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基地の街のガキ

Posted by 高見鈴虫 on 17.2015 日々之戯言(ヒビノタワゴト)

初めて米軍キャンプのバンドマンの仕事にありついた時、
案の定、そのギャラをちょろまかされた。

あれえ、トエンティ・ドルズの筈じゃなかったのか?

という俺に、はあ?何言ってんだよこの猿。
がたがた言うとMP呼んでおめえは塀の向こうで監獄行きだぜ。
このままキューバでもベトナムにでも連れてってやってもいいんだがよ、

なんて感じで軽くいなされては、
ポールモールを一箱渡されて追い払われた。

が、しかし、悲しいかな俺のまわりでまともな英語を喋れる奴は一人もいなかった。

思い余って学校の英語教師に相談してみようかと思ったが、

ねえ先生、いままで本場のアメリカ人と話したことある?
と聞いてみて、いや、ないよ、と軽く答えられて心底絶望。

そう、日本という国においては、
高校の英語教師がネイティブのアメリカ人と会話をしたことがない、
なんてことが、普通に起こっていたのである。

まあ今更ながら、俺はこの日本という国の不思議に心底呆気に取られた訳で、
だったら仕方がねえ、駅裏の米軍バーのバーテンをやってたケンさんに相談して、
GIVE ME MY SALARY $20 なんて紙に書いて持っていく、
なんて情けないことにもなった。

とそれが高校二年生の夏。

としたところ、米軍キャンプ内のディスコで、ひょんなことからクラスメートに遭遇。

あれえあんたこんなところで何やってんの?
おめえこそなにやってんだよ、と思わず大爆笑。

でその彼氏というかパトロン気取りの黒人の奴らとお友達になって、
単車の後ろに乗せてやっては族の集会に連れだして、
特攻服のガキどもの中に、いきなり正真正銘のニグロ頭の黒人が登場、
としたところで、全員が呆気に取られて、という訳で、
あれはなかなかおもしろい企画だった。

でまあ、そう、そんな基地の街のガキども。
俺的にはやはり、そんな米軍の奴らから流れてくる放出品のタバコ、
まあポールモールばかりであったが、
やら、やたらとばかでかいコカ・コーラ。
あるいは、ギャラの代わりに貰えるマリファナと、
それをだしにしてひっかけるサーファーのおねーさんたちとの乱パーとか、
とそして、
そんな本場のアメリカで流れている無茶苦茶に刺激的な音楽。
あのころに全盛であったニューヨークのグラブ59でかかっていたであろうDISCOミュージック、
本場のコテコテのSOULとそしてジャマイカ直輸入のレゲエ。
あの黒人専用ディスコで鳴り響いていた音楽が俺の骨の髄にまで染み込んでしまった。

がしかし、そんな俺達の日常は退屈の淀みの中でどんぶらこ。
授業中、見渡す限りの芋畑の広がる住宅地の風景に生あくびを噛み殺しては、
頭の上を飛び回る米軍機と、たけーやーさおだけ、の廃品回収の交錯する午後。
あああ?せんこー、なんだって??きーこーえーねえーよ、とやりながら、
ああ、昨日もジョニーのところから仕入れたハッパで朝まで乱パー、
いったい何発抜いたのか、ぜんぜん寝てねえよ、
とまだ指先に残ったオンナの臭いに思わず勃起してしまったり、
教壇の上でしたり顔で教科書を読む英語教師に、
あんなあ、あんたの言ってるのは英語ってより念仏、
ファッキン・サックスのトータリー・ブルシットだって自分でも知ってた?と嘯いていたり。

そう、基地のガキどもはそうやって、大人たちのまったく知らない世界を泳ぎまわっていたのである。

とまあそんなことをしているうちに、
ひょんなことから職質を受けた駐在のおまわりに持ち物検査をされた際に、
ポケットの中からひょっこりと顔をだした無刻印のポールモール。

なんだこれ?と聞かれて?あ?ああそれはベー軍の、と言ってしまったのが運の尽き。

進学校の高校生が、暴走族は愚か、
米軍と、そしてそこに群がるヤクザ組織との癒着、
強いては、国境不法侵入から、麻薬不法所持から、銃刀法違反、
下手をすれば米軍相手の高校生売春の実態から、と、
今の世であったら、新聞の一面に乗るようなスキャンダルなネタを、
これでもか、と抱え込んでいた訳なのだが、

幸運なことに、まあ所詮は地回りの駐在である。
暇つぶしにこってりとあることないこと根掘り葉掘り聞かれてはいたぶられた上で、
おめえ、良い高校行ってんだから馬鹿じゃねえんだろ?いい加減にしておけよ、
とタバコの没収だけで済まされた訳だが、ふと、一緒に取られそうになったZIPPOのライター、
あ、それ、俺のじゃないんで返してください、と言った途端に思い切りぶん殴られた。

ちゅうわけでなんだ、

あれだけ、退屈だ、馬鹿馬鹿しくてやってらんねえ、と文句ばかり言いながら、
それはそれで割りと忙しく暮らしていた基地の街のガキ。

そんなあの頃の俺は、この歳になっても、いまだにどっかりと俺の中に居座り続けている。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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