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孤聴仕様のベビーメタル ~ なぜベビーメタルは週末のドライブにそぐわないのか

Posted by 高見鈴虫 on 14.2017 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
私事でまったく恐縮ではあるのだが、
実は、かみさんと、しっくり行っていない。

ぶっちゃけ、先週の日曜日から、
かみさんがろくに口をきいてくれない、のである。

理由は判っている。
そう、週末に出かけたドライブ、あの出発直後における、
助手席に座ったかみさんへの、あの不用意な一言。

で、次のエグジットはどこ?
エグジット?

そう、そのIPHONEのGPSで、なんだって言ってる?

GPS?

だから、いま、W9を北上してる訳でしょ?

北?北ってどっち?

だから、GOOGLE MAPをよく見ろよ。

見てるってば、と言いながら、
ふと見れば思った通り、それを右にひっくり返し左にひっくり返し。
と、悪銭苦闘している模様。

そう、実はかみさんには弱点がある。
ハイテクと、そして、ナヴィゲーションが、徹底的に苦手、なのである。


今更ながら、出会ってからすでに四半世紀を越えるかみさんである。
普段からの、その致命的なまでの方向音痴性は、ほとほと知り尽くしている。

どっかの誰かさんではないが、
放っておくと、知りもしないでさっさかと歩みを進めながら、
決まって道を間違える、
あるいは、よく判らないところを、
ずいずいと勝手に進んで行ってしまっては、
あれあれ、ここはどこだ?いや、きっとこっちだ、
と、俄な確信を込めて、逆方向への道をひたすらに歩み続ける、
そういうとこのある人なのである。

ただそう、だからと言ってかみさんが馬鹿、という訳ではない。
一応曲がりなりにも現役国立のウルトラ勉強メガネの人である。
ただ単に、試験問題を解くための姑息なテクニックに秀でただけ、
とは本人の弁ではあるが、そうは言っても、
いちど口を滑らせたことは何年経っても決して忘れない、
その地獄のように執念深い記憶力、
その代わり、と言う訳でもないのだろうが、
その方向感覚に致命的なまでの欠落を抱えている、
そういう性癖を煩っている輩、のようなのである。

そう、ぶっちゃけた話、古い本の題名ではないが、
女であるかみさんは、地図が読めない、のである。

だから、おい、ほら、あの、ごちゃごちゃしたエグジット、何番のルートだって?

そんなこと人に聞かないでよ、ほら、これ、なんか言ってるわよ、自分で見れば?

見れるわけねえだろ、いま俺は運転してんだぜ。
だらか、いまそのGPS、いまなんだって言った?

知らないわよ、この音楽がうるさくてなんにも聞こえないんだから。

そう、俺はそのカーステで、ここぞとばかりに、
ベビーメタル・TOKYO DOME をかけていたのである。

うるさい、とかみさん。
このドラム、うるさい、といきなり訳の判らないところで怒り始める。

ねえ、これ、このドラム、なんでこんなに曲に、
こんなバタバタドカドカやる必要ががあるの?
こんなのじゃあ、せっかくの歌が、ぜんぜん聞こえないじゃない。

あのなあ、そんなことより、早くGPS。

知らないわよ。その前にその音楽止めてよ。

くそったれ、なんでこのレンタカー、IPHONEがつながらないんだ?

あんたが知らないだけじゃないの?もう知らない。もうわたし帰りたい。

あのなあ、おい、これ、この道、どっち行くんだよ。

知らない、勝手に好きな方に行けば?

あのなあ・・・

そう、恥ずかしながら、我が家でドライブに出かけると、
ニューヨークも出ないうちから、必ず、必ず、これ、が始まる、のである。

そういうこともあって、事前に道順だけは、しっかりと頭に入れている、
その筈、ではあるのだが、
なあに、この21世紀、
IPHONEを繋げない車があるものか、との甘い認識から、
いざレンタカーの座席に乗り込んだ途端、
あれ、これ、USBのポート、どこにあるの?
と愕然とすることになる。

