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俺は基地の街で産まれた

Posted by 高見鈴虫 on 17.2015 日々之戯言(ヒビノタワゴト)
という訳で、蛇足ながら心情吐露である。

俺は基地の街で産まれた。

常時頭の上を「米軍機」が飛び交い、その爆音の中に包まれて育った。

産まれた時から子守唄はFENだった。
フェンスの向こうのあのまばゆいばかりの緑の芝生の広がる風景と、
MPのヘルメットを被った赤い顔をした米軍たち。
そしてそれに隣接する芋畑とそしてバラックのようなうさぎ小屋。

酔っ払った兵隊の集う闇バーでマリファナをふかしながらグレートフルデッドを聴いたり、
あるいは、そんな米兵にぶら下がるクラスメートと、
おめえそんなことやってって明日の中間試験どうすんだよ、
なんて話をしていたり、
あるいはそんな俺自身が、
米軍キャンプまわりのバンドマンとしてドラムを叩いていた経験もあり、
果ては、ダチのねえちゃんが米兵に拉致られ、
警察が頼りにならない以上は俺達がやるしかねえとばかりに、
街の不良仲間総出で米兵狩りの街中が戦争状態。
そこにヤクザの顔役が調停役に引っぱり出されて、
なんてこともあったかなかったか。

そんなアメリカと日本のグレイゾーンに育った俺が、

やれ日本の民族自決やら、日本の兵隊さんは偉かったやら、
戦争には負けていない、終わっただけだ、やら、
そんなヨタ話を真に受ける、なんてことは到底ムリな話なのだ。

日本の誇り?笑わせる。

日本なんて国はねえんだよ。

ここはただたんに、米軍の占領地。

そんなものに、誇りも伝統もクソもあったものか。

と、文部省の教育を鼻で笑って育った俺たちである。

そしてそんな惨めな占領地に育った俺達が、

果たして日本のなにを守らなくてはいけないのか、

俺たちはずっとずっとそれを考えつづけながら生きてきたのだ。

そして俺はいまアメリカに居る。

敵地であり、そして、あれだけ憎み、そしてあれだけ羨ましかったこのアメリカという土地で、

そんなアメリカ人の奴らと膝を付き合わせて普通に暮らしている。

なぜか?

馬鹿野郎、アメリカにだけは負けたくなかったからだ。

あんな惨めな住宅街で、うじうじと戦争があったのなかったの、なんて愚痴を言い合いながら、
戦争に負けたおじいちゃんの、やら、日本って国は本当は実は凄い国で、やら、
うるせええ、黙ってろ、このクソの負け犬どもめ。

そんな惨めな言い訳だけは、もう金輪際聞きたくねえ!

それが日本を出た本当の理由だ。

日本がどうなろうが、俺は負けていない。俺は負けえねぞ。
アメ公全員を敵に回しても、おれは最後の最後までこの塹壕で戦い続けてやる、
俺はそんなハラキリ特攻兵の子孫、そして生き残りでもある。

そう思っていた俺が、いまはニューヨークの街角でピザを齧りながら、
おう、そこのホームレス、その臭えケツで俺の前をうろつくんじゃねえ。1ドルやるからさっさと失せろ、
とそういうことを平気で言ってしまっていたりもする。

という訳で、基地の街で産まれた俺は、ここアメリカで自由人になった。

惨めな敗戦国を飛び出して、世界でたった一人の日本人になった。

もう、戦争がどうのなんていう惨めな戯言には付き合わなくても良い。

俺は日本という国を離れ、世界でたったひとりの日本人として生きる。

それこそが、日本という国を飛び出た俺の勝ち得た唯一の安息なのだ。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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