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「神々の視座に関するいくつかの寓話」

Posted by 高見鈴虫 on 11.2017 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments

「21世紀のフール・オン・ザ・ヒル」

分刻み秒刻み誰も彼もが蜂の巣を叩いたかのような会社内。
そんな中、世界のすべてを見下ろしたような憮然さで、
のそりのそりとそのでかい図体を引きずるように闊歩する
迷惑至極のセキュリティのおっさん。

プレゼン用の資料を抱えて走り回りながら、

おい、木偶の坊、そこをどけ、俺は忙しいんだ。

思わずそんな言葉で叩きつけたくなる、
そんな姿、それこそはまさに21世紀のフールオンザヒル。

とひょんな野暮用から、
そんなセキュリティ連中の詰め所とやらに出向くことになったのだが、
さあこちらへ、と通されたその秘密の小部屋。
壁一面どころか、右も左も天井までを埋め尽くしたモニターの双璧、
そこにびっしりと並んだ小窓という小窓。
会社中のありとあらゆる場所に設置されたカメラからの映像、
その小窓がずらりと埋め尽くしたその小部屋。
それはまるでミツバチの巣の中核に入り込んだよう。

そうか、俺たちはそのすべてを、こうして見透かされていたと言う訳か。

というわけで、
この世界の全てを見透かした秘密の小部屋。
そこはまるで全能気分。
つまりは神々の鎮座ましましたるところ。

つまりこのセキュリティのおっさん連中、
お世辞にもそれほど高い給料など貰っているはずもない風情でありながら、
あの傍若無人な仏頂面と、
世界の全てを見下したようなあの超然とした態度、
その理由というのがまさにこれであった訳か。

厳しい顔してソリティアの画面が開いたままの上級管理職。
澄ました顔して鼻くそをほじる美人OL。
しゃかりきに仕事してるふりをして手元に隠したIPHONEばかり見ているやり手の新人。
そう、神はすべてをお見通しなのだ。

と言うわけで、
今更ながらではあるが、神は全てをお見通し、である、
その事実を前提として何かにつけて清く正しく生きるのか、
或いは神にさえも気づかれないなにかを抱えたまま、
それを隠しおおせるとあの手この手で逃げ回るのか、
或いは、なにがバレようが知った事かとすっかり開き直ってしまうのか、
その辺りで、幸せ度にかなりの差が出る、その筈。

と言うわけで、
その神の座する小部屋を出た時、
世界が違って見えたことは言うまでもない。



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「宇宙人の侵略はすでに始まっていた」

そう言えば、
世に出現する宇宙人ってみんななんか大きめだけど、
実はそれがもしかして、凄く凄く小さくて、
蟻んこみたいに机の上を大名行列、
ぐらいならまだしも、
いきなり欠伸した途端に喉の奥から内臓にまで入り込んで、
いつの間にか耳の奥から脳みその中から、
ひとのことを勝手にリモート操縦なんてことを始めては、
あれあれあれ、思っても有る事無い事、次々に。

いや違う、違うんだ、これはつまり、身体の中の宇宙人が!

それってなんか、VIRUSと呼ばれているものであったり、

或いは、
この世の不思議のその骨頂である、
この人間という摩訶不思議な生物のその不条理の全てが、
つまりは宇宙人の侵略によるもの、
であったとすれば、
各々方、おのおのがた、いかが致すか出合え出合え。

そっか、神は内在するとはつまりはそういう事か。

つまり、宇宙人の侵略はすでに始まっていた、
それも、すでに勝手に完成を見ていた、とかだったら、
なあんだ、なんとなく、ちょっとした拍子抜けさえも感じてしまうな。


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「そしてなにもかもが小さくなった」

近年のこのテクノロジーの進化の中で、
なんでもかんでも軽く薄く小さくなっていくこのご時世。

で、なんか、超小型のドローンが開発された、
なんて話をしながら、
それっていったいどのくらい小ささなの?

