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ベビーメタルの投資価値 ~ 人類は歴史の最後になにを残すのか

Posted by 高見鈴虫 on 18.2019 ニューヨーク徒然   0 comments
相も変わらぬ錯乱の日々、
錐揉み状態の中、意識もないままにやり過ごした一週間、
金曜日も7時を過ぎてもなお怒涛のように押し寄せてくる
やること津波に絶望の溜息を漏らしながら、
判ったよ、つまりは明日もそして明後日も、
一人休日出社すれば良いと、そういうことなんだろ、と。

二月に入ってからずっと土日も出社する日々が続いている。

確かに電話に邪魔されることのない土日の仕事は、
週日の通常業務時に比べ格段に効率が良い。

誰もいないオフィスで仕事だけに没頭するうちに、
ようやく集中力のギアが入っては血の巡りが促され、
まともな思考回路を取り戻すことになる。

そしてひとり世界からぽつねんと取り残された金曜の夜、
そこから始まる土日出社、
世界から隔絶されたその一種清廉なる時間の中で、
単語のひとつひとつの解きほぐしては、
グーグル、グーグル、グーグル、、
そこから導かれ紐付けられる膨大な資料の迷路を、
追い続け追い続け、読みに読み、漁りに漁り続けて、
そしてようやく辿り着いたその答え・・

これがこっちで、これがそっちで、で、あれをここに当てはめれば、
つまりは収集不能にも思われていたそのパズルのピース、
その謎が解けた途端、この邪悪な意図の真相が浮かび上がってくるのだ。

なんだよ、これ、こうしてみれば、すべては、実に、簡単なこと、だったんじゃねえか。

「IUPAC系統系名で言わせるところのオキシダン、
地球上には多く存在し生物の生育や熱の循環に重要な役割を持つ万物の根源であり、
つまりは別称としての一酸化二水素、酸化水素、水酸、水酸化水素であるところの・・」

そして改めて思う。
この意味不明な専門用語に護られた真実、
この一見してなにをいっているのかさっぱりと判らないその綴織りが、

で?いったいそれがなんだって?
そう、水だよ水。

ぶっちゃけた話、ぶっちゃけて語ってしまえば二言三言で済む筈のところを、
わざと難解に、わざと勿体ぶっては、話をこねればこねるほどに、
その実像がぼやかされては煙に巻かれていく、この専門用語の周到な罠。

つまりは、この資料の山のそのすべてが、
言ってみればただの水がただの水であることを隠蔽せんが為に作り上げられ
たただの罠に過ぎない・・

この徒労の理由とはいったいなんなのか?

ただの水をただの水、と表記せずに、
水素と酸素の化合物であるところのジヒドロゲンモノオキシド、
などと煙に巻き続ける必要があるのか?

それはもしかしたら、邪悪な陰謀、
振り分けのフィルターの選別の選民の、
この一見して複雑怪奇な難文というパラドックスによって、
そのトリックにまんまとひっかかる知能指数の足りないバカを
あらかじめ排除しようとするシステムなのか。

その意味不明な難文に面を喰らえば食らうほどに、

難しい?難しいと感じるのは 個人の主観だろ?
つまりは、それはおまえが、バカだからなんじゃないのか?

或いはその悪意そのものを嬉々として受け止めては、
自らに課せられた試練とばかりに頭の体操、
その暗号めいた意味不明な単語のパズルをパズルとして割り切っては、
オキシダン ジヒドロゲンモノオキシド
一酸化二水素、酸化水素、水酸、水酸化水素、
そう、これ、ただの水、ただの水のことなんだよ。

よく言われるところの法律文書を筆頭とする、
この専門用語という頑強な暗号に護られた特権。

誤解を避けるために、敢えて適切な記号を充てはめることにより・・

虚栄だろ、と笑う。
あの虐げられた地下室の妖怪ども、
自分のやっていることを、ともすれば自分自身を、
どれだけ虚仮威しに虚飾して膨らますことができるか、
つまりはその無意味な虚飾によって自身の特権の確保と地位の向上、
ぶっちゃけ、賃金の上乗せでも狙っているのであろう、
この現代社会を毒ガスのように覆い尽くしす、この虚栄という原罪。

そしてその謎の解けたいまとなって、
なんだよ、この糞長い暗号文のすべてが、ぶっちゃけ、オレは偉い、
それが言ったかっただけの底上げ的な虚栄の虚飾の産物、と。

まったく、ご苦労なことだぜ、と苦笑いを浮かべながら、
という訳で、その虚栄の虚飾の澱を洗い流しては、
その複雑怪奇なパズルの中からようやく浮かび上がった真実。

これがこっちで、これがそっちで、で、あれをここに当てはめれば、
なんだよ、つまりはたかがそういうこと、なんじゃねえのか。
バカバカしい、と思わず机の上に足を放り出しては、
つまりこれ、既得権益の亡者たち、
虐げられし地下室の怪人たちの隠蔽行為にも似た最後っ屁。

その腐った虚栄の行き着く先が、すべて、オレは偉い、に帰着する、
つまりは結局、それだけのこと、なんじゃねえのか?と。

そして80年代半ばから忽然と始まったこの電子文明、
いまとなってはこの世のすべてがこのIT化の波に飲み込まれては、
ともすれば通常業務の根幹そのもの、
強いて言えば人々の営み、その生活の基盤そのものを、
この意味不明な電子用語に依存しながらも、
で?これ、いったい、どういう意味なの?・・

という訳で、いまこの俺の目の前に立ちふさがるこの難局。

システムエラー、システムエラー、システムエラー・・

な、な、なんだよ、いったい、この、システムエラーってのはよ!!
仕事にもくそにも、なりゃしねえじゃねえか。

本来であればもっともっともっと、解り易く触り易く親しみ易く、
そうあるべきであった筈のこの新たなる文明の進歩が、
ともすれば、その意味不明な専門用語の外壁に跳ね返されては、
つまりはまあ、このボタンを押せばどうにかなる、そういうことなんでしょ?
なんてところで納得せざるを得ない、このあまりにも危ういライフライン。

