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男のズボラ飯 そのに ~ メタボ退散! いくら食べても太らない魔法のご飯 HATZGER GENMINE 

Posted by 高見鈴虫 on 25.2016 ROCKを葬り去る前に ~ 大人のダイエット奮戦記   0 comments
以前は、かみさんがいなくなった途端に、
食欲の失せてしまう俺は、
それだけで痩せ細っていた覚えがある。

そんな俺を、ドリトル先生に出てきた犬、
と笑う輩もいたが、
いや、真相はそういうことではない。

かみさんがいなくなった途端に、
飯を食う、その行為そのものが、
やたらと面倒くさくなるのである。

だが腹は減る。
腹は減るが、ものを食うのが面倒くさい。

チップスとかが手元にあれば、
それをぐしゃぐしゃと叩きつぶしては、
がっと袋から直接に口の中に流し込んで、
なんてことをしていたのだが、
チップスが手元になければ、
それを買いに行くだけでも気が遠くなる程に面倒。

近年とみに、中年太りとの終わりなき追いかけっこに食傷気味の俺である。
かみさんが外出するとこれ幸いに、
この機会を逆利用、一挙にがっと体重を絞って、
という目ざとい目算がなかった訳ではない。

ただ、人間、犬と同じで腹が減ると気が荒くなる。
しかもかみさんという抑止力から開放された俺である。

途端に先祖返りが始まっては、
それを見透かしたかのように、
次から次へと妙な輩が因縁をつけてきては、
そんなアホどもをいちいち面白がっては相手をしてしまうものだから、
事態はますます悪化の一途。
あとは落とし穴にはまるだけ、という月並みなどツボのパターンである。

という訳で、かみさんはその対策として、
自身が家を開ける期間分の飯を、
予め用意しては冷凍しておく、
という荒業に出た。

これ、そのままレンジに入れて5分間、
ただチンすればいいからね。



という訳で、
かみさんがいなくなった途端に一挙に野獣化する、
という事態は免れるようになったのだが、
俺はとことん、貯蔵という概念に疎い人間であるらしく、
あれば、あるだけ、食べてしまう。

そんなことから、かみさんの用意していった飯は、
その予定期日の半分も経たぬうちからからっぽ。

結果として、やはり、かみさんが帰って来たときにはお腹ぺたんこで、
しかも立派な青タンまでこしらえている、ということになり、
これにはさすがにかみさんもブチ切れた。

あんた、もう、いい加減にしてよ。

バカタレ、仕事はちゃんとしてんだぜ。
仕事さえちゃんとしていれば、
外で何をしようが知ったことじゃねえだろが。

あんた、そのうち、本当に警察に捕まるよ。

まさか、俺がそんな下手を踏むわけはねえ。

とは言うものの、
そう、たしかに俺自身、
こんなことをしていたらそのうち本当に警察のお世話になるのでは、
ぐらいは、既に予感がしていた訳で、
さすがにかみさんである、
俺の胸の内を見事に言い当ててくれる。

とまあ、そんなことが云十年も続いてきたのであるが、
ここに来てようやくというかなんというか、
遅ればせながら自律の美学に目覚めざるを得ない状況に陥るにあたり、
自分でも一応は米ぐらいなら炊ける、ぐらいの修行はつんだつもりではあるのだが、
その反動として、
かみさんがいなくなった途端に太る、
というおかしな事象に遭遇することにもなった。

俺って奴は、ろくなものも食ってねえのに、なんでこうブクブク太りやがるのかな?

原因には薄々感づいていた。
そう、俺はかみさんがいなくなった途端、
食欲が失せる、と同時に、便秘を患っていたのである。

つまりはそう、この便秘が原因なのだろう、と、
便秘解消のためにと水ばかりをガブガブ飲んでは、
馬のような小便を垂れ続けてきたのだが、
その科学的な根拠に基づかない愚行にはやはりまったく効果がない。

で、改めて聞いてみれば、
え?ご飯の違うの?

そう、かみさんからは普段から、
なにか生臭い玄米、
のようなものを施されていたのには気づいていた。
ただ、なにごとに関して、食事に文句を言うことだけは差し控えてきた俺である。
出されたものをありがたくいただく、それだけが俺の美徳でもある訳だ。

ただそう、あの生臭いご飯がいったいなんなのか、
ちょっと聞いてみたい気がしていたのも確かである。

ただ、もしかしたらそれ、
麦とか、ヒエ、とか、アワ、とか、
つまり我が家の家計は、知らないのは本人だけで、
実はかなり危機的な状況にあり、
かみさんが必死でやりくりによって、
絶望的な延命を続けているだけなのか?

