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誰にでもやらせる女の伝説

Posted by 高見鈴虫 on 16.2019 嘗て知った結末   0 comments
もしも世界を一瞬のうちに変えてしまいたければ、
ねえ、わたし誰にでもやらせちゃうのよ
そんな言葉を、ふと、呟いて見れば良い。

そんな核爆弾的発言を前に、
え!?
一瞬になにもかもが真っ白になってしまう人びと。
唖然呆然のそのままにぽっかりと口を開けてはわななかせながら、
へえ、そうなんだ、
そんな間の抜けた返事を返すのが精一杯の、
パニック状態にも似た恐慌をきたすことにもなるだろう。

誰にでもやらせる女
いつしか広まり始めた不埒な噂の中、
周り中からの白い目に晒されては
見えないベールの中に隔離状態。
とそんな中、
ふとするとまるで隙をついたかのように
さりげなくもこっそりとひっそりとちゃっかりと、
まずは一番目のお調子者が食いついてくる。

どうしたの?ひとりぼっちで。ふふふ。

だがしかし誰にでもやらせる女は
そのファーストコンタクトを軽くいなす。

別に。
ほっといてよ。
あなたに関係ないでしょ

鼻で笑ってはそっぽを向いた女に
男たちは思い知る。

そっか、いくらなんでも
やっぱり誰にでも、
というわけではないらしい

その教訓を前に
ここに一種の格付けの概念、
うがって言えば選民意識、
月並みに言えば
競争心が芽生える。

そしてよーいドン、
まるで堰を切ったように、
ならばこの俺が、
という楽天的チャレンジー達が次々に食らいついてくる事だろう。
だったら俺も、の迎合派や、
ついでに俺も、の棚ぼたタイプも
タダであればバナナの皮でもヤリマンでも、の業突く張りから、
あらゆる限りのお調子者どもが、
次から次へと敢えも無い理不尽な憤死を続ける中で、
遂には真打ち登場。
イクメンで鳴らした名うての軟派野郎が、
自信満々の嫌味な笑顔を晒しては擦り寄って来て。

だがしかし、この誰にでもやらせる女、
ここに来て、待ってましたの会心の一撃。

ごめん。
あなたはタイプじゃないの。

ええ、でも、待てよ。
お前、誰にでもやらせるって・・

だからごめん。
あなたとは、
あなたとだけは、
そんな気にはなれないの。

その衝撃のニュースの中で、
ここに来て誰にでもやらせる女はいつしかすっかり時の人。
スターのオーラさえ漂わせる事にもなる。
そんな姿を、遠目から物陰から、
さりげなくも確信的に、
その胸に尻に耳に頸に唇に、
熱い視線が絡みついて来ては、
己の邪心のそのあまりの生々しさに、
勝手にすっかり怖気づいては、
やっぱり俺なんかじゃ無理だよね、
発射もしないうちに自爆モード、
あるいはその火薬そのものが湿気ったまま。
そんなその他大勢のモジモジ君達からの
切なげな溜息ばかりが延いては返す波のように聴こえて来る筈だ。

だがしかし、どうした事か、
この誰にでもやらせる筈の女が、
蓋を開けて見ればしかしその誰ひとりにも
鼻で笑っては、バカじゃないの?
と繰り返すばかり。

ええええ、なんで?
だって、誰にでもやらせる筈じゃなかったの?

とそんな秘めたる騒然の中にあって、
そこでいきなり、
思い切りどうでも良い
つまりは何があっても絶対に好きにならないであろう
そんなサイテー男の誘いに、OK!
と軽く乗ったふりをして見せては、
じゃね、行って来まーす。
そうなればもう完全に話題彷彿である。

