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見るからに大変な犬

Posted by 高見鈴虫 on 13.2015 犬の事情
で、調子はどうだよ、と聞かれて、

いや、まあ、犬の散歩ばかりで、と答える。

どんな犬なんだ?と聞かれて、

ほら、これ、とIPHONEの写真を見せれば、

いやはや、と呆れられる。

もう見るからに、大変そうな犬だな、これは、と大笑いされる。

大笑いされた後に、横目で一瞥をくれられて、
いかにも、馬鹿だなこいつは、と鼻を鳴らされる。

そう、まさに大変な犬、である。
一日散歩が4時間。これを大変と言わずしてなんと言おう。

だから、もっと手間のかからない犬にすればいいじゃないか、
といかにも軽い口調で、そんな提言まで承る。

おお、だったらもっと手間の掛からない犬にしよう、としたら、
この大変な犬はどうするんだよ、と、と同じ調子で返してやる。

馬鹿だな、こいつは、リースのコピー機じゃねえんだぞ、
気に入らないから交換しろ、なんてことができる訳ねえじゃねえか。

ただな、と俺。

まあ確かに大変だが、でも、面白いぜ、と。

とたんに、面白い?と聞き返される。

毎朝、土曜も日曜も6時起き、雨の日も風の日も犬の散歩、
夜遊びもできずバケーションにも行けず、
愛人の一人もつくれねえで、それが面白い、と言えるのかよ。

とそんなことをいう輩に、お前、相変わらずだなあ、と思い切り皮肉な笑いを送ってやる。

お前、つくづく相変わらずだな。
夜遊びだ?愛人だ?
今更そんなことやって面白いのかよ。

じゃあなにか?
若いピチピチのねえちゃんをとっかえひっかえすることよりも、
こんな馬鹿犬の散歩してたほうが面白いとでも言うのかよ。
頭おかしいんじゃねえのか?

俺が言ってんのはよ、犬が良いの悪いの言ってる訳じゃねえんだよ。
ただ、同じ犬を飼うにしても、もっと利口にやれってことでよ。
つまりもっと手間のかからない犬にしてれば、
そんな無駄な苦労をすることも無かったってことだよ。
まあ今更そんなこと言っても仕方がねえんだろうがな。
同じようなことをやるにしても、お前はいつも貧乏クジを引く。
バンドにしてもそう、仕事にしてもそう、女にしてもそう、
なにをやらしても、一番馬鹿な方法を取りやがる。
まったくご苦労様ってところだぜ。

まあな、と俺。返す言葉もねえが、

ただ、面白いぜ、と俺。

この犬、確かにえらく手間がかかるが、でも凄い面白いんだよ。

面白い?この犬がか?漫才でもやってくれるのかよ。

ああ、漫才、確かに漫才だよな。

ただ面白いんだよ。やることなすこと、やたらと面白いんだよ。
一緒にいて飽きねえし。24時間ずっと一緒にいたいぐらいだ。

あのなあ、大変な手間はかかるってのは、つまりは、面白い、ってことだよ。

手間はかからないが大して面白くない犬を飼ったって、なにもつまらねえじゃねえか。

どうせ飼うなら、大変でもなんでも、飼って面白い犬、それに越したことはねえってよ。

どうだ、参ったか、と顎をしゃくって見せる俺を、つくづく馬鹿にした顔で首を傾げる。

つくづくよお、お前って奴は、まったく相変わらずなんだよな、と吐き捨てられる。

確かに、カバンに入れられるような犬にしておけば、こんな苦労も無かったんだろうが、
カバンに入れられるような犬では味わえないであろう、面白みってのもあってよ。

確かに大変な犬だが、面白いんだよ、本当に。

まあ、そう、なにをやらせても一番楽で手っ取り早くて、効率の良い方法ばかりを、
利口なやり方、と思っているお前にこんなこと言っても判らないだろうがな。

つまりそう、そういうことなんだよ。
面白いんだ、ほっといてくれ、というところだ。じゃな。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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