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追悼アンソニー・ボーデイン ~ 放浪の天才シェフ その魂を辿って・・

Posted by 高見鈴虫 on 09.2018 旅の言葉   0 comments
この糞ブログにおいても何度かご紹介したことのある、
旅するセレブ・シェフ、アンソニー・ボーデイン氏が亡くなった。
死因は、自殺、との発表である。
正直なところ、大驚愕、
あるいは、もっともっと正直なところを言えば、
ありえない、の一言に尽きる。

アンソニー・ボーデインが自殺?
ありえない。絶対にありえない。
ワニが逆立ちしたとしても、ブタが木に登ったとしても、
アンソニー・ボーデインが自殺、それだけはありえない。信じられない。

嘗ては一生を旅の中で暮らしたい、と思っていた俺である。
見知らぬ街で見知らぬ人々と、
見知らぬ香りに包まれ見知らぬ料理を囲んでは、
今日を吹く風に流されるままに気の向くままに、
運命の気まぐれにすべてを委ねては、
出会いと別れを繰り返すライク・ア・ローリング・ストーン。
→ 旅の原風景

そんな俺にとって、一種、理想の人生を生きていた男。
アンソニー・ボーデイン。

CNNの超人気番組:パーツ・アンノウン。
セレブリティ・シェフであるアンソニー・ボーデインが、
世界の津々浦々の街角を尋ねては、
彼の地に暮らす人々と肩を並べ膝を突き合わせながら、
郷土料理に舌鼓を打つ、
そんなありふれた旅紀行の番組でありながら、
そこにはなにより、アンソニー・ボーデインの視点があった。





アンソニー・ボーデイン
世界を行くカウボーイ・シェフ。
その見るからに無法者風情のがらっぱちな容貌から、
歯に衣着せぬあけすけなまでの物言いから、
そしてなにより、料理、そして、音楽、そしてアート、そして人々。
つまりは、その土地の土地の文化の真髄、
強いては、人間の真髄を掘り下げ、垣間見せる、
そのなんとも言えぬ、下町風情の下から目線。

道行く人々と、さあ兄弟、と酒を酌み交わしながら、
で、どうなんだよ、その暮らしぶりは。

そうやって世界中の人々と兄弟仁義の盃を交わしながら、
時として暴言といえるまでの辛辣なブラック・ジョークを飛ばし、
時として、その喧伝の印象操作の、その偽りのステレオタイプに隠された、
真実の姿を、赤裸々なまでに暴露せしめる。

つまりはそれは、ロッカーでありバイカーであり、
そしてバックパッカーであった、その古き良き旅人の流儀。
社会の底辺の底辺を彷徨いながら、
一宿一飯の恩義に預かるそのまつろわぬ民達へのシンパシー。
そこから見上げる世界、そのあまりにも嘘の無い真実の姿、
そのストリート・スマート的視点。そのむき出しの真実。

セックス、ドラッグス、そして、音楽、そしてアート、そしてマネー。
愛と欲望と、善と悪と、光と影が交錯する裏通りの、
その生の声を通して、この惑星に暮らす人々、その本音の本音。

まあそう、良いことばかりじゃねえけど、悪いことばかりとも限らねえ。
少なくともほら、俺達の前にはこんなにうまそうな料理が並んで、
どこからともなく響いてくるこの甘いメロディと、
で見ろよ、あの道行く女たち、あのなんとも堪らない思わせぶりな目つき。
そう兄弟、確かに辛いことも多いけどよ、
ほら、ちょっとこうやって、視線をずらしてみただけで、
生きるってことは、早々と悪いことばかりでもなさそうだ、
そんな気も、してくるじゃねえか。
ほら、乾杯しようぜ。あの女たちに、あの旋律に、
そして俺たちのこの、細やかなる徒労のために。