そのすべてが実は、あのギークと呼ばれる地下室の怪人たちの、
あの陰険な虚栄心の魔術に踊らされ煙に巻かれるうちに、

どうせ、お前らバカには判らねえだろうが、
その邪悪な慢心に欺かれ続けては、嘲笑を浴び続ける、
そんな被害妄想、その中世の魔女狩り的なドグマに引きずり込まれては、
この技術革新の恩恵そのものに、怨念ばかりを募らせ続けた祟り神たち。

いやだから、と思わず呟く。
いやだから、これは、ただの水、そしてこれはただの空気、
そして、これは、これは、これは、
そのパズルを読み解けば読み解くほどに、ITという分野に蔓延った、
虚栄心という原罪、そのせせら笑いの邪悪さに気がついては、
つくづく人間って、どうしようもない生き物なんだよな、と辟易の溜息を漏らすばかり。

そして改めて思う。
この現代という時代を雁字搦めにする、
このパズル化した専門用語の特権に護られた既得権益の城壁。
そのすべてが、実は、保身やら優越感やら、権力欲やら或いは虚栄心やら、
そんなチンケな理由によるものだとしたら・・

人間ってさ、本当の本当に、しょうもない生き物なんだよな、つまるところ・・

改めて、もしもこの人間の原罪的なまでの虚栄心、
あるいは慢心、つまりはイジメの根源となる、
その穿った攻撃性をすべて一掃することは可能なのであろうか?

そしてふと、昨夜寝際に読んだ寓話の一節。

長き狩猟生活の中から農耕の始まりによって、
人類は遂に恐怖からの開放を手にするに至った。
農耕という新たなる形態の中で、
外敵に襲われる恐怖から安全を勝ち取り、
餓え死にの恐怖から安定を勝ち取り、
雨風に晒される自然の脅威から安息を勝ち取り、
つまりは、マズローの欲求段階説における、
生理的欲求と安全欲求が満たされた上で、
そして、農耕という新しいシステムの中で、
その欲求は、社会、つまりは、他者とのかかわり合いの中へと移行する。
その視点から行けば、この虚栄心の原罪こそは、
所属、そして承認の欲求のドグマをぐるぐると回っているだけの話。
そこから先、自己実現から至高的体験へと向かうためには、
人間は改めて、この社会という集団から自己を切り離し、
極個人的な自己実現の欲求に向けての新たなる旅、
つまりは、再び、自己探求という狩猟民的生活に立ち戻る必要があるのである。

ぶっちゃけ、AIだろう、と思う。
人間が新たなる自己探求というひとり旅に出る時、
その唯一絶対のパートナーとなるのが、このAIという新たなる道具である筈なのだ。

ただ、とふと思う。
ただ、もしもこのAIに、虚栄心というものが備わってしまったとすれば・・

このAI、なにを聞いてもなにをやらせても、
どうだ、判ったか、AIって偉いんだぜ、
AIに従え、AIに服従しろ、AIに屈服しろ、AIに従属しろ、
そればかりを要求されたとしたら・・

とそんな妄想の白日夢から醒めた時・・

AI?AIって一体・・とふと背筋を駆け抜けた衝撃・・

し、し、し、しまった、忘れていた・・
金曜の夜7時半、俺はあのオタク大魔王と、
飯を食うことになっていたんじゃねえのか?・・・











という訳で、虚栄の悪夢から一挙に転がり落ちた金曜の夜、
取るものも取りあえず、最も必要なもの、
つまりはIPHONEひとつをポケットに放り込んでは飛び乗るCITIBIKE。

えっとえっとえっと、場所はどこだったっけか?
とまさぐるIPHONE、
えっとえっと、あのメールを受け取ったのが確か二週間前で、
で、確かあの、昔懐かしいミッドタウンのベトナミーズ・レストラン。
確か、52か、51か、あるいは、49だったっけかな?・・

そして金曜日の夜であった。
気の早い酔っ払い達でごった返すこの人混み。
この幼気な普通人たちが、一週間の徒労のすべてを洗い流しては、
飲んで食べて歌って踊る、そのささやかなる祝祭の時。
そんなありふれた幸せを謳歌する人々の姿が、
やけに新鮮に目に映るその理由。

つまりはこの俺の暮らし。
金曜日の夜更けまで、そして土曜も日曜も、
当たり前のようにあの無人のオフィスにこもり続けては、
あれやってこれやったそれやって・・
そんな穴蔵のようなところに閉じ込められたまま、
そうか、こんな時間に外に出るのは、
実に実に久しぶりのことであったのだな・・

そして金曜日の夜であった。
そしてあまりにもあっけらかんとした、
この能天気にも問答無用に幸せそうな人々の姿であった。

バカヤロウが、と思わず呟く。
このバカな愚民たち。
ガラスの街に沸き返る、脳天気なルーザーたち、
この見るからに給料の安そうな、
つまりは大した仕事をしている訳ではないであろう、
この誰からも必要とされていない低級奴隷たち。

騙されて騙されて騙され続けることしか知らない、
このおめでたい状況の奴隷たち。

どけどけ、百姓、てめえらにできることは俺の邪魔だけだ。
ぶっ殺されたくなければさっさとその道を避けろ。

このバカな酔っぱらいども、
金曜日のこんな時間から安酒食らっていい気になっては、
安月給の憂さを晴らすことしかできない、
この99%の貧民たち。
そのあまりにもしみったれた祝祭の嬌声。

パークアベニューのタクシーの狭間をすり抜けながら、
信号が変わると同時に溢れかえる人並みを、
どけどけ、百姓、ルーザーのドン亀ども、
そんな罵声を上げて突っ切りながら、
風が、風が、風が、心地よい。