それってもしかして、
そこら中を鬼太郎のオヤジが青い炎に乗ってふわふわと飛び回る、
あるいは、まさに、空飛ぶミニカー、どころか、LEGO そのもの。

だったら、そのうち、カナブンどころか、
銀蝿、或いは、ヤブ蚊。
それこそ、サンドフライぐらい小さくなられてしまうと、
窓辺、どころか、網戸の間から寝室から浴室の中までふーわふわ。
盗撮、されていることにも気づかない、
している方も、どこに行ったか判らない、
どころか、
下手すれば鼻から吸い込んで、
鼻毛の密林、どころか、
気管から入って肺の奥まで、
そこまで盗撮されて、され切ってしまったのなら、
人間もはや隠すものなど何もなし。

という訳で、このテクノロジーの進化という奴。
そのうちコンサート会場、
そのステージの上を、キラキラきららきらと綺羅星の如く、
ヤブ蚊の大群に襲われたかのように、
飛んで飛んで飛び回るドローンの大群。

ともすれば、道行く女の子、あるいは男の子、
そのまわりをこれでもかと飛び交うヤブ蚊の大群。
スカートの中から襟元のその奥から、
ともすれば口から耳から鼻から、穴という穴のすべてに入り込んで、
部屋の中と言わず寝室の中とも言わず果てはトイレの中まで、
ありとあらゆるところで徹底的にこのヤブ蚊の大群ならぬ、
ドローン盗撮カメラに追い回され、
その逐一、そのもの全てがリアルタイムで世界に向けてブロードキャスト。

なんてことになったら・・・

いやそう、そうなったらそうなったで、人間はそんな時代に適応した、
新たな生物へと進化していくだけの話なんだよ。

という訳で、テクノロジーの暴走?スーパーウエルカム。
徹底的に楽しませてもらうぜ。
それこそが、この時代をポジティブに生きる唯一の道。
その姿勢だけはなにがあっても意地でも貫こうと思っている。


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「ドローンこそは21世紀のハイテク幽体離脱バーチャル体験か」

欲しがりませんか、妻では?
ではないが、
予てより、必然的にミニマリストを貫かざるを得なかった、
そんな境遇の長く続いた俺である。
その影響からか、この歳になっても物欲というものがほとんどない。

今更身なりに気を使う気もなく、
見栄をはったり、他人を羨んだり、という、
言ってみれば人並みの感情が完全に欠落しているようで、
ここ最近で犬以外のことで金を使ったと言えば、
そう、以前に買った、あのベビーメタルの青デロ用の、
ブルーレーイ・プレイヤーぐらいのもの。

とそんな俺でさえ、実は実は、ずっと以前から、
うーん、これ、欲しいかもかも、と思っていたものが、
無いわけじゃない。

それはなにを隠そう、ドローン、なのである。

別に盗撮の趣味がある訳でもないのだが、
そう、言ってみれば、自分自身の姿、
それを囲む様々なものを、上から、あるいは背後から、
文字通り、達観してみたい、
そんな気がしていたのは確かだ。

ただ、高いところに登って外界を見下ろす、
というのではなんとなく芸がない。
つまりは、高いところから外界を見下ろす、
その見下ろす外界を含めた上での自分自身の姿を、
そのさらに上から見下ろしてみたい、
そんなことを思い続けていた感がある。

まあぶっちゃけた話、
エンバイロメントとユニバース。
自分以外の全て、ではなく、
自分を含めた全てを眺めてみたい、
それはもしかしたら、神の視座、というものに対する、
細やかな憧憬であったのかもしれない。


~21世紀のハイテク幽体離脱体験か~

そのむかし、米国南部でだらだらと暮らしていた頃、
まるで納屋を改造したような巨大なロフトに、
メキシコからのウエットバック:密入国者たちに囲まれて暮らしていた時期がある。
日がな一日ビールを飲んではマリワナを吸って、
ただゴロゴロしていただけの話なのだが。

そんな中、メキシコの呪術師の、なんて話になった。
トカゲになって地を這い、そして、鳥になって空を飛んで、
そんなメキシコの呪術師の視界なんてものについて想像を巡らせては、
終わりのない話を続けては過ごす夏の夜。

そんな暮らしを続ける部屋の中に、
ちょっと密かな俺だけのお気に入りの場所。
以前、天井からの雨漏りを修理した際の、
そのままに放置された長い長いハシゴの上。
間延びしたお喋りに飽いた俺は、
ふとそのハシゴの上に登っては、
リビングのソファのまわりに転がる友人たちを見下ろしながら、
ふと訪れる隔世感の、そのおかしな静寂を楽しんでいたのだ。