最近となってはほとんどテレビなんてものを見る機会がなくなったのだが、
なによりもこのアンソニー・ボーデインの「パーツ・アンノウン」。
日々の殺伐の中で、積もり積もった疲労感に胡乱な夜に沈み込みながら、
そんな時、この「パーツ・アンノウン」の何気ない世界の街角談義に、
いったいどれだけ、細やかな救いのようなものを感じただろう。

そんなアンソニー・ボーデインが、まさか、自殺?・・・

ありえない。それだけはありない、信じられない、信じたくない。





ただ、と、我が愚妻から、またまた不穏な呟き。
やっぱりな、って気がしないでもない。
やっぱりなって、またかよ。
だって・・ だって、あんまりにも、余計なことを言い過ぎると思ったもの。
余計なこと?なんだよその余計なことって。
だから、ほら、露西亜の時にも、淫乱の時にも、ジャマイカの時にも、
沖縄の時だって、虫国の時だって、ミャン間の時にも、ベトナムの時にも。
つまりは?
つまりは、そう、余計なこと。つまりは、政治的なこと。
政治的なことは余計か?
余計よ。わざわざそんな話なんてしなくたって、人は幸せに暮らせる筈なのに。
で?その結果がこれ、かよ。
政治から目をそむけさせ、騙してすかして、うつ病の霧の中に引きずり込んでは、
密室の悪巧みの中で猫ババした税金から援助金から軍資金からを、
せっせせっせと仲間内で山分けしては毛マンやらアリゾナやらの個人口座に流し込み・
で、その結果がこれ、まさにこれだろ、この1%と99%。
ガキじゃあるまいし、そんなことを今更言わせるな。
いまの世界、見てみぬ振りしかできない奴らが、
いったいどんな目に合わされていくのか。
お前だって嫌というほど見てきただろ。
中米で南米で、アジアでアフリカで、
バカな政治家に騙されては潰されまくった国民が、
沈黙の代償にいったいどんな目に会わされているのか。
それを裸足の難民みたく、神様に祈っていればいずれは救われる。
そんなことが起きないのは、誰だって判ってるんだ。
不幸には必ず理由がある。それは作為と悪意の為せる業。
貧困とは格差そのものなんだぜ。
で、それがいま、ますます、のっぴきならないところに追い込まれている。
で挙句の果てに、実験台だぞ実験台のモルモット。
新薬と化学合成食品の実験台にされ。
こんなバケモノみたいな会社に、よりによって、
利権に目の眩んだ政治家どもが、自国民を、その母国の未来を、
その子孫を、国土そのものを、綺麗さっぱり売り渡しては、
その番頭に収まろうって肚なんだぜ。





で?で、なにが言いたいの?
少なくともその真実を、人間は知る権利ってものがあるんだよ。
その仕組みを知った上で、それでも毒食わされながら神にすがって暮らします、
というならそれも結構。
投票に行くのが面倒なので一生下級奴隷として、
好き勝手に税金吸い上げられてすり潰されてくたばりますってのも選択だろ。
ただ、少なくともそこに、その仕組けを知る権利だけは、与えられていなくてはいけないんだよ。
そんなこと知りたくもないとしたら?
知りたくないなら知らなければいい。
見ざる言わざる聞かざるで、好き放題に騙されて暮せばいい。
平民は政治に口を出すな、お上に逆らうな頭が高い、と言いながら、
そんなお上が裏でなにをやってるのか、
ちょっと東南アジアを回れば、どんなバカにだってすぐに判ることだってのによ。
だからそんなこと私達になんの関係があるのよ。
もしかしたら、知らないほうが幸せだったんだろなって、あなたもそう言ってたじゃない。
真実は人を幸せにしないって、口癖みたく言ってたじゃないの。
真実は、必ずしも、だよ。その一言を忘れると逆の意味になる。
あなたと居るととことん不幸にされそうな気がする。
とことん不幸にされないために、不愉快な現実と向き合って生きなくっちゃいけねえってことだろ。
で?その結果がこれよ。そうこれ。あなたの大好きだったアンソニー・ボーデイン。
アンソニー・ボーデインがなんだって?
だって、誰でも思ってるわよ。アンソニー・ボーデインが自殺なんてする訳ないじゃない。
だとすれば?
知らないわよそんなこと。ただ、この人だけは自殺なんてする筈がない、それだけは確か。
11歳の愛娘を残して、毎朝6時から柔術の道場に通っているような人が、
まさか自分から死を選ぶなんて、絶対の絶対にありえる訳がない。
だとしたら?
だから、余計なことを言い過ぎたのよ。
知らずにいれば済むことを、根掘り葉掘り聞きすぎたのよ。
つまり・・・

