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大雪前夜の FUNKO POP ベビーメタル・フィギュア 狂騒曲

Posted by 高見鈴虫 on 21.2018 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments

陰鬱に垂れ込めた空から、
悪魔の白い花びらが舞い降りて来る。
夏時間を過ぎてから雪を見るのは、
いったいこれで何度目になるのだろう。

6時を過ぎて早々にオフィスを発ち、
エレベーターで乗り合わせた人々と、
明日、また大雪だってな、と苦い挨拶を交わしては、
ビルを出ると見上げる空から雪が舞っていた。

帰宅途中だと言うのにむっつりと黙り込んだ人々。
なにかに追われるように歩を急いでは、
しかしすんでのところでつかまった信号で、
思わず空を見上げて長い長い溜息。

この雪、どのくらい積るのかしらね?
さあな、神のみぞ知るという奴だね。
ずいぶんと底意地の悪い神様もあったものよね。

いつもの場所で自転車をピックして、
犇めき合うタクシーで殺気立った交差点を斜めに突っ切り、
途端にクラクションを鳴らしたタクシー、
振り返りざまにフロントガラスに痰唾を飛ばしては中指を一本二本。
弾かれたように半開きのドアの間から飛び出したインド人が、
精一杯の虚仮威しに響かせる罵声を背中に、
そして飛び込んたセントラルパーク、その枯れた木立の並木道。

この時間、普段であればまだ、
夕日の片鱗に空が明るい筈であるのに。
見上げる空の摩天楼の渓谷、
ビル街を低く包み込んだ暗い雨雲の中から、
風に舞う白い雪が、膨らむ街灯の明かりの中を、
これ見よがしに渦を描いては立ち上っていく。

さあどうするか、と思っている。
まだ悩んでいるのか、今更になって。
この敗北感を拭い去るには、
最後のチャンスに賭けるしかないだろうが。

そう、運命の午後三時を過ぎた時から、
俺は敗北感に打ちひしがれているばかり。
ここ数日間、妙にそわそわと落ち着かなかったその理由。
そして俺は、その勝負に、ものの見事に敗れ去ったのだ。

人気者ってのも、考えものだよな。確かに。
まさかあんなものに、40ドルもの値をつける奴がいるとはな。
どこにでも馬鹿はいるのだろうが、
ここに来て、ともすれば世界中からそんな馬鹿が集まって来やがって。

29ドル99。ここまで張ればもう大丈夫、
そんな馬鹿はこの世には俺ぐらいしかいやしない、その筈だ、そう思って油断した俺が正真正銘の馬鹿であったと。

そう、その掘り出し物、当初は4ドル99の値を付けていたのだ。
箱なし、つまりは、またあの虫国からのまがい物。
あるいは制作工場からの傷物、良くて流出品、という奴であろう。

そしておまけに、出展品名を、間違えていたのだ。

これは、最愛メタルでは、ない。
これは、この髪型は、紛れもなく、すぅメタルのそれだ。




その掘り出し物の逸品、
言わずとしれた、FUNKO POPの、
ベビーメタル フィギュア、のこと、である。

この人形、昨年かその前かに売り始めた頃には、
米国市場での定価が9ドル99。
と同時に、虫国からのまがい物がどかどかとリストされては、
4ドル3ドル、遂には、1ドル99にまで値を下げた、
そんな覚えもあった代物であった筈。

今更ながら立派な中年男の俺である。
しかもこの俺、老いたとはいえパンク一徹、
テレビ嫌いのアイドル嫌いを貫いて来た、自称筋金入りの無法者風情。
そんな輩が良い年こいて、
まさかまさかよりによってフィギュア!なんてものに、うつつを抜かすこともあるまいに。

そう思っては、まあそう、そのうち、気が向いたらな、
と放っておいた、そのうちに・・・

なに?ユイが49ドル?で、何故に最愛が39ドルか、と。
で、なんだ?すぅメタルに至っては、89ドル?まさか・・・

そう、これは改めて、米国における落札値、である。
なによりも表向きばかりのスター性を重んじる、
侘び寂びを知らぬ米国人においては、
なにはなくとも、真ん中の主役、こそがスターなのであり、
或いはきっと未だに真面目にどうしても、
ユイと最愛の見分けがつかない、
そんな輩が多いに違いない。
つまりは、ここ米国においては、
やはりベビーメタルの花形は、
唯一絶対に見分けのつく真ん中のすぅメタル、
この人を置いて他にはあらない。