そう、米国のレンタカー会社は、GPSのレンタル代をせしめる為に、
敢えて、わざと、IPHONEをつながらないようにしている、
そんな思惑があるのか、ないのか。

という訳、そう、毎度毎度、決まって、レンタカーでドライブに出かける度に、

で、この道、どっち行くんだよ、
知らないわよ、なんで事前に調べておかないのよ、

ということになる訳で、この直線しか走れない男と、地図の読めない女、
この地獄のミスマッチの中で、最低最悪のドライブ珍道中、となるのが、
いわば恒例、の出来事な訳である。

とそんな時、いきなり始まった見苦しい夫婦喧嘩の中で、
後部座席に鎮座ましましたご同行者の方々、
このまま行くと生命の保証はない、と悟ってか、
手に手にIPHONEを取り出しては、
各々のGPSアプリを広げて、
車内は一挙に、右へ参ります、
その先を左に曲がって、次の出口を降りてUターン?
と、そんなはた迷惑な道先案内人のオンパレード。

でさ、あの、この音楽、である。

これ?ベビーメタル?

そうさ、いまや世界で一番、日本の誇る、世紀のスーパーバンド、とは言いながら、
うーん、この、休日のドライブ、しかも、犬を同乗させた仲間内でのドライブにおいては、
ちょっと、徹底的にそぐわない、そんな気がしないでもなく。

という訳で、なんとか、七転八倒の後にようやく脱出に成功したマンハッタン。
あとはこの先、ただただひたすらにまっすぐ、
この殺伐茫漠たるフリーウエイを、ひたすらにひた走ればどこかに着く、
その安定走行モードに落ち着いた後、
改めてどうしてなんだろう、と。

なにが?

だから、

また私が地図が読めないって、そんな文句が言いたいの?

まあまあまあ、と後部座席の方々。

まあまあ、せっかくのドライブなんだから、ね、そう、落ち着いて、ちゃんと前を見て。

馬鹿にしてるわよ。だったらなんで自分でちゃんと地図をプリントしてきたり、とかしないわけ?

この時代、地図をプリントしてくる奴なんて居るわけないだろが。
21世紀だぞ。このご時世、財布も時計もカメラも、
下手すれば、その脳みその中身がすべてIPHONEに集約されてるんだぜ。
そんな時代に、地図をプリントアウト?ばかばかしい。

馬鹿はどっちよ。最低。もう顔も見たくない。

いや、だから、俺が言いたかったのはそういうことじゃなくて。

と、いきなりのお冠モードに突入したかみさんに、ねえねえ、そういえば、
とすかさずフォローを繰り出す同乗者の方々。

そう言えば、あの人、いたじゃない、あの白いラブラドゥードル連れていらっしゃった方、

ああ、スーザンさん?

そうそう、スーザンさん、あの方がそう言えばね、

といきなり始まる女同志の会話、その展開のあまりの豹変ぶり、
その変わり身の早さに今更ながら驚きながらも、
そう、俺は男、つまりは、他人の話を聞かない生物である。

という訳で、これから先、全長200KMにも及ぶ道のりを、
ただただ、カーステで流れるベビーメタルに包まれて、と思いきや、

あれ、なに、なんで音下げるの?

だって、とかみさん。だって、うるさいんだもん、このドラム。
思い切り話の邪魔なのよ。

このドラム?青山さんが?

青山さんだか、なんだか知らないけど、これうるさいのよ、バタバタがちゃがちゃ、
ねえ?そう思いません?この音楽、うるさいでしょ?

そうねえ、お歌は上手なんだけど、バックバンドがちょっと張り切り過ぎというか。

ねえ、もうちょっと静かな曲とかないの?

静かな曲?ベビーメタルで?

ベビーメタルじゃなくて良いのよ、なんでも良いから、
このドカドカがちゃがちゃしたのでなければ。

えええ、俺、このドライブ、
ただただ思い切りベビーメタルが聴ける、
それだけが愉しみだったのに。

とそんな俺の後ろから、ねえねえ、と前足を伸ばす我が駄犬。

まあまあ、そう怒らないで、とまたいつもの懐柔策、と、思いきや、
え?なに?おしっこしたい?今更?さっきしたじゃないか。

いや、これ、うんちだと思う。さっきの喧嘩でまた驚いて下痢したかな。

まさか、ようやく安定走行に入ったばかりだって言うのに。

ねえ、次の出口で降りて。
レンタカーのシートに下痢されたらそれこそ大変でしょ?




