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PRESSURE IS A PRIVILEGE ~ ベビーメタル来襲を前にしてのこのなんとも言えぬ胸騒ぎ

Posted by 高見鈴虫 on 02.2019 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
メイトの諸君、改めて告白しよう。

まっことに情けない話ではあるのだが、
ここ数日、いや、ここ数週間のところ、
ずっと気分がすぐれない。

漠然とした不安が胸を重くし、
いつもなにかに追い詰められるような
妙な焦燥感に苛まれて続けては、
どうにもこうにも落ち着かない日々を過ごしている。

いったいどうしたのだろうか。

見上げる空は目の醒めるような青空。
ここニューヨーク・シティは9月を前にして
すでに夏の終りの気配を漂わせながら、
暑くもなく寒くもなく、まさに夢のような好天に恵まれていたと言うのに。

この妙な胸騒ぎ。
この妙な苛立ち。
このなにもかもが漠然としながら、
このなにもかもがどういう訳か落ち着かない、
そう、この妙なまでの、緊張感・・・

緊張?いったいなにに緊張しているというのか。

そう、この妙な居座りの悪さ。
確かにこれまでにも憶えがある。

若かりし頃の学生時代の試験を前にした憂鬱な時間。
あるいは、ふと聞き止めたあの噂。
あいつが、おまえのこと、
ただじゃおかねえ、ぶっ殺してやるって、
そう息巻いているって、誰かが言ってたぜ。

ああ面倒くさいな、そう思いながらも、
避けて通れない、その決められた宿命を前にした、
この不穏な時限爆弾っていう奴。

なあに、大丈夫さ、と嘯いて見る。

その時になったらその時。
こう見えても俺は強運の男だ。
これまで幾度の危機に直面した時でさえ、
なんとなくも不思議とどうにかなっていた、
そう、俺はそんな、筋金入りの強運の男、なのである。
それになにより、俺は本番に強い。
いざとなったときには、それはそれで、
いつもどうにかなってしまう、してしまう、
そう、いままでだってそうだった。
だから、次も、絶対に、大丈夫。その筈なんだから・・

この妙な不安に苛まれながらも、
そうやって何度も自分自身に繰り返しても、
どうしてだろう、今回に限って、
この胸騒ぎ、この苛立ち、
このなんとも言えぬ、落ち着かなさが、
どうしてもどうしても、去ってはくれない
この不思議に不安定な精神状態。

ともすれば、それはまるで夜更けに目を覚ました闇の底。
その救いようのない喪失感の中で、
思わず両手で顔を覆っては、しくしくさめざめと涙を流し初めて・・・

おいおいおい、いったいどうしちまったんだよ。
なにをそんなに怯えているのだ。
まさか女の子でもあるまいし・・

そうそうなのだ。
男である俺は当然のことながら女の子の日とは無縁。
でありながら、そう、俺にだって憶えがある。
いまにも、不安で押しつぶされそうな、
このなんとも言えぬ、落ち着かなさ。
という訳で、いまになって俄に陥ったこの精神的大混乱。
女心と秋の空ならぬ、男一匹不安に打ち震えては泣き咽ぶ、
この夏の終りの摩天楼の空の下・・

それはまさに、嵐を前にした静けさ、そのもの・・

そして木立の間をふと駆け抜ける、
目の醒めるような一陣の風に煽られながら、
俄に世界がザワザワと泡立ち始めたその冷たく湿った空気の中に、
たちまち世界の光が吸い込まれては薄闇に沈み込み、
ふと辺りの喧騒が穴に落ちたような沈黙に満たされる、
あの魔の降りたような瞬間。

ふと見れば、摩天楼の向こう、西の空を覆ったどす黒き悪雲の帯。
そうか、雨が近い、その嵐を前にしたこの不穏な慄き、
という奴なのだろうか・・・

嵐か。嵐が来る・・
この不穏なざわめき。
押し殺したような沈黙の中、
吹けよ風、呼べよ嵐。
その不穏な祝祭の時を、
いまかいまかと待ち続けている、そんな自分がいる・・







不安と言えばそう言えば、
嘗て俄バンドマンなんてものを志したその当初、
つまりは毛も生えきらなかった厨房時代。
ギグのたびに、ライブのたびに、
それが、日一日、刻一刻と近づいてくるたびに、
この妙な胸騒ぎ、この不思議なほどの気の重さの中で、
どうにもこうにも、落ち着かない日々を過ごしていた、
そんな憶えがあるにはある。