という訳で、すぅメタルのこのフィギュア、
つまりはおもちゃの人形が、
いまになっては、100ドル!に手が届こうとしている、のである。

これが、マニア市場の恐ろしさ、という奴だったのだな・・

そして、なにより恐ろしいのは、このマニア心理、という奴である。
何時でも手に入る、と思った時には大して触手が動かなかった筈が、
手に入らない、と思った途端にどうしても欲しくなる。

そう、この熱情はなによりも先のニ月、
ついに発表されたベビーメタルの北米ツアー、
その日程に、まさかまさか、ここニューヨークが含まれていない。
その事実が明らかになった時の、
あの失望感、あの悲壮感、あの絶望感。

俺の、すぅちゃん、やっとやっとやっと、逢えると思ったのに・・・

やれ、小箱だ、大箱だ、夏のフェスだ、
東京ドームから、スーパーアリーナから、
そしてなんとしたことか、あの広島での、
一大お誕生会へも出そびれたこの僻地在住の悲しさか。

そのすべての借りを、この夏、
このマジソン・スクエア・ガーデンで倍返し、
その為には買いたいものも買わず食べたいものも我慢して、
ともすれば痛む奥歯さえ我慢に我慢を続けながら、
そうやって貯め続けた軍資金・・
その全てが・・・ もう、無駄、ということなのか・・・

その絶望の底にあって、ふと、思ったのである。

そうだ、フィギュアを買おう、と。

この会えない淋しさを、この悲しみを、
あの、FUNKO POPの ベビーメタル人形、
次に逢えるその日まで、あの人形を、
せめてすぅメタルの代わりとして、見つめ続けよう。

としたところが・・!?

その時に目に飛び込んで来たのが、このお値段、な訳である。

あの、たかが、おもちゃの人形が、100ドル?
いったい、どうしちまったんだよ!

つまりは、在庫切れ、なのである。
つまりは、値段の高騰、なのである。
つまりは、価格と価値の違い、なのである。
つまりは、需要と供給のアンバランス、なのである。
ぶっちゃけた話、ベビーメタルは人気が有り過ぎる、のである。

なんでなんで、なんでベビーメタル、
これだけこれだけこれだけ思い続けながら、
なんでここまで徹底的に、
つれなくされなくてはならないのか。

そんな悔し涙にくれながらも、
だがそう、こうなれば、虫国産でもしかたあるまい。
箱に入っていようがいなかろうが、すぅメタルはすぅメタル。
大した違いはあるまいに。

という訳で、探してみた。EBAYの隅から隅まで。

そうか、スタート価格として、いまのところ、
すぅメタル49ドル、ユイメタル39ドル、
最愛メタルがなぜか暴落して24ドル、
というところなのだが、
だったら最愛をまとめ買い、
一ヶ月もすれば高騰に高騰を重ねては、
一攫千金の最愛成金も夢じゃあらない。
なんて事を思った途端、
だがしかし、これこそが21世紀の罠である。
おっと、この値段、と飛びついた途端に、
そこには必ず罠がある。騙しがある。詐欺がある。嘘がある。

つまりはこれ、待ちに待ってようやく届いたその箱を、開けてビックリ大仰天!
なんだよこれ、全部マツコデラックスじゃねえか!

或いはビットを重ねるうちに、
さて、落札、といった途端、
その終了30秒の間に、価格が跳ね上がる、
そのトリックに、どれだけ苦い涙を飲んだことだろう。

あるいはそう、やけに安い、と思った途端、
その発送地が決まって、香港、タイ、そしてフィリピン。
下手をすれば、クロアチアに、マケドニアに、
スロバキアに、ルーマニアに。
つまりはあのロシアの影。

その箱入りオリジナル商品というやつが、
虫国産のまがい物といったいどれだけ違うのか、
あるいはそのオリジナル商品であったにしても、
蓋を開けてみればしかっり虫国製であったりもする訳で、
つまりは、オリジナルからダミー品から、
この世界のなにもかもが、虫国汚染の泥の中。

