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真夏のニューヨーク 失業者の徒然なる風景

Posted by 高見鈴虫 on 16.2017 ニューヨーク徒然   0 comments
というわけで、この降って湧いたような真夏の失業者暮らし。
一体なにをして過ごしてるかって、
そうだね、はい、仕事探しています・笑
とは言うもののこのお盆休みの時期である。
アメリカにおいてもほとんどの人たちが、
ここぞとばかりに長期の休暇を取っている、そんな時に、
いったいどんな求人があるというのだろうか。

がしかし失業者の本業は職探し。
いかなる理由があったとしても、人間、働き続けないわけにはいかないのである。
というわけなので朝6時に起きて、まずは水をコップに二杯。
で、その後、軽い柔軟体操、なんてのをやった後、
徐にPCにに向かっては、昨夜にのうちに届いてただだろ求人情報のメールやら、
あるいは各社のキャリア・ページに新しいポジションが上がっていないか、
なんてのをざっと調べては募集要項に合わせてレジメを改竄しては、はいサブミット。
と、そうこうするうちに、犬から促されてはセントラルパークへとご出勤。
いつもの犬仲間たちの集合場所にのこのこと顔を出しては、
ねえ、あんた、呑気に犬の散歩なんてしてるけど、仕事は見つかったわけなの?
なんて話をしながら、9時になってオフリーシュ解禁の時間を過ぎて、
そして、三々五々に散っていく犬仲間たちに別れを告げて、
そして俺は、ひとり木立に囲まれた緑の芝生の上で、朝の日光浴を始めるのである。











そう俺の今やっている中で最も重要な仕事が、この芝生の上での日光浴、なのである

この雲一つない夏の青空の下、輝くばかりの芝生の上、
嘗ての旅の間に愛用していた、ジョグジャカルタで買ったバティックを広げては、
脱ぎ去ったシャツを枕に、これでもか、と両手両足をおっ広げては、
その朝の日差しの中で、思い切り、思い切りの、大あくび、をしてくれるのである。

朝から昼寝なんて、良い身分もあったものだぜ、とは思いながらも、
そう、誰もなにも、やりたくてそんなことをやっている訳ではない。
のだが、そう、だからと言って、いまさらジタバタしてもしゃーねーじゃねーか。

そう、俺は既におっさん、なのである。
なにかにつけて、今更なにを、と思い浮かぶ、そんなヤケクソ気味、やけっぱち気味の、
これでもかという程にまでタチの悪いおっさん、なのである。

そしておっさんである以上は、おっさんらしく昭和の美学、
つまりは、夏だ、ロックだ、永ちゃんだ、ではないが、
そう、例えビーチに行けない、のだとしても、
少なくともそれなりに、日焼け、ぐらいはしているのが男の基本。
この朝の日光浴、そんな男の基本に立ち返るための、重要な儀式、と定義しているのである。

というわけでそんなこんな、
午前中を芝生の上で過ごした後、俺は自転車を駆って図書館へと向かう。
そう、嘗ての失業時代、あの一年間余りに渡った資格試験勉強支えてくれた、その図書館である。

ただしかし前回のように既に試験受験料を支払ってしまったのと違い、
今となってはさしたる目的もないまま、ただ周りの人々が、
あの頃からわりと似たようなメンツが並んでいるんだな、
つまりはこいつら、あれからもずっとずっとここに居たのか、
ここでこうして過ごしていたのか、なんてことに今更驚きながらも、
5時までの時間を、この図書館の机の上で、
新たなる資格取得の勉強を続けながら、
つらつらと職探しをしたり、
レジメのアップデートをしたり、
ちょっと気のきいたカバーレターの文面をひねってみたり、
あるいは、そうこうするうちに鳴り始める電話。
この電話が鳴る度に、静粛に願いますの図書館をそそくさと飛び出ては、を繰り返しているのである。

5時になって帰宅途中の人々で街が賑わい始める前に、
俺は再び自転車を買って自宅に帰り、
そして待ちわびた犬と連れ立っては、川沿いの公園。
その途中にちょっと寄り道。
あの、黒人のガキ共が集うバスケット・コートの向こう、
ハンドボールのことのその片隅で、壁打ちのテニスなどをやったりもしている。

