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虹色のタツノオトシゴ ~ 死神に出会ってしまった金曜日の午後 

Posted by 高見鈴虫 on 20.2018 大人の語る怖い話   0 comments
いや、実は、ここだけの話、
なんて妙に勿体ぶるつもりは毛頭ないのだが、
一応まあ、ご報告というか、告白というか、
あるいは、おことわり、ということなのだろうか。

まあいいや、ぶっちゃけ、俺、
こないだ死神を見ちまったんだよ、
いや、まじな話。

まあ、そう、好きに笑ってくれよ。
こいつ性懲りもなくまた妙なヤクでもきめてるんじゃねえか、
あるいは、正真正銘、ほんちゃんでまじで、気でも狂ったのかよ、と、
まあそう、そう思っているのだろうが、
いや、実はさ、俺もちょっとそう思ったんだよ。
てか、これ、まじで、もしかして、お迎え、なんじゃねえのかってさ。

いや、俺もこれまで、いろんなもの見てきたけどさ。
幽霊から腐乱死体から、女優からスッパモデルから、
アメリカ合衆国大統領閣下から、世紀のロックスターから、
それを言ったら、今世紀最高の女神、
あのベビーメタルたちだって、
手を伸ばせば届くようなところで、
ご拝見申し上げた、そんな記憶もあるのだが、
この期に及んでついについに真打ち登場、
いやはや、死神、かよ、
まったく、まいったな、これ、と。

という訳で、ご参考までに、というかなんというか、
こんな零細個人運営の糞ブログなんてところに、
迷い込んでいらっしゃったのもなにかのご縁。
今後のための何かのご参考までに、
俺の出くわした、その死神とやらを、
ちょっくらご紹介申し上げておこうかな、と。









「死神は、七色に輝くタツノオトシゴであった」

あれは金曜の午後であった。
怒涛のような一週間をなんとかやり過ごした後の、
そして訪れた台風一過をも思わせる、
なんとも間の抜けた春の午後。

昼食を終えて珈琲を淹れ直し、
次の会議までの間のちょっとした時間つぶしに、
こっそりちゃっかりベビーメタルの最新ニュースでも漁ってみようか、
そんなことを思っていた、
そんな宙ぶらりんな金曜日の午後。
ふと視界の中に、妙な曇りがあることに気がついた。

ただそう、つまりはこれ、メガネの汚れ。
またいつものモノグサで、
ネクタイの裏地なんてので拭き拭きしていたところ、
ふと見れば、あり?その視界の曇り、
メガネを取っても、
あるいはメガネを取ると尚更に、
そのぼんやりと広がったぼかしが、
視界の真ん中にポワポワと浮かんでいる。

なんだこれ?

もしかして原稿も書かずにAVばかり見ていたその報い。
あの憎きモザイク模様が、
遂に視界の中にまで張り付いてしまったのか!?

なんてことに自分で勝手にヘラヘラと笑いながらも、
んだこれ、この視界の汚れ。
全体というのではないにしても、
視野の中のその真中のあたりに、
そのAVモザイク的なぼやかしが広がっては、
視界のど真ん中にでんと居座っているばかり。
それはちょうど、真夏の太陽を直視してしまった際の残像、
八月の濡れた砂の上に漂う、あの熱く灼けた青春の陽炎のような、
まあ、そんなものであれば、
そのうち忘れた頃に自然と消えてなくなるであろう、
とは思いながらも、
ややもすれば一向に消える気配のないこのモザイク。
もしかして眼球の表面に目糞のかけらでも貼り付いているのかと、
目をこすりまつ毛を抜き、
片目づつをつむっても、
あり?なんだこれ、一向に消え去る気配がない。

もしかして、また徹夜で糞ブログの原稿を書き殴っていた、
と見せかけながら、実は隣りのモニターの小窓でAVばかり見てたのだが、
まあそう、目が疲れているのだろう。
だったらそう、
これを機会に、たまには目を休めることも必要だろうと、
朝から一日中首にかけたままのBLUETOOTHのワイアレス・イヤフォン、
これのスイッチを入れ直しては、
手元のIPHONEから、
またヒロシマの海賊盤でも聴き直すか、
と思いきや、
ありっ、IPHONEが見れない・・

どれだけ目を凝らしても、しばたたかせても、
上を向けても下を向けても、
どうしてもIPHONEの画面に、
視界の焦点が定まらない。

なんだよこれ、このモザイク模様、
いい加減に消えてなくならないか、
と思っているうちに、
そのご迷惑なモザイク模様、
消え去るどころか、
ますますみるみるとその占領範囲を広げては、
妙な形に像を結んでは色彩さえもつけ始め。