とそんな俺達の目の前、特大のモニターからは、
繰り返し繰り返し、アンソニー・ボーデインの追悼特集。
入れ替わり立ち替わりに登場する人々が、
勿体ぶったわざとらしいハリウッド嘘泣きを続けながら、
アンソニー・ボーデインの人柄を、功績を、魅力を語りつつ、
そしてそのすべてが、いま米国で急増する自殺の問題にすり替えられて行く。

自殺が増えています。
先のケイト・スペードの記憶も新しいうちに、
またしても、この自殺のニュース。
去年からの、クリス・コーネルから、チェスター・ベニントンから始まって・・
自殺者の兆候を知ることにより、それを未然に食い止める為に・・

バカバカしい、と一言。
だれだってこんな様を見れば死にたくもなるだろうよ。
確かに、ずいぶん強引だよね、これ。まるで、無理やり自殺だってことで蓋をしてしまおうと焦ってるみたい。
だから、と俺。
アンソニー・ボーデインが自殺なんてする訳ない。
世界中を旅して美味いものをたらふく食べて、
旅から旅へ、出会いから出会い、発見から発見、
世界の津々浦々で言いたいことを言い、食いたいものを食い、
そんな最高の人生を送っていた男が、
香港の取材を終えて、次はフランスの別荘地。
その間に、しっかりちゃっかりイタリアに寄っては、
女優のガールフレンドとラブラブのツーショット。
いったいどこに、自殺なんてしなくちゃいけない、その理由があるっていうんだ。
でも、世界中の誰もそんなこと言ってないわよ。
そんなこと言ったって、アンソニー・ボーデインが帰ってくる訳でもないからな。
ただ、ODだったらいざしらず、首吊りだろ?信じられないぜ。
ただ、身長190センチで、柔術の修行に励む元バイカーの元パンク・ロッカー。
そんなタフガイの鑑みたいな輩に、
無理やり首を吊らせるなんて、できるわけがない。
それは判る、それは判っているのだが・・







という訳で、
アンソニー・ボーデインの自殺のニュース、
ちょっとこれにだけは心底こたえた。
古くからの親しい友人を失ってしまった、
まさにそんな気分だ。

自殺はもっとも残酷な謎解きを後に残す。
彼はなぜ死んだのか、その答えの出ない迷宮の底を、
残された者たちは一生堂々巡りを続けることにもなる。

ただ、確かにこの「パーツ・アンノウン」
不穏な噂があったのは確かだ。
ロシアの反プーチン政権指導者だったボリス・ネムツォフが
この番組に出演した直後に暗殺され、





あるいは、あの衝撃の淫乱、
そこに出演したジャーナリストが、その直後に当局に拘束され・・





否応なくその抗議運動に巻き込まれていった、その中で、
まさかまさかの地雷を踏んでしまった、という奴なのか・・




そして沖縄。
あの沖縄編の中に託されたメッセージとは、
いったい、なんだったのだろう・・
→ Anthony Bourdain 「OKINAWA」


と早くも始まったそんな謎解きの迷宮の堂々巡りの中で、
あるいはそう、それは宿命の定説通り、
さしものアンソニー・ボーデインと言えども、
運命のイタズラによって悪いことが度重なっては、
ふと、魔に呼ばれてしまった、というヤツなのだろうか・・

