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史上空前の「男の花道」 ~ フェデラー 対 ナダール 人類最高の頂上決戦を見逃すな!

Posted by 高見鈴虫 on 28.2017 テニスねた   0 comments
男の花道、という言葉がある。

老兵は死なず、ただ消え去るのみ、
とは言うものの、
そう、去るに去れない、
それほどの栄光の姿を、
人々の魂に刻み込んでしまった嘗ての英雄たち。

その英雄が、歳を負うなかで、
闘志に溢れた若手たちに、打ち倒されていく姿。

だがしかし、その去り際にこそ、男の美学、その真髄があるのだ。

俺がこの人生を通じて敬愛し続ける、
あの、スケベ爺い、じゃなかった、
そう、偉人の中の偉人、炎の男:輪島功一。

年老いたチャンピオンが、滅多打ちにされ、
息も絶え絶えの血みどろになっては、リングに這いつくばり、
倒されては立ち、立っては倒され。

嘗て輪島功一は、その生涯最後のリング、
そうして滅多打ちにされることを知り抜いた上で、
その地獄のリングサイドに、始めて、妻と、そして子どもを招いた、と聞く。

たとえお父さんが滅多打ちされても、血みどろになっても、
たとえどんなに不様な姿を晒しても、決して目を反らしてはいけない。
お父さんが打ち倒される様を、最後の最後まで、見ていて欲しい。

予想通り滅多打ちも滅多打ちにされ続ける輪島功一、
その飛散る血潮が、妻と、そして子どもたちに降り注ぐ。

そんな地獄の様を、そんな、言ってみれば格好悪い姿を、
何故に、輪島功一は、家族に見せようとしたのか。

幼き頃、この疑問と戦いながら、
そして今になって、俺には判る。
そしてそんな人であったからこそ、その後の輪島功一があるのである。

幼き頃はなにかにつけて謎ばかりであったこの輪島功一という存在。

引退後は予め用意されていた筈のその元チャンピオンの栄冠、
その全てをかなぐり捨てて、いきなり始めた商店街の団子屋。
朝一番に起きては、犬の散歩がてらに公園のゴミを拾い、
モップを片手に駆けずり回っては、練習生たちの脱ぎ散らかした靴を揃えては、
照れ笑いに肩をすくめて、どうもどうも、と手をふるあの姿。

そのあまりにもチャンピオンという名前からかけ離れた姿。
巷の君主論、リーダーの心得的な王様哲学、
その全てに真っ向から対抗する、そのあまりにも赤裸々な人間像。

そんな生き様の中に晒された、その男の心得、その極意。
今もなお、俺の心に深く刻み込まれた、その金言の数々。

そしていま、俺の中では、まさに、トラウマ、から、
すでに金字塔的なまでに象徴化された、
滅多打ちにされてリングに這いつくばった、あの老いたチャンピオンの姿。

その輪島功一が、自らが演出した、あの血に濡れた男の花道、

この歳になって改めて、そのあまりの偉大さに、熱いものが込み上げてくるばかりだ。



という訳で、そう、そんな未曾有のドラマ、
早々とそんなもの、世の中で出会える筈もない、

ただそう、しかし、そういう物が、実際に起こってしまう、というのも、
この世の奇跡、つまりは、そう、生きる喜び、でもある。






嘗て、王者の中の王者、と謳われた男がいた。

彗星のように現れては、
それまでのチャンピオンというチャンピオンを一人残らず打ち倒し、
その歴史という歴史の全て塗り替えては不動の王者として君臨した、
まさに、キング・オブ・キング。

そのキングに、果敢に挑戦をし、
その結果、完膚なきまでに打ちのめされては、
生涯、忘れることのできない生き恥を晒された若き勇者。

その人生の全てを賭けて、この王者、この王者一人に打ち勝つために、
挑んで挑んで挑み続けた天才児。

倒されては立ち、また倒されては立ち向かい。

その二人の壮絶な戦いは世界を熱狂の渦に叩き込み、
そして遂に、2008年ウィンブルドン、
フルセット、五時間にも及ぶ死闘の末、
既に日の落ちた暗がりの中、遂に遂に、王者が崩れ落ちたその瞬間。

