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夕暮れの不落下さん ~ ニューヨークのありふれた春の風景

Posted by 高見鈴虫 on 30.2017 ニューヨーク徒然   0 comments
春先の淡い夕暮れの中をひとりとぼとぼと、
小石を蹴りながら家路についた、
そんな経験がお有りだろうか。

ああ、子供の頃にね、
そんなこともあったよね、
たしかに。

そんな切ない記憶から果たして云十年の歳月を経て、
まさかこの歳になっても尚、
しかも、こんなニューヨークなんていう地の果て空の果てにまで流れ流れて流れてついてのその挙句、

あの頃とまったく同じように、
がっくりとうなだれてはボールを蹴りながら、
犬の散歩の帰り道、
まさかそんな事態に陥っていようとは。

あの頃の孤独な糞ガキにしても、
その後の云十年先においても、
まったく同じ情景、
その後の人生を、
ずっとずっとそんなドツボの底を、
這いずり続けることになるなんて、
まじ、思いもよらなかったことであったに違いない。

という訳で、
なんの因果か、あるいは、罰か、天Xか
さすればこれはなにかの呪いなのか、
まったくもってろくでもねえ
そんなことばかりが重なりに重なり尽くし。
あのパラノイアのクソジジイ、
いい気になって好き放題やりやがって。
ただそんな馬鹿と阿呆とパラノイヤ、
それが判っていながらそうと知りながらも、
そんな馬鹿と阿呆とパラノイヤに
悪戯に翻弄されるばかりのこの体たらく。
つまりはお客様は神様です。
例え馬鹿でも阿保でもパラノイヤでも、
神様である以上は致し方なく。
と言うわけで悪い神様に蹂躙され尽くされる
この目も当てられない踏んだり蹴ったりばかりの日々。
どこまで行ってもその沿線上の同じ轍。

まあそう、身から出た錆、
たしかにそうなんだろうが、
日々、努力も弛まず、名もなく貧しく美しく。
ただ唯一の汚点と言えば、
夜遅くまで、こんな糞ブロクを綴っていたこと、
なのかもしれないな、
と長い長いため息ばかりの
そんな夕暮れのドツボの底。

あれだけ泥を噛んで積み重ねてきたキャリアも、
死ぬ思いをして取った資格も、
今となってみれば、
すべてが骨折り損の徒労の果ての悪あがき。
つまりは俺の人生、
どこまで流れ続けようとも
所詮はただの砂上の楼閣、
そう言ういうことなのか。

なんてことを思いながら、
鉛のように重い足を引きずりながら帰路についた、
犬の散歩のアッパーウエスト72丁目。

ああどっかの神様お願いだから、
馬鹿でも阿保でもパラノイヤでも構わない。
こんな俺にも云億円、
そんな神様どこかにいないか、
なんてことを思いながら横切る交差点。

と、そんな時、ん? なんだこいつ・・・









夕暮れに滲む交差点、その雑踏の中、
ふと見れば、その交差点に、
呆然と天を仰いで立ち尽くすパンクの美少女がひとり。

ただこの美少女、明らかに挙動不審、
というよりは、思い切りの悪ふざけ
でもなければこれ、
まさに、ただのゾンビー、そのまんま。
とそのパンクな美少女。
矢庭に足をもつれさせたかと思えば、
おっと、危ない、としがみついたその電柱。
あの、大丈夫ですか?と声をかけるまでもなく、
いきなりその細くて長い両手両足で、
電柱に抱きついては、しがみつくように絡みつくように。

おっと、思わず。

これ、もしかして、知恵の輪病患者、ではないのか?

つまりは、わしはノグチヒデヲ、なーのだ、と。

そんな知恵の輪病の発作ににわかに見舞われたらしきこのパンクの美少女。

なにを思ったか夕暮れの雑踏の中に唯一人、
電柱を相手に、いきなり、両手両足を絡めては抱きつき、熱い熱い抱擁を繰り返す。
そ、そ、そして、なにを思ったのか、
そんな羨ましい電柱の旦那、
つまりは、迷い犬やら、空き部屋あります、なんていうチラシの張り付いた、その煤だらけの古びた電柱に、
いきなりのディープキス、
ぐらいならまだしも、
舌を這わせては撫で回し撫り回し、
思わず見ているこっちが身悶えそうな、
そう、まさに、そのむき出しの網タイツ、
そのあられもないたわわな太腿を晒しては
膝をあげて絡みついたしの電柱の旦那を相手に、
いきなり、剥き出しになったその尻が、尻が、丸見えの尻が、
くねくねくねくねと、のの字のの字を描き始め。

此の末期的な知恵の輪病患者、
いきなり、この平素な住宅街のど真ん中で、
電柱を相手に、こすりつけオナニーの真っ最中、
なのである。

買い物をぶら下げた帰宅途中の会社員たち、
近所のデリの前、箒片手のコリアンのおっさんから、
犬の散歩のおばはんから、パパに手を引かれた保育所帰りの幼児たちから、
そんな何気もないあったり前田のこのアッパーウエストの風景の中で、
この、くねくね、くいくい、と繰り返される、
あまりにも露骨に生々しき腰の動き。

いやはや、この、世界一の無法者たる犬の散歩のおさん、なれど、
そのあまりにも異様な光景に、
思わず度肝を抜かれては立ち尽くすばかり。

ああ、これが、噂の、不落下、というやつか・・





いやあ、古くは、スペけー、やら、
PCP=天使の粉、とか、
いろいろとんでもないものがあったが、

この不落下? 完全な、悪魔憑き、だな。

いまや世界中で大流行のこの不落下ゾンビーな方々。
全裸になって大通りの真ん中を転げ回ったり、
窓から飛び降りたり、
車に飛び込んでみたり、
なんてことを連発しているらしいのだが、
いやはや、まったくとんでもねえものが出てきたものである。

という訳で、え?さっきまでのこと?

この、不落下ガールの前で、
いきなりすべて吹き飛んでしまった訳だ。

いやはや、ニューヨーク、侮れない。確かに。

そして、俺、こんな俺、ごときの悩み、
くだらない、くだらないにも程があるぐらいに、
この世のどツボの底はまだまだ深い、と、

いやあ、俺も、まだまだケツが青い、
そう思い知られた、
ニューヨークのありふれた春の夕暮れ。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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