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Anthony Bourdain 「OKINAWA」

Posted by 高見鈴虫 on 17.2015 アメリカ爺時事
CNNの番組で、アンソーニー・ボーダインのパーツ・アンノウン、ってのがある。

旅するセレブシェフが世界中を飛び回っては、
ミシュランで星がいくつなんていう高級料理から、
街角の屋台から、と食べて食べて食べまくる、
という話。
まあ良くある食べ歩き紀行もの、ではあるのだが、
元ヒッピーであり、元ロッカーであり、元バイカーであるという、
まさに絵に描いたような無頼漢であるこのアンソーニー・ボーダインという人。
で、その行く先が凄い。






アメリカ、ヨーロッパは勿論のこと、中南米からアジア、アフリカから中東までまさに世界津々浦々。

で、そんな街々で飯を食いながら、そこに暮らす地元連中と膝つき合わせては本音談義、をする訳で、
そこはスポンサーがCNN。
その舞台から会話からゲストからもかなり突っ込んだ物になる。

タイにおいては、まさにそのアンダーグラウンドを這いずりまくり。
街中の屋台を訪ね歩いてはゴーゴークラブからオカマバーからと、
あのセックス・ドラッグスに塗れたナイトライフにどっぷりと浸かりきって、
体当たり取材どころかスタッフ全員がラリラリ状態。

あるいは、街中がまだ騒然とした戦時下であるリビアにおいては、
取材中に武装警察、というよりはただの山賊ゲリラを相手に、
んだよこの野郎てめえ文句あるのか、とまさに一触即発。
やら、
果てはロシアの反体制派ナンバー1と共に今にも頭がスパークしそうなロシア美女たちに囲まれ、
プーチンの悪口を言いたい放題、
と、やっていたら、番組放送後、ご存知のようにその当人であるネムツォフが、
いきなり暗殺されてしまう、なんてこともあった。

で、俺的に一番好きだったのはなんといってもイランである。





ホメイニ革命から30年以上に渡って、テロリスト養成国として世界中から目の敵にされてきたイラン。
まさに悪魔の棲む邪悪な帝国扱いをされてきた訳だが、
そんなイランに掟破りの潜入取材。
と言っても、そこは旅するセレブ・シェフ紀行である。
ただなんの気なしに、街角のチャイハナから屋台からで、水タバコをふかしながら、
焼きたてのシェミ・カバブに舌鼓を打ち、通りがかりの奴らと、やあやあ、とやりながら、
よお、あんちゃん、で、最近の暮らしぶりはぶっちゃけどうよ、と、まさに普通の普通な会話。

そのあまりに普通過ぎるぐらいに普通なイランの素顔、
これが全米において衝撃を与えた訳で、
なんだよ、イランの人たちって、やっぱり普通の人間なんじゃないか、
とまあ当然過ぎるぐらいに当然な訳だが、まさに目からウロコがボロボロ。

イラン・コントラから、なにかにつけて悪者役を押し付けては共和党系のピラニア共から
いいように飯の種にされてきたイランという国の、
その喧伝の化けの皮を見事に引剥した天晴な番組構成。

このイラン編の衝撃が、今話題になっている経済封鎖の撤廃から国交正常化へと向かっている訳で、
まあそう、食べあるき紀行番組とは言ってもCNN、やはりやることがかなりエグい。

とまあ、前置きはここまでにして、このアンソーニー・ボーダインのパーツ・アンノウン。

この番組でいきなり「OKINAWA」である。


anthony bourdain parts unknown s06e03 okinawa by frizzelltimothy


言わずと知れた沖縄。

普天間基地移設問題から始まって、まさに現在の台風の目である訳なのだが、
日本政府としては最も触れて欲しくないであろうこの目の上のたんこぶである沖縄を、
突如に訪ねてしまっては、まさに沖縄地元料理を食べまくり。

食べあるきをしながらも、沖縄の歴史、
つまりは、あの太平洋戦争下における悲劇、
アメリカ軍との死闘から始まり、
本土からの日本軍に人間の盾とされた沖縄民衆の人々の壮絶な歴史を辿りながら、
なぜいま沖縄に米軍基地が必要なのか、
それを街の人々はどう思ってるのか、
なんてきつい話を、屋台でタコライスを食いながら、
あるいは、元沖縄知事である大田氏の自宅レストランで琉球王朝料理を頂きながら、
或いは、沖縄そば屋の屋台でラーメンを啜りながら、
基地反対運動?んなものやってる奴らはみんな外から来た奴らばっかりでよ、やら、
まあ、そう、つまりは地元の奴らの普通の話が満載。