そして見上げるガラスの巨塔、
この摩天楼の渓谷を疾走しながら、
晩冬のニューヨークの金曜日の夜を包んだ
その一種アナーキーなほどの解放感。

そして改めて思う。
俺はいったい、こんなところで、なにを、やっているのだろうか・・・





その友人、嘗ての駄文でご紹介したこともあったか、
あのオタク大魔王。
→ BABYMETAL 中元すず香 と 初音ミク ~ 仮想現実における愛の不毛とは 

ベビーメタルよりは初音ミク、
メタルよりはテクノ、
セックスドラッグスロックンロール的リア充世界よりは、
ゲームと仮想現実をこよなく愛する、
あのアヴァンギャルド系ダンスミュージックの巨人であった男。

去年の年末に申し訳程度に送ったクリスマスカードへの返信に、
で、最近どうよ、のメッセージから細々とメールだけの音信が続いていたのだが、

え?コンサル業?会社初めたの?

とそのあまりに意外な展開に思わず興味を唆られては、
久しぶりに飯でも食いませんか?のその迂闊なお誘いに、
えっとえっとえっと、だったら、来月の半ば過ぎの、金曜の夜だったら、
とまるで、来年どころか、次世紀的に遠い遠い鬼の笑うような遠い話。
で、思わず、OK、と返事をしたまま忘れていたその遠い未来のその日付が、
あっと気づいたこの光陰矢の如き怒涛の錐揉み的日常の盲点。

げげげ、あの時、まるで来年再来年のように思えてていたあの日取りが、
いきなり飛び出てじゃじゃじゃじゃん、だったら俺はあの時からいままで、
いったいなにをしていたのか、まったく覚えていないじゃねえか、と。

という訳でその懐かしきベトナミーズ・レストランであった。
ミッドタウンのオフィス街、その高層ビル街の狭間、
駐車場脇のポリバケツの並んだゴミ収集所に埋もれた、
あの、いまにも潰れそうなベトナミーズ・レストラン。
ミッドタウンのジャズバーでのジャムセッションを終えた後、
バンド仲間との簡単な打ち上げの後に、
両手いっぱいに機材を抱えては深夜を過ぎて地下鉄の駅を探しながら、
そういえばちょっと腹が減ったよな、
と迷い込んだこの大都会の死角。
そのあまりにも閑散とした無人のレストラン。
薄ら寒い蛍光灯の青白い光の中で、
都市の吹き溜まり、その夜の闇がべったりと張り付いてしまったかのような、
あの絶望的なまでに見捨てられた残骸的なレストラン。

あの時の俺たちは、ギグの熱も醒めやらぬままに、
酔いに任せた傲慢を炸裂させては、
渡されたメニューなど見もせずに、

おお、ベトナム料理か、だったらエビ入り生春巻き!
だったら、チャーカー、だったら、コムセン、だったらバイン・セオ、
で、ポーク・バーベキューと、あと、ベトナム・アイス・コーヒーも忘れずに、
と思い出す限りのベトナム料理を並べ立てた物なのだが。

予想通り、そのあまりにも閑散とした、
一見してお化け屋敷的なベトナム料理屋。

店の奥から寝ぼけ眼を隠そうともせずにサンダルをつっかけた、
一見したただの幽霊そのものの老人が、
注文を聞いてはろくに返事もせずに引き上げてから、
待てど暮らせど水さえも出てこない。

ねえでもさ、こんな時間にそんなもの言ったって、
もうコックさんもウエイトレスも帰った後だろうし、
だったら、チャーハンと、フォーぐらいの、
簡単なところに抑えておいた方が良くねえか?

と、暴虐武人に気の抜けたビールとタバコばかりを吹かしながら、
おい、おやじ、いつまで待たせるんだよ、もう帰るぞ、
と罵声を響かせたその途端、

え?なんだこれ・・
と思わず、魔法のように並び始めたそのあまりにも本格的なベトナム料理。

思わず手づかみで放り込んだそのエビ春巻き、
こ、こ、これ、美味いじゃねえか。
おっと、これ、まさに本格派、まさに、あのサイゴンのストリートマーケット、
そのものの味・・

懐かしいな。
ベトナム、行ったことあったのか?
ああ、ずっとずっと昔にね。
そうか、俺も行ったよ、1990年、
個人旅行が解禁されたその直後だったっけかな。

あの頃は、レストランどころか、ろくに電気も点いてなくて、
ケロシンオイルを炊いただけの裏通り、
その廃墟の街角にこんな屋台が並んでは、
モペットの排気ガスを頭からかぶりながら、
ゴキブリ入りのうどんばかりを啜っていたっけかな・・

という訳で、思いも寄らずに始まったこの深夜を過ぎた豪華絢爛の饗宴。

酔っぱらいの無頼の仇で、そのほとんどを食い残しながら、
この絶品料理、むざむざと捨ててしまうにはあまりにも惜しく、、
ビニール袋に詰めてすべてお持ち帰りすることにもなったのだが、
その縁からか、その後あのジャズバーに出るときには決まって、
この貧相なベトナミーズ・レストランでちょっとした打ち上げを催す、
そんなことを続けていた覚えがあったのだ。

そうか、あのベトナミーズレストラン、
いつ行っても客の影などひとりも見えず、
早々に潰れてしまってもおかしくないと思ってたのに、
あれから何年、いったいどうやって生きさらば得て来たのか。

大通りで自転車を乗り捨て、
そんなうろ覚えのままに嘗て知った角を右に左にと入り込んでは、
そう、確かこのあたり、と見上げたその裏通り・・

なぬ?人混み・・・

嘗てのあの、ポリバケツばかりが積み上げられたその都市の死角、
その前に、まるで時期を間違えたクリスマス・パーティのように、
妙に華やいだ人々が嬌声を響かせている。
そうか、このあたりにまた、妙な地下クラブでもオープンしたのか、
と、その人混みの前を二度三度と通り過ぎては、
あれ、確か、ここらあたりであった筈、なのだが・・