ただ、いずれにしろ、このアンソニー・ボーデインという男に、
自殺、それも、首吊り、なんていう方法は徹底的に似合わない。

なんと言っても、無法者の限りを尽くしたロッカー上がりのセレブリティ・シェフ。
そんな男が、例えば若い女に無碍にされて生きる望みを失った、やら、
四十年も前に患った麻薬中毒のトラウマがいきなりの先祖返り、
あるいはそう、成功の影のプレッシャーでのうつ病の罠に嵌りきり、
だがしかし、だからと言って、このアンソニー・ボーデインが首吊り自殺?

いや、違う、絶対に違う。

アンソニー・ボーデインがもしももしも、何らかの事情、
つまりは、この世の快楽のすべてはゲロが出るぐらいに味わい尽くした、
であれば、このあたりでそろそろ、華麗なフィナーレと行きますか、
そんな時には、必ず必ず、ハーレーでぶっ飛ばすだけぶっ飛んで、
あるいは、12ゲージのショットガンで、1-2-3のロックンロール。
少なくともフランスの片田舎のホテルの一室で、
ひとり寂しく首を吊る、なんて侘しいフィナーレだけは、
絶対の絶対に選ばなかった筈だ。

あのOKINAWA編において、
沖縄空手の真髄に両の眼を輝かせながら、
次に来る時には、ぜひともうちの娘を連れて来たい、
そう言って笑った、あのアンソニー・ボーデインの姿。
世界の良心がまたひとつ潰えてしまった。
人類にとって、この痛手は、あまりにも大きい。

なにがなんだかわけが判らない。
ただ、それは、このニュースを知った全ての人々、
そして多分、アンソニー・ボーデイン自身も、
同じことであったに違いない、そう信じたい。

という訳で、これはこれは、であった。
まさに、ちょっとまじでこの遣る瀬無さ、
そこに明らかに、怒りを感じないわけにはいかない。

さすらいのカウボーイ・シェフ、
この世で最も幸せな男であった筈の
アンソニー・ボーデイン。
このやるせない時代を生きる上で、
ひとつのお手本でもあった筈の、そんな男に、
まさか、自殺、などされてしまったら、
この世にはもう、幸せな人間などひとりもいなくなってしまった、
ということではないか。

それはまるで、旅の途中に行き先を失ってしまったかのような、
あるいは、苦労して辿り着いたところが、
そんな場所は既にとっくの昔に潰えた後であったとか、
あるいは、そう、俺は、行き場を失くしてしまったまま、
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る、
そんな絶望的な喪失感ばかりが旋じ風のように、
ただ足元をすり抜けていくばかり。

あるいはそう、もしかしたら、
人類には、もう、幸せな生き方などなにひとつとして残されていない、
そんな終わりのない地獄巡り。
そんな暗黒の迷宮の底へと向かう、パンドラの箱への入り口。
この百鬼夜行の中にどっぷりと引きずり込まれてしまったまま、
もう、行き着く先など、どこにもない、ということなのかもしれない。

兄弟、俺がバカな戯言を呟いているだって?
余計なことは抜かすなと、まだそんなことを言ってるのか?
おめでたいのは、そっちの方なんじゃねえのか?
まあ確かに、ここまで来てしまったのであれば、
俺ごときがなにを言っても、その行く末には大した違いはないのだろう。

で、あんたは、モルモットの下級奴隷として、
あるいは、米虫代理戦争の藻屑として、
おとなしく殺されるつもりかい?
俺は嫌だ。
すり潰されて死んでいくのは判ってはいても、
ただ、騙されたままには死にたくない、
ただそれだけのこと、なんだけどね。

改めて、旅に生きたセレブ・シェフ、
世界で最も格好良かった男:アンソニー・ボーデイン、
RIP 安らかに眠って欲しい。






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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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