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ニューヨークのクリスマスはチャイナタウンでテレマカシ~!

Posted by 高見鈴虫 on 25.2015 ニューヨーク徒然
ちゅうわけで世間はクリスマスである。

アメリカにおいてクリスマスってのは、
言うなればごく宗教的な行事で、
つまりは、キリスト教徒のキリスト教徒によるキリスト教徒の為の、
という訳で、
キリスト教徒どころか筋金入りの無神論者である俺のような偏屈者には、
ジングルベルも赤鼻のトナカイもサンタクロースも、
別になんの意味がある訳ではないのだが、
いまだに人類の殆どがキリスト教徒、という迷信が罷り通るこのアメリカ、
このクリスマスはやはりナショナル・ホリデーってなことになっていて、
まあ理由はどうあれ仕事が休みになるというのは嬉しい。

がしかし、このクリスマス。

人種の坩堝・ニューヨークにおいても、
ナショナル・ホリデーというからには全てがお休み。

ついでに、労働者という労働者がこの日ばかりは休暇を取るとあって、
さすがに地下鉄・バス等のライフラインは動いているものの、
商店からレストランからほとんど大抵のものは軒並みのお休みとなるわけで、
下手をすれば警官の姿さえあまり見かけない、と来る。

とそんな時、アメリカに家族のいない我々のような移民、あるいは放浪人、
つまりはニューヨーク流民たち、
なんとなく、見捨てられた気分にもさせられる訳で、
しまったなあ、グローサリーの買い物忘れたらどこもかしこもCLOSEで食うものねえよ、
と相成る訳で、
せっかくニューヨークでクリスマス休暇を、なんて楽しみにしながら、
蓋を開けてみればどこもかしこも閉店づくめ。
食うものも無し、飲み物もなし、とかなり寂しい聖夜を迎えることにもなりうる。

と、そんな時。
唯一の味方はチャイナ・タウンである。

中国人というこの異様な程に空気の読めない人種。
クリスマスであろうがなんであろうが知ったことかとばかりに、
そう、このチャイナタウンだけはクリスマスとは無縁の別世界。

そんな中国人たちの、問答無用なとっぱずれ方が、
こんな時には唯一の救いにもなったりもするというがやたらと可笑しい。

という訳で、ニューヨークの流民たちのとって、
クリスマスと言えばチャイナ・タウン、
というのは、実は一種の定番であったりもする訳だ。







という訳でクリスマスである。

誰もがせめてクリスマスぐらいはお休みを、
という事情から、やはり俺のような異教徒の派遣野郎に、
その皺寄せが押し付けられる訳で、
イヴの夜も過ぎて深夜二時までしっかりと仕事を押し付けられた。

が幸い今年のクリスマスは金曜日。
ってことはおいおい、土日を加えて三連休、となって、
この日ばかりは絶対に緊急呼び出しの無い三連休、
年間を通じてこんな安らかな気分が味わえるのもこの日ぐらい。
まさにクリスマス万歳!といったところ。

とそんな時、夜勤明けの昼前になって、案の定、古い仲間からの電話である。

飯でも食わんけえ、という訳だ。
なんか姪の甥の従兄弟の再従姉妹の、なんてのがニューヨークに遊びに来ていて、
で、食事でもどうですか、と誘われたのだが、
なんてことはない、開いてるところどこか知ってますか?
というお助けコールであるらしい。

だったらまあ、そういうことなら中華街で飲茶でも、となる訳だが、
この飲茶、少人数で行っても面白くもない。
という訳で、暇そうな奴らをかき集めては、
チャイナタウンでメリー・クリスマスとなるのがまあニューヨーク流民の必殺技。

なんだよまたかよ、去年も一昨年も確かクリスマスは飲茶だったよな、
と言いながら、だったら去年と同じ店で、という訳ででかけた訳なのだが、
なんと、その去年と同じ店、
飲茶と言えばここ、と決めている中華街の「JING FONG」、
よりによってこの店が、このクリスマスの日に限って貸し切りな訳である。