そう、テニスである。
前回の失業時、この状態でまたテニスなんて初めてしまった日には、
もう、朝から晩まで、テニステニステニス、そうなってしまうのは目に見えていた。
そう、前回の失業時のあの資格試験浪人の間、
俺は、テニスとドラム、という、俺の根幹である2つを、諦めざるを得なかった、のである。
そうまでしてようやく勝ち取ったその資格、
蓋を開けてみれば、
まったくもって無用の長物、
であった訳なのだが、
まあそう、これも人生、あれも人生。
いまさらそんなことを悔やんでもしかたがない。

で、そろそろ川向うに広がる空が色づき初め、
夏の夕日がニュージャージーの地平線に消える頃、
その夕暮れの中を、ボートハウス・ベイジンの前に新たに施設された木製の埠頭、
その先端にあるベンチの椅子に座っては、
そして俺は暮れていく夕日のその最後の片鱗までを見届けた後、
さぁそろそろ帰るかと、ようやく家路をたどるのである。

腹を空かした犬に食事を与えた後、そう言えば俺もここのところろくに飯を食っていない。
ただ、ひとりで食べる食事は食事にあらず、それは餌、である。
犬の餌と並んで人間も餌を貪り食う、なんてちょっとあまりにもなんともである。
という訳で実は、ここのところ俺はずっと食事を抜いている。

そう、つい先日までの俺の戦場であったあのどら猫屋敷。
あの、超絶な神経戦の巷において、あろうことか俺は、
この一年にも満たない間に、なんとなんと、15パウンドも体重が増えていたのである。

そう言った関係から、ここに来て、いきなりスーツを脱ぎ去った俺、
TシャツというTシャツ、そのすべてがいまにもはち切れそうな超人ハルク状態。
そしてなによりも丸々とせり出したこの太鼓腹。
このあまりにも無様なおっさん体型を、この失業の間に、一挙に打開すべく、
次の職が見つかるまで、俺は飯を食わねえぞ、なんてことを思わなかった訳ではない。

ただこの失業ダイエット。その効果は絶大であった。

前職中、ランチというランチはすべて、ビジネスランチ。
で、夜は夜でなんだかんだと、お・つ・き・あ・い、なんてものに駆り出されては、
食いたくもない飯を、いやあ美味い美味い、と頬張らされては、いつの間にか全身が雪だるま。
そう、世のおっさん連中。
別に太りたくて太ってる訳でもなんでもない。
太らざるを得ないその状況に生かざるを得ない、その哀しさ、なのである。

という訳、そう、実はずっとずっと思っていたのである。
この仕事をやめたら、俺は飯なんて、絶対に食わねえぞ。

とそんな思いが通じたのか、このいきなりの失業の巷。
その長年の恨みを晴らすべく、食事は一日一回、あるいは、抜き。
としたところ、最初の一週間でなんと、10パウンドがどーんと落ちた。

なんだよ、おっさん、失業者の気苦労で食欲さえも失って、
そのうち病気にでもなるんじゃねえのか?とかなんとか言われるのも癪なので、
そうであれば、そう、このせっかく凹んできた太鼓腹を思い切りお日様に晒してやろう、
と、そんなことを画策していた訳なのだが、

そんなこんなで失業から早十日間。
いつしか、朝の出勤ラッシュを横目に犬の散歩に向かうことにも違和感がなくなり、
ひっきりなしに鳴り続ける電話も、常時目を皿のようにしていたメールも、
あるいは分刻みのスケジュールから、会議のアジェンダからも議事録から、
深夜の電話会議から、夜更けの緊急招集から、
そのすべてから開放され切ってしまったいま、
そんな世界がまだこの世にあるのかもさえも忘れかけたまま、
そしていつしか、10パウンドの減量に成功しては、全身コンガリと日焼けをし、
さすがにシックスパックとはいかないまでも、なんとなくその太鼓腹が、すっかりとフラット。
シャワーの後、ふと覗いた鏡の中に、あれ、この人、いったい誰?と思うほどまでに、
その日に焼けて痩けた頬の中、ちょっとした精悍さを取り戻しつつある、
なんてところから、この失業の間に俺はちょっとした変身を遂げている訳なのである。