テニス界は言うに及ばず、スポーツ界の、
あるいは人類の歴史上、例を見ないほどのドラマを演出した、
この二人の偉人。

ロジャー・フェデラー そして、ラフェエロ・ナダール

十年近くの長きに渡り、ファイナルといえばまさにこの二人、
マッケンローとボルグに変わって、新たにテニス界の代名詞となった、
この二人のあまりにも壮絶なその戦いの様が全世界を熱狂させ、
試合のたびに声が枯れるまで泣き喚いては、
テニスコートは、感動の渦に包まれていたものだ。

そして長き長き時が流れた。

そしてジョコビッチが現れた。
そしてアンディ・マレーが現れた。
そして、ラオニッチが、そして、デミートロフが、
そして、我らが錦織圭が。

そんな新しいドラマの中で、
寄る年波には勝てず、この二人の嘗ての王者も、
今や若手の影に隠れては、その勇姿を見ることも稀。

この二人によって爆発的な人気を拡大したテニスというスポーツが、
いまや新たな英雄たちの土壇場として、熱き歓声に包まれている。

そして、ロジャー・フェデラーとラフェエロ・ナダールである。

あの勇姿を、あの鬼気迫る程の死闘の様をつぶさに見つめ続けてきた、
このテニス界の老害の一人として、
しかし、このあまりにも偉大な英雄たちのその勇姿、
最後の最後に一度だけでも、あの王冠を手にした晴れ姿を、
目にしてみたい、それまでは、死ぬに死にきれない、
そんな熱いテニス馬鹿たち。

そう、その最後の一絞りの情熱を持って、
この二人の頂上決戦、その姿を見てみたい、
そう願い続けていたのは、俺だけではなかった筈だ。

だがしかし、
だがだがしかし、

ことにこの、テニス、という心体のその極限で鬩ぎ合うあこぎがスポーツに置いて、
そんな心情は、そんな温情は、そんなセンチメンタリズムは、
決して決して、這入る隙などあるわけもない。

そう、強いものが勝つ。
そして、勝ったもののみが、その王冠を頭上に掲げることができる。
それこそが、この勝負師の世界での唯一絶対の真理。

そんな土壇場の戦いの中で、だがしかし、思わぬ風の吹き回しから、
あまりにもあり得ない程のドラマ、そんな奇跡も、ない訳では、ない。



という訳で、改めて、今回の全豪オープンにおいて、そんな奇跡が、
あまりにも出来すぎた、出来すぎるぐらいに出来すぎたそんな奇跡が、
いままさに、起こってしまった訳である。

ジョコビッチ、そして、アディ・マレー、
この絶対王者に君臨してきたふたつの巨塔、
その巨塔が、前哨戦においてまさかの敗北を喫した後、
この全豪大会の場が、いきなりの修羅場と化した。

その血で血を洗う土壇場を勝ち抜いて来たのが、
まさにそう、嘗ての絶対王者であったこの二人、
ロジャー・フェデラー と ラファエル・ナダル。

改めて、何が悲しくて、三十歳を疾うに過ぎた、
そんな、嘗てのチャンピオンたちの戦いを見させられなくてはいけないのだ。

そんな戯言は、そんな老いた元チャンピオンたちが、
どんな軌跡を経て、この最後の最後の勝負にたどり着けたのか、
それを思い返して欲しい。

既にシード17にまで落ち込んでいたこの嘗ての王者・ロジャー・フェデラー。

三回戦において既に嘗ての宿敵たる、あの最低最悪の吸血鬼男:バーディッチと当たり、
そして、忘れもせぬ四回戦では、あの錦織圭とのフルセットの死闘。
世界ランキング第5位の、この正真正銘の優勝候補選手を相手に、
最早、棺桶に両足を突っ込んだ、そこまで追いつめられながら、
その執念、それだけを頼りに遂に遂に奇跡の勝利を毟り取った、あの姿。

そしてセミファイナルにおいては、嘗ての盟友、あるいは弟分、
いまや、押しも押されもしないグランド・スラム・チャンピオンの風格に溢れた、
スタン・ワウリンカとの、またしても心身の限界に挑むようなフルセットの死闘。

