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センチメンタル・ベビーメタル 〜 リュウという男

Posted by 高見鈴虫 on 28.2016 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
深夜をかなり回った頃になって、
リュウからひょっこりとメッセージが届いた。

ったくやってらんねーよ

リュウは株屋である。
はっきり言ってこの世でこれほどまでに嫌な奴はいねえ、
というぐらいまで、
徹底的に虫の好かねえ野郎である。

そんなリュウと俺の付き合いは、
奴が筋金入りのニューヨーク流民で、
そしてトンスとJBの大ファンである、
というだけの腐れ縁。

ただ、まったくこのリュウという男ほど、
心底無茶苦茶な奴は見た事がない。




例えば、

飲もうと言うので、いいぜ、と返せば、
男二人ではつまらねえ、とかなんとかで、
女を連れて来いという。
女ならてめえが腐るほど知っているだろうとは思うが、
リュウの連れてくるその女たち。
思わず鼻血どころか
脳梁そのものが吹き出してしまいそうな絶世の美女、
勿論プロ、商売女な訳である。
好きなの持って行きな、と顎をしゃくられても、
チップだって払えはしない、
そんな恥をかかされるのはもう真っ平だ。
たまには日本の普通の女の子と普通のお喋りがしたい、俺癒やされたいの、
とかなんとかとほだされて、
だったらと彼氏と別れて泣いてばかりいた金欠ギャル系、
カタギなんだ手を出すなよ、と言ってるそばからその場で食われた。
隣りに座ったロシア系なんてのと実はおスシが大好物でそのカミカゼ・ダイキリってのちょっと一口間接キッス。
なんてやっていたその隙にふと姿を消したリュウとギャル系。
外にヤニでも食いに出たのか
まあいいや構うことはねえそれでそのロシア系のアンナちゃんお住いはブルックリンいやあ奇遇ですねボクもスタジオがブルックリンでこんどご一緒にそこ防音処置もしっかりと、
なんてしていたところをひょっこり帰って来てから、
さあ飲み直そうぜ、と新たなグラスで乾杯してでどうなんだよお前最近よお、なんて話を始めたところ、
ねえとギャル系が耳元で。
トイレでやっちゃった。ちょっと痛かったけど、むふふ。
ギャル系はその夜、しっかりリュウの車にきゃっきゃとはしゃいで乗り込んでは、
百億ドルの夜景を独り占めする、一夜のヒロインの一丁上がり。
そう、リュウはそんな男なのである。

リュウは流民である。
親も兄弟も知らぬままガキの頃から出たり入ったり。
あれそれは入れたり出したりの間違いでとかなんとか言いながら、
お勤め先は普通人ならちょっと腰抜かす某超巨大金融企業。
んなところでてめえみてえな奴がと聞くだけ野暮でその見るからに超人ハルク。
下手に気張るとスーツが裂けてという全身岩のような筋肉バカ。
仕事もしねえで毎日朝から会社のジムでくだまいてばかりなのだろうが、
そんな奴でも例の2008年のサブプライムあたりまではなんだかんだで羽振りも良かった、
コンドミ買ったぜペントハウス。ポルシェ買ったぜフェラーリ買ったぜ農場買ったぜビーチ買ったぜクルーザーヨットはまだなのか。
このまま行けば江ノ島ぐらい行って帰って来れそうどころかそれこそ買い取れるぜ、
なんてことをマジ顔で言っていたこの糞野郎。

本の一冊も読んだこともねえどころかいまだに頭の中は唯一の愛読書つまるところの矢沢永吉成り上がり。
中身もろくに読まないうちから世ノ中銭ダだけを御題目にいつしか海を越えてこの始末。
犬でもあるまいに何から何まで徹底的な二元論。
上か下か高いか安いか勝ちか負けか白か黒か丁か半かで切った貼った。
人を見ればこいつ金持ってるかとしか思わない、
まあそんな徹底的にどうしようもねえ屑野郎。
つまりはミスター・ウォール・ストリート。

だがそんな時代も夢のあと。いまとなってはしがないノミ屋。
どこぞの金を預かってウンヨーしては右に左に小銭稼いで口に糊する赤貧暮らしと愚痴りながら、
たかが一億二億で汗水垂らして俺もヤキが回ったもんだぜと。
でそのカモはどこから見つけてきたんだよなんて本当においしいことは一言も洩らさず、
そんな時だけはちょっと眼球を入れ替えて、
聞きてえんなら教えてやるがもしもん時には大人しく死ぬ気はあるんだろうな。
まあなんだか知らねえがそんな奴だよ。
このままふっと姿を消しても誰も不思議に思わない、
つまりはそんな奴。
筋金入りのニューヨーク流民、そんな野郎。

