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イチローと中元すず香 ~ 世界を相手に孤独な戦いを挑む真の「勝負師」たち

Posted by 高見鈴虫 on 19.2019 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments
遅れ馳せながら、NHKスペシャル 「イチロー 最後の闘い」 を観た。



言いたいことは山程あれど、素晴らしいドキュメンタリーであった。

この顔、このイチローの顔、と思っていた。

この辛辣な顔。
この極限的なまでに研ぎ澄まされた眼差し。

カタギじゃねえな、と思っていた。
ヤクザか、博打打ちか、殺し屋か格闘家か、
特殊部隊の兵士か、
或いはそう、アーティスト・・

そう、イチローの顔の中に、俺は勝負師、
日々をギリギリの緊張状態で過ごしながら、
しかし、その勝負に破れた時、
その時はさっさとおっ死ぬだけさ、
その、あまりの潔さ。

その極限的なまでに全てを振り切った、
まさに、極道、そう、道を極めた人間特有の、
厳しさを観たのだ。

それは同時に、追い詰められた人間の顔、でもあった。

勝つ、という結果を突きつけられる日々。

それは恐怖でもあろう。
怯えでもあろう。
気合でもあろう。
開き直りでもあろう。

そしてそこまで追い詰められて初めて、
時として人間は、窮鼠が猫を噛むように、
あの爆発的なまでの神懸かりパワーを、生み出すことができる。

イチローの人生こそは、まさにその、極限の神懸かりパワー、
その積み重ねであったのだろう。

そんなイチローの孤独な自己連を支えてくれた飲み屋の仲間たち。

俺は勝負師だから、とイチローが言った。
勝負師である以上、いつもネガテゥブだから、
だから周りには、ネガテゥブな人間はおきたくない。

勝負師はいつもネガティブ?

そう、それこそが、本当の勝負師、その真相なのだ。

素人相手に調子の良い王様ヅラの軽口を繰り返す、
糞メディアの前ではそんな道化野郎を演じながら、
しかし真の勝負師、その心のうちは、
いつも、不安と、怯えと、自責、と、
そして、それをなんとか振り払おうとする、
やけっぱちなまでの空元気と、
そして、冷徹な自己分析。

引退の後、妻を、と口を開いたイチロー。
まずは、妻をいたわってやりたい。

この野郎、と思った。
この、イチローって野郎、
どこまで格好良い男なんだ。
本当の本当に、徹底的なまでに、男の中の男。

どうしてかな、と我が愚妻が言う。
イチローは取り敢えず、どうして奥さんがそれほどまでに消耗することがあるのかな。

だって考えても見ろよ、と笑う。
ここまで切羽詰まった人間と、日夜生活をともにするんだぜ。
普通の神経じゃやってられないだろ。

まあ確かに、疲れるかもしれないわね、こんな人と一緒だったら。

つまりは奥さんも、イチローと同じぐらいにまで、
切羽詰まった心境で過ごしてきた、ってことなんだろうな。

この男にこの妻あり。

夫婦だよね。
夫婦ってより、ソウルメイト。この世で唯一絶対のパートナーだろ。

そして一弓であった。
世に数ある犬の中でも、
ここまでに人間世界に貢献した、
その偉人、ならぬ、偉犬の中の偉犬。

この犬の銅像を立てたいな、と思った。

死んだ飼い主からもらったバタービスケットを、
日夜駅前の雑踏で待ち続けた、そんな駄犬ではなく、
この一弓、
イチローという唯一無二の勝負師を全身全霊を持って陰日向に支え続けた、
その、奇跡の偉業。
まさに、犬の中の犬、その鑑ではないか。

イチローという稀代の勝負師、
それを支え続けた、妻と、犬と、
そして、仲間たち。

現役引退というひとつの死を迎えた時、
まずはその人々への感謝を口にした、
このイチローという男。

まさに、惚れ惚れするほどにまで、
勝負師の中の勝負師。
徹底的なまでに、男の中の男、であった、と。




という訳で、この珠玉のドキュメントを追いながら、
なんかこれ、これと似たようなものに最近触れた覚えがある、
と思っていた。

それってつまり、あの、PMCのインタビュー。

つまりは、ベビーメタルの、中元すず香・・

改めて、あのインタビューと時を同じくして、
妙な形で流出した、あの、すぅと最愛の、オフ写真。

あの写真を見て、やれ、カワイイだ、美人だ、色っぽいだ、
足が長いだ顔が小さいだ、
そんな表層的なことばかりに浮かれた軽口を吹聴する馬鹿ども。

違うだろ、と。
それ徹底的に違うだろ。
お前らもしかして、徹底的に自分を甘やかして生きてきたクズの中のクズ。
つまりは、一生に渡ってたったの一度も、
命を張った勝負を打ったことがない、
そんな、どうしようもない、人間の残骸なんじゃねえのか?

