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頼むから一人で死なせてくれ

Posted by 高見鈴虫 on 06.2016 日々之戯言(ヒビノタワゴト)
知人の歳の離れた兄弟が脳卒中で倒れ、今は植物人間。
その生命維持装置をいつ外すのか、という決断に迫られて、ってな話を聞いた。
辛い話である。
が、それは多分、もう誰にとっても他人事では済まされないのであろう。

この脳卒中の人。
どういう訳か、倒れる少し前から身辺整理を始めていた兆しがあって、
で、その遺書にはしっかりと、無理して延命処置をするな。
じたばたせずにさっさと死なせてくれ、と書いてあったとのこと。

近年の医療の発達が、下手をすると無理矢理にでもなんとしても、
人工的な生命維持をどれだけ長引かせるか、に焦点が置かれては、
医者同士で競い合っている、なんてところもあるらしく、
全身をチューブだらけにされてまさにサイボーグというよりは糞袋状態。
いったいこんなになってもまでなにを目的の延命か、と、
なんて話をたびたび耳にするのではあるが、
なかなかそう、こと命の問題なだけに、軽々しく物が言えないのも確か。

なんて話をボスにしていたら、洒落者のボスらしく、面白い話を聞かせてくれた。

余命あと数時間と宣告された頑固親父。
さっそく家族が呼ばれて病室のベッドを囲んで涙にくれていたところ、
ふと昏睡から目を覚ました時、頼むから部屋を出て行ってくれないか?というらしい。
こう、ビービー泣かれてはうるさく寝てられない、といつもの憎まれ口をひとつ。
なんだって?せっかく来てやったのに、その言い草はなんだ、と立腹した家族。
馬鹿馬鹿しい、でもまあ、こんな憎まれ口を叩く奴が早々と死ぬものかね、
とみんなで飯を食いにでてしまったところ、
その合間を見計らうように、一人静かに目を閉じた、らしい。
つまりそう、最後ぐらいは一人にしてくれよ、ってことだったんだろうな。
でもなかなか格好良いだろ?とウインクをひとつ。

そう、そういう人もいる。って言うか、
なとなく、男としてはそれが一番正しいというか、
猫じゃないが、死ぬときは一人、行方をくらませて、とか、
俺は畳の上じゃ死なないぞ、とか、
そういうイニシエの美学こそ、こんな時代だから尚更格好良く思えてくるのだがどうだろう。

という訳で、死に際にバタバタしないように、或いは女々しく嘆いたりしないように、
今日一日を思い切り生きる、生ききる、という姿勢、なかなか難しいのは重々承知だが、
そう、忘れないようにしておこう、とは思い直した次第。





プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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