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The Big Short (大空売り!) ~ 邦題:マネーショート を観る。

Posted by 高見鈴虫 on 21.2016 読書・映画ねた
遅ればせながら、THE BIG SHORT を観た。
また例によって、何の予備知識も無くNETFLIXで借りた訳だが、
おお、例の2008年のリーマンショック。世界金融危機の裏話ものであったか。

いまだ記憶に新しい、あの世界を揺るがせた一大金融危機。

そしてその後、アメリカそのものが、完全に死に絶えたとさえ思った、
あの大惨事の内幕もの。

まるでかの911のように、
秋の青空の下、まるで青天の霹靂のように突如として襲いかかり、
そしてあっという間にウォール街は愚かアメリカそのものを押し流してしまった、
未曾有の金融パニック。

誰もが騙され、誰もがこれ以上無くテンパることになったあの大恐慌を、
事前に予測し、そして有ろうことか、
これによって世界は滅亡する、という空売りにすべてを賭けた、一世一代の大博打。

結果、断末魔のパニックの中、天文学的な儲けを上げた、そんな数少ない男たちの物語。

まさに、空前絶後の金融大活劇、という訳で、
この映画、俺的には2015年度公開映画、あるいはここ数年見た映画の中では、
文句無しに、ナンバーワン、それもダントツ!と言い切りたい。







正直なところ、

あの世界を揺るがす大恐慌が巻き起こった時、
俺は、なにが起こっているのか、さっぱり、なにも、判っていなかった。

テレビを点ければやれテロリストだ、アフガンだ、イラクだ、と、
目に入るものはことごとく不愉快なニュースばかり。

それと同時にウォール街では人知れず空前の狂乱景気が続いていた訳で、
まったく訳が判らない、とは思いながら、
しがない技術屋であった俺は、
しがない技術屋としてしがない技術屋の日々。

つまりは朝からそして深夜過ぎまで、
日がな一日会社のラボに篭っては、
日々津波のように押し寄せる仕事の狭間でまさに錐揉み状態。
現場と残業と出張の狭間で過労死寸前の青色吐息生活を送っていた訳だ。

とそんな時、いきなり始まったウォール街の大崩壊。
朝、そして昼飯時、そして帰宅時の光景が、
まさに日々激変をしていった訳で、
なにをいまさらそんなこと知った事か、
俺はもう目の前の仕事にアップアップでそれどころではない、
とは思っていながらも、
さしものそんな技術屋風情にも、
さすがにこれはなにかあったのだな、
ということぐらいは想像が付いたことは確かだ。

大恐慌?
なんだそれ。

リーマン・ブラザーズ?AIG? ベア・スターンズ?
ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチ?

が、みんな倒産?おいおい(爆

という感じで、バーカ、お調子者の金融野郎、死に腐れ、
いずれにしろ俺のこの暮らしになんの関係がある訳でもなし、
とかなんとか言っていたが、
そのうち、バンカメからCITIもやばいんじゃないか、
なんて話が聞かれ始めてから、洒落にならなくなった。

とそうこうするうちに、
おい、俺達の401K、空になってるぜ、なんて話になって、
401K、なんだそれ、
なんて今更おめでたいことを言うやつもいて、俺もその一人。

つまりそう、あの時代、金融屋、以外の仕事をしてい人々にとって、
やれ、911だ、アフガンだ、イラクだ、なんて言う、
信じられないぐらいに不愉快なニュースのその狭間に、
またまた信じられない天変地異が起こったらしい、
とまあそんなぐらいの感覚ではあったのだが、
いまだに、あのワールドトレードが倒壊し、
そしてジャンボ旅客機が住宅地に墜落し、
なんてことが続けざまに起こっていた2001年のことを、
まるで昨日のことのように生々しく記憶していた俺達にとっては、
んだよ、またかよ、ぐらいの衝撃しか感じられなかった訳だ。

とそう、すべてがそんなドサクサの中であったのだろう。

なにもかもまったく訳が判らないうちに、年金がパーになり、
おっかなびっくりやっていたデイトレをやっていた奴は青くなり、
テレビのニュースが戦争ばかりからいきなり恐慌ばかりに変わり、

やれやれ、ジョージ・ブッシュ、この基地外猿、
本当に次から次へとやってくれるよな、
とまさにふんだり蹴ったり、とそうこうするうちに、
会社を追われた人々がダンボールを抱えてタクシーの前で行列をなし、
そんな抱えたダンボールをゴミ箱にぶち込んでFUCK!と叫び、
昼飯時のレストランが空になり、
そしていつしかウォール街から人気が消えていた。

そしてテレビの中のあの風景、
住む家を追われた人々がディズニーワールドを目指し、
並ぶフォークロージャーの看板と、うち捨てられた家々と、
緑の芝生の上に散乱したままの家財道具と、
そして、ガス欠のままに街道沿いに放置された車、
なんて映像が次々と映し出され初め、
ふと見あげれば、24時間眠らぬ街であった筈の、
ダウンタウンの夜空までが、
まるでまた停電でも起こったかのように、
闇の中に没していたのである。

