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ジャーマン・シェパードとジャンピーねえちゃん

Posted by 高見鈴虫 on 26.2015 犬の事情
アパートのエレベーターに、
白人のねえちゃんと巨大なジャーマン・シェパードが乗り込んできた。

いかにもやんちゃそうなそのジャーマン・シェパード、
そして見るからにジャンピー系なそのねえちゃん。

考えうる限り最悪のカップリングである。

案の定、そのジャーマン・シェパード、
俺の顔をじーっと見つめながら、
事あればすぐにでも飛びかかってやろうと、待ち構えているようだ。

やれやれだな。
犬のことを良く知りもしない飼い主に、
ろくな躾もされずに育ってしまったジャーマン・シェパード。
これはつまりは、何れは騒ぎ、
エレベーターの中で人にじゃれついたのを、
襲いかかった、と難癖をつけられてはシェルター行き、
というパターンか。

とそんな不幸な行く末を見越して、
今のうちに手は打っておこうと要らぬ気を回しては、

おい、お前、おすわり、とやって見る。

案の定である。
このやんちゃそうな犬。
おすわりさえも教わっていない。

もう一度、SIT、おすわりと命じる。
やはりだめだ。
悲しいほどに茶色い目を見開きながら、
きょとんとして俺を見つめるばかり。

この歳でお座りも教わっていないようでは、
この先が思いやられるどころか、
その展開はあまりにも明白。
こんなやんちゃそうなジャーマン・シェパードが、
それもこんなねえちゃんにハンドルできる訳もなく、

と思いきや、そんなジャーマン・シェパードが、
ふとねえちゃんを振り返る。

俺と犬とのことなど素知らぬ顔で、
IPHONEを覗き込んでいたねえちゃんが、
そんな犬の視線に気づき、

俺はそんなねえちゃんに見せつけるように、
SIT お座り、とやって見る。

なあねえちゃん、この歳でお座りも教えていない、
なんて、どういう了見だ、と非難の眼差し、

としたところ、
いかにも面倒くさそうに、ほれ、と顎をしゃくったねえちゃん。
それを見た犬が、いかにも渋々、という風に、
よいしょ、とお座り。
そして俺を見上げて、
ほらよ、気は済んだか?
といかにもな表情である。

つまりそれはあれか?
自分の飼い主以外のコマンドを聞かないように、と、
そういう躾がされている訳なのか?

呆気に取られる俺の前で、
ピーン、と空いたエレベーター。

ねえちゃんは相変わらずIPHONEを覗き込んだまま、
まるで犬に導かれる盲人のように、
廊下の奥へと消えて行ったのである。

いやはや、やられた。やられきってしまった。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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