えええ、ジンファンがクローズ?
という訳で、小雨のパラつくチャイナタウンの雑踏に揉まれながら、
いきなりの迷子状態。
ええ、だったらどこに行ったら良い訳?と途方に暮れる面々。

いや、大丈夫心配するな、とばかりに、
各自が手元のIPHONEを覗き込んでは、
えっと、この、なんとかって店、どうかな。
レビューでは4つ星、とかにはなってるけど、
GOOGLE MAPを頼りに向かってみれば、
そんなWEB上でお薦めの店、
どこもかしこも観光客、つまりは白人たちが長蛇の列。

30分待ち?
いや、いや、そんな訳はないだろう、とピピンと来るニューヨーカー。
中国人の言う5分は30分。
15分は1時間。つまり、30分待ちってのは2時間待ちってことだろう、と。

だったら、と余計な悪知恵。
地獄の底もなんとやら、で、20ドル札をひらひらさせながら、
おい、これでなんとかならねえか?と交渉してみるも、
いやいや、この日ばかりは、と苦笑いで返される。
むむむ、ってことは、大事なTIPも何の効果ないまま、
ただ悪戯に訳の判らない輩の内ポケットに消えてしまう、
ことも十分にありうる。

いやあ、しまったしまった、と改めて途方に暮れる面々。
まさに絶体絶命である。
がそんな時にも、
わあ、凄い凄い、クリスマスにチャイナタウンが大盛況なんて、
やっぱりニューヨークよねえ、
などとおめでたいことで喜んでいる観光客たち。

おいおい、人の気も知らねえで、と途方に暮れるニューヨーカー。
くっそお、なんでも良いけど腹減ったなあ、このクリスマス。

とそんなときに鳴る電話?

よおよお、メリクリ!
はいはい、久しぶり、元気?元気?
で、ねえ、ご飯でも食べない?
とかなんとか言いながら、
つまり、ええ?あんたらもチャイナタウン?
で、今どこ?キャナルのモットの、エリザベスの?
ああ、そうそうJING FONGが休みでさあ、
そうそう、そうなんだよ、で良い所知らない?
とまあ、誰もが同じ状態。

と、そんな見ず知らずの待ち人の中からも、
ヘイ、どっか良い店知らねえか?なんでも良いんだよ、腹減って死にそうだ、
などとしがみつかれる始末で、
そうこうするうちに、いつの間にか膨れ上がるクリスマス流民の群れ。

で、どうするんだよ。
さあなあ、だったらこの、なんたらって店行ってみるか?
どうせそこも一杯だろ?
電話してみれば?
それがさっきから電話しても誰も出ねえんだよ、とまあつまりは誰もが同じことをやっているのだろう。

もうしょうがない、ここまで来たらなんでも良いか。
その当たりで粥でもワンタンメンでも食って帰る?

ええ、クリスマスにワンタンメン?それなんか寂しすぎる。

とそんな時、ふと、マレーシア、という言葉が脳裏に閃いた。

なぬマレーシア?
つまり、マレーシアこそが、クリスマスと一番かけ離れたところ、って気がしない?という訳か。

で、そう、もしかしてマレーシア料理とか、どうかな、と思って。

マレーシア料理?なんだよそれ。喰ったことねえな、とさしものニューヨーカーも首を傾げながらも、
で、そのマレーシア料理って何?と聞かれながら、
良いんだよそんなの、知らねえなら知らねえで、
黙って出てきた物を食えばそれで良いんだ。この期に及んでうるせえこと言うな。

という訳で、嘗て取った杵柄の元ヒッピー野郎。
途方に暮れた流民たちを引き連れては、
さて、こっちだったかあっちだったか、と彷徨い歩くチャイナタウンの路地裏。

薄暗いアケード街のその奥の奥。
まさに見捨てられた倉庫街のようなその一室に、
あった、あったぞ、マレーシアン・レストラン。

恐る恐る覗き込んだ店内。
もしかして空いてる?このスーパークリスマスラッシュの最中に?
で、受付のねえちゃんにうろ覚えのマレー語を一言。

スラマッパギー。
スラマットゥンガーリ。
アパカバー?
アパカバー?
カババイッ!カババイッ!!