という訳で、そう、改めて我が命題である。

ベビーメタルはドライブにそぐわない。
いや、それは違う。
ひとりでドライブしている時、ベビーメタルほどに、
その高速走行にマッチした音楽を俺は知らない。

ただ、そう、この休日のドライブ。
友人たちと誘い合わせては、そして犬を同乗させては、
その道中でこれでもかと咲かせるお喋りの花。

そんな中で、このベビーメタル、確かにうるさい、というか、耳に着く、着き過ぎる。

確かに、例のユダヤ飯屋ではないが、ベビーメタルは、パーティ音楽ではない。
-> 日曜の午後の隠れ場所 ~ ニューヨークに安息のカフェテリアを求めて
あるいは、BGMにした途端、どういう訳か、会話が成り立たない、
そんな宿命を背負っているようなのである。

どうしてだろう、と改めて考える。

それはつまりは、このあまりの完成度の高さ。
そのあまりの集約度に、会話の入る余地がまるでない、
つまりはそういうことなのだろうか。

改めてこの一年、普段から聴きに聴き続けているベビーメタル、
ではあるのだが、それはつまりは、IPHONEからのイヤパッド、
あるいは、PCのスピーカーを前提としている訳で、
つまりは、ベビーメタルは、独りで聴くもの、
つまりは、孤聴仕様に合わせた音楽、と、そういうことなのだろうか?

あるいはそう、そのなにもかもがあまりにもキワモノ過ぎて、
ベビーメタルは愚か、音楽などなにひとつとしてなにも興味もへったくれもない、
そんな一般大衆の方々にとっては、やはりベビーメタル、
若くて可愛い、そのぐらいの価値、しか、見いだせないのかもしれない。

という訳で、この長い長いドライブの間の、このあまりの隔絶の中にあって、
まるで消え入るような音で聴くベビーメタル。
細々の響くそのすぅちゃんの歌声に、
なんとなくも妙なほどの、歌謡曲性なんてものを、感じてしまいながらも、
この殺伐茫漠たるミドルオブ・ノーウエア。
この燦々と輝く初夏の日差しの中、
そして、この、なにひとつとしてなにも見るもののない、
アメリカという未踏の大地の中にあって、
ベビーメタル、あまりにも早すぎる、忙しすぎる、音数が多すぎる、
つまりは、密度が、あるいは、情報量が、あまりにも多すぎて、
この初夏の風景に、徹底的にそぐわない、そんな気さえもしてくる、
この間延びしきった直線走行。
そっか、ベビーメタルってやっぱり、都会の音楽、なんだよな。

まあそう、今更ながら、そのなにもかもの掟破りこそが、
ベビーメタルの魅力、その新鮮さ、斬新さでもあった訳なのだが。
その掟破りが、徹底的にこの眼の前のど田舎の風景にそぐわない、
そう思った途端、この眼の前に広がる長閑な大自然の風景のその何もかもに対して、
耐えられないぐらいの違和感を感じているこの俺。

日頃から、あれほどまでに、ここよりも他の場所、と渇望していた、
あのマンハッタンの人の坩堝からの脱出であったのだが、
そう、それは予想したとおり、摩天楼の渓谷を抜け出たた途端に、
後にしたマンハッタンが恋しくて堪らなくなる、
この強烈なまでのセパレーション・アングザイティ。

という訳で、一日中を沈黙のドライバーとして酷使された後、
俺に残されたもの、と言えば、かみさんの冷たい態度と、
そして、下痢をした犬。

夜更けのドッグランで、見飽きた摩天楼の渓谷を見上げながら、
ああ、生きて帰れてよかった、とため息をつきながらも、
ああ、死んでも良いからベビーメタル、
見渡す限りの星空のの広がる大平原の真ん中を、
思い切りの大爆音で聴き続けてみたい、
その夢は、渇望は、いまだに果たされぬまま、であったりするのである。

という訳で、改めて、この孤聴仕様のベビーメタル、
環境が音楽を選ぶように、
ベビーメタルもまた、環境を選ぶ、ということなのだろうか。

改めて、謎は尽きない、ベビーメタルなのである。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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