おい、おまえなんでそんなところにいるんだ?早く降りてきて話に加われよ。

そう言われながら、俺はそんな友人たちを黙って見下ろしながら、
その一種、異次元的な視点、
この空間を共有しながら、しかし俺はまるで透明人間のように話の外にいて、
そんな人々をただただ見下ろしているばかり。

ふと、俺が死んでしまった後、肉体を離れた魂が、
こうして、自分の亡骸を囲む友人たちの姿を見下ろしている、
そんな風景を想像していたのかもしれない。
そんな疑似的な幽体離脱体験。
そうか、死んだ奴らはこうやって外界の人々を見下ろしているのだな。
ただ、そうして見下ろす視点には、しかし肉体は存在せず、
よって、現実の世界をつぶさに観察しながらも、
しかしそこに何らの影響を及ぼすことができない。
その孤独と無力感の中に湧き上がるであろう、切ないほどの生への愛着。
それを確認した後に、俺は厳かに階段を降り、
そして改めて灰皿に燃え残った吸いさしを胸いっぱいに吸い込んでは、
温いビールで喉を潤し、なあ、おい、生きているって素晴らしいよな、
そんなことを、脳天気に呟いてみたりもしたものだ。
そんなささやかな、死と再生の視点。
生者と死者の間にあるその絶望的なほどの隔絶を思いながら、
その狭間を行き来するというメキシコの呪術師の、
孤独と苦悩を垣間見たような気がしていたものだ。

そしていま、この21世紀。
あのドローンという空飛ぶカメラを見たその時、
俺の頭に浮かんだのはまさにそんな風景だった。

そうか、自分自身を空から眺められるのか。
それってつまり、ハイテクの幽体離脱、そのものじゃねえか。
やってくれるな、21世紀。


~ドローンの天敵~

という訳で、ドローンである。
数年前からその動向は追ってはいたのだが、
そこに新たな問題に気付かされた。
セントラルパークでの犬の散歩の中で、
買ったばかりのドローンをこれ見よがしにリモコン操縦する人々。
おお、ドローンじゃねえか、ちょっと見せてくれや、
と話かけながら、ふと見れば我が家の犬、
やかましいプロペラ音を立てながら、
ふらふらと木立の中に浮かぶその目障りな物体。
その姿をそれとなく目で追いながら、
それが地上に降り立とうとしたその瞬間、
一瞬の気合で飛びかかっては、その息の根を止めてやろう、
そのチャンスを狙って虎視眈々と待ち構える、我がバカ犬の姿。

おい、やめろ、それ、高いんだぞ、
といくらそんなことを言っても、絶好の獲物をみつけた猟犬宜しく、
木立の陰に身を潜めながら、ハンターの瞳を燃え立たせて待ち構える我がバカ犬。

とそんな姿に気づいた操縦士。
まるで、猫の鼻先に猫じゃらしを向けるように、
ほらほらほら、と犬の鼻先で煽っては、
途端に火の付いたように吠え立てる犬の頭上、
ふわりふわりと池の縁への崖へと誘い込むように連れ去るように。

おい、てめえ、なにやってやがんだよ、と思わず。
え?あ、はは、あの犬、
このまま崖から池に落ちるところ、
動画に撮ったら面白いかなと思って。

という訳で、いきなり鼻先にパンチをくれて、
そのリモコンもろとも池に叩き込んだ、
というのはまあ嘘なのだが、
ええ、なんでえ、
この欲しくて欲しくて堪らないハイテクバーチャル幽体離脱マシーンが
よりによって我が家のバカ犬君にとっては、
天敵の中の天敵と化してしまったようなのである。


~ドローン、そのあまりにも早すぎる落日~

という訳でドローンである。
まあなくても死ぬわけではない、ながらも、しかし
どうしても忘れるに忘れられない素敵なおもちゃ。

とそんな時、友人の暮らすハーレムにおいて、
いきなりビルが倒壊する、という事故が発生した際、
近所の住人がいち早く、その現場、その全貌を空撮した、
その衝撃の映像がニュース番組を賑わせた。

