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ポケットに忍ばせた10ドル札

Posted by 高見鈴虫 on 26.2015 とかいぐらし
残業の末に終わったのは午前二時過ぎ。
こんな時間に大丈夫ですかと聞かれて、あ?なにが?と聞き返してしまった。
だからこんな時間に帰って襲われたり強盗にあったりとか、とマジ顔で聞くのだが、
え?いったいなんのこと言ってるかさっぱり判らねえ、と本気で首を傾げた。
という訳でそう、ふと見れば俺はなんと、
コテコテのシチサン分けに銀縁眼鏡にネクタイまで締めている。

確かについこの間まで午前様が仕事のうちのバンドマン。
あるいはホームレスも避けて通るような髭面の浪人風情、
あるいはぶっ殺せぶっ飛ばせとがなりたてていたパンクバンドのドラマー、
あるいは朝から晩までらりらりで、
女と見たらラブアンドピース、愛しあおう開放されよう、もっと自由になろよ、
などと戯言を抜かしてはおまんこばかりやっていた似非ヒッピー、
或いはおららそこのけのけとハンドル絞りまくった直管バリバリでかっ飛んでいた湘南健康優良不良少年、
なんて姿は微塵も伺えないに違いない。

がしかし、どんな格好をしようが俺にとっては俺はまさにただの俺。
あんなあ、これまで俺にやられる奴は山ほど見てきたが、
まさかこの俺をやろうなんてバカがこの世にいるとは思えねえ。
だって見ろよ、この俺、どっからどう見たってただのチンピラ。
おいこらとも言わねえうちからいきなり金タマに膝蹴りくれてくるような奴だって、
誰だってどう見たって判ってるだろうがよ。
と、ふと見れば、この俺である。
確かに見事な、見事すぎる程の変装ぶりだ。
そんな奴に思わず、悪いおっさんちょっと金貸してくれねえか、
と言いたくなる気持ちも判らない訳では無い。
で、いきなりチョウパン食らって鼻血ブーなんて可哀想すぎる。
なによりこのヒューゴボスを汚ねえ血で汚したく無いわけで、
だったらまあいいか、とこっそり10ドル札をポケットに忍ばせて見た。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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