ロフトまで、屋根裏まで、クロコダイルまで、
あと十日、あと一週間、あと三日・・・

構成は憶えたか。
あの部分はどうするか、この部分に間違いはあるか。
ここでこうして、あそこでああして、
その譜面が真っ黒になるまでに書き込みを加えながら、
ああ、間違えたらどうしよう、
ああ、恥をかきたくない、
そんなことを思っては、思いつめれば思い詰めるほど、
練習だ、練習あるのみ、
そう思いついては俄に持ち出すスティック二本。
バスの停留所で、電車の中で、夜更けのベッドで、
ともすれば授業中。
おい、それうるさいからやめないか、
そう注意する先公に向けて、
うるせえな、放っておいてくれ、
俺は、俺は、俺は、それどころじゃねえんだよ。

ただ、それが経験というものか。
幼き胸を震わせたあの俄な緊張も、
ライブを終えるたびに、なあんだ、開けてびっくり玉手箱、
その緊張というネガティブな霧に包まれた日々が嘘のように、
いざ始まってしまったそのライブ、
その興奮が、その歓喜が、その祝祭が、
二乗三乗になっては押し寄せてくるこの得も言えぬ至福感!

やった、やった、やった、俺はやったぜ!

そして思わずつぶやくこの言葉。

これだから、ライブは、やめられねえぜ!・・・

ただ、いつしかそれが連鎖状態。
そんなギグがライブが日常化するに従って、
いちいち緊張する間もないほどに、
いつしかそんな緊張状態が常時化慢性化の多重状態。

ともすれば、練習と本番の見境いさえ無いほどに、
ともすれば、日常とステージ、その違いさえないほどに、
いつしかこの、ステージでの緊張があまりにも普通化しては、
いつしかそんな不穏さからも、すっかりと無縁になっていた、
そんな憶えがあったのだが。

果たして、といまになって思う。
果たしてそんな、一見プロっぽい、
そのあまりの慣れ、そのあまりのリラックス、
そんなあまりの緊張の無さこそが、
後にドンカマのクリックに誘い込まれては催眠術のように、
よりによって、ステージの上で眠くなる!
そんな醜態を晒すことになった、その原因だったのではないのか、と。





嘗て、ステージをご一緒させて頂いた経験のある、
日本フォーク・ロック界の伝説的な大御所。
日本人であれば、その名前をその数々の名曲を、
まさか知らぬ者はいないであろう
その泣く子も黙るビッグネーム。
これまでのキャリアの中で、
幾千幾万のステージをこなして来たであろう、
この御大の中の御大が、
なんと、出演前のその楽屋の端で、
あろうことか、指を震わせ唇をわななかせ、
声を裏返らせては目が虚ろになるほどに、
いまにも卒倒でも起こしそうなほどの極度の緊張状態、
そんな姿を目の当たりにした経験があった。

いったい、このひとは、どうしてしまったのか?
緊張?緊張って言ったって、
このひと、あの有名な、あのひと、なんだろ?・・・
もしかして、妙な薬でもやっているのか。
いったいこんな状態で、ステージに昇れるのか?

その不安の通り、
いざ名前を呼ばれてスポットライトの中をステージに登場した時、
マイクに頭をぶつけ、ピックを落とし、
ドラムの席から見つめるその後ろ姿が、
まるで雷雨に叩かれた痩せ犬のように、
ガタガタと露骨に震えても見える。

そしてかろうじて、どうも、と、マイクに向かう。
どうも、なんとかです。
たちまち地鳴りのように起こる大歓声。
そして振り返っては、ドラムさん、カウント、願います。
その座った目、あの、狂気させても漂わせた視線。
やばいな、このおっさん、完全に逝っちまってる・・

そしてステージであった。
声は裏返り、掠れ、ひっくり返り、
テンポは外れ、構成を間違え・・

それはまさに、燦々たるもの、であった、その筈だったのだが・・

それはまさに、奇跡のようであった。

極度の緊張というその自閉状態から、
追い詰められた猫が突如として牙を剥くように、
一曲、一曲と重ねるうちに、
声の張りが伸びが、そのギターの鳴りそのものが、
そしてその存在が、見る見ると膨らんでは大きくなり。

そしてやけくそのように張り上げる悲鳴のような絶叫。

行くぞ、最後まで、行くぞ、行ってやるぞ、このステージの上で!
オレは、オレは、オレは、このステージの上で、いま死んだって構わない!!

