Loading…

NY米系企業内に伝染するBABYMETAL熱

Posted by 高見鈴虫 on 30.2016 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
元はと言えばキッチンで出くわしたプログラマー部門のその男。

既にかなり薄くなり始めたロン毛をポニーテール。
金曜ともなれば、いきなりダブルの革ジャンのバイカー・ルックである。
見ればその尻のポケットにこれみよがしにぶっ刺したスティックが二本。
いくら米系企業のシステム部と言っても、
このあまりにも世間体をぶっちぎった傍若無人なそのスタイル。

思わず面白がって話しかけてみれば、
今なおニュージャージー奥地の自宅の地下室に自前のスタジオを作っては、
いつか世界をあっと言わせる名曲を、と日夜音楽活動に精を注いでいる、という。

なあに、こんな会社、世を忍ぶ仮の姿。
俺は、そう、ミュージシャンなんだ。つまりそう、ライフ・ミュージックって奴。

自宅録音マニアって奴か。
で、ドラムも?と聞けば、勿論、と胸を張って答える。

ギター、ベース、そしてドラム、なんでも自分でやる、とのことで、
やおら手にしたスティック、まるで和太鼓のように鷲掴みしては、
空手チョップでもくれるように拳を踊らせ始める。

まあそれを見ただけで、そのレベルは知れてしまう訳なのだが、
しかし、それでもリズムマシーンだけは絶対に許せない、
なんていう妙な拘りがいかにも時代遅れのロック野郎である。

が、しかし、そう、前述の通り、俺はこの会社においては、
スーツにネクタイ、七三分けに銀縁のメガネ、
絵に描いたような、いけ好かねえジャパニーズ・リーマンである。

そんな俺にすっかり兄貴風を吹かせたこのバイカー野郎。
まあ日本なんてところから来たお前らジャパニーズ、
社畜揃いのお前らには、
ミュージックがどれだけ素晴らしいものか、
なんてことは判りもしないのだろうがな、
人生において一番大切なものは、そう、ミュージックなんだよ、ライフ・ミュージック。

聞けば未だにレッド・ツェッペリンがアイドルであるらしい。

知らねえだろう、昔アメリカにはレッド・ツェッペリンって凄いバンドがいてよ、
そこのドラマーが俺は今でも一番好きなんだ、今度一度聞かせてやるぜ、
なんてことを言われてしまったりもするのも、
つまりはそう、俺のこの変装があまりにも完璧、ということなのだろう。

がしかし、例え別人に変装をくれているとは言っても、
よりによってこの俺の前で、ミュージックがどうの、
なんてことで威張られるのはちょっと癪に触らない訳でもなく、
で、思わず、馬鹿、レッド・ツェッペリンはイギリスのバンドだぜ、
と言い返してしまう。

という訳で、人の居ないのを見計らって、
だったらお前、これできるか?とキッチンのシンクの上、
なにげにタラララ、と片手ロールからパラディドルのコンビネーション、
なんてのを見せてやったのだが、
一瞬見開いた目、がしかし、すぐにチッチッチ、と舌を鳴らす。

なんだよ、お前、鼓笛隊か?と一言。
可哀想になあ、ジャパニーズ。
あのなあ、でもそんなマーチング・バンドみたいなのはミュージックとは言えないんだよ。
やっぱりロックだろう、ロック。
俺の好きなそのレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムってドラマーはな、
などと言いながら、相変わらず空手チョップのような動作でエアー・ドラムを繰り返している。

あのなあ、違う違う、鼓笛隊であろうがレッド・ツェッペリンであろうが、
スティックはこう持って、で、そう、ジョン・ボーナムならハーフ・ノーツだろ、あれはな、

なんてことを言うのも面倒くさく、

思わず、お前、ベビーメタル知ってるか?と聞いた見た。

なんだそれ、ベビーメタル?そりゃお前、ヘビーメタルだろ?
そんなことも知らないのか、ジャパニーズ。
いいか、ヘビーメタルってのは、
とかなんとか要らぬ講釈を始める前に、

いやだから、B-A-B-Y METAL 。ロックやっててそんなことも知らねえのか?

BABYMETAL?聞いたことねえな、とバイカー野郎。
日本のバンド?日本のメタルバンドか?へえ、と鼻で笑う顔がなんとも憎たらしくもなる。

お前なあ、つくづくアメリカのど百姓。日本と中国をごちゃにしてるアホということだろう。

いいか、お前、騙されたと思ってベビーメタル、YOUTUBEを観てみろ。
と、あのスティーヴン・コルベアのLATE SHOWのリンク送って見れば、
音を聴く前から、なんだこれ、ガキじゃねえか、と一言。
学芸会の京劇で曲芸でもやるつもりか?