その模様、
ギザギザのチェッカーフラッグ柄に、
キラキラと輝いく虹色の閃光。
雨の夜に見上げたタイムズ・スクエア、
あるいはそれ、思い切り不吉なカレイドスコープ。

その虹色に輝くモザイク模様、
妙な具合にとぐろを巻いたタツノオトシゴ、
いまとなっては、あまりにも鮮明に、
視界の真ん中からやや左よりに、
忽然として存在しては、
網膜そのものにべったりと張り付いたまま、
一向に消え去る気配もない。

なんだよこれ、この、虹色のタツノオトシゴ、
こんなもの見たこともねえ、見たいと思ったことも、
見えてくださいと頼んだ覚えもないのだがだがだが・・

だがしかし、そう思えば思うほど、
小憎らしいまでにますます鮮明度を上げるモザイク模様、
みるみるとそのギザギザ文様が鮮やかさを増してはキラキラと瞬いて、
視線を右に左にずらしても、
天井を向いても床に落としても、
片目を瞑っても、それをとっかえても、
そしてあろう事か、目を閉じてでさえ、
その漆黒の闇の中に、
その虹色のタツノオトシゴの姿だけが、
くっきりはっきりと、
両目の中に映し出されているのである。

なんだこれ、なんなんだよこの、虹色のタツノオトシゴ・・

もしかしてこれって、実は霊的な体験。
神様の御降臨か、
下手すればもしかして、
俺はいま、死神って奴を見ている、
ということなのか?

だがそう、この21世紀、
そうそうと神秘主義の罠には騙されない。

だってさこれ、視点をずらしても、
目を瞑ってさえも見えるってことは、
それは、現実世界に存在するものではもちろんなく、
つまりは俺の脳内に巻き起こっている、
幻覚に他ならない訳で。

つまりは、神は実存はしない。
その脳内に直接に投影された幻影、
つまりは妄想に過ぎないのだと。

がしかし、
妄想というにはあまりにも鮮明で、
神様と言うにはあまりにもチンケ。
死神にしてはどうしようもなく威厳に欠け過ぎるこの虹色のタツノオトシゴ。

で、言わせて貰えばこの死神乙、
正直、邪魔くさいにもほどがある訳で、
こうしている今も、この無様な死神の姿が邪魔になって、
WEBでニュースも見れないどころか、IPHONEさえも操作できず、
ともすれば、どこを見ても、そのお姿が邪魔になって、なんにも見えないんだけど・・

だがそう、この傍迷惑な死神のお姿。
今度という今度は、ちょっと、
まじで、これ、まずいぞ、とは思っていた。

だってさ、これ、明らかに幻覚な訳だろ?

幻覚でありながら、これだけ鮮明に、いつまでたってもくっきりはっきり。
死神というぐらいならば、もうちょっとぐらい、勿体ぶってはそれらしい姿かたち、
少なくともこんな、七色に輝くチェッカーフラッグ柄のタツノオトシゴ、なんて、
ちょっとあんまりにもファンキー過ぎ、威厳に欠け過ぎやしねえのか、と。

でなによりもこの死神、いつまでたっても、どころか、
もう既に、こいつが出現して悠に15分は経っているだろうというのに、
一向に消え去るどころか、いつまでたっても、その間の抜けた姿で、
視界の真ん中にゆらゆらと揺蕩うばかり。

という訳で、いい加減に俺もうんざりしてきては、
おい、死神、あのさ、もういい加減どっか行けよ。
邪魔なだよ、邪魔。お呼びじゃねえんだよ、こんな時に。
俺はな、仕事してんだよ、仕事。
あんたなんかと遊んでる暇は、ねえんだっちゅーの。

という訳で、このタツノオトシゴの死神。
さすがに、ちょっと、どころか、ともすればパニック的なまでに、
相当に気味が悪くなってきた。

おいおいこいつ、いつまで居座るつもりなのか、と。
或いはこれ、もしかして、正真正銘、まじのまじめに死神なんじゃねえのか?と。

七色に輝く死神かよ、なんか、あんまりそれらしくもねえけどな、と。
なによりこの死神野郎、端から幻覚と判ってしまっていては、
ぶっ飛ばそうにもどうやってぶっ飛ばせば良いのやら。

とまあそんな感じで、いやあ正直言って、
ちょっとこれ、あまりにも気味が悪すぎて、
ただ、これまで俺の体験してきた数々の超常現象という奴、

それは例えば、あの地下室の少女
或いは、京都のシャブ中のパンパン
ともすれば、スモーキー・マウンテンの白い女
下手すれば、千歳船橋の虚無僧やら、
それでもなければ、よりによってあの、夏時間の乞食男

