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アメ飯談義 ~ アメリカ流教育法

Posted by 高見鈴虫 on 14.2012 アメリカ爺時事
アメリカにやってきたばかりの頃、お世話になったご家族があった。

だんなはいつも出張中で、
事実上母ひとり娘一人の母子家庭だったのだが、
ロングアイランドの一等地に、それこそ中でかくれんぼうをやったら一生終わらないであろうような、
それこそまじもんの大豪邸に二人で暮らしていた。

で、その豪邸の女主人たる美貌の中年女性。
自称ベンチャー企業家のご主人とふたり渡米して以来、
会社を作っては潰しの七転八倒の日々。

儲かったらベンツ買って、つぶれたら売って、
次に儲かったらまた買えばいいやって言ってて、
で、次に儲かった時にポルシェが2台。旦那用とあたし用の一台づつ。
で、それもすぐに売って、したら、次はフェラーリね、なんてね、
と、陽気に、というよりも、ちょっと毒々しいまでに、これみよがしにげらげらと笑う。
まさに、そういう笑い方が癖になってしまった、というか、
商売柄、そうせざるを得なかったという感じ。

で、いま?あのベンツ?大っきらい。なんか、って感じで。
確かにねえ、ロールスロイス?
でもさ、ベントレーはこの街には会わないからさ。
ま、でもね、車なんてどうだっていいじゃない、走ればさ。
それよかさ、こんど馬を買おうとおもってるのよね、どう?世話してくれない?
はははは、
という具合。

という訳で、
言語に絶するであろう辛酸を舐めた末に辿り着いたのこの大豪邸、
とは言いながら、
いざ実際に一緒に暮らしてみると、
表玄関すぐの応接間、を除いては、
その中身はまるで質素、というよりはへたすると廃墟。
家具が一切置いてないがらんどうの部屋がいくつもあって、
奥の廊下の電球はいつも切れたまま。
それこそ専属の料理人が何人も居そうな大キッチンとは別の
使用人たちがひっそりとまかないを食べるような隅の小さなテーブルで、
3人が肩を寄せ合うように、ハムにナットーにメダマヤキの日々。
日本を出るときに頼まれていた京都の漬物が大のご馳走だったらしく、
それだけは、一切れ一切れまるで噛み締めるように召し上がっていたようで。

どう?お金持ちの暮らしは?満喫してる?
と言いながら、
これも俺の土産のマイルドセブン、一日に3回、それも一本を3回に分けて、という徹底振り。

なんかさあ、正直、もうあんまり色々ありすぎてね、お金持ちにも貧乏にももううんざりしちゃってさ。
あんまり引越しが多いもんだからさ。
またあの引越しの時のこと考えただけで、もう物買うのが億劫になってきてさ。
と、その時ばかりは魔の落ちたように素直な苦労人然とした横顔がみれたりもしたのだが。

という訳で、
そのお宅にお世話になっていたとき、
特別なことがない限りはまったくもってど質素なお暮らしぶり。
まったく、どこの貧乏人以上にもお金を使わない暮らしてしているその様に
思わず関心させていただいたものなのだが。

しかしながらその元苦労人の大富豪婦人のそのご聡明ぶりとはまったく裏腹に、
手塩にかけて育て上げている筈のそのお嬢様が、
そんな苦労人の母親の見事に逆を行く、
完全に超わがままのどうしようもなく知恵足らずな糞がき。
まるで、まったくしつけをしないでほったらかしておいた馬鹿犬、そのもの。

家の中でも人前でもパーティーの席でも、
ちょっとでも気に入らないと、大声で泣き叫び、金切り声を上げ、
皿は投げる、テーブルは蹴飛ばすの大暴れ。

挙句にビリヤードのキューを振り回しはじめて、
周りの人に当たろうが物が壊れようが一切お構いなし。

あまりのことに、ねえ、あいつ、あんなんでいいの?さすがにやばくない?
と聞いてしまったのだが、お母様は澄ました顔で、いいのよ、と一言。

いいのよ、ほら、見なさいよ、誰もあの子に文句言わないでしょ?
愛想笑いしてへらへらしてさ。
なんでだか知ってる?
それはね、あたしがお金持ちだからよ。

良く聞きなさい、
この国ではね、
お金が全てなの。

お金こそが正義なのよ。
お金があればなんでもできる。
なにをやっても愛想笑いで済まされる。
だから、あの子はなにをやっても許されるのよ。そう言い聞かせてるの。
なんでも好きなことやりなさい。やってもいいのよ、うちはお金持ちなんだからって。
ははは、どう、最高でしょ?そう思わない?
だからね、あんなたかが貧乏人のやつらに、なにをしたってぜんぜんOKなのよ。
だから余計な口挟まないで。

という訳でその美貌の富豪夫人、
案の定、その数年後には破産し、ついに万策尽きて日本に帰ったらしい。

あのご婦人はともかく、
果たしてあのお嬢様、どうなっているのか、とつくづくと考え見たりもする。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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