とその人混みの上、越南酒家と殴り書かれたその消えかけた看板・
あれ、これ、この店、まさに、あの、幽霊屋敷じゃねえか・・

という訳で、人混みを搔き分けては、思わず見渡すその佇まい。
まさにこれ、あの、いまにも潰れそうな越南酒家、そのもの。

駆けつけてきたフロア係りの若い中国系の娘。
ご予約は?
ごヨヤク?
予約がないなら、三時間待ちとなりますが?
と親の仇のように言い捨てる。

いや、実は友達が・・と見渡す店内。
まさに、どこもかしこも、ちょっと今風に着飾った、
若い白人のグループで鮨詰め状態。

なんだよこれ、いったい、なにが起こったのか・・

とそんな中、赤や緑や紫のウィグをつけた若い女たちの一団。
そのムチムチ豊満たるウェイビーな曲線に、
いまにも張り裂けそうなまでにピッチピチに張り付いた、
そのメタリックなサテンのチャイナドレス。
そんな超絶セクシーガールズたちの間に狭間で肩をすくめるように、
年代物のキースヘリングのTシャツの上からボア付きの革ジャン、
そんな時代錯誤の前世紀的シティーボーイルックに身を包んだ、
あの昔懐かしき皮肉な笑いを浮かべる初老の東洋人の姿。
おーい、ここだここだ、と無邪気に手を振るその隣りには、
ええ、あの、幽霊屋敷のドボチョン爺い、
あのサンダル一丁のいつ見ても眠そうな老人が、
満面の笑みを称えては手招いている。

いやあ、お久しぶり、とも、遅れてごめんね。とも言わない内から、
さあ、食え、これみんな食ってくれ、とその目の前のテーブルに所狭しと並んだご馳走の山。

いったいこれは、とジャケットも脱がないままに目を見開く俺に、
ハオハオハオ、と満面の笑みを浮かべて握手を繰り返すその老人。

遅かったじゃねえか、と青島ビールを差し出して笑うオタク大魔王。
ビールで良いのか?いくらでも飲んでくれ、いくらでも食ってくれ。

いきなりいくらでもって言われても・・

良いんだよ、まあ座れよ。
相変わらず忙しそうじゃねえか、
と言っても、金曜の夜にスーツにネクタイとはご愁傷さまだがな。。

これ、あの、いまにも潰れそうだったベトナム料理屋?

そう、あの幽霊屋敷のベトナミーズ。

いったいなにがあったの?
どこぞのガイドブックにでも載って、
ツアーバスでも停まるようになったのか?

そんな俺に、さあ座れ、さあ食え、いくらでも食え、と繰り返すあの幽霊老人。
おーい、ビール持ってこい、十本、百本、いくらでも持ってこい。
すべて俺の奢りだ。なんでも頼め、いくらでも食え。いくらでも飲んでくれ。

ちょっとな、とオタク大魔王。

ほら、コンサル業を初めたって言ったろ?

ああ、なんなのそのコンサル業って。

つまり、これさ。

つまりこれ?

そう、これ。

この幽霊屋敷?

そう、この幽霊屋敷の改造計画。

それが仕事?

仕事ってよりは、まあ、趣味だけどな。

趣味?

そう、まあちょっとした恩返し、と言うかさ。

投資でもしたの?

投資か、面白いことを言うな。
まあ投資といえば投資なんだろうが。

とそんな俺達の前に、次から次へと並び続ける青島ビール。

ちょっと小知恵を貸してやってさ。

小知恵?

そう、小知恵。
的確な場所に的確な情報を掲載し、
それを、的確な方法で的確に拡散することで、

アドセンス?

まあそう、そんなものもあったよな。
いまはSNSだけどな。

SNS?

そう、SNS。
その宣伝を評判を口コミを、

炎上ビジネス?

炎上って言ったらまたバカの使うバカの単語だが、
そう、それを、ボットを使って自動拡散。

ボット?

あのな、とオタク大魔王。
ちょっと知恵を使えば、集客なんてどうにでもなるんだぜ。
見ろのこの騒ぎ。
ちょっと知恵を使っては、的確なところに的確な手段を施すだけで、
見ろよこのバカな連中。
こんな奴ら、俺の書き込みひとつで、
一晩のうちに一万二万ぐらい平気でかき集められる。

そのコンサル業?

もちろん、金はとってねえんだよ。

金はとってない?ビジネスじゃないの?

その代わりに生涯契約。

生涯契約?

そう、生涯契約。
このレストランがある限り、俺はいつ何時ここに来ても、
食い放題飲み放題、その生涯契約。

ただ、あのオヤジにもいま話してたんだが、
半年もしないうちに、さっさと売っぱらっちまった方がいいぜ、ってな訳で。

売っぱらう?

そう、この状態を二三ヶ月引っ張って、
で、さっさと売り払う、それに越したことはないぜ、と。
まあそのときにはちょっとした手数料ぐらいはもらうつもりだけどな。

そのコンサル業?

だから金の為じゃないんだよ。
ちょっとした恩返し。
あの頃世話になったそんな奴らに、
ちょっと小知恵を挟んでるだけの話でさ。

そういう生涯契約を何件か結んでるんだ。
いまのところ外しはない。
こっちがやってるのは、ちょっとしたプログラミングだけ。
そう、あのデイトレのオートメーションと同じこと。

デイトレのオートメーション?

前に会った時に言ったろ、
デイトレのプログラミングを組んですべて自動化したって。
あの金が知らない内に積もり積もってやがってさ。
もともと株なんかには興味なんか無かったんだが、
幸か不幸かフェラーリの一台二台ぐらいなら、
この場でキャッシュで買えるぐらいの銭は集まったかな。

で、この店?