もしそうだとすれば、一言でも、
そんな迂闊な言葉を発したが途端、
待ってましたと地雷が炸裂。
なんだって?人の気も知らないで、あなたねぇぇぇ、
そう、俺だって馬鹿ではない。
自らみすみすとそんな罠に嵌ってなるものか。
男たるもの、家のことはなんにもやらない、
のは、これは男の習性であるからしかたがないとして、
この男の習性、その、領分を守るためには、
女のやることにはいっさい口出しをしない、
そう、口出しだけはしない、それがまさに鉄則、
なのである。

という訳で、
かみさんがいなくなった途端に、日頃食しているその生臭い玄米から解放された俺。
さっそく日系スーパーで、錦やら、田牧米やらの、俗に言う銀シャリを買ってきては、
うへえ、やっぱり、銀シャリ、最高だべ!
と思わず横浜地元民言葉に先祖返り、
していた訳なのだが、
しかしながら不思議なことに、
この日本人固有の銀シャリ、
どういう訳かこれをありがたくいただけばいただくほどにむくむくと太り始める俺。
どうしてこれだけの食事で太ることになるのか。

つまりはこれ、まさに、いま話題の、糖質、という奴であらう。

そう、日本が世界に誇る銀シャリ、つまりは日本の白飯。
その源であるコメ。
まさに日本のこころであり、その生活の原点。
この美味しくて保存が効く夢のようなスーパー・エナジー食。
まさに栄養の塊り。
これがしかし、現代社会という、極端に肉体的な運動量が必要とされなくなった世界においては、
逆にこのあまりにも優れたその品質がアダになっては、
つまりは、食い過ぎ、ぶっちゃけ、オーバードーズ、してしまうことにもなりうる。

という訳で、今回のこの突如に訪れた長丁場である。
そうそうと銀シャリばかりを食らっては、
無様なメタボに成り下がるのはちょっと癪に触る。

ただ、嘗てのパレオダイエットのように、おかずだけで腹いっぱい、
などというバブリーな高揚感もいまとなっては皆無に近く、
かと言って、あの、あのウルトラ健康スープであるところの玉ねぎデトックス。
しかしながら、あの匂いである。
髪の先から爪の先まで、強烈なオニオン臭を、現在の職場においてこれでもか、
とふりまくことは、まさに自殺行為。
どこでなにを言われるかわかったものではないのである。

という訳で、いったいどうするべきか!?・・・

ああ、それ、とかみさんが即答した。
生臭い玄米?それはね、発芽玄米って言うのよ。

発芽玄米?ハツガ・ゲンマイ・・ HATZGER GENMINE
なんかドイツ語みたいだな。なんだそれは!?

改めて発芽玄米である。

ひとたび、この、ハツガー・ゲンマイ:発芽玄米と検索をかけた途端、
女性向けの美容系WEBにこれでもかと並ぶその効用の山。

で、その謳い文句こそが、
「いくら食べても太らない、栄養満点の魔法のご飯」

栄養満点でありながらいくら食べても太らない?
なんのこっちゃ、と。

ただ確かに、かみさんが居るときには、何も考えること無く、
腹いっぱい食べて、食べ尽くしても、さほど体重に変化がなかった筈が、
この、発芽玄米から銀シャリ天国に移行した途端、むくむくと太り始める、その不思議。

つまりはそう、この発芽玄米。
その効用は確かなようである。

という訳で、
俄に始まったこの肥満、そして、長引く便秘を前に、
ついに俺も、その発芽玄米とやらを自力で作成する必要に迫られたのである。



作り方?簡単よ、とかみさん。

日系グローサリー行くのが面倒なら、
フェアウェイの二階のオーガニック食品売場で、
ショート・グレインのオーガニック・ブラウン・ライスを買ってくる。

カップに三杯、
軽く洗ってトレイに入れて、
水に浸しておけばそれでいいの。

朝に水を替えて、会社から帰ってまた水を替えて、
で、寝る前に水を替える。

二日たったら、あの生臭い匂いがし始めてくるから、
そしてたらできあがり。

そのまま炊けばいいのよ。

ただ、水は四合分のメモリのところまで入れてね。
お米三合、水は四合。
それでできあがり。

魔法、というわりにななんともあっけない。

ただ、水を替えるのが面倒くさい。
あとはそう、三日目にになると、とたんに変質を始めるそうで、
きっちり二日、これを覚えていられるかどうか。

まあよい、米を買ってきて水に入れておけばよいのだろう?
なんとなく理科の実験のようで面白そうではないか。



という訳で、お自作発芽玄米
ぶっちゃけ、この理科の実験っぽいってのが妙に気に入った。

さっそく言われた通り、フェアウェイに出かけ、ゲンマイ、玄米、と探し始める。

ただ、そう言えば、オーガニックでないと芽が出ない、と言ってたっけな。

そう、オーガニックでないと芽が出ない、そうなのである。
ってことは、オーガニックでない玄米ってのは、いったいなんなのか?
そう考えるとちょっと恐ろしくもなるが、
この話題、つまりは、食の恐怖、という話題に関してだけは、
ちょっとシャレにならなくなるのでここでは割愛。

