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ぶっちぎりのブッチ~セントラル・パーク参上!

Posted by 高見鈴虫 on 15.2009 犬の事情

ニューヨークのマンハッタン、
聳え立つ摩天楼の渓谷群に囲まれたそのど真ん中に、
セントラル・パークという馬鹿でかい公園があります。
映画やテレビやらにたびたび登場するので、
知らない人はいないと思いますが、
このセントラル・パーク、
我々ニューヨーカーにとっては、
憩いの場、なんて言葉では到底表現できない、
まさに、無くてはならないニューヨーク生活の精神的な要とも言える、
誠にありがたい公園なのであります。




で、このセントラルパーク、早朝、朝の9時までの間、
なんと、全面オフ・リーシュ、わんちゃん解禁状態になるってな話。
うっし、これはなんとしてもトライしなくては、
とはかねがね思っていたわけなのですが、
しかしながら、ここにひとつ問題がありまして。

と言うのも、このセントラルパーク。
マレーヒルの我が家からだと歩いてゆくにはちょっとばかり遠すぎる。
まともに歩いても1時間ちょっと。
そこでまた、ふがふがと寄り道でもされようものなら、
普通に起きていたのでは9時までの解禁時間に間に合わない、と。
かと言って、
バスに乗るにはケージ、あるいはバッグが必要なのですが、
悲しいかなブッチ君、我が家の旅行用バッグに詰め込むには
ちょっとばかり大きすぎる按配で。
それなら、地下鉄で、とも思いますが、
いやあ、クラブ帰りのらりらりのガキどもやら、
悪臭の塊と化したホームレスの蠢く早朝の地下鉄には、
ちょっとちょっと、子供には見せられないな、と。

で、そう、残る手段は、つまりは自転車しかない!と。

で、あの、実にお恥ずかしい話なのですが、
実は私、幼い頃からのちょっとした夢がありまして、
で、それはなにか?と誰も聞いてくれないので自分からお答えしますと、
ずばり、「犬と一緒に自転車で走ること!」だったりした訳なのですが。

しかしながら、はい、実はここでまた問題です。

実はぶっち君、
普段の散歩の時はわがまま放題、
ちらかってるゴミから他のわんちゃんのおしっこの後から、
と、いちいち立ち止まってはふがふがやってばかりで、
一向に歩が進まないことがほとんど。
しかも、自分がこっち!と決めたらもうてこでも動かなくなって、
無理に引っ張ると、それこそ意地になって地面に這いつくばってしまう、と。
そんななんで、
まさか、自転車で一緒に走る、なんて、まさに夢のまた夢。
相方に言わせるところ、
ぶっちに自転車こがせて、あんたが走ったほうが速いんじゃないの?
なんて、もう最初から完全に投げやり状態。

それに加えて、そう、聞きしに勝るニューヨークの交通事情。
普通に自転車乗っているだけでも確かにちょっと命がけ、
ましてやうちのくそブッチを連れてなど、
もしかしてこれって完全に自殺行為?
と、まあ普通に考えたら確かにそうかも、であったりする訳なのですが。

という訳で、
夢のように晴れ上がった日曜日の朝6時、
薄明かりのなか、まだ寝静まった街に、
恐る恐る自転車を引きながら降り立った時には、
それこそまさに、ちょっとした大挑戦の始まり、
であったりした訳なのですが。

しかしながら、いきなりですが、ここにささやかな奇跡が起こります。

どうしたことか、そう、これはまさに神が降りたように、
いざ自転車で走り始めたとたん、
ブッチ君、いきなり、さあ、来い!競争だ、とばかりに走り始めるや、
と、それが、
いやあ、どうしたわけか、そう、まるで、まさに夢のようにスムーズに走り初めてまして。

夜露に濡れたアスファルトの上、
大きく開いた口から長く伸びたピンクの舌を躍らせながら疾走するブッチの姿、
親馬鹿ながら、いやあ、もう、実に格好良い。
という訳で、
寝静まった夜明けの街の真ん中で、
思わず見詰め合っては、
これってもしかして夢が実現した瞬間ってやつ?
とばかりに、
まじでちょっと涙がにじむぐらいに感動してしまった、
という訳なのでした。

で、そんなこんなでたどり着いたセントラルパーク。

朝靄に煙る木立の向こうに見渡す限りに広がる緑の芝生のカーペット。
そんな光景を見るや、もうブッチ君、
いてもたってもいられない風で、
リーシュを放したとたん、それこそまさに弾丸のように、
あの丘の向こうからあの丘の向こうまで、
木立の奥からその先のまた先まで、
まるで気が触れたように走り回って転げまわっては、
いやあ、その、早いこと早いこと。

目の前を通り過ぎたかと思ったらあっという間に見えなくなって、
おっ消えちまった!と思った途端、
いきなり飛び込んで来たかと見るや、
あっという間に目の前を通り過ぎてまた丘の向こうへ消えてゆく、と。
そんなブッチの後ろから、
次々に追いかけて行く犬たちが、
いつしか誰もがぶっちぎられ完全な独走状態。

その走りっぷり、本当に惚れ惚れするぐらい。
全身がもう喜びではちきれんばかり。
白い背中が朝日を浴びてキラキラと輝いて、
いやあ、うちのブッチ君、親馬鹿なから、
確かに、本当に、格好良いかも。

という訳で、はーい、ここで白状です。
斑(ぶち)犬のブッチ? ブッチ・キャシディのブッチ?レズビアンのブッチ?
まさかまさか。
本当の本当の本当のところ、
ブッチのぶっちはぶっちぎりのブッチ。

という訳で、ブッチ君。
まさに、ぶっち切り野郎の面目躍如、

ブッチぎりのブッチ、ここに参上! 
全開バリバリ!

と言ったところでした。





            ~遠方の友に宛てたメールより





プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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