ただ、そう、改めてこんな俺の廻りに起きる超常現象、
あまりにもどうしても、ちょっと間が抜けすぎる、というかなんというか、
どいつもこいつも、ちょっとどこかしら、凄味に欠けすぎる、威厳が無さすぎる。

でその典型が、この眼の前にいる死神野郎、
これ、この虹色に輝くタツノオトシゴ、
どうでも良いが、はっきりいって、うざった過ぎる、邪魔臭過ぎる、
だってよ、目が見えなくっちゃなんにもできねえんだからよ。

という訳で、思わず、あのなあ、この死神野郎、
もうたくさんだ、さっさと消えてなくならねえと、
本気の本気でぶっ飛ばすぞ、と。
あのなあ、死神さん、
いまはもう21世紀、
なにからなにまでが、あけすけなまでにあからさまな、
透明化の可視化のほうれんそう、
コンプライアンスのアカウンタビリティな世の中なんだぜ。
つまりはあんたのその正体だって、
こうしてこうして、グーグル様にお伺いを立てれば、
あっというまにその化けの皮が・・

という訳で、この死神さんにでんと居座られたその視界、
その片隅を使っては、わりと必死の思いで、
横目で脇目で上目で下目でとモニターを睨みながら、

視界 ギザギザ模様 タツノオトシゴ と、
この眼の前の死神の姿をそっくりそのままグーグルしてみた、その途端・・・

へえ、死神の旦那、あんた、閃輝暗点って、名前なのか・・







「死神の正体見たり閃輝暗点」

という訳で、この死神、ならぬ、閃輝暗点、
偏頭痛の予兆に伴って訪れるありふれた怪異現象、
ではありながら、ともすれば、
脳梗塞、脳腫瘍や、脳血栓の予兆、
なんていう仰々しいお題目が並んでいるではないか。

おいおい、ってことは、なんだよこれ、
本当の本当にまじで、脳溢血、
紛れもない、正真正銘の、死神って奴なのか?

まあ確かに、年若き頃から筋金入りの頭痛持ちでならした俺である。

実はここ最近も、どういう訳か土日になると途端にこの偏頭痛が始まっては、
休日はほとんど寝たきり、という生活を続けていたのであるが、
そうか、そういう訳なのか、
ここに来てついについに現れたか死神野郎、その正体。

そうか、これ、まじで、お迎え、その予兆って奴なのか。

ついに俺も、年貢の納め時ってことなのかな。

そんなことを思いつつも、この唐突に訪れた人生の黄昏の中、
思わずちょっとした終末感、なんてのを味わってもいた訳なのだが、

おいおい、もしかしてこのまま逝っちまったとしたら、
家のコンピュータにこっそり隠したあのエッチ動画、
あの珠玉のAVコレクション、あれもしかして、
いったいどうなってしまったりするのだろうか、
なんてことを、考えていた、そのうちに、
ふとすれば、いつの間にか、
その死神の姿はかき消えて居たのである。

あれ、なんだよ、行っちまったみたいだな。

いつの間にか、音が戻り、いつの間にか匂いが戻り、
いつの間にか、このなんともぱっとしないありふれた現実、
つまりは、ついさっきまでの間の抜けた金曜日の午後、
既に冷めてしまった珈琲だけが、この暫しの葛藤が、
夢や幻でもなく、現実にこの身に起こった、
そしていきなりに眼前に突きつけられた、
脳溢血という爆弾を脳内に抱えて生きている、
その新たなる現実、というものなのだ、と告げている。

そうか、俺、もしかしたら、死ぬのか・・

これまで、生命なんざ、いくらでも捨ててやらあ、
そんな啖呵を、何度か並べたこともある俺である。
あるいはそんな啖呵を並べる前に、
まじめのまじめに、その一歩手前、
ぽかんと口を開け目を見開いたまま、
あれ?俺、まだ、生きてる・・・
そんな思いをしたことも、一度や二度ではない。
ともすれば、俺は不死身なのだ、
俺に弾丸は当たらない、俺は地雷を踏まない、
そんな星の下に生まれてきたのだ、
そんなことさえ思ってもみた、
そんな俺である筈ではあったのだが・・