そう、四の五の言わずに言われたとおり、
二階のオーガニック食品売り場。

で、探すのも面倒くさく、
通りかかった店員に、おいこら、と聞いてみたところ、
ほらよ、と、あっさりと指さされたその魔法のお米。

ショート・グレインのオーガニック・ブラウン・ライス。
32オンス=900グラムで、6ドルなり。
ただ、発芽玄米そのものだと、なんと、1KGで、12ドル。
つまりは倍額である。

この男やもめの非常事態時、早々と贅沢ばかりはしていられない。



という訳で、さっそく実験に取り掛かる。

と言ってもやることは簡単。

計量カップ三杯分のオーガニック・玄米を、
30センチ四方のトレイにぶち撒け、

上からジャバジャバ水を注ぎ、

おっと、洗うの忘れたか、と思ったがまあ良いじゃねえか、
堅いこと言わねえ言わねえ。

で、呼吸の為に蓋を半分だけかぶせ、

あとは放置プレー。

としたところ、
一日過ぎた辺りからにわかに、
あの妙な生臭い匂いが部屋中にたちこめ始め、
そう言えば、水を替えねば、と見るや、
ちょっと不気味に白濁しては淀みはじめた水。
これ、もしかして腐ってんじゃねえのか?
ってな疑問を抱きながらも、

二日目を迎えたところでは、
淀んだ水の中にメタンガスのような気泡がプクプクと上がってくる。
なんともこれ、まさに有機体による代謝の実例そのもの。
なによりもこの、いまにもオタマジャクシでも泳ぎ始めるか、
と思うほどの強烈な生臭臭である。

で見れば、米粒のそのひとつひとつに、
白い小さな角が顔を覗かせているではないか。

なんかこの玄米、本当にこのまま泳ぎ始めそうだな。

でその発芽の始まったばかりの玄米ちゃんたち、
そのまま水で洗っては早速炊飯器にぶちこんだのだが、
たしかにその量、乾いていた頃の二倍近くに膨れ上がっているようで、
これってもしかして、水でふやけたってことよりも、
まさに玄米一粒一粒が成長を始めた、ということなのか?

で、言われた通りに水を四合分、
ちょっと多めに入れて、スイッチオン。

で、いつものようにすっかり忘れて犬の散歩などに出かけたところ、
帰ってみれば、部屋、というよりも、もう、エレベータから廊下に降りたところで、
んじゃこりゃ、というぐらいにまであの生臭い臭が溢れ出ている。

ドアを開けた途端、
待ち構えていたように、鳴り響いたキラキラ星、の電子音。

とたんに犬が、飯だ飯だ、と大騒ぎ。

さっそく蓋を開けてみると、まるで、
早朝の浜辺のように、蟹の穴がポコポコと開いている。

できたできた、できたじゃねえか。

で、さっそくその炊きたての発芽玄米、
犬用には、チキンの挽肉と混ぜ合わせ、
そして俺用には、もちろん納豆と豆腐とそして海苔である。

なんかやはり、普段のあのかみさんの作る生臭い玄米に比べ、
ちょっと柔らかみにかけてはポロポロと溢れるのが玉にキズだが、
まあそう、食べれないこともない。

おお、できたな、ハツガー・ゲンマイ。

これがあれば、幾ら食っても太らない、ってことなのか。

これでついに、かみさんの居ない日々のこの殺伐とした飢餓感からも開放される、ということか。

なんだ、その気になれば割りと俺もやるものだな・・・

そのうち本当に、かみさんなどいらない、
などと、本気でそう思えるぐらいのなんでも人間、
なんてものになってしまったりもするのだろうか・・

ただそう、そうなったらなったで、
なんとなく、侘しい気がしないでもない。

そう、人間、不完全であるから可愛げがあるのである。

不完全であるからこそ、互いが互いを必要とするのである。

不完全な中での止むに止まれぬ必要こそが、
コミュニケーションの基本なのである。



という訳で、出来上がった三合、
ならぬ、四合分に水増しされた発芽玄米。

そういうことであれば、
この発芽プロセスにおいて一合分の増量が見込める訳で、
それはそれでかなりコスパがよくねえか、と。

でこの一合を俺と犬で一食分、と考えれば、
これでつまりは、四食分、つまりは、二日分、ということか。

つまり、出来上がった日にまた新たな発芽玄米を作り始めれば、
飯がなくなったころに発芽が始まっては炊き時となる、と、
そういう計算であるらしい。

という訳で、できたできた発芽玄米。

なんともほっこりとした気分である。



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プロフィール

高見鈴虫

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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