そしてそのメインになるのがなんと沖縄空手である。

一撃必殺の沖縄空手のその真髄、
本土の空手は、手を閉じて拳を握ってアタックする訳なのだが、
沖縄空手はその手を開く。
手を開き、身体を開き、心を開き、そして相手を包み込んだ状態で、
生体力学を応用したピンポイント攻撃、指先ひとつで一撃必殺、
とまさに北斗の拳そのままの極意を披露する訳で、格好良い、の一言である。

正直、俺自身が基地の街の生まれ育ちということもあり、
また、かつて沖縄から来たバンドマンたちと一緒にツアーを回っていたことがあって、
いろいろな意味でこの沖縄という場所についてはあまり軽々しく話したくはない。

ましてやそんなナイーブなところを、
当の占領国であるアメリカからだけは、余計なことを言われたくない、
というのが山々な訳である。

それを敢えて強行取材するCNN、
おまえまったくなあ、と思わず口があんぐり。
と、同時に、
てめえ、余計なこと言いやがったらただじゃおかねえぞ、と最初から喧嘩越しではあった訳だが、

いやはや、このパーツ・アンノウン、
沖縄の歴史から始まり、その美しさ、その伝統の素晴らしさ、そしてなにより、
そこに暮らす人々が、あまりにも格好良く、
何にもましてその番組に登場した沖縄郷土料理が美味しそう過ぎる。

一時間の番組で良くもここまで描き切ってくれた、というぐらいに見事な番組構成。
思わず、くっそおお、沖縄行きたい!!!ともんどり打ちながらも、感動のあまり涙が溢れそうになった。

という訳で、
番組放映から、ここニューヨークに置いても、実に様々なところでこの「OKINAWA」の話をされる。

同じアパートの住人から、会社の同僚から、犬の散歩の人々から、武闘家マッサージ師であるレイモンド師匠から、
と、実に様々な人々から、「OKINAWA」ってところ、本当に良いところみたいねえ、から始まり、

下手をすれば、

実はね、うちのおじいちゃんが日本を爆撃したパイロットだったのよ。
あの番組見ながらそれを思い出して、ひどいことをしたんだなあ、って思わず涙が出ちゃってね。、
日本の人に一言でもお詫びをしたい、って思ってたのよ、
なんて言葉まで飛び出すぐらいで。

つまりはそう、沖縄の人々の本音、
強いては、敗戦国であり占領地であった日本という国に生まれ育った人々と、
そこを支配してきたアメリカという国の人々の、
その琴線に触れた、ということなのだろう。

かの従軍慰安婦問題から、そして、広島長崎の原爆映像からと、
なにかにつけて、いまだに傷を引きずる戦争である。

基地移設にかこつけて利権に群がる糞ヤクザどもから始まり、
虐殺が有ったの無かったの、
軍部に連行されて置屋で蹂躙された女たちの自主性がどうの、と、
下らない詭弁を繰り返すアホどもに、
このCNNの番組は良い面の皮である。

沖縄の人々をなにかにつけて飯の種にしようとする本土人たちに比べて、
アメリカのほうがずっと醒めて、冷静に、
遥かに温かい目を持ってこんな番組を作れてしまうという事実を、
よーく、考えて貰いたいものである。

という訳でこのパーツ・アンノウンの沖縄編。

最後に登場する、女性格闘家ナンバーワンの居酒屋のウエイトレスさん。

うちの娘がジュージュツやっていて、で、その娘に一言、とアンソーニー・ボーダインに促されたその女性格闘家。

オンナが喧嘩強くたってダメよ。オンナの強さは心の強さ。男たちの下らない戦いをやめさせるのがオンナの愛の強さなのよ。

まさに、それ。まさに、それである。

正直、番組終了のテロップが流れたとたんに頭が真っ白になった。

良い番組であった。

改めて、沖縄という場所への溢れるような愛と誇りを共有してくれたアンソーニー・ボーダインという人に、
心から、ありがとう、と伝えたい。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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