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MOMAのジョルジュ・スーラのプレミアに行ってきました

Posted by 高見鈴虫 on 29.2007 読書・映画ねた

先週の木曜日、
MOMAのジョルジュ・スーラのプレミアに行ってきました。
そう、あの、点点点で、もやっとぼやけたようなメルヘンチックな風景画を書いたひと。
点描技法の第一人者、と言えば判りますね。
そう言えば、俺、
実は、ずっとスラーだと思っててさあ。スーラだったのね、と今更ながら(笑

で、この、ジョルジュ・スラー、じゃなくて、スーラさんの得意とする「点描」と言う技法、
暇な授業の最中、教科書の裏に友達の似顔絵を、シャーペンの先で点点てんてん、
とやった覚えは誰にでもある筈、なんて。

という訳で、その点々絵画の第一人者、
この人ってたぶん、凄く偏執狂的な人で、
来る日も来る日も色鉛筆の先で
点点てんてんテンテンとやり続けていた、
根暗のひっきーで病的な神経質で友達の居ないドン臭いタイプ、
つまり、超ギークみたいな奴だったのかな、
そりゃあまあ早死にしてもしょうがないよね、
なんて、勝手に思っていて訳なんだけど、
実際に見て、おっと、唖然!

実はこの点点が、凄く大きい!のです。
点点というよりは、ほとんど筆でべたべた、と言う感じ。
その筆さばき、実にもう相当に大胆不敵。
下手に近寄ってみちゃったりすると、
われ、舐めとるんかい、ってぐらいに、もう、ぼてぼて、って感じ(笑
手抜き、というよりも、いたずらでベタベタとやっていた、に過ぎない、ぐらい。
なんだこれ、と、思わず唖然。そして苦笑。
あれまあ、なんて。
これ、失敗作?
なんて、で、じゃあ次へ、と足を進めた途端、
待てよ、と。
そう、
一歩二歩と遠ざかれば遠ざかる程に、
あれ不思議、なんとなくだんだんとそのボテボテが像を結び初めて、
ふとすると、
おおおお、そうだんたんだ、
これ、海岸の絵だったのですね、なんて。
ちょっとした騙し絵にさえ思える
この大胆過ぎる本家の「点々絵画」ってより「べたべた絵画」
ほうほうほう、と眺めているうちに、
そんな霧に煙ったような風景が、いつのまにか静かに揺らめき始めて、
風景が立ち上がる、というか、動く、というか、広がるというか、浮かびあがるというか、
いつしか、潮の香りから風に流れる砂から、
そう、まさしく海、黄昏た、季節外れの、誰もいない海が
誰に知られるともなく、ざざざざ、と波うっているような。
つまりは空間性と。つまりは心象風景の焼き込み、と。
いやあ、
たかだかコピー用紙程度の大きさの、
こんな手抜きの点々べたべたの絵の向こう、
まさかこんな世界が隠れていたなんてね。
ああ、やっぱり、高い値打ちがつくだけのことはあるなあ、と。
参りました、とは思ってみたものの、
ここでひとつの疑問が持ち上がります。

果たしてスーラさん、この絵、いったいどうやって描いたのかな、と。
だって、
筆の届くところからでは、絵が見えないんだよ。なんか可笑しいよね。
そうあなたの言うとおり。
という訳で、ちょっと推理。

1.点をひとつ書くたびに10メートル下がって確認、とやっていた。
2.10メートルぐらいの長さの筆を使った、
3.目の前のものが凄く遠くに見えるめがねをかけていた
4.あるいは、もともと物凄い乱視・遠視だった。
と。

そう、
この人、もしかして、物凄い遠視だったりとか、そうそうに違いない、なんて、
で、
外の売店で売っている画集のページをめくるうちに、
あった!牛乳瓶の底みたいなメガネをかけたスーラさんの自画像、あるいは似顔絵。
このメガネ、まさに、遠視・乱視、そのもの。
ああこのひと、超遠視的乱視的世界を具現化しよう、としていたのかな。

で、加えてこのスーラさんの特異性、
なんかどの絵もどの絵も、
見つめているうちに絵が立ち上がってくるのはいいんだけど、
どうもその対象がどんどん遠のいて行くんだよねえ(笑
ああ、逃げていく、みたいな。
なんか変なのだよね、それって(笑
実は物凄く気の弱い人だったのかな、とか思っちゃったけどさ。
いやあ、
思わず隠された真相に気づいたなんて、ちょっと得意げ。

しかしながら、
ロートレックは言うに及ばず、
ゴッホの神経衰弱
マティスの梅毒の後遺症から
ピカソのあの病的なまでの独善性まで
そう、
天才って、時として大きな欠落の結果だったりするでしょ?
欠落を埋める為に、ひとつの才能だけが異様に育ってしまった、
或いは、
ひとつの才能にあぐらをかいて、ほかの全てがないがしろになってしまった、
とか(笑

という訳で、
MOMAのジョルジュ・スーラ展、
31歳で早逝した関係で作品数そのものが少ないのだけれど、
点々技法に限らず、
まるで生きているようなデッサン画から始まって、
点々絵画に至るまでの、
まさに計算に計算を重ねていく過程の貴重なデッサン画からと、
逸品の多くが展示されてます。
実はスーラさん、根っからの理系の人だったのね、なんて、思わぬ発見。
こういうのって、ほんと、原画みなくっちゃ判らない、とつくづく思う。

MOMA,金曜の夜は確かドネーションベースなので、
気が向いたら覗いてみてください。
あ、それから、一歩二歩と下がるうちに、
思わず後ろの人とがちんこしないように、
くれぐれも気をつけてみてくださいね。



            ~遠方の友に宛てたメールより

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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