そしてこの一挙に身軽さを取り戻した身体で、
そして俺は再びブロードウエイの殺人的雑踏の狭間を自転車でかっ飛び、
壁打ちのコートで黄色いボールをこれでもかと引っ叩いては、
犬の散歩の夕暮れのベンチ、
ちょっとした気まぐれに、ルンバ・サークルのおっさんたちが舌を巻くような、
ものの見事なルーディメント、なんてものをご披露してしまったりしているのである。

そう、俺はこの失業中で、人間を取り戻しつつある。

そう、人間とはなにか?
働いて金を稼ぐこと?
あるいは、そう、自分のあるべき姿に立ち返るのも、
それはそれで、大切な仕事なのではあるまいか。

という訳で、この人生において最大のテーマとなりつつあるベビーメタルである。

コーンとのあの中西部どさ回りのツアー、
その最中に俺自身も抱えていた仕事がのっぴきならない状態に追い込まれるにあたり、
いつの間にかちょっとした疎遠を感じることさえもあったこのベビーメタルという存在。
過労による錯乱と人間不信と言う極度の鬱状態の中にあって、
ともすれば、あの、キツネ祭でのかきこみの中にあった、あの、どす黒い悪意の羅列。

つまりはそう、みんなみんな、気持ちの余裕を失っては、追い込まれるだけ追い込まれた、
その結果なのだろう、とは思いながら、
もしかしてベビーメタルも、そんな浮世の辛さの中に、その目的を見失いつつあるのか、
なんてことを思わなかった訳でもないのだが、

そして突如として訪れたこの失業の巷。
ここまで来たら、もう、ジタバタしても始まらねえ、の肚をくくったころになって、
いきなり届いた念願の海賊音源。

その、あまりにもパワー全開の溌剌さを前に、
まるで、彷徨い続けていた洞窟の迷路の先に光明が見えた、
どころか、いきなりその土手っ腹に大穴が開いて陽光が差し込んできた、
そんなとてつもない開放感に包まれたものである。
うっし、俺もこうしては居られねえと、
身体中に、みるみると、エネルギーが満ち満ちるのを感じながら、
そんな事情から、いやあ、そう、ちょっとまた衝動的なまでに、ちょっとこっ恥ずかしい駄文、
->キツネ祭の海賊音源への雑感 ~ BABYMETAL EXISTE! ベビーメタルは実在する!
また新たに、恥の上塗りを重ねてしまった訳だが、
改めて言えば、ベビーメタルこそは、まさにバロメーター。

鬱々とした人間にはやたらと疎ましく、
がしかし、一度、そのチャクラが開いたが途端、
ベビーメタルという存在が、いきなり、身体中に満ち満ちては弾け飛ぶ、
まさに、そんな諸刃の剣的な存在なのであろう。

という訳で、失業からこの方、俺はもう誰に気兼ねすることもなく、
徹底的にベビーメタルに包まれて過ごしている。
ここ数ヶ月の間、斜め読みする余裕さえもなかったファンサイトやら見過ごしていた海賊映像やらを追いながら、
ちょっとした至福感なんてものを、感じないわけではない。

この絶体絶命の失業者暮らしの中にありながら、
ここぞとばかりのベビーメタル三昧。

ただ、現在里帰り中の妻が帰国した途端、
俺のこの能天気な惨状を見るにあたって、
いったいどんな苦言を垂れ始めるか、
実はそのことだけが、ちょっとした気がかりではあるのだが。

という訳で、永き沈黙、まともに失礼申し上げた。
ご心配を頂いた方々から、まさか、死んでる訳ではあるまい?
なんてコメントも頂いていたのだが、はい、死んでいました。
そして、生き返りました、しっかりと。

と、そんな事情から、いきなりサマソニに参戦、というわけにはいかないのだが、
できればそう、ドサクサに紛れてのペリス子映像、ちょっとした心待ちにしている、
そんな夏の午後である。

いま、改めて、KARATEを聴いている。

ありがとう、ベビーメタル、そして、メイトの方々、

俺は、敗けねえよ。











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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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