あのこ、
よりによってあんな奴でも良いのなら、
から始まって、
男を見る目が無い、やら、趣味が悪いやら、
いったい何を考えているんだ、と大炎上。
憶測が憶測を呼び噂が噂を焚き付けては、
実はここだけの話、の陰謀論的真相暴露のでっち上げ。
実はこっそりあいつとやったらしい。
実はしっかりあいつもやらせてもらったって。
あいつとやったそいつとやった、
あいつともあいつともあいつともやったんだって
そんな幼気なスキャンダルのデマゴーグの中で、
なんだよ誰にでもやらせるくせに
あんな奴ともやってるくせに
なんで俺ではだめかいね!?
なんていう涙まじりの罵倒を浴びることにもなり。
そしてその中の何人かは、
そんな馬鹿げた狂騒にすっかりのぼせ上がっては、
逃げるものは追わずにいられぬこのバカ犬本能、
俺があいつよりも格下なんて絶対にありえない的なケチな自尊心から、
そして夜な夜な襲われる抑えるに抑え難き妄想のドグマの虜となっては
恋に恋する熱情の中ですっかりしっかり勝手に出来上がってしまっていたり。


という訳で
ひとたび誰にでも
という噂が流れたとたんにはじまる
この七転八倒抱腹絶倒のドタバタ劇
そう、やらせる 、そのキーワードこそが
この退屈な日常生活の冒険の始まり。

誰にでもやらせる筈が実は誰にもやらせない女、
そんな殺生なビッチを続けているうちに
遂には男どもの逆鱗に触れては、
待ち伏せされたり夜道でつけられたり
飲み物になにかを仕込まれたり
下手をすればいきなり拉致られそうになったり
なんて事さえもおきるのであろうが
恐れるには及ばない。
そんな事態を事前に予測していれば
軽はずみな計略の前提であるところの不意打ちは
しかし決して功を為さない。

その空振りを繰り返せば繰り返すほどに
いきり立つ男達。
遂には物陰に引き込まれては
壁ドンなんて食らったりもするのだろうが、
そこで一発伝家の宝刀の決め言葉。

どうでもいいけど
わたしセックスの下手な男
嫌いなんだよね

相手の瞳をガン見しながら
そう言い放ってみるがいい。

目を逸らしたら男の負け。
はしゃぎ始めればただの馬鹿。
笑って誤魔化すのはただのヘタレで、
絶句して涙ぐんだら救いようのない根性なし。

そしていつしか、
あの女、やるなあ、
男たちは初めて、
その誰にでもやらせる女に
一目を置く事になる。

そして世界でただ一人その真相を知る女は
そんな男たちの狂騒がその浅はかさがあさましさが
つくづく馬鹿馬鹿しくも思えて来るに違いない。

あるいはその偽りの熱情にいつしか自らも踊らされて欲を出した途端にいきなり魔法が解けるその一瞬。
なぁんだやっぱりそうか。
すっかりと見透かされては化けの皮が剥がされ、
嫌な女、の一言をもって誰からも相手にされなくなっても、偽りの幻想に騙される馬鹿ぐらい
ひとりやふたりは残っている筈だ。

あるいは自ら率先して追われる白兎を演じながら、
追いすがるバカ犬の中から虎視眈々と一番マシなのに狙いを定めては、
123で息を合わせてラビット・ホールに飛び込んで。
そんなトロフィーガールとして締めくくるのも悪くはない。

ただそこに、真実の愛、
なんてものを探そうと思ったとき、
実はその本当に好きな人は
このにわかなヤリマンブームの狂騒の中で、
たった一人、一番遠いところで一番無関係で一番不機嫌であった筈のあいつ。

ねえ、どうしたの?
え?別に。
最近大人しいじゃないの。
余計なお世話だ。俺に話しかけるな、このヤリ・・

その先を言うに言えない、そのジレンマの中に、
実はこのあいつが一番傷ついていた、
その事実に気づくだろう。

バカおんな。
嘘よ 全部デタラメよ。
全部知ってるんだぜ。
このヤリマンのクソおんな
顔も見たくない。
わたしを信じてくれないの?
そんなこと誰が信じるか。

そう吐き捨てる男の瞳を見つめながら、
あなたよ、と一言呟けば良い。
誰がなんと言おうと
世界がどうあろうと、
あなただけは私を信じてくれる、
そう思っていた、と。

