブサイクな出で立ちから、
見た人が思わず吹き出してしまうことも度々。

そんなことから近所の人は言うに及ばず、
通りかかる人の全てが、
うへえ、かっわいぃぃ、ぎゃははは、と笑い転げては、
名前は?え?レオ?レオっていうの?こいつが、ぎゃはははは、と二度笑い。

だったら、はい、レオくん、はい、お手、よく出来ました、はいご褒美ですよ、
と今ではすっかりご近所の名物犬。

と、そうこうするうちに、
ちやほやとおやつの貰いすぎたか、たちまちとプクプクと太ってしまって、
いまやライオンどころか、犬、というよりは、まさに酒屋の店頭に置かれた飲兵衛ダヌキそっくり。

で、しかもその異様な風体、
四つの手ばかりがやたらと大きくて、顔ばかりが真っ黒。
毛の剥げた尻尾に先っぽだけが、ライオン、というよりは、
習字の筆のような毛玉が、いかにもやる気が無さそうにくるんくるんと揺れている。

という訳で、ここまで来るとなんの動物だかさっぱり判らなくなってきて、

ぬぬぬ、これが世に言う「ヌエ」という生き物か、そうなのか、そうなのか、いかに、いかに。

という訳でその、まるで出来損ないのヌエのようになった手ばかりがやたらと大きい柴犬。

飼い主の罵詈雑言を浴びながらも、なんと18歳近くまで生きた、とのことで、

あそこに行くと、手ばかりがやたらと大きいヌエみたいなたぬきを飼っている人がいる、
と、TV局の取材こそこないまでも、
ピンポーン、すみません、おたくのレオくんの写真取らせてください、
なんていう迷惑な訪問者は引きも切らず。
そんなこんなで、近所では末永く看板犬であり続けたとのことである。

めでたしめでたし。


プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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