そして改めて、あの、虹色のタツノオトシゴ、
あのあまりにも鮮明な死神の姿。

閃輝暗点、つまりは、脳溢血の予兆?
このあまりにも唐突な、青天の霹靂とも言えるほどの、
この突然の死刑判決。

まあそう、そういう事であるのなら、いまさらジタバタしても始まらねえ。

そうなってしまったらそうなってしまったで、潔くケツをまくる以外、
どうにもこうにも、なるようにもならねえじゃねえか。

そう、俺はそのつもりだった。
人間いつかは死ぬのだ。
それがちょっと早いか遅いか、畳の上か、アスファルトの上か、
あるいは、病院のベッドに縛り付けられては身体中をチューブだらけにされて、
あるいは、あのアフガンの禿山の頂か、
あるいはもしかして、いま、この場で、この瞬間に、
いきなり目の前が真っ暗になって・・・

とその時、思いもよらず、俺はパニックに陥っていたのである。

いやだ、俺は死にたくない。死んでも死にたくない。

なぜって、なぜかって、それは、言わずと知れたベビーメタル、

あの中元すず香が、マジソン・スクエア・ガーデン、
世界の頂点に立つ、その姿を見るまでは、
なにがどうあっても、絶対の絶対に、死ぬわけにはいかないのだ。

そう思った時、いきなり全身に鳥肌が走った。
息が詰まり、冷たい汗がコメカミに滲み初め、
七色のタツノオトシゴの代わりに、正真正銘の目眩が襲ってきた。

二時からの定例会議のリマインダーがポンとあがったのをぶっちして、
俺は、平静を装いながらも、しかしその実態は、まさに顔面蒼白、冷や汗ダラダラ、
いまにも卒倒しそうな足取りでトイレに駆け込んでは、
冷たい水で顔を洗い、そして有ろう事かこの俺が、
なんとなんと、下痢をしたのには、俺自身がまじめのまじめに驚いた。

あの閃輝暗点、30分もすると、この世のものとも思えないほどの、激しい頭痛が襲ってくる、
ともあったのだが、
トイレに閉じこもっては戦々恐々としていくら待ち続けても、
そんなものはいつまで経っても訪れず、
俺はその運命の30分間を、奥のトイレの便座の上で、
全身に冷たい汗をかいたまま、半ば呆然と、やり過ごすことになったのである。






とまあ、そんなところが、俺の体験したDIVINE、ならぬ、
死神との遭遇体験、その記録である。

この不穏な予兆を前にして、俺は生まれて始めて、
死、というものに、本気の本気で恐怖を感じたのだ。

死ぬのが怖いだ? てめえも随分とヤキが廻ったものじゃねえか。

そう、嘗ては、自らおもしろ半分に、
この地獄のその底の底、
血で血を洗う紛争地帯から、
あるいは、親が子を喰らい子が親を喰らう、
そんな極貧地域を這いずりながら、
自ら率先してこの世の地獄、その死地の修羅を彷徨っていた、
そんな罰あたりのクソ野郎が、
いまになって心の底からテンパリにテンパりきっては、

頼む、神様でも仏様でも、なんでも良い、
俺は、俺は、俺は、いま死ぬわけにはいかないんだ。
日々、そんな命乞い、なんてものを初めているという訳だ。

そう、俺には夢がある、
俺にはどうしても、見なくてはいけないものある。
ベビーメタル、
我が麗しの中元すず香が、世界征服の野望を達成する、
その晴れ姿をこの目で見るまでは、

それが例え、死神だろうが、偏頭痛だろうが、脳溢血だろうが、
例え、閃輝暗点、虹色のタツノオトシゴなんてのに襲われたとしても、
俺はなにがあっても、どうしてもどうしても、
かのマジソンスクエにおけるベビーメタルの晴れ姿をこの目で見るまでは、
なにがあっても、死ぬわけにはいかぬ!

という訳で、柄にもなく、
俺からすればまったく似合わない言葉、

死にたくない、その言葉の意味を、
これでもか、と、考えさせられることになった。
そう、俺はベビーメタルという存在を知って生まれて始めて、
遅ればせながら、人間としての普通の感情、
我が身、我が生命を慈しむ、
そんな殊勝な心持ち、とやらを思い知ったのである。




改めて、ベビーメタルを知る、そのビフォー・アフター、
そのあまりの、心境の変化。
その豹変の様に我ながら驚きながらも、
例えなにがあってもどんなことになろうとも、
俺は、スゥメタルが世界の頂点に立つ、
その晴れ姿をこの目で見るまでは、
絶対の絶対に、死ぬわけにはいかない。

そう、泣いたって笑ったって、
生きとし生けるる者には
遅かれ早かれいつか終わりが訪れる。
それは判っている、それは判っているのだが、
だがお願いだ、
贅沢は言わない、あと一年、あと一年あれば十分だ、
それだけあれば、
ベビーメタルは確実に、世界征服の野望を
成し遂げている筈だ。
だからお願いだ、せめてあと一年は、
頼むから生き延びさせてくれ。

いやはや、自分でも正直なところ、
この歳になって、そんな心境に達するとは、
まったくもって、人生とは判らないものである。

ただ、この虹色の死神、閃輝暗点、なんてのに会ってから、
死ぬ前にやっておかなくてはならないこと、
その後始末、というのではないが、
いつ死んでも良いように、やり残したことは一切合切、
やっておかねばな、なんてことを考え初めてはいる。

で、やり残したこと?
俺がこの人生の最後に、やっておかねばなならないこと?

