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あの日から17年目のチキンパイタン

Posted by 高見鈴虫 on 11.2018 ニューヨーク徒然   0 comments
あの日から17年目のメモリアルの日、
ニューヨークシティは霧に包まれている。

そう言えばあの時も、火曜日だったよな。
なにかこう、ぐるっと一回り、してしまった気分だ。

いまとなっては俺の周りに、あの日のことを知る人は極僅か。
それはすでに歴史上の出来事としてすっかりと封印されてしまった感があるのだが、
ただあの日をこの米国で過ごした者は、
あの一日のことだけはいまでも脳裏にしっかりと刻まれたまま色褪せることはない。

そしてあの日からいったい、なにが、どう、変わっていったのか。
それが現代のこの社会に、どう繋がっていくのか、
その漠然として複雑に絡み合った糸を解きながら、
改めてあの日の、あまりにも強烈な影響力を思い知るばかり。

そしてなにより、あれがどうして起こったのか。
そしてなぜ、それを防げなかったのか、
誰が損をし、そして誰が漁夫の利を得たのか、
それを改めて思い耽りながら、
だがしかし、
そんなことを露も知らない幼気な若者たちは、
自らの現実が、実はそんな歴史の仕掛けた罠の中にしっかり絡め取られたまま、
再び同じ轍を辿り続けるという事実を、知る好もない。

そしてあの日から17年目のメモリアルの日、
ニューヨークシティは霧に包まれている。

この不穏な霧に包まれたまま、人々は往く宛を見失い、
そして道を見失った人間は、その本能の赴くままに、
同じところをぐるぐると周り始めることになるのだろうか。

老兵は死なず、ただ消え去るのみ、であってはいけない。
老兵は、その生命の尽きるまで、語り続けなくてはいけない。
あの大いなる過ち、その真実を。

とそんなことを思っていたその時、
ふと見れば、手元のIPHONEにメッセージがひとつ。

元気か、おい、昼にラーメンを食わねえか?

あの日をともに生き抜いたニューヨークの古参たち。
なあ、折角生き残ったと言うのに、
性懲りもなくこんなクズのような人生を、
ただただ浪費するばかりの俺たち。

ただ、そう、このラーメン。
これ、これ、これ、これが食べれて、本当に良かったよな。
そうそう、こんな美味いラーメン、あの頃には無かったものな。
生きる喜びって、結局その程度のものであるべきなのかもしれねえな。
味わおう、このラーメン。
911の日のその日に。
死んでいったものの思いも込めて、
味わい尽くそう、このラーメンの残り汁の一滴まで。
おい、メガネ曇ってるぞ。
そういうお前も、鼻水垂れてるぜ。
愚者共はそうやって人は生きていく。
逝ってしまったものの想いを背負って。

「2018・9・11 鳥人拉麵 にて」




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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