かたや、ラファエル・ナダル。

フェデラーという絶対王者打倒の為に、命を削り続けて来たこのスペインの貴公子、
世界最高の闘牛士の名声を恣にしてきた、まさに、美貌のスーパースターであった男。

ただ、そんなラファエル・ナダルも、数々の醜聞、あるいは心なき中傷から、
そしてなによりも、その限界にまで痛め続けてきた身体の疲弊の中で、
度重なる故障に次ぐ故障の中で、いつしかその姿は、
嘗ての貴公子の姿が哀れに思える程にまで草臥れきってしまってはいた。

そのラファエル・ナダルが、まさに、奇跡のような復活を遂げた今大会。

三回戦において嘗てのセミファイナリストであったバグダディスを倒し、
そし四回戦では、フランスの暴れ馬・シード6に位置する、
ガエル・モンフィスとの死闘を制し、
そして遂には、若手三羽烏の一人、
錦織と並んで優勝候補の筆頭に上げられていたラオニッチを撃破。
そして昨晩の準決勝において、
若手選手の中では最後の牙城であったデミートロフ。
嘗てはポスト・フェデラーのその筆頭として上げられていたこの天才児。

錦織、そして、ラオニッチの躍進の影で、出遅れた感のあったこの天才児が、
遂に遂にその実力の全てを開花させた今大会。

そんなデミートロフを相手に、まさに五時間にも渡る死闘を演じたこの老いたる闘牛士。

ロジャー・フェデラー そして ラファエル・ナダル

両者ともが、そんな死闘に次ぐ死闘の果てにたどり着いたこの決勝戦。

まさに出来過ぎ、出来すぎるぐらいに出来過ぎた、
まさにドラマ、ドラマチックすぎるほどのドラマ、そのもの。

いやあ、人生の中で、こんなことって、本当にあるんだな。
今更ながら、この人生の不思議を思いながら、

このまさに、頂上の中の頂上対決。

血と涙と、執念とプライドと、栄光と挫折と、そして、そう、男の花道、

その全てを凝縮した、人類史上、まれに見るドラマの中のドラマの幕が、
いままさに、切って落とされようとしている。



以前の駄文の中で告白したように、

年老いた元チャンピオンが、
若き天才の中の天才に滅多打ちにされる中で、
その若き天才の才気に覚醒を促されては、
史上稀に見る土壇場のドラマを展開する、

そう、あのベビーメタルと、そして、ガンズの対決の中に、
そんなドラマを夢見なかった訳ではないのだが、

結果はこれ、であった。

つまりはそう、戦いそのものが陳腐なぐらいの、
まさに、若き天才の圧勝に次ぐ圧勝。
最早精も根も尽き果てた感のあるその醜態の様を前に、
老兵は消え去れ、未来あるのみ、
と、解脱を勧めて来た俺ではあったが、

そう、そんな茶番じみた筈のドラマが、
いきなり、そう、このテニス界において、
巻き起こってしまった、というのも皮肉な話である。

最後の最後に、この老醜極まりない、だがしかし、
老醜であるからこそ成し得る、この奇跡の復活戦、

そこに秘められた、嘗ての王者の、凄まじいばかりの執念、

そのドラマを、見逃す手はない。

改めてこの、ロジャー・フェデラーと、ラファエル・ナダルの頂上決戦、

まさに、この2017年の最大のイベント、
そして、後世まで語り継がれるエポックとなる、その歴史的なイベントとなる筈だ。

テニス界は勿論のこと、
世界中の王者という王者が、そして、嘗ての英雄たちが、
この二人の類まれなる天才たち、その、最後で最後の大決戦を、
固唾を呑んで見守っている筈である。

老いた英雄たちの、その最期の男の花道。

どちらが勝つにしても、世界最大のイベントとなりうること、間違いなし、である。

ただそう、これ、同じ時間に、ベビーメタルの埼玉アリーナがぶつかっちゃうんだよね。

うーん、またまた忙しい夜になりそうだな・・


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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