通じる通じるマレー語、ちゃんと通じるぜ。
つまりは、チャイニーズのなんちゃってマレー料理って訳でも無さそうだ、
で、なんなのそのマレー料理って?という訝しげな面々に、
マレー料理とは、チャイニーズ・カレーだ、と一言。
つまりは、チャイニーズとカレーのミックス。
っていうか、インドと福建と広東とタイとインドネシアが、
まざって良い所取りした、という、まあなんていうかフュージョン料理。

という訳でさっそく配られたメニュー、まじ分けわからねえ、と目をパチクリ。
メニューの向こうからじとーっと、あるいはにまにまと笑いながら、
あるいはまさにすがりつくように俺の顔を仰ぎ見るメンツ。

つまりなにか?俺が選べって奴か?
そうそう。
カレーで良いのか?
良い良い。なんでも良い良い。食べれれば。
まじ、腹減って死にそう。

という訳で、独断と偏見のマレーシア料理。

まずは、ローティ・カナイ
これはココナッツカレーにインドのローティがついた奴。

で、サティ、これは言わずとしれたマレー風の焼き鳥。

で、オーチェン。これは必殺・牡蠣オムレツ。

で、ハエ・ミー、これは福建蝦麺、という奴で、福建風ピリ辛風味の蝦出汁のラーメン。

と、ここまでがマレーシアB級料理の王道。なんかここらあたりで思わずお腹一杯、
というところだが、

で、ここらあたりでいきなりの必殺・ABC
これが実はカキ氷、の中に小豆から白豆黒豆コーンからスイカから、と、
野菜からフルーツからをなんでもかんでもぶち込んだカキ氷の上から、
練乳をドバドバとぶっかけた奴。
なにこれ、鹿児島の白くまじゃないの、と素っ頓狂な声。

で、この甘い甘いABC。
カレーやら福建風やらで火照った口を、この甘い冷たいABCで溶かしながら冷やしながら、
とやっているとあら不思議、いきなり食欲が復活。
これこそがまさにマレーシア料理の醍醐味、そのもの。

で、名前は知らないがマレーシア料理の定番。
揚げたタロ芋のバスケットに野菜炒めの盛り上げた奴
このさくさくタロ芋がコロッケのようで、それに餡かけ野菜がトローッと絡んで無茶苦茶美味。

で、ナシゴレン、これがこれがまあ蝦炒飯、ミーゴレンが焼きそば。

で、ここら当たりでダメ押しの一品。

フィッシュ・ヘッド・カレー鍋

これがもう、何と言っても、という奴で、ぶっちゃけ、ココナッツカレーのスープの鍋に、
野菜各種に加えて、ぶち砕いだ魚の頭をガーンとぶち混んでは、とろとろになるまで煮込んだやつ。
この骨にへばりついたとろとろゼリー状のコラーゲンをチュパチュパやりながら食べるのがまた最高。

という訳で、いつの間にかテーブルの上はまさに骨と空いた皿の山。

ぐへえ、腹いっぱい過ぎ。

まさに気絶寸前まで食べて食べて食べまくったクリスマス。

で、ご会計を、とやったとたん、えええ、これだけ食べて、一人20ドル?あり得無さ過ぎ!

という訳で、全員が全員、まさに大満足。
うろ覚えのマレー語で口々に、テレマカシー!を連発しながら、
転がりでたチャイナタウンの雑踏の最中。

見上げたキャナルストリートの向こう側、リトル・イタリーの街角に風に踊るクリスマスの飾り付け。

そっか、今日はクリスマスなんだよね。
そうそう、クリスマス、クリスマス。
なんでまたクリスマスにチャイナタウンかな。
なんでまたクリスマスにテレマカシーかな。

という訳で、まったく妙なクリスマス。
まあ良いんじゃないの、ニューヨークなんだから。

という訳で、ひょんなことからこれから先、
ニューヨークのクリスマスはマレーシア料理でテレマカシー、
なんて妙な風習が定着しそうな塩梅なのであった。



プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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