繰り返すが、正直、あの当時、
俺にはなにが起こったのかさっぱり判らなかった。
サブプライムだ、ミンスキー・モーメントだ、クレジッド・ディフォルト・スワップだ、
といくらそんな言葉を並べられてもさっぱり訳が判らず、
そうこうしているうちに現実として起こったことは、
そう、あれだけ山になっていた仕事が、
なくなった、ということだけだった。

そう、今から思い返してみて、
俺たちはあの時代、ただただ不愉快なニュースと、
そしてジョージ・W・ブッシュという考えうる限り最も醜悪な大統領に、
ただただ、ぶりぶりと文句を言っていただけであった。

やたらと羽振りの良い金融マンの友人たちから、
やれ、トライベッカでブランチに、やら、
農場を買おうと思うんだが買ったら遊びに来てくれる?やら、
ポルシェよりもやっぱりフェラーリだよな、やら、
そんな話題を聞きながら、
まあそう、ウォール街の連中なんてそんなものなんだろう、
ぐらいにしか思っていなかったのだが、
まさかそんな日常の当たり前のことが、
一瞬のうちに崩れ去ってしまうなんて、
そんな911みたいな事が、まさかまた巻き起こるなど、
誰も夢にも思ってはいなかった、というのが本当のところではないのだろうか。

そんな中、またいつものように出張の季節がやってきた。
一年に一度、秋口の頃になって、
デトロイトから、シンシナティを経由して、テネシーをまで、
国道75をひたすら南下しては、
車関連の取引先を訪ねて廻る仕事があったのだが、
そこに観たものは、まさに、アメリカの死んだ姿だった。
行けども行けども、ではないが、
どの街に行ってもどれだけ走っても、
人の気配のまったく感じられない風景が永遠と続く。
ただでさえ単調でなんにもない景色の続くアメリカの田舎、
それがまさに、時間が停まったようになにも、なにひとつとしてなにも無かったのだ。
そういえば道が空いているな、とは思っていた。
そう、夜間のフリーウエイを爆走する大型トラックの姿がまるで見られない。
ホテルもガラガラ、あるいは、すでに倒産済み。
無人のフリーウエイ。灯りの消えた住宅街。
人っ子一人いない巨大モールと、車の一台も停まっていない駐車場。
臭いフォークソングではないが、そこにはただ風が吹いているだけ、という光景が、
あれだけ、唖然とするぐらいに気味の悪いものだとは知らなかった。

そう、アメリカは死んだのである。

それは嘗て見た、廃墟となったあのワールドトレードセンターの、
瓦礫の山に溶けた鉄柱で作られた不気味の十字架だけが建つ、
あの悪夢のような光景と相対を無し、
まさに、なにもかもがまったくそのものの状態、
アメリカの田舎の青い空と緑の芝生とお菓子の家々の並ぶその風景から、
人の気配が消え失せたまさにゴーストタウンが永遠と広がっていた訳で、
いまだにそう、あの時なにが起こったのか、そして今なお、世界になにが起こっているのか、
正直俺には、いまだにあまりよく判っていなかったんだな、という事実を、
身につまされて思い知らされる、そんな映画であった。

という訳でこのBIG SHORTという映画。

2007年から始まり、そして2008年9月を最後に、
ウォール街を、そして世界の金融を、
そして強いては、このアメリカという国そのものの時間を止めてしまった、
あの世界金融危機。

その大崩壊に気がついた人々が、大いなる空売り=BIG SHORTに賭けて、
天文学的な大儲けを飾る、という空前絶後の一大金融活劇。

ということになる訳で、
この映画をコメディ、と言う人々がいる。
そう確かにそんなものである。
あるいは、コメディにでもしなかったらまったくやってられない訳で、
これで誰も罰せられなかった、つまり、誰のせいでもなかった、
それに加えて、
なんと、そんな無茶苦茶な人々に、
なんと税金から援助金を出して延命を図った挙句、
そんな無茶苦茶な人々は、その救済金を、
事もあろうにボーナスとして配ってしまってばっくれてしまった、
なんてことがあった、
まさに、そう、ジョージ・ブッシュの時代の、
あの、なにもかもがハチャメチャな狂気の世界、
そのフィナーレを飾ったこの恐慌劇。

つまりはそう、なにも知らない人々は、
うかうかしているとただ好き勝手にカモられるだけ、
というこの仁義なきグローバル社会の幕開けともなった訳で、
それが証拠に、そう、
あの世界恐慌から10年。
起こったことと言えばまさに、
1%と超大富豪と、そして99%の貧民、というこの縮図。

がしかし、である。

そんなことに文句を言っている、なんてのはアホつまりは、カモ、
強いては、ルーザーなのである。
いつ、どんな時にも、いかなる事態に陥っても、
儲ける奴は儲ける、のである。

そんな教訓、あるいは、戒めを持って、

この空前絶後の一大金融コメディ、
BIG SHORTの根性を持って、
複雑怪奇な仁義なきグローバルの世を渡って行かねばならないのである。








プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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