いやあ、ジャパニーズ、お前らつくづく判ってねえんだな、と首を振っては、
話にもならねえ、とばかりに、じゃな、と向こうに行ってしまった。

馬鹿め、と思わず。
このステレオタイプの田舎者が。アメリカの百姓はこんな奴ばかりだ。
お前は一生に一度の大チャンスをいま不意にしたんだぞ、可哀想なやつだ、
とは思いながら、まあそう、奴の不幸は俺にはなにも関係ないわけで、
とうっちゃっておいて一週間。

いきなりそのバイカー野郎、俺の机を訪ねて来るや、
ぐい、と突き出したその拳、髑髏の指輪の並ぶその無骨な手が、
なんと、フォックス・サインである。

BABYMETAL?



YEAH! BABYMETAL! DEATH!

そっか観たのか、あれ。

観た観た、BABYMETAL!凄い、凄い、凄い。
あれからずっと一日中YOUTUBEでBABYMETALばっかりだ。
凄い、本当に凄い。あんなバンド初めてだ。最高だ。とてつもねえ。まったくとんでもねえぞ!

という訳でこのバイカー野郎。
それ以来、誰彼につけていきなりフォックスサインを突き出しては、
BABYMETAL!DEATH!を繰り返している。

お前、知らないのかBABYMETAL、可哀想になあ。
ほら、このリンク、観てみろ。ぶっ飛ぶぞ。まさに世界最高だ!

やれやれ、なんだか面倒くさいことになって来たぞ、とは思っていたのだが、
そうこうするうち、会議の合間にキッチンで息抜きの珈琲を淹れていたら、
背後にスーツ姿。SVPつまりは部長クラスのお偉方。

あ、どうもどうも、お疲れさまです、なんて挨拶も無しに、
いきなり両手のフォック・マークを胸の前で交わしては、

BABYMETAL DEATH!!

んだよ、気持ち悪いにも程がある、とは思いながらも、
思わず、フォックス・サインを返せば、
いきなり大口を開けてゲラゲラ笑い。
よしよし、それだそれ!そう来なくっちゃ!
と、肩から背中からをバンバン叩き。

おいおい、BABYMETAL、最高だな!
日本人、何をやらしても本当に凄いな。
連日連夜、朝までYOUTUBEでBABYMETALだよ、
とテーブルに投げ出した会議用の資料の表紙が、
なんとカラープリンターで刷りだしたばかりのSUMETALの写真。

思わずCD買っちまったぜ。いやあ、最高、BABYMETAL、本当に最高だ。

聞けばこの部長。
その無骨なつるっぱげの様相に似合わずギターマニアであったらしい。
招かれては無理やり連れて行かれた彼の個室。
その壁にはまさにギターギター、ギブソンからフェンダーから、
ありとあらゆるギターの写真がみっしりと飾られている。
と見ればその真ん中に、いきなりBABYMETALである。

SU-SAMAは本当に可愛いな。
YUI-CHANもMOA-CHANも大好きなんだが、SU-SAMAは本当にクィーンの風格がある。
いやあ、ははっは、俺はもう大ファン。夢中。頭ン中そればっかりだ。
で、お前は誰が好きだ?やっぱりSU-SAMAだろ?え?誰が好きなんだ?

スーサマ?誰だそれ、と思えば、そうか、SU-METALをスー様、と呼んでいる訳か。

スーサマの声を聴いていると思わず涙が出てくる。本当に感動する。
いやあ、オリエンタルの娘があれほどまでにセクシーだとは思わなかった。
スーサマを見てると、うちのかみさんが野獣に見えてくるぜ。がっはっは。
BABYMETAL、まさに宝石だ。ルビーとサファイアとダイヤモンドだ。
フィギュアとか無いのかな?俺は全部買うぞ。BABYMETALのものはすべて買い占めてやる。
そう言えば俺、TAKAYOSHI OHMURAのシグニチャーピック、買っちまったよ。
本当はMIKIOのも欲しいんだが、どこを探しても見つからないんだ。日本には売ってないのか?
とかなんとか、ここまでくれば立派なコレクター、マニアである。

でそう、BOHがWEBでインタビュー番組をやっているそうだな。
WEBCAMの前でベースを弾きながら解説ををしているんだが、日本語ばかりでどうにも判らない。
お前、あれ、ちょっと訳してくれないか?と言われて思わず凍った。
なぬ?あのBOHのニコ動を通訳?それって仕事ってことか?
パワポでプレゼン用の資料にでもまとめろとか言い出さねえだろうな。

という訳で、いきなり会社中に伝染しつつあるBABYMETAL熱。

一見してゴッドファーザーもぶっ飛ぶような強面イタリアン・マフィア風情のおっさん達が、
鼻歌まじりにGIMME CHOCOLATE。
廊下ですれ違いざまにフォックス・サインを翳しては、
BABYMETAL DEATH!とはしゃいでいる訳だ。

いやあ、アメリカ人、無邪気なものだな、とは思いながら、
しまった、5月4日のニューヨーク公演、
危うく夜勤のプロジェクトを押し付けられそうになった手前、
会社には、健康診断に行く、と言ってばっくれた訳だが、
もしや会場でばったりあってしまったりしたら、どうしたら良いのか。

クソッタレ、俺としたことが下手踏んじまったな、と今になって悔やまれるばかりである。




  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

月別アーカイブ

検索フォーム