だったら、とばかりに、
キズ物、箱なし、大特価、なんでもありだ。
とそんな掘り出し物を探してみれば、
このMOAMETALと表示された箱なしの中古品。

ただこれ、そう、真のメイトである俺様には一目瞭然。
どう見てもこれ、すぅメタルのポーニーテール、その姿に違いない。

うっしゃ、この馬鹿、まんまと間違えやがって。

という訳で、売値がなんと、4ドル99。
ビットの終了まで5日間。
わざと、関心のない振りを装いながら、
その終了直前の10秒間、
その、奇跡のトワイライト・タイムに、
えいやあとぅ、の必殺10ドル乗せのぶっち切り値でトドメを刺す、
その運命の刻が、なにを隠そう本日の午後三時、であった訳だ。

という訳で、結果は惨敗であった。

ビット終了1分前まで、9ドル99であったその価格が、
30秒前を過ぎたところで、14ドル99に。
15秒前で19ドル99。
10秒を過ぎ、9.8.7
その終了寸前に男一発ぶちかました必殺10ドル乗せの29ドル99。
これがあろうことか、終了と同時に開いた落札表示には、
なんと、39ドル99の値で、哀れ我が箱なし娘のすぅメタルは、
俺とは違う男の手の中に、転がりこんでしまったのである。

やれやれ。
いまだ胸の高鳴りを残す震える指を自分で笑いながら、
なあに、たかが人形じゃねえか、と大人の顔でつぶやきながら、
そして、
すぅメタル、また行っちゃったな、と溜息をついたその途端、
それはまさに、座った椅子がいきなり、
そのまま床を突き抜けてロービーを突き抜け地下室から井戸の底。
例えようもない失意の底に、転がり落ちていたのである。

だがそう、たかがフィギュアではないか。
俺はオタクでもなければ、ロリコンでもなく、
少なくともすぅメタルをそんな偶像としてアイドルとして、
観てきたつもりは更々ない。

あのなあ、俺はこう見えても、
パンク一筋のメタル嫌いのアイドル嫌いの、
つまりはミュージシャンとしてアーティストとして、
その文化的希少価値としてのすぅメタルを・・・

やめよう。自分が惨めになるばかりだ。

とそんな時、ふと思いついたのはグーグル・ショッピングである。

そう、EBAYが駄目ならアマゾンがある。
アマゾンが駄目なら楽天が、楽天が駄目ならアリババだって。

一つのイデオロギーに愛を誓ってはいけないように、
ひとつのサイトに埋没してもいけない。
そう、アメリカはなにはなくともセカンド・オピニオン。
そしてこの21世紀、その選択は無限大、なのである。

という訳で、インターネットのその表玄関たる
サーチエンジンの巨人、グーグルの検索窓に直接、

FUNKO POP SU-METAL と打ち込んで、みた、その途端・・・

なぬ? 9ドル99? しかも、オリジナルの箱入りで?

しかもその売り人が、EBAYでもAMAZONでもなく、
バーンズ・アンド・ノーブル?
それって、本屋じゃねえか・・

ああつまりは、入り口近くのキャンディー・コーナー。
レジ待ちの人々にひとつでも余計なものを買わせようと、
そんな魂胆からのおまけの付け合せ。
II❤NYの土産物のキーホルダーなんかと一緒の、
どこぞの紛い物のちゃちなおもちゃに違いない。

とは思いながらも、そのウェブサイトに載ったその写真。
確かに確かに、
FUNKO POP SU-METAL
そしてそのナンバーは、忘れもしない43。

そしてなにより、そこにその表示された在庫数が、1つ、とある。

えーい、ままよ、と、送料を我慢してWEBからオーダーをかけようとすれば、
すでにオンラインでは品切れ、とある。
つまりは、この店、この場所のその店頭で買う以外に方法はない、と。

だが、待てよ待てよ、なのである。

いまや箱入りのオリジナルは100ドルにも迫ろうかというこのすぅメタルが、
まさか、9ドル99、などという値段で売りだすものだろうか。

あの、Kマートにしたって、ウォールマートにしたって、
目ざとくそんな高騰に目を付けては、
三つ揃えセットの150ドルでしか売りません、
と商魂も逞しくがっつきにがっついているではないか。

という訳でこの9ドル99、オリジナル価格のすぅメタル。
その在庫一つ、のその場所が、ふと見ればなんと家の近所。
十分ばかり歩いた先の、普段の犬の散歩ルートではないか。

だがしかし、そう、この本屋、実は鬼門であったりもするのである。
つまりは、犬を連れては入れません、そんな問答無用の不届千万。

あのなあ、この時代、そしてこの区域、
つまりは、犬を飼ってる奴しか住んでいないような、
道を歩けば犬犬犬ばかりのこのエリアで、
なにをトチ狂って犬を連れては入れない本屋、
そんなものが存在する筈がありえるのか、と。

