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ほらよ、くれてやるぜ、の意味するもの

Posted by 高見鈴虫 on 12.2015 ニューヨーク徒然
朝の公園の散歩で犬仲間たちと合流。
そのままカフェに流れてお茶がてらの朝食となる。

とした途端、テーブルの周りをぐるりと囲んだ犬たち。

ベーグル・クリームチーズから、かりかりベーコンから、
バターたっぷりのパンケーキからチーズオムレツから、
とどいつもこいつも垂涎だらだら。

テーブルの下、膝の間から頭をねじ込んで来ては、

ねえねえ、何食べてるの?ねえねえ頂戴、一口ちょうだい、とおねだりモード全開。

ブーくんに至っては人が食べているそばから両手をかけて、

くれくれ、それくれ、おい、寄越せったら、と半ば脅迫モード。

と、そんな飼い主たち、駄目ダメ、を連発。
止めなさい。卑しいことするんじゃない。おい恥ずかしいぞ。

とそのたびに犬たち、あまりの不条理さになっとく出来ません!
と抗議の表情ながら、くっそお、と諦めてテーブルの下にうっぷすか、
あるいはブーくんのように、隙を見ては強奪に図ろうとする。

まったくねえ、と苦笑いを浮かべる某氏。

こんなたかがベーグルやらバターやらチーズぐらいで、よくもこれだけ必死になれるよな。

まったく犬は幸せだね、とは言いながら、あからさまに馬鹿にした表情である。

で、思わずだったらさ、と言ってしまう。

もしもこれが、100ドル札だったり、金やダイヤモンド、大判小判であったりしたら、どうする?

それを気分次第で、あげようかな、やっぱあげるの止そううかな、とかやられたら。

そんな訳ないじゃないか、とせせら笑う某氏。
このベーグルが大判小判?言っている意味がぜんぜん判らない。頭おかしいんじゃないのか?

そう、この某氏はつまりはそういう人である。
彼のその想像力の欠如こそが彼のこの老後の惨状を招いた原因である、とはまだ気がついていないようだ。
ってことは多分一生その浅知恵のまま、つまり、ろくな本一冊も読み切ることもないままなんだろうな。
だがまあ、そういういう人生もあっていいじゃないか、と勝手に受け流して、

で、そう、改めて、この焼きたての大判小判。

それが、ちょっと手を伸ばせば届くようなテーブルの上に山積みになっていて、
お喋りの合間に気まぐれに、え?なに?あ?これ、はいはい、なら上げるよ、と投げ渡される、なんて状況があったら。

そう、それが人間であったとしても、そういう状況になれば、まさに死に物狂い。

必死であればあるほどに卑しくもなり、卑屈にもなる。

という訳で、この持てるもの持たざるものとの残酷な格差。

おめーら、ったくしょうがねえなあ、卑しい顔しやがってよ、
ほら、くれてやるよ、と床に投げ渡されて、夢中で駆け寄る者共に、

はっはっはっは、喧嘩はいけないよ、はっはっは、そうそうと必死になるなよ、たかがそれぐらいのもので。

勿論、夢中になって掴み合いを続ける者共にも、その高笑いは聞こえている。

その卑しくも卑屈なほどに残酷な笑いを聞きながら、無我夢中に掴み合いをしながら、
果たしで内心ではどう思っているのか、

と、ちょっと考えればすぐに察しがつくだろうと思うのだがな。

がしかし、この某氏の例を上げるまでもなく、そういうことにまったく無頓着な、悲しいほどに想像力の欠如した輩というのも居るには居る。


そんな想像力の欠如した連中から、
やれ、経済援助だ、難民救済だ、ODAだ、ボランティアだ、と
調子のよいことを抜かしていたりもするのかもしれないが、
いざそんな想像力の欠如した連中から、
頭の上からパンやらミルクやらをぶちまけられた時、
その善意の援助がいったいどういった結果をもたらすかについて、
よーく考えた方がいいぜ、と朝から眠たくなることを考えていた。

ちゅうわけで、いまだにテーブルの下から不穏な視線を向けているブーくん。

判った判った、こんなところでこんな不味いもの喰ってないで、
早く帰ってちゃんとご飯を食べようぜ。
オーガニック・チキンを煮詰めた特性のシチューを作ってあるからさ。

と言った途端、待ってました、と跳ね上がったブッチくん。

さっきまであれほどまでに得意げにベーグルを振舞っていた某氏のことなど一瞥さえもくれずに、
あばよ、とばかりにさっさと歩み去ってしまったのである。

我が犬ながら、天晴な去り際であった。


という訳で、改めて難民たち、持たざるものよ。
決してまつろうこと無かれ。
その小汚い成り、不穏な視線を武器に、
ありったけのプライドを持って、
他人様の懐から思う存分に毟り取ってやれ。




プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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