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顔のない男

Posted by 高見鈴虫 on 05.2015 ニューヨーク徒然
深夜過ぎの地下鉄に、
いつも乗り込んでくる顔の無い男。

どういった理由でか、顔の全面が綺麗にケロイド状態でずるりと溶け落ちたまま、
サングラスに隠された目は見えないものの、
鼻も口もただの穴。

これはこれは凄いものを見せて貰った、と思わず、見世物小屋の乗りで一ドルを恵んでやりたくもなる。

普段、俺は乞食なんぞに銭はやらない。

街頭ミュージシャンにはシンパシーの意味もあって、せいぜい頑張れよ、と小銭をばらまくこともあるが、

ホームレスのうるさい戯言は一切無視することにきめてはいるのだが、

この顔のない男。

いやはや、その化け物ぶり。
目も当てられないぐらいに見事な妖怪ぶりには、思わず大脱帽である。

という訳で、深夜残業のたびに見かけるこの顔のない男。

そのたびに1ドルを恵んでいた訳だが、

今日に限ってそんな小銭が見当たらない。

今度機会があったら肩を組んで一緒に写真を撮りたい、と思っていたところで、
あれあれ、小銭ねえかな、とカバンの中をかき回していたところ、

ふとその顔の無い男から、肩に手を置かれた。

いや、無いなら今日はいいよ。今日はほら、もうこんな金が集まってるしさ、だからまた今度でいいから。

と、なんとも優しいお言葉。

いやいや、申し訳ない。次は必ずな、と思わず握手などをしてしまって、

夜更けの地下鉄の中で、ちょっとやさしい気分にもさせられてしまった。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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