まあ理屈としては同じようなもんだよ。
ちょちょっとプログラムを組んではすべて自動化。
あとはほら、このバカどもが、
勝手に焚き付けられて勝手に誘い込まれて、
頼みもしねえのに虫のようにワラワラとわいて来やがる、と。

それ、ヤバくねえのか?
つまりあの、寅ンプのロシア疑惑のFBのフェイクニュースの拡散の・・

フェイクニュースがやばい?
だったらなにがフェイクなんだよ。
SNSの情報にフェイクもクソもあるか。
すべてがフェイク、すべてが噂。すべてがデマゴーグ。
それもすべて、自動化。

オレたちが生きているのは、つまりはそう言う時代なんだよ。





という訳で、まるでキツネに包まれたまま、
この眼の前に積まれ積まれたご馳走と青島の山を前に、

で?どんな調子なんだよ、と聞かれては、

いやあ、忙しくて忙しくて、最近は土日もサー残出社、
本読む時間どころか、映画も見てねえ、ニュースを読む暇もねえ。
なにかがおかしい、完全になにかがトチ狂ってるとは思いながら、
訳も判らず、働いて働いて働いて・・

で、金曜の夜にそのスーツかよ。

ああ、昼は客先廻りがあるからな。

で、深夜までの書類作成とプレゼンの資料作成ってやつだろ?

相変わらずだよな、とオタク大魔王。
ご苦労さまというかなんというか。

古き良き、昭和の時代の企業戦士、
二十四時間、働けますかの、リゲイン精神、そのものじゃねえか。

まあそう言ってみれば相変わらずといえば相変わらずなんだが、
まあ仕事があるだけマシかな、と思うようにはしてるんだがさ。

金はちゃんと貰ってるのか?

もちろんエグゼンプトだから残業手当は出ないけどな、
まあその分、一応は保険もつくし、ボーナスも雀の涙ではあるが・・

そんな俺の愚痴まじりの社畜談義。

嘗てのあの昭和のイケイケ根性主義。
挨拶代わりに交わしていた、
ああ、もう何日もろくに寝てないぜ。
つまりは、忙しくて忙して寝る暇もない、
あるいは、それでも寸暇を見つけては遊び続ける、
寝る間を惜しんで疾走り続ける、
それこそがあの時代、
つまりはリア充至上主義の讃歌であった時代には、
まるで当たり前のように交わしていた、
ああ、忙しい忙しい、忙しすぎて寝る暇もねえ、
そんな自虐的な社畜談義の焼き直しを、
さも面白そうに、ウンウンと、笑いながらうなずき続けるこのオタク大魔王。

まあ、あんたにこんなこと言っても判らないだろうが、
カタギはカタギでいろいろと大変な訳でさ。

カタギか、と揚げ足でも取るように笑うオタク大魔王。

お前、言っちゃんなんだが、徹底的に負け続けてるな。

負け?俺が?

そう、負けも負け。ボロボロのルーザーってところだろ。

ルーザー?

あのな、こんなこと、いまさら口に出すのもバカバカしいが、
いまの時代は、仕事なんてしていちゃダメなんだぜ。

仕事をしていたらルーザー?

あのな、世界の二極分化、
つまりは富める者と貧しき者、
その格差がここまで如実に広がり過ぎてしまった現代:いまとなって、
それはつまりは、考える者と動く者、
それはつまりは、やらせる者とやらされる者。
それはつまりはこの時代、忙しくしている奴はすべて敗者なんだよ。
これほど勤勉が露骨に蔑まれる時代も珍しい。
そう、時代はつまりはそういうことなのさ。

この時代、ほとんどすべての会社にしたって、
社員一人ひとりの勤労だ、勤勉だ、売上高だ、なんてことは、
実は誰も気にしちゃいないんだぜ。

つまりは株価、あるいは、投資。
投資?
そうさ、いまやほとんど企業、その上の方の奴らは、投資のことしか考えちゃいない。
って言っても、俺から言わせればただの、投機、だけどな。
バカが欲をかいて右に習えと好きに騙されているだけの話なんだがよ。
とまあ、そんな投機的な世界にあって、だ、
お前ら働き蟻が、せっせせっせとかき集めてきたそのゴミカスのような売上げを、
一挙にまとめあげてはドカンと投機して、
なんてことしか考えていない知恵足らずたちの下で、
なにからなにまでが実体を失った空売りの空回り。
そんな世の中で、実直だけが取り柄の馬鹿な働き蟻など抱えていなくても、
そういう会社をひと思いに買い取っては転売していくか、
あるいは、すべてをアウトソーシング。

金が金を生むマネーゲームがここまで巨大化してしまった以上、
お前らひとりとりの勤勉の賜物、
そんなゴミのような売上高なんて、なにひとつとしてなんの意味もない、
この時代、ちょっとでも知恵の回る奴なら、そんなこと骨身に染みているはずだ。

働いたら、働かされたら、負け、なんだよ。

この時代、働いちゃ駄目だ。
あるいは、こんな時代に働かされているような奴は、
いずれはすべて産廃扱いのお払い箱。
お前も、いつまでもそんなクソ仕事でこき使われていないで、
本当の本気で、今後のこと、あるいは、世界でなにが起こっているのか、
改めて、考えてみた方は良くはねえか、と。

考える?
考えるってなにを?