漏れ続けていたガスがいつの間にか壁の裏側に沈殿し、
なんらかの事情でそのガスが引火しては大爆発。
一瞬のうちにひとつのビルが住民もろとも瓦礫と化した、
その事件の衝撃も去ることながら、
その崩れ去った瓦礫の山と、いまだに立ち昇る黒煙を、
上から横から、まるで舐めるように撮影して行くこの奇跡のカメラ。

そうか、これがドローンというやつか。

全ニューヨーカーが、そのハイテクディバイスの威力を思い知った、
まさに衝撃的な映像、という奴であったのだ。

うーん、ドローン、素敵だ。素敵過ぎる。
ただ問題はその値段、も去ることながら、
そのあまりにも無骨な風体である。

まるで一時期のリモコン飛行機を思わせるような、
あまりにも巨大なその図体。
卓上扇風機を思わせるプロペラから、
GOPROを括り付けただけのそのあからさまな盗撮カメラ。

そんなものが頭の上を飛んでいたら、うちの犬でなくても、
チャンスを狙って叩き起こしたくなるのは当然のこと、
なにより、もしも操縦を失ったドローン、
そんなものが、そこかしこから落ちてきたら、
危なっかしくておちおち犬の散歩もできやしない。

これ、もう少しだけでも小さく、そして静かにならないだろうか。

そしたら、そしたら、もしかして、
このニューヨークのビル街、その狭間、その窓辺に、
音もなく忍び寄る盗撮カメラ。
そんなものが窓の外にふらふらされた暁には、
私生活からなにからが、まさに丸見えの盗撮放題。
そんなものをYOUTUBEなんてのにアップされでもしたら、
いったいこの世のプライバシーはどうなってしまうのか。

とまあそんな訳で、購入に踏み切るを待たず、
ニューヨーク市内においては、ドローンの飛行が一切禁止、
なんていうことになってしまった訳だ。


~そして神々の視座~

高速を走っていたら、いきなりドローンが降ってきて玉突き衝突事故。
そんなニュースを読みながら、いやはや、このドローン、困ったものだな、
と憤懣やるかたない、と言った感じのニュージャージの住人。

家の庭で飛ばしていたら、操縦が効かなくなってどっか行っちゃった、
なんて言い訳をしているらしいのだが、
そんなものにフラフラされたら、危なっかしくて車の運転などできやしない。
これはもう、絶対に禁止すべきだな。百害あって一利なし。
テクノロジー、ちょっとやり過ぎだろ。

とそんな話に相槌をうちながらも、
そう、一度始まったテクノロジー、その進化を止めることは誰にもできやしない。
テクノロジーの進歩はまさに人間の欲望、その夢の忠実な具現化なのだ。

誰もがちょっと言ってみたくても言い出せなかった本音の本音、
あるいは、ずっとずっと知りたくて、でも知り得なかった秘密の秘密、
なんてものが、
インターネットの上ではあけすけに手付かずにぶち巻かれているこの現代社会、
人々がドローンに向けるその熱く密やかな望み、
それは必ずや、そして急ピッチに、実現することになる、
それを確信していたのではあるが、
そうこうするうちに、そんな話をしていた頃から、早一年、
いつの間にか巷には手のひらに乗るドローンがわんさわんさの花盛り。
いったいこんなもの、誰がどんな目的のために、とは思いながら、
そう、まさにこれ、俺の求めていたもの、そのもの。

で果たして、これでいったいなにができるのかなにを始めるのか。

ゆっくり考えてみよう、なんて思っているうちに、
時代はどんどんどんどん、そんな想像の追いつかないぐらいまでに、
先へ先へと終わりのない進化を続けていくのである。

そして改めて言おう。
テクノロジーの暴走?スーパーウエルカム、である。
なにがどうあろうが、それがたとえ狂気の暴走であれ、なんであれ、
それを思い切り面白がって受け入れることのみが、
この狂気の時代を生き抜く唯一の道なのだから。

そしていつか、そう遠くない将来、
人間はついに、神々の視座を手に入れる筈だ。

そうなった時になって初めて、
神様って実は、そんな大したものじゃなかったんだね、
そんなことにあっけらかん、とが気つく、その筈。

そんなことを、思って止まない春の夕暮れであった。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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