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秋の夜長のブラッド・メルドー・トリオ

Posted by 高見鈴虫 on 25.2015 音楽ねた

ニューヨークは秋である。

という訳でもないのだろうが、
ここのところ、よりによってブラッド・メルドー・トリオが、
またまたリバイバル的にマイ・ブームである。

ブラッド・メルドー・トリオ
言わずと知れた、ベースがラリー・グレナディールと、
そしてドラムはジェフ・バラード。

俺的には考えうる限りの最強のトリオである。



こんな寂れきったジャズの何が良いのか、と聞かれても、
知るかよそんなこと、としか言えない。

ただ、まあ毎度のことだが、これしか許せない、というか、
ただ単に、ブラッド・メルドー・トリオ、以外は受け付けないのである。

がしかし、
ブラッド・メルドーのソロとなるとこれがちょっと退屈に思えて、
或いは、他のミュージシャンとのコラボ、
例えその相手があのジョシュア・レッドマンであろうと、
かのウエイン・ショーターであろうと、
まさかドラムがブライアン・ブレイドであったとしても、
これが何故かやはりなんとなくNGなのである。

そう言った理由から、
この年末、あのバワリー・ボールルーム、なんてところで、
Chris Thileとのコラボのライブがあるのだが、
なんとなくその気になれないでいる。

が果たして、ブラッド・メルドーと、
そしてラリー・グレナディールにジェフ・バラード、
こいつらのなにかそれほど特別なのか、
というと不思議なぐらいにその必然性というか理由が見当たらない。

ブラッド・メルドーのあの苦虫を潰したようないぼ痔顔的プレー。
ラリー・グレなディースはまさに優等生的にそつの無いプレーに徹し、
そして、ジェフ・バラード、あの不良おやじは相変わらずハッパでらりらりである。

ともするとまたスティックを落としたり、構成を間違えたり、
ことによってはドラム・ソロを断ったり、
なんてことさえも平気にやってのけてしまうのだが、
その徹底的にバックに徹した控えめさというか、
ある種の投げやりさというか、
まあ言うなれば緩さというか、
つまりはその虚栄心をまるで感じさせない、
力の抜けきったプレー、それ以外は許せない、訳なのである。

ただ唯一、あの洒落者ギタリストのピーター・バーンスタインとの共演はやたらと心地よい。

まさにジャズ界の酸いも甘いも噛み分け切った、
肩の力の抜け切ったウィットさがその最大の魅力なのかもしれない。

そう言えば、こんなトリオが前にもあったよな、とふと思う。

言わずとしれたチェット・ベイカー、
ベースとギターだけのあの力の抜けきったヨーロッパどさ巡りのライブ版、
リズムはメロメロ、なんのメリハリも気合いもなく、
チューニングさえも覚束ない枯れに枯れ切ったジャンキー爺さんの、
寝言と言うよりは死に際の子守唄のようなあの超絶的な脱力プレー、

チェット・ベイカーだからこそ成し得た、
一種、ジャズの極意にまで通じるあの超絶的脱力プレー、
ブラッド・メルドーもついにあの域にまで達したか、という訳なのである。

と同時に、いきなりのジョアン・ジルベルトである。

ブラジル中の音楽業界、その全てにNGを出して出された末に、
ガット・ギター一本でステージに立ち続けたあの記念碑的なまでの頑固爺い。

あのジョアン・ジルベルトのソロだけはなんとか受け付けることが出来る。

という訳で、一頃は憑かれたように聴いていたマイルスもコルトレーンも、
或いは、、ビル・エヴァンスもキース・ジャレットも、
今となってはどうしても鼻についてしまうようになって、
或いは、ミッシェル・カミーロもチック・コリアも、
今やなんの未練もへったくれもない。

そうして残ったのが、チェット・ベイカーとジョアン・ジルベルト、
そしてブラッド・メルドーだけ、という体たらく。

そうニューヨークは秋、
そして俺の人生もどっぷりと晩秋、という訳なのかもしれないな。

そんなこの世で一番どうでもよいような輩の為にさえ、
音楽というものが存在してくれる、というのも不思議な気もするが、
そう音楽は世に連れ歌につれ、
人の人生の季節に合わせて好みの音楽も変わって行くのであろうか、
あるいは、
そんなブラッド・メルドーのライブが、一瞬のうちに売れ切れてしまうってところから観ると、
そう、これも時代、という奴なのかもしれないな。

ニューヨークは秋。俺も秋。そして時代も秋、そういうことなのだろうか。

ただ、だからなんなんだ、である。
秋なら秋を愉しめば良い。冬には冬の音楽がまた見つかるだろう。

という訳で、俺は今宵もブラッド・メルドー・トリオである。
秋のこの長すぎる夜。
永遠に永遠と、ブラッド・メルドー・トリオな訳である。





プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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