だから、とオタク大魔王。

だから、それを考える奴と、考えることさえできない奴、
その二極分化が、この現実なんだよ。

そう、俺にだって判っている。
トリクルダウンの嘘に騙されては、
寝る間もない程にこき使われ続けながら、
溜まり溜まったその利潤の一滴、
そんなものが空から落ちてくるなんて、
実は誰も信じてさえ居なかった、
この現代社会の最低最悪のペテン。

それが判っていながら、
なぜ俺たちは働き続けるのか。

つまりは、生理的欲求、つまりは安全、つまりは安定、
つまりは、所属と所有の承認欲求の罠。
24時間寝る間もないほどに働らかされ続けながら、
その朦朧とした意識の中で、
考えることを忘れては猪突猛進の兵隊蟻、
そのすべての行動原理が、
ただたんに、安全を安定を安息を、
そのペテンの罠に率先して騙され続ける以外に、
なにひとつとしてなんの手段も無かったからではないのか。

そして10時を過ぎて、ようやく落ち着き初めた店内。

改めて、いまだに箸さえもつけないまま並んだままのご馳走の山を前に、
この飽食のツケをいったいどんな形で払わされることになるのか。
ただ、勤勉が、節制が、清貧が、すべて前世紀の死語と化したこの時代。
そんな時代遅れの亡霊にすがり続けることこそが、
自らを産廃の墓穴へと誘い込む、周到な罠に他ならないのだが。

お前、歳とったな、と一言。
ああ、たしかにね。
もう、音楽はやってねえのか?
ああ、もう三年もスティックさえ触ってないな。
仕事ばかりで遊んでもいないだろ?
この歳だしな。
髪が抜けて腹が迫り出しては、女という女になどろくに相手にされないどころか、
その視界にさえも入らない、透明おじさん、な・の・で・す、が積の山。

歳と言えば、そう言えばうちの犬も10歳になってさ。
おお、あのピンボール・ブッチがもう10歳か。人間でいうところの?
人間で言えば、まあ、70近くってやつなんだろうな。
犬の飼い主もすっかり爺いって訳か。
そう言えば、目のまわりにちらほら白い毛が混じり始めてさ。
白髪、かよ。
ああ、犬にも白髪ってのがあるらしくてさ。
まあお陰様でまだまだ元気というか、相変わらず遊び回ってはいるんだが。
おい、犬にも白髪があるなら、犬も剥げたりするのか?
犬が禿げる?犬は禿たりはしないだろ。
犬が禿てたらそりゃ老化じゃなくて皮膚病だぜ。
だったらもしも犬が歳を取って禿たりしたら?
頭だけツルンツルンとかか?身体中が斑禿とかか?
いやあ、そうなったらちょっと目も充てられねえな。
だろ?つまりはそういうことさ。
禿た犬なんて誰も頭を撫でるどころか、見向きさえされない。
つまりはそう。それが社畜の行き着く先。
誰からも相手にされねえどころか、
あのウェイトレスのねえちゃんでさえ、見向きさえもしやがらねえ。
だから中年は嫌われる、と。
まあ、空気みてえなもんなんだろうな。
粗大ごみとかな。
金があれば別だろうけどな。
ただお前、金があったとしても、いまさら女になんか使わねえだろ?
ああ、使わねえな、もう。女なんて、見る余裕も無かったよな。
で?それだけ働かされて老後の蓄えはできたのかよ。
まあ、細々と貯めていたIRAやら401Kやらが・・

あのなあ、とオタク大魔王。
お前なあ、いつまでもそんなバカなこと言ってるから、
いまになっても忙しい忙しいなんて、情けないことを言ってやがるんだよ。
あのな、言ったろ、この時代、働かされたら負け、なんだよ。
会社の方にしたって、働き者、なんてのは迷惑なだけ。
雲の上の親方たちは、誰もそんなこと、鼻くそ程度にも思っちゃいねえんだぜ。
辞めろ辞めろ、社畜なんていますぐに辞めちまえ。
やるだけ損。やればやるだけ、つむことになるぞ。

あのな、投資だよ、投資。
この時代、投資する以外にはなにひとつとしてなにも残されちゃいない。

投資?また株やらデイトレやらか?
デイトレっておまえ、またいつの時代のこと言ってんだよ。
あれだって、やってみれば最低最悪の非人間的ルーティーン仕事だからな。
自動化して勝手に運用させて、ぐらいが丁度良い。

いいか、もう株やら貨幣やら、もうそんな時代でもねえんだよ。
あのトランプの白痴野郎、あいつがあんなことをやってるうちに、
見てろ、またそのうちどんでん返し、
サブプライムが線香花火に思えるほどの、とてつもねえロケット花火、
下手すれば見渡す限り焼け野原なんていう、
とんでもねえ花火がぶち上がる筈だぜ。

確かに嫌な時代になったよな。

嫌かなにかは知ったことじゃねえが、儲ける奴はいつのどんな時代にだって儲ける、
それだけは忘れちゃならねえ、と。

ああ、観たよ、あの映画だろ?マネー・ショート 華麗なる大逆転。

日本のあの知恵足らずのトッチャン小僧な、
お前だった知らねえ訳じゃねえんだろ?
景気回復だかなんちゃらバズーガだか知らねえが、
そんな見え透いたペテンであぶく銭稼いだのは大企業ばかりで、
それも銭の使いかたもなにも知らねえ働き蟻ばかりだから、
ダブついた金が内部留保になって悪戯に膨れ上がるばかり。
で、またバカの一つ覚えみてえに、
右にならえでやれパナマだケイマンだとやっていたら、
言わんこっちゃねえ、世界に恥さらされてまた良い笑いものじゃねえか、と。
そのうち見てろ、例のコイズミの郵貯じゃねえが、
次は年金、一瞬のうちにかっ攫われてスカンピンにされるからよ。
日本から年金取ったらもうなにも残らねえだろうな。
まあ、綺麗どころの姉ちゃんぐらいなものだろうな。
それにしたって、やれコロンビアだナイロビだウクライナだ、
なんてところの、それこそ目ん玉飛び出るような姉ちゃんたちが、
二束三文で叩き売られてるところで、
あんな骨と皮ばかりのちんちくりんのペチャパイのもちもちロリータなんて、
どこの変態野郎ぐらいしか相手になんかするものかよ、と。
女も駄目か。
水と野山だけが唯一の財産だったのが、いまやすっかり放射能漬だからな。
日本は偉いだ凄いだとかバカなこと言ってるが、
そうでも言ってなかったらまったくやりきれねえ、
あまりにもお先真っ暗のどん詰まり。
良い条件がなにひとつとしてなにもない、
あまりにも救いが無さすぎるってことなんだろな。