あの写真、あの早朝のホテルのカフェ、
起き抜けの、ろくに化粧もしないままの、
あのあまりにも何気ない日常の断面、
ではあるものの、

俺はあの写真の中に、紛れもない勝負師、その姿を見た気がしたのだ。

こいつ、この、中元すず香、というオンナ、
徹底的に勝負師のツラをしていやがる・・

12月からこの日まで、音沙汰を断ったままであったベビーメタル。
いったいどこでなにをしていたのか。

また寝てばかりいるのではないか、
どこかでのんびりしているのだろう。
あるいはベビーメタルももう終わり。
アイドルも、ロックスターもあっさりと諦めては、
早々に隠居ぐらしなんてものを初めているのか、
なんてことを囀っていたバカども。

その眼前に突きつけられた、この、中元すず香のオフ写真。
カワイイ美少女の、どころか、
徹底的なまでに研ぎ澄まされた勝負師、その眼差し。

俺はこの麗しき可憐な美少女たちの写真の中に、
しかし、思わず背筋が冷たくなるほどまでに、
冷徹に冷酷に日夜自身を鍛え続ける、
紛れもない求道者の表情を見た覚えがしたのだ。

中元すず香が寝ていただって?
中元すず香が諦めただって?
中元すず香が雲隠れだって?

馬鹿が、と思わず笑ってしまった。

見ろ、この写真を。
このすっぴんの顔、この表情の中に克明に刻まれた、
この紛れもない「勝負師」のそれを。

そしていま、改めて素顔のイチローの表情の中に、
中元すず香、のあのすっぴんの笑顔、
それと酷似する、真の挑戦者、その極限を見た気がしたのだ。

イチロー、どうするんだろうね、と、涙を潤ませたかみさんが呟いた。

しばらくゆっくりするつもりなのかな。

馬鹿か、と思わず吐き捨ててしまった。

みろよこれ、この顔つき。
イチローは、現役引退、なんて言いながら、
それはイチロー得意のブラフ、
あるいは、自分に対する戒め、だろ。

この男は辞めてはいない。
この男は諦めてはいない。
戦いをやめるつもりなんて更々無いってことだよ。

やってやってやり尽くす。
たとえその戦場がどこであろうと、
その命が果てるまで、
戦って戦って戦い抜く、そのつもりなんだろう。

でも、この歳だしさ。
これだけ頑張っても、結果が出せなかった、ってことは・・・

イチローはやめねえよ。
二軍でもマイナーでもストーブリーグでも、
あるいは、どんな世界に行ったとしても、
イチローはその勝負をやめることはない。あるいはそれができない。許せない。
戦い続けること、それこそが、イチローというひと、そのものなのだから。

世界を相手にたった独りで戦いを挑み、
そしてその孤独な戦いの中で生き続けることを選んだ、
この、イチロー、という男。

やれ、偉人だ、鉄人だ、天才だ、
お疲れ様でしただ、ちょっとゆっくりするつもりでした、やら、

そんな島国のガラパゴスの村社会で、
惨めなキャビン・フィーバーの同調圧力に戦々恐々としながら、
他人の顔色ばかりを伺ってはくだらないおべんちゃらしか言えない男芸者たち。

このクズ野郎。
お前らに、勝負師の心は判らない。
お前らに、世界を相手にたった独りで戦い続ける者たち、
その、孤独は、決意は、苦悩は、悲痛は、救済は、
その真意の底は、決して判らない。

そして中元すず香であった。
あの、流出写真の中に克明に刻まれた、
この勝負師特有の辛辣なる眼差し。

世界を変えるもの、時代を牽引するもの、歴史を塗り替えるもの。
つまりは、筋金入りの勝負師、徹底的なまでに澄み切ったその面構え。

中元すず香の目指すものは、まさに、イチローなのだな。



そして9月に始まる全米ツアー。
その本気の本気の土壇場の大勝負。

すぅめたるの孤独な戦いは、いままさに、始まったばかり。

ただ、そのお取り巻きの末席を汚すメイトの独りとして、
この孤独な勝負師を前にしては、
決して、ネガテゥブなことだけは言うまい、
それだけが、俺達にできる、たったひとつのこと。

或いは、と思う。

そんな勝負師達を支え続ける、
例えば、イチローの細君、あるいは、あの偉犬・一弓のように、
自分自身も勝負師で在り続ける、
つまりは、俺は俺で、自らの戦いを続ける、
それ以外に、なにがあるというのだろうか。

すぅちゃん、頑張ってくださいね、
なんていう間の抜けたおべんちゃらを繰り返すことなく、

頑張るなんて、当然だろ、と。
頑張るか頑張らないか、なんてことじゃない。

勝つこと。なんとしても、どんな方法を使っても勝ち抜くこと。
勝負師に必要なものは、その決意なのだ。

すぅめたるの力を借りて、俺も戦う、戦い続ける。
たとえそれがどれだけささやかな戦いであったとしても、
ベビーメタルとともに俺は俺の戦場を戦い続ける、その志。
それこそが、勝負師たちを支える、
唯一絶対の激励の言葉だろうと。

さあ、偉人たちに見惚れてばかりはいられない。
俺は俺で俺の戦場の中で俺の戦いを続ける。

さあ愚痴も泣きごともいい加減にして、
いつまでもポヤポヤばかりはしてられねえな、
と伸びた胡麻塩髭をさすりながら、
また新しい旅にでも出たいな、
性懲りも無くそんなことを考える春の夜更け。


その応援歌は、ベビーメタルだ。







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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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