ちなみにリュウのりゅうはドラゴンの龍ではなく漢字一文字ヤナギの柳。
ああザイニチのチョーセンのああそういうことかああそういうことだとニヒルに笑うこの出たり入ったり。
まあ俗に言うところの泣く子も黙る的なこのリュウが夜も過ぎてひとりにさせとくと泣き言ばかりのオンパレード。
うるせえったらねえと放っておけば知らず知らずのうちに俺のIPHONEは怨歌の呪文で溢れ返り。
なんか元気の出るものねえのか。それはおめえが一番知ってるあのパーンと一発リポビタンじゃなかったなんだっけ。
そういや前に俺がそんなことを言った時にはああだったらこれでも見てろよと送って来たのがエロサイト。
最近この子その前この子でもやっぱりこの子はどうしてもでイチオシは。。
あのなあ俺は仕事に疲れたって言ってんだよこの世界のあり方に根本的に疑問を抱いたってんで別に人生に疲れた訳じゃとは言いながら、
えええ、これみんなAV女優さん?まさか嘘だろこんな可愛い子がこんな若くてこんなのがこんなことまでしちゃうされちゃうAV女優さん?
いやあ日本どうなっちゃたんだよもしかしてあべのなんたらは全部嘘八百或いは一から十までてめえらの都合ばっかりで一皮捲れば猫も杓子も餓死寸前。老いも若きも棄民女はみんな断末魔の大安売りの叩き売り、なんて、そりゃおめえひところのピンだタイだベトナムだ。
いやあ参った参ったおいお前次の休みいつだそん時には一緒にこのおねえさんの救済に、と打ち始めたメッセージ。あれ返答がねえ。
つまりはそんな奴。何から何までてめえの都合だけ。

としたところ今夜のリュウはちょっとまじめに元気がねえ。
やってらんねえ、まじで。この街もこれまでか。ああ俺もう終わったなもう一切合切終わりにしてえああ死ぬ前に一度だけでも日本に帰ってこの子と一発だったらこっちとも一発その前にこれとも一発。。

そんな会話がうざったくてほったらかしたまま、ってのもつまらなくて、

ほらよ、と送ったリンク。

BABYMETAL DEATH!

ん?んだこれ。

日本のバンドが遂に世界をぶっ飛ばしたんだよこの野郎。

んだこれニューヨーク?

そーだよそのニューヨークだよテメーも誘ってやったのにしかとこくからだぜバータレが。

ガキじゃんかよ。

アイドルってんだよ21世紀。

凄えな。

ああ凄えよ。まじでトンスよりJBよりヤザワよりショーケンより凄え。

ごたごた御託はいいんだよ。今度いつやんだよ。

いまは世界ツアーでヨーロッパで帰ったらトーキョードームだ参ったか。忙しいんだよ誰でもな、

といきなり、じゃな、とメッセージ。
その後は。。無音。。。

馬鹿野郎が。
ったくこいつは本当にテメエの都合でしか生きてねえ糞ったれで。
ただそう、どんなに嫌な野郎でも、筋金入りの流民野郎、つまりはニューヨーカー。
世界を相手にたった一人で喧嘩を仕掛ける、そんな野郎。その一人。

そんな奴らに、BABYMETAL、まさにてきめん。
猫にマタタビ流民にベビーーメタル。

ちゅうわけで、仲間が増えたぜベビメタ・メイト。

まあ俺のダチなんざそんなどうしようもねえ奴らばっかりなんだがな。
つまりはそうニューヨーカー。

ただひとつ言えるのは、
そう、てめえでヤマを踏んだ奴にしか、
そこで心底びびった経験のある奴にしか、
つまりはリスクを負った奴にしか、
こいつらの凄みは判らねえ。
舞台袖から良いの悪いのぶつぶつと言ってるだけじゃあ、
このポニーテールの大親分。
この子の魅力にはいつまでたってもこれっぽちも近づけねえ。
そう思わせてくれるベビーメタル。

たぶん、ユイだな、とほくそ笑む。
あの野郎のことだ。あの糞面食いの実はちょっとロリ入った思い切りセンチメンタルなあの野郎。
バータレが。今頃せいぜいハマっていることだろう。

と今となっては立派な経験者ヅラのこの俺。
まさに疫病だなこのベビーメタルって奴。

まあしかし、何があったかは知らねえが、
ベビメタ聴きながら笑って死ねるなら、
それはそれで本望ってやつだろ、罰だよ業だよ天罰だよ。
レストインピース!
俺知らね。

そうニューヨークだ。
一人で勝手に生きて、
一人で勝手にくたばる、
そうそんな街。

ただそんな街に、
このベビーメタル、
異様にマッチして溶け込んで、
沁みる。

ニューヨーク、
世界中の人種が一度に犇めき合う末期的な雑踏。
人間という種の全ての体臭が蒸せ返る地下鉄の中。
エゴがエゴのまま軋轢が軋轢のまま矛盾が矛盾のまま問答無用にぶちまけられるそんな街。
そして今日の戦場を生き抜いた孤独な戦士が、一人の迷い子に戻る時。
見渡す窓に摩天楼。
流れ流れて辿り着いたこのかりそめの場所の、その虚ろな時間の狭間。
行く場所も帰る場所も失ったまま、
明日がどうなるかなど誰にも知れない、そんな浮気なこの街で、
今日の神様明日の神様、知った事かよそんなこと。
ただそうこの一瞬だけは、
天使の戦歌に浸らせてくれ。

ダウンタウンのペントハウス、
壁一面に広がる百億ドルの夜景を見つめながら、
ああここから飛び降りるのはいつの日か。
ニヒルな薄笑を浮かべては一人グラスを煽る、
その孤独な溜息が、聞こえて来そうなそんな夜。

そんな俺たちとって、
このBABYMETAL、
どれほどまでに胸に沁みるか、
独りで生きてねえ奴には、判るまいぜ。
俺だけのBABYMETAL。
俺だけの、ポニーテールの大親分、その本当の歌声を。

ってな訳で、
おさんの浪花節はもう沢山だ。
俺は勝手に、今夜も寝るまで、
BABYMETAL
明日も朝から
BABYMETAL DEATH。

大丈夫だよ、どうせなるようにしかならねえさ。
幸せになろうぜ、何があっても。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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