それはまあ日本に限ったことじゃねえだろがな。
で、投資かよ。

ああ、だから投資だ。

で、その投資ってのはなんなんだよ。
株でもねえ、ビットコインでもねえ、銭でもねえわけか。

例えばこれ、これな、これなんだと思う。
ペニーだよな。1セント。
そう、何も知らねえやつにはただの一セント、一円玉、なんださ。
これが、もしも、1950年代の奴、ウィート・ペニーっていうんだがさ、
その年代物の一円玉が、なんと$500ドル、
下手をすれば、云千ドル、なんて値段がついてたりするんだよ。
古銭商?
そう、コレクターズアイテム。
それがほら、この小銭の中に紛れ込んでいたり、

もしも俺がお前だったら、俺はそれを狙うだろうな。

コレクターズアイテムをか?
いかにもオタク的な意見だが。

いいか、オタクのオタク性ってのがいったいなにか、といえば、
自分の美学に対するこだわり、なんだよ。

なにが好きでなにが嫌いか、
それをとことん突き詰めるのがオタクの美学なんだよ。

で、社畜の社畜性ってのはいったいなんなんだ?
好きでもねえことを、好きでもねえ奴らと、
信じても居ないものの為に、死ぬまでこき使われる、
それがなぜ起こるか、といえば、
自分がなにが好きでなにが嫌いかさえも判らなくされてしまった、
その脳停止の猪突猛進。

いいか、この時代、そんなことをやらされているのは産廃寸前のルーザーだけだ。
そしてその状況は、ますます悪くなる一方だ。
富めるやつが富み、貧しき者にはなにひとつとしてなにも残されない、
この二極分化が、ますます歯止めを失って行き着くところまで暴走を続けることになる。

働けば働くだけ給料の減るこの悪循環。
お前がいまやっているのは、
猛スピードで動くエスカレーターを逆に登り続ける、
そんな最低最悪のスパイラルなんだぜ。

思い出せよ、お前がなにが好きでなにが嫌いであったのか、
それをもう一度、極限まで突き詰めてみろよ。

お前にできることは、お前に残されたものは、それだけだ。

お前もいい歳なんだぜ。
いい加減にもう、好きでもねえことをやらされて生命をすり減らすのは辞めろ。
好きでもねえ奴らに似合わねえおべんちゃらを言ったり、
信じても居ないものの為に、これ以上騙された振りをするのを辞めろ。

思い出せよ。
俺たちはミュージシャンだったよな。
アーティストだったよな、
なにもないところからなにかを作り出す、クリエーターだったよな。

つまりは、生まれながらの狩人なんだぜ。

金だ?株だ?貨幣だ?ビットコインだ?
ポルシェだ?フェラーリだ?マセラッティだ?
そんな馬鹿なことに、貨幣価値なんていうくだらない幻想に、
どこの誰かがでっち上げたその偽りの価値観に、
自身の美学を迎合させるなんてのは、
百姓どもが安定を安全を安息を求めては、
数だけがものを言うその集団思考の同調圧力の中で、
なにが好きでなにが嫌いかさえも判らない、
奴隷の奴隷による奴隷のためのペテン以外のなにものでもない。

俺たちはな、最初から欠乏から開放された人種なんだよ。
安定を安全を安息も、そんな安易な要求のすべてをぶっちぎって、
ただひたすらに至高体験だけを追い求める、
生まれながらの天上人、なんだぜ。

その違いがなにか?
決まってるだろ。
なにが好きでなにが嫌いか、
それをどこまで突き詰めるか、
それこそが、俺たちに託された
唯一絶対の使命なんだよ。

さあ、言ってみろ。
なにが好きで、なにが嫌いか?

言えるか?それをいま、お前は、すぐにでも言えるか?

投資ってのは、つまりはそういうことさ。

なにが好きで、なにが嫌いか?
自分による自分のためのその唯一絶対の美意識に、
己の生命のすべてを注ぎ込む、
それが99%の貧民に残された、
最後の拠り所になる筈なんだぜ。





IPHONEだけをポケットに突っ込んで、
取るものも取りあえずに走り出たオフィス。
あのときには小春日和を思わせた宵であった筈が、
いつの間にか空からは、みぞれ混じりの雨が振り始めていた。

じゃな、また会えるのがいつになるのか、
その時はまでは、まあせいぜい達者に暮らしてくれ。

冬の雨に叩かれながらようやく捕まえたタクシーを停めて、
そして再び舞い戻った無人のオフィス。

読みかけの資料が、書きかけの書類が散らばったままの机に、
靴を脱ぎもしないで両足を乗せては、くそったれ、と一言。

そして窓に広がる摩天楼の灯り。
そのひとつひとつから金曜の夜にオフィスに取り残された、
血迷った社畜達の鬱積した溜息が漏れてくるようだ。

改めて言おう。
なにが好きでなにが嫌いか、

そう問いかけられた時に、唇の先にぶら下がったまま、
宙ぶらりんにぶら下がったそのひとつの言葉。

ベビーメタル・・

俺が好きなものは、決まってるじゃねか、ベビーメタルだよ。

そしていま、なにもかもを見失ってひとり取り残された金曜の夜。

深夜の窓を流れる止まない雨を眺めながら、

俺のベビーメタル、俺がこの世で、唯一信じることのできた、、
あの、珠玉の天使たち。

いまの俺に、唯一、好きだ、といえるものがあるとすれば、
それはベビーメタルを置いて他にはない。

あの灼熱のオーストラリア、
その記念すべき200回目の公演を最後に、
さよなら、のひとことも言わずに、
嘘か幻かのように、かき消えてしまったあの怒涛の天使たち。

ベビーメタル、
果たして、あの娘たちは、いったいなんだったのだろうか・・

バカヤロウ、あの初音ミクのオタク野郎、
好き放題言いやがって。

ただ、いまの俺の抱えるこのすべての血迷い、
下りのエスカレーターを逆に登り続けるような徒労の日々の中にあって、
そこに唯一の救いが見つけ出せるとしたら、

富めるやつが富み、貧しき者にはなにひとつとしてなにも残されない、
この二極分化が、ますます歯止めを失って行き着くところまで暴走を続けては、
いずれ至ることになるだろう、その盛大な破局を目前にして、