あいつははっとして目を見開き、
そしてふっと笑っては、
馬鹿馬鹿しくて話にもならねえと、
背中を向けて歩き去る筈だ。

その背中を見つめながら、
思うに違いない。
私はこの男を信じられるか?と。
そして男は自身に問い続けに違いない。
俺はこの女を信じられるか、と。

誰にもでもやらせる女
その噂が流れた途端に繰り広げられる
このドタバタ悲喜劇。

言うまでなく、
恋は駆け引きであり、綱引きであり、
時として観客参加型の劇場でもある。
ただその中にひとたび、信じる、という概念が加わった途端、
恋と言う不埒な魔法は一瞬にして、
愛という修羅の道に迷い込む事になる。

信じる、事こそが人間の土壇場なのだ。
信じる、という事こそが、心の根幹、なのである。

では改めて問おう。

そして愛とはなにか?

その答えを見つけるドラマを
人生 というのだよ、なんちっち。

少年老い易く学成り難し。
いのち短し恋せよ乙女。

改めてこの人生という迷宮、
そのドラマの魅力を魔力を残酷さを知らぬものには
男は、女は、人間は、社会は、
そんなこの世の成り立ちは、
何一つとして見えては来ない。

そしてその謎解きの答えは
浮かぶ泡沫のように
かつ消えかつ結んでは、
絶えず豹変を繰り返し、
そしてそれは
生きとし生きる限り
永遠と繰り返される事にもなるのだ。

と言うわけで
人生などそんなものだ。
人間など所詮はその程度のものなのだ。
まずはそこから始めるべきなのだ。
だからこそ人間は、人生は、
生きることは、面白いのだ。
それを知らぬ者には
何一つとして何も分からない。
分からないくせに
分からないからこそ
訳もわからず
女はどうの男はどうのと手前勝手な大口を叩けば叩くほどに、
どうでもいいけどこの人
モテないんだろうな、
とその真相を一言で見破られては、
お可哀想に、と思われるのが関の山なのだ。
だってこの人、なんにもわかってないんだもの。
だったらちょっと、からかってやろうかしら、
なんて茶目っ気を起こしては、
ねえ知ってる?
わたし誰にでもやらせちゃうのよ、
そんなそぶりをちょっと見せるだけで、
その終わりなき屁理屈の罵詈雑言の
ヘイトの陰謀論のそんな空虚な能書きのすべてが
一瞬のうちに瓦礫と化してしまうに違いない。

と言うわけでまたひとり、
この漆黒のヘイト社会に果敢に戦いを挑む
誰にでもやらせてしまう女の伝説が始まる。

あのこ、誰にでもやらせちゃうんだってさ。
えええっまじで!?

その噂が噂を呼ぶ不穏な狂騒の中で
その真相を知る者は、
世界でたったあの女ひとり。
その素っ気なくも謎めいた横顔をまえに
まさかと絶句を続ける男達の
眠れぬ夜がまた始まるのだ。

改めて言わせて貰う。
所詮この世は男と女。
人間なんて社会なんて
所詮はそんなもの。
それ以外のことは、
適当に聞き流していれば丁度良い
所詮はその程度のものなのだ。

そんなどうでも良い事ばかりに窒息寸前の一酸化炭素中毒。
ただ、誰にでもやらせる、
そのそぶり一つで
一瞬のうちにどんでん返し。
目の前の世界はドラスティックに豹変を始めるに違いない。

わたし誰にでもやらせちゃうのよ。

その一言がこの漆黒の闇に閉ざされた世相を覆す
究極の必殺兵器に成り得る筈なのだ。

さあ永遠の少年たちよ
そして永遠の少女たちよ
電気を消して元気をチャージ。
ドキドキしようぜ、思い切り。
その合言葉は

ねえ、わたし誰にでもやらせちゃうのよ
えええええ嘘ぉぉ!だったら俺とも!?

さあ暗い世相よ退屈な人生よさようなら。
誰にでもやらせる女を巡る
冒険の旅を始めよう。

まあいいじゃねえか。
人生つまるところその程度。
それ以外のことは
また後日ゆっくり考えればいい。
棺桶に入ってからでも
遅くはねえだろ。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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