という訳で、これまで幾度か、酒のさかなに上げられた話のネタ。

なあ、もしも明日死ぬとしたら、おまえ、どうする?

という訳で、この七色の死神の来訪を受けたいま、
嘗て居酒屋の戯言で笑いあっていた、
その、人生最後になにをしたいか、するべきか、
その命題に、改めて直面しながら生きている。

今日が、あるいはこの瞬間が、
俺の人生の最後の、一瞬、になるかもしれない・・
それはまるで、薄氷の上を歩む心境でありながら、
だがしかし、そう、
俺は未だ嘗ての戦場で知り得たあの教訓を生きている。
踏まないと思っていれば地雷は踏まない、
当たらないと思っていれば、弾丸は当たらない。
踏んじまったときは、当たっちまったときは、
はいそれまでよ。
四の五の言わずに、さっさとおっ死ぬに越したことはない。
ビビって生きようが、鼻で笑って生きようが、
結果としては、そこに大きな違いはないのだから。

という訳で、もしかしたら人生に残された最後の一瞬、
果たして俺は、なにをするべきなのか、と考えた時、

うーん、まずは、犬の散歩かもな、と。

もしも本当に、余命 XXX 日、であったとしたら、
世界中の女とやりまくり、世界中の高級料理を食いまくり、
まずはブラジル、まずはウクライナ、まずはナイロビ、
なにはともあれ、取り敢えずは歌舞伎町だろうが。

嘗て交わしたそんな戯言のすべてを笑い飛ばして、

もしも、もう死んでしまうとしたら、
俺は、この人生の最後の最後の時を、
古女房と、そしてこの犬、
こいつらと出来る限りの時間を、伴に過ごしたい、
俺は心底、そう思っていたりするのである。

ってことはだ、
なんだよ、俺って、実はなんだかんだ言いながら、
わりとこの現状とやらに、
それなりの幸せ、なんてものを感じていたりするようだな、
などと、
今更ながら、そんな妙なことに、気付かされたりもした訳だ。

という訳で、もしもいま、この瞬間にパチン、と頭のコードが切れてしまったとしたら、

この一文が、俺の遺書、になったりもするわけなんだな。

だとすれば、綴ろう、俺の最後の言葉。

予想通りというか、筋書き通りというか、
なにをやっても中途半端な、うだつの上がらない人生ではあったが、
だがただひとつ、ありがとよ、面白かったぜ、それなりにな。

そう、俺はもしかして、幸せだった、のかもしれないな、笑っちゃうけどさ。

という訳で、そう言えばあれから、死神様の再訪は受けてはいないが、
まあなにがあったとしても、
まあとりあえずは、ベビーメタルのマディソン・スクエア・ガーデン、
それまではなにがあっても、死ぬつもりはないのではあるが。
もしももしもの時を考えて、ちょっくら身辺の整理、
ぐらいはしておいたほうが良いのかな、
あるいは、飛ぶ鳥跡を濁さず、どころか、
生きているうちに、言っておかなくてはいけないこと、
そのあること、ないことの全てを、
まだ目の黒いうちに思い切り、
なんの手加減もせずにぶちまけてやる、
そのぐらいの気概は、
いまになっても持ち続けているつもりだ。

という訳、コバさんよ、
ベビーメタルのマジソン・スクエア・ガーデンを見た途端に、
ああ、これで思い残すことはねえ、と、ぽっくり逝くつもりも更々無いのだが、
俺に限らず、まあそう、世界には色々な事情を抱えて生きている奴らがいるのだろう。
そんな様々な事情を抱えた様々な人々が、
その人生のすべてを賭けては、
ベビーメタルに夢を託そうとしている、という訳で、

妙な焦らしも意地悪も悪戯心もそれまでにして、
そろそろさっさときっぱりと、
マジソン・スクエア・ガーデン公演、公表してもらえんでしょうか、と。
心から、お願い申し上げる次第でごじゃります、と。







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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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