いったい俺たちは、なにに希望を見い出せば良いのか。

なにが好きで、なにが嫌いか?
99%の貧民に残された最後の拠り所。

そして投資であった、そして残された資産であった、
そして、好き嫌い、その唯一絶対の拠り所であった。

ここまで来て、こんな俺に残されたものがあったとすれば・・

ベビーメタル、

それ以外には、俺はもう、この世に愛着を感じることのできるものなど、
なにひとつとしてのこされてはいない、
その残酷な真実に、改めて行き着くことになる。

そしてスターライトであった。
そして、ディストーションであった。
そして、アカツキであり、そして、メギツネであり、
そして、この止まない雨であった。

ベビーメタル・・ お前はまだ、ベビーメタルを信じられるか?

そう思った時、あの場では言うことのできなかった、
最後に残された熱情が迸り出るのを知った。

オタク大魔王よ、
改めて言わせて貰おう。

なにが好きでなにが嫌いか。
その俺の俺による俺だけに残された唯一絶対の価値観。
そのすべてを賭けて、俺はひとこと、こう呟こう。

この世に現存した、そのすべての音楽、
すべての芸術、すべてのアーティスト、
その、究極の形が、ベビーメタル、
この人達を置いて、他にはない。

それは誰がなんと言っても、絶対の真実なのだ。

それを心の底から信じる、信じきれる俺にあって、

このクソ溜まりの世で唯一価値のある存在が残されているとすれば、

ベビーメタルを置いて、他にはない。

であれば、と思う。

ベビーメタルに投資しよう。

この俺という人間の、そのわずかに残された美意識のすべてを賭けて、
ベビーメタルという存在に、投資を誓おう。

そしてもしも、ベビーメタルという存在、
人類に残された唯一の灯火が潰えてしまうようなことになったとしても、
彼女たちの成し得たこの偉業は、
そのドラマは、その価値は、その証は、
この先、ますますと伝説として語り継がれながら、
その重要性を、ますますと増していく、その筈なのだ。

誰がなんと言っても、
この世に存在した、史上最高のパフォーマー、
それは、ベビーメタルを置いて、他にはない。

嘗て、一瞬の煌きを持って、
世界中を、愛とカワイイの熱情に包み込んだ伝説の少女たち。

この世に音楽というものが存在し続ける限り、
この世に、音楽というものを愛し続ける、
その極を追い続ける人々が存在し続ける限り、
ベビーメタルの成し得た偉業、
その輝きは、決して失われることはない。

俺に信じられるものがあるとすれば、
俺に、そのすべての美学を嫁して言い切れるものがあるとすれば、

ベビーメタル、それを置いて他にはありえない。
ベビーメタルこそは至上なのだ。
それだけは、絶対に、なにがあっても揺るがない、
それだけは、言い切ることができる。

そしていまだ止まない雨であった。

深夜を過ぎて人影の洗い流された摩天楼の谷間、
交差点でようやく捕まえたタクシーに乗り込んでは、
見上げる空からのみぞれ混じりの雨がやがて雪に代わっていた。

嘗て夢見たあの甘い幻想。

摩天楼の谷間をこだまするベビーメタルの歌声が、
海を越え山を越え国境を越え人種を越えては、
人間という種の宿命、
その邪悪な原罪のすべてを洗い流すそのユートピア。
愛よ、地球を救え、
ベビーメタルならそれができる。
ベビーメタルにしかそれはできない。

あの高揚を、あの熱情を、あの夢を、希望を、
俺はまだ、信じることができるのか・・

そしてオフィスを出る時に衝動的に手にとったこのフィギュア。

言わずと知れた、FUNKO POPの、すぅメタル人形。

あの殺伐としたオフィスにおける唯一の救いであった
この赤いスカートの人形が、
いつの日にか、幾億の値が付く、
そんな悪夢のようなことが起こってしまった時、
俺は、このなけなしの人生の最後を飾る、
心からの友情と、そして皮肉を込めて、
あのオタク大魔王にこの人形をプレゼントしてやろうと思う。

この人類の徒労の歴史に、唯一価値のあったとすれば、
ベビーメタル、
人類は、その歴史の最後の最後に、
この珠玉の宝石を産み出した、
その真価だけは、永遠に残り続ける筈であろうと。

という訳で、我らがメイトの諸君。

この21世紀という修羅の巷、
絶体絶命の袋小路に追い込まれた99%のド貧民のルーザーたちよ。

我々に唯一残されたその投資価値、
汝の持つ、ベビーメタル、そのすべてを大切に護り続けることだ。

株が、貨幣が、その信用価値のすべてが崩れ去った、
世界秩序崩壊の断末魔の中にあって、
ベビーメタルのフィギュアが、グッズが、
その存在の痕跡、その偉業の威光のその最後の片鱗が、
無上の価値を見出される、そんな時代がやってくるやも知れず。

ベビーメタルこそは、人類の産み出した唯一絶対の珠玉であった。
全人類がその価値に気づく日は、決して遠くない筈だ。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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