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大雨洪水警報のニューヨークに、鉄人愛犬家と鋼鉄の馬鹿犬を見た

Posted by 高見鈴虫 on 16.2018 ニューヨーク徒然   0 comments
月曜日、朝一番から未曾有のゲリラ豪雨に見舞われたニューヨーク。
とそんな中を、果敢にも自転車で突っ走る命知らずこそは、
言わずとしれたこの俺、
つまりはニューヨークで一等の鋼鉄的大馬鹿者、なのでああある。

今更ながらこの歴史的なまでの集中豪雨、
路上を流れる雨の層がますますと厚みを増しては車輪に絡みつき、
どんなに思い切りペダルを踏み込んでもまったく前に進んではくれあらない。
顔に向けてまともに叩きつけてくるこの痛い程の雨足が、
アスファルトに砕け散っては立ち昇る靄が頭上高くまで舞い上がり、
暴風に煽られるままにうねりをもって荒れ狂る。
一寸先も見えない、どころか、
まったくもってなにひとつとしてなにも見えやしない、
これではまるで、ナイアガラの滝の滝壺の底を、
自転車で遊覧しているようなものじゃねえか。
と、そんなにわかな霧の乙女号と化した俺。
いやはやさすがに今日という今日は下手を打ったか、
今更ながら己の馬鹿さ加減に舌打ちを繰り返してながら、
そしてようやく辿り着いたセントラルパーク。
低く垂れ込めた、どころか公園中がどっぷりとその黒雲の中に包み込まれてしまった木立ちの中、
遊歩道を流れる雨水はいまや濁流となって走り続け、
ふとすれば前輪が後輪が、滑ったとたんにそのまま押し流されそうである。
くそったれ、ナイヤガラの滝壺の次は、渓流下りという奴か。
ここまで来たら何でもありだ、
下手すればこのまま流されちまったほうがずっと進みが早いぜ。
とそんなこの世の終わりのゲリラ豪雨の底の底に、
突如として、信じられない光景が、いきなり目に飛び込んで来る。
見ろよ、雷鳴轟くあの丘の向こう、
断末魔の乱舞に今にも枝という枝がすべてへし折れそうな木立ちの間から、
ベトナム時代からの亡霊とも思わしき、
軍隊用のポンチョを頭からかぶった犬の散歩の御仁が一人。

げげげげ、この地獄の底の底のような大嵐の中にあって、よりによって犬の散歩とはっ!

いやはや、これぞまさに、愛犬家の鑑!
とにわかに驚愕ぶっこきながらも、
だがだがしかししかし、
これ普通に考えて、こいつちょっと、オツム大丈夫かよ、と。

濁流に流された土砂に車輪を取られては
この糞自転車、全然前に進まねえ、どころか横に後ろに滑りまくり、おおお!流される流されるぞ、と
断末魔にペダルを踏み込みながら、
そんな中を、ふとすればこの地獄の底から現れた犬の散歩の狂人の姿。
一体全体こんな非常事態宣言下に、
何を考えて犬の散歩か!?
世間を舐めるのもいい加減にしろ!
と罵声まじりにしげしげと目を凝らして見れば、

あれええ、あいつ、アンディと、ルーベンではないか!

という訳で、
この大雨洪水警報発令の一寸先も見えないゲリラ豪雨の滝壺の底で、
犬の散歩と自転車の人、
互いに互いを呆然として見つめ合いながら思わずの大爆笑。

おいおいおい、こんな土砂降りの雨の中、
どこの馬鹿がよりによって自転車なんかに乗っているのかと見て見れば、
なんとなんと、ブッチパパじゃないか、
こりゃ傑作だ、はっはっは!

おいおいおい、そりゃお互い様ってもんだろうが。
この洪水警報の非常事態宣言だってのに、よりによって犬の散歩かよ。
今更なんだが頭おかしいんじゃねえのか?

非常事態だ?犬の散歩に非常事態もクソもあるもんか。
非常事態が終わるまでこいつがウンコを我慢してくれるとでも言うのか。
矢が降ろうが槍が降ろうが、朝になったらパークでウンコ。
それをここ9年間、一日の休みも無く続けてきたんだ。こんな小雨ごときで、今更変える訳にはいかねえんでい。

というわけで、
何から何までがぐしょ濡れのゲリラ豪雨の滝壺の底、
頭から足元から、これでもか、と吹き荒ぶ横殴りの暴風に煽られては、
互いが互いを指差してゲラゲラと笑い続けるこいつオツム大丈夫か、の人々。

そんなオツムのいかれた飼い主を尻目に、
豪雨も暴風もなんぼのもんぞ、と、
誇らしげに咥えた泥だらけのテニスボールを天に向けて、
凛と構えた水も滴る黒犬が一頭。

偉い!それでこそ名犬の誉れ。
この頭のいかれた飼い主こそが愛犬家の鉄人であれば、
その忠犬こそはまさに鋼鉄の馬鹿犬。

思わずその口からボールを受け取っては、
さあ行ってこい、と豪雨の中に投げ上げたテニスボール。
途端にロケット噴射で飛び出したルーベン。
そのまま豪雨に煙る木立の中に、
あっという間に掻き消えてしまったのであある。

というわけで、いつまでたっても一向に雨脚の弱まる気配さえ見せぬ、
この未曾有のゲリラ豪雨の最中にあって、
走り出したまま一向に帰って来ないルーベンを待ちながら、
成すすべもなく立ち尽くすばかりの
まったくもってオツム大丈夫か、の筋金入りの大馬鹿たち。

そんな鋼鉄の馬鹿者同志がゲラゲラ笑いあっては、
おーい、ルーベン、どこ行った、帰ってこーい、
なんて事をしていたら、
おいおい、投げ捨てた自転車が、
いつのまにか流されては、おーい、自転車、帰ってこーい!

くそったれ、もうどうにでもなりやがれ!
とそのヤケクソにまたまた腹を抱えて大笑い。

と言うわけで、
自慢じゃねえがここニューヨーク、
筋金入りの馬鹿と言う馬鹿はみんな俺の身内でよ、なんていう気もして、
ちょっと誇らしい気もしていたこの未曽有のゲリラ豪雨、
相も変わらずニューヨークの馬鹿自慢の人たち、であつた。

馬鹿は死んでも治らない!?
てやんでえ、上等だ、
それでこそのニューヨーカーでい!




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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