犬の散歩の途中にふと立ち寄った本屋で、
ゆっくりのんびり立ち読みをしながら床に座り込みながら、
奥の廊下にボール投げて、そんな憩いの一時こそが、
本読みが本を買う、その絶好の機会、なのではないのか。

つまりはこの本屋、徹底的に間が抜けているのである。

間が抜けているからこそ、世の高騰の意味も知らず、
その扱う品の真価さえも判らず、
この狂乱的な高騰を続けるすぅメタルのフィギュアに、
9ドル99なんていうおめでたい値段を付けているのだろう。

あるいはそう、多分これが真相なのだろうが、
ここ数年、誰もウェブページをメンテナンスしていない。
つまりは、数年前の値段が在庫が、
数年経ってもまったくアップデートされぬまま

つまりはそんなところであるのは判りきったことで、
行くだけ損の、くたびれ儲け。
その糠喜びからの落差に泣き笑いを浮かべながら、
とぼとぼと雪の舗道を家路につくことになる、
その惨めさ、その悲しさ、そのやるせなさたるや・・

とは思いながら、思いながら、思いながらも・・

という訳で、
陰鬱に垂れ込めた空から雪の舞う中、
公園を出て、普段であれば左に曲がるところを、
うーん、うーん、うーん、と悩んでは、
えいやあとぅ、とそのまま直線ルートにペダルを踏み込み、
そして辿り着いた夕暮れ時のブロードウエイ。

明日の大雪予報を前に、非常用の買い物にごった返す人々。
融雪剤を満載したトラックが不穏な地響きを上げ、
気の早いブルドーザーがそのシャベルの先でガリガリと路面をこすりながら、
そして荒い息に胸を波打たせながら飛び込んだ倒産寸前の本屋の店先。

その小難しくも見るからに高慢そうなインテリゲンチャ達の間を縫って、
フード付きのジャケットにヘルメットにゴーグルをかけたままの自転車野郎が、
棚積みにされた新書などには目も触れずに、
えっとえっとえっと、と、レジの近くの土産物の棚を徘徊しているこの怪しさ。

そんな俺の姿を、露骨にも怪訝な目で追っていた店員のひとりが
あの、なにか御用ですか?とよりによって、中国語で話しかけてきたり。

バカタレ、俺は日本人だ、とすかさず中国語で返し、

で、なにをお探しですか?と日本語で、は流石に無理。

あ、実はな、拙者、この様なものを探してござる、と翳したIPHONE。

FUNKO POP SU-METAL?

あの、あの、あの、あの、あの、
実はね、そう、姪の、甥の、妻の、孫の、プレゼントにどうかと思ってな、
などと、苦しい言い訳を聞く気も見せず、

あの、ここ、言っておきますけど、本屋、なんですよね、おもちゃ屋じゃなくて。

でもほら、ここのウェブ・ページに、在庫一つって書いてあるじゃねえか、と。

ああこれね、多分、どこかのアフォが、入力を間違えたか、
あるいは、トイザラスと内容が混ざっちゃったり、とか。

そんな戯言を並べるいかにも世間に疎そうなおばさん店員に、
恥も外聞もなくにじり寄っては、

頼むから、お願いだから、この在庫一つと言うやつを、探してみてもらえないか、と。

という訳で、怪訝な顔をしていかにも面倒臭そうに、
在庫データベースの端末を覗き込んでいた店員のおばさん。

あ、あるわよ、ある。ひとつだけ。

そ、そ、そ、それはまことか? で、で、で、それはいずこに?
と胸の高まりを抑えきれずに、ずいずいずいとにじり寄れば、

知らないわ、と一言。 こんなもの見たことないし。

例えば裏の倉庫の在庫の中に、とか。

さあ、裏の倉庫にもこんなもの見たこと無いし。

つまり?

つまり、探してみれば?この店の隅から隅まで、その気があるのなら。

そう言い捨てては、はい、次の方、と無残にも脇へと追いやられ。

この店の、隅から、隅まで?
本棚の隅々から、その積まれた本の、その裏から狭間まで?

馬鹿野郎、上等だ、探してやろうじゃねえか、
俺のすぅメタル、この愛の、その証を、
このド根性で、見せつけてやろうじゃねえか!

という訳で、その店の隅から隅まで、
このあまりにも無骨なスタイル。、
特大のスノボージャケットにヘルメットにゴーグル。
背中のバックパックからはいまも赤い暴走ランプをチカチカと瞬かせながら、
どう考えても、本を読み、というよりは、
まさに絵に描いたような万引き犯としか見えない、
そんな不穏な輩が、店の隅から隅まで、
折りたたみ椅子を引きずっては、その一番上の棚の裏を覗き込み、
そして、地べたを這いつくばってはその一番下の奥の奥まで。

いけ好かねえインテリゲンチャどもが、
一心不乱に読み耽るその哲学書の脇から、
おい、お前そこどけ、と露骨に押しのけては蹴りまでくれて、
本棚の上から下から、その隅からその裏側の埃の積もった狭間まで、
探しに探し続けて、小一時間。

てめえ、どんなもんだい、
ついに見つけたぞ、その、在庫ひとつの、宝物。
それはまさに、二階の、従業員用搬出作業用のドアの脇、
隅っこの、その一番下の下の端。
そこで、埃にまみれきったまま積まれ続けたキズモノ返品用の箱の中。

そのあまりにも無残なSU-METAL、
つまりそれ、そのハコが、見事にぺちゃんこに潰れては、
哀れ返品の順番を待つままに長年に渡って放置されていた
そんなキズモノ、であった訳か、と。

んだよ、これじゃあ意味がねえじゃねえか、とは思いながらも、
ただ、そう、そんな姿のすぅちゃんを、
まさかそのまま見殺しにするわけにも行かず。

思わずそのフィギュアに向けて、
積もり積もった塵を埃を払いながら、
ごめんね、すぅちゃん、待たせちゃったね。
俺が救い出しにし来るのを、
いまかいまかと、待ち続けていたんだね。
もう大丈夫だよ、すぅちゃん一緒にお家へ帰ろう。
これからは俺のところで、
末永く大切に大切にするからね。

という訳で、その外箱がぺちゃんこになった
FUNKO POP SU-METAL 

レジに差し出しながら、
あの、これ、とちょっと文句を言った途端に、
いきなりー割引きにもしてくれちゃった訳で。

とまあそんな次第でようやく見つけたその、
大切な大切なぺちゃんこのすぅメタルのフィギュア。

すっかりと暮れた夜の雑踏の中、
ちらちらと舞い続ける雪の中、
その潰れた箱が更に潰れることがないように、
大切に大切にジャケットの奥底に抱え込みながら、
普段であれば、向かいからの通行人には容赦なく、
肩から胸からで当たって砕けろを繰り返すこのガチンコ馬鹿が、
今日という今日は、人混みという人混みから逃げ回り、避けまわり。

なんか俺、こんなになにかを大切に持つことなんて、
それって、いまから8年前、あの12月のみぞれ雨の中を、
貰い受けたばかりの子犬を胸の中に入れて帰った、
あの時以来なんじゃないのか、と。

あの時、さかんにじゃれついては胸元の間から、
鼻先を覗かせては顎の先の舐めていた、
そんな子犬の感触をついついついと思い出しながら、

いまこの胸に抱えたすぅメタルのフィギュア、
フィギュアであるからにはこのすぅちゃんが、
まさか顎の下をペロペロ舐めてくれたり、はしないものの、
ついについについに、手に入れたぞ、すぅメタル、

そのあまりにもほっこりとした充足感の中で、
ふと、俺、なんとなく、行き着くところまで来てしまったのではないか、
そんな不安を、感じないでもない、晩冬の雪の夜。

という訳で、いま机の前にある潰れた箱の、
FUNKO POP SU-METAL 

覗き込めばその小さな小さな指の先に、
黒いマニキュアなんてのをしてしまって、
思わず、ニンマリと、ダレきった笑いの止まらない俺ってのは、
いったいぜんたい何者であるのか、と。

俺も遂に、フィギュアの罠に落ちたのか、
そこまで、行き着いてしまったのか、
ルビコン川を渡ってしまったのか、
この元パンクロックドラマーのアイドル嫌い。

という訳で、待ってろすぅちゃん、
いつまでもアカツキばかりを歌わせている訳にはいかない。

次は、ユイだ、最愛だ、つまりは、ベビーメタルの黄金のピラミッドだ。

この机上にベビーメタルが三姫が揃うその日まで、
俺の戦いはまだまだ続く、その決意を新たにしたのであつたとさ。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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