恥ずかしながら、俺はそのステージで、
図らずも、涙を、流してしまった。

その声に、歌詞に、その語り口に、ドラマの中に、
その存在のオーラそのものの中に完全に吸い込まれては、
それはまさに憑依されるように。

気がつけば観客の誰もが泣いていた。
ステージの誰もが泣いていた。
幕間に控えた裏方さんが、
ステージ後方のミキシング卓を前にしたエンジニアさんさえもが、
肩口で涙を拭う、それはまさに、神憑り的なまでに感動的なステージ。

後にも先にも、バックバンドのサポートドラマーが感極まって涙を流す、
そんな経験は一度としてなかったのだが、

これか、とは思っていた。
これか、これなのか、ステージの魅力、ライブの凄み、その本質は・・

その後の打ち上げの席で、
それはまるで、魔が落ちたというよりは、
あっけらかんとして罰当たりなほどに、
明けすけな大口を広げては、がハハハッ、のひと目を憚らぬ大笑い。
まるで別人に成り代わってしまったあの大御所の姿。

いやあ、どうもどうも、みなさん、お疲れ様でしたね。
お陰さまで、本当に良いステージになりましたね。
乾杯、乾杯、朝まで飲み明かしましょう!

酔に迷って、思わず聞いてみた。
いやあ、最初は、どうなることかと思いましたよ。
え?なにが?と間の抜けた顔でシシャモを齧るその大御所。
だって、だって、ほら、凄くご緊張なされていたみたいで。
緊張?そりゃするよ、緊張。当然でしょ。
当然?
そう、緊張するさ、当然ね。
と言うか、とここでふと、息を詰めたその御御大。
君たち、ミュージシャン。ステージでは緊張しなくちゃ駄目だよ。
緊張して緊張して、思わずおしっこ漏らしちゃうぐらいにまで、
そこまで緊張しないようなステージを、しちゃいけないよ。
それはお客様に失礼だ。
え?と思わず聞き返す。
え?でも、緊張して、間違えちゃったらどうするんですか?
間違えた、間違えなかった、なんていうのはね、
それは大した問題じゃない、とボクは思ってる。
大した、問題じゃない?
そう、間違えたって良いんだ。
緊張したって良いんだ。
あるいは、思わず固くなりすぎて間違えちゃうぐらいにまで、
ガチガチに緊張してこそ初めて、今日のような良いステージができる。
え?と思わず聞き返す。
え、だったら、あの緊張はもしかしてワザと?
そう、ワザとだよ勿論。ステージの前には極限まで自分を緊張するように仕向ける。
でも、となおも俺。
でも、プロフェッショナルである以上、そつなく完璧なステージをこなす、
それがプロのプライドかと。
馬鹿言っちゃいけない、とその大御所が言った。
馬鹿いっちゃいけない。そんなプロフェッショナル、ボクはプロとは認めない。
テクニックだ?余裕だ?円熟だ?慣れだ?経験だ?クソくらえだよ。
譜面通りにそつなく上手にできました?
ピアノの発表会じゃあるまいし。
そんなものに、誰がお金を払ってくれるのか、と。
お客さんがいったいなにを見たいのか。
ワタシタチに、なにを求めているのか。
感動、でしょ?
そう、感動こそが、ライブの本質。パフォーマンスの目的。
その感動を生み出すことこそが、
ワタシタチの使命、強いては、それこそが「芸」なんですよ。

その感動を生み出すためには、
そつなく楽譜を撫ぞる、
そんなところで落ち着いていちゃいけないんだ。

緊張して緊張して、
いまにもおしっこを漏らしそうなところまで自分を追い込んで、
その緊張の中からなにかを生み出す、
ステージの上、その緊張をぶち破って、
ついには自分自身を解放し、別の次元に昇華させる、
そのドラマこそが、ステージの本質。

それじゃまるで、火事場の馬鹿力・・

そうだよ、その火事場の馬鹿力、だよ。
その、火事場の馬鹿力、こそが、パフォーマンスの本質なんだ。
それが無いところに、ライブをやる意味なんてないんだよ。

青少年、決して忘れてはいけないよ。

わたしたちは、その火事場の馬鹿力、
窮鼠猫を噛む、その、ギリギリに追い詰められた極限状態、
そうやって、自分自身を削り続け、燃やし続けること、
それ以外に、生き延びる方法はない。

その極限状態こそが、パフォーマンスの糧、その「芸」の本質なんだよ。





という訳で、この夏の終りのニューヨーク。
連日、雲ひとつないピーカンの晴天に包まれながら、
暑すぎず涼し過ぎず、まるで夢のような好天が続く中、
どういう訳だか気分が冴えない、
この妙に、落ち着きのない、この妙に不穏な胸騒ぎ。

この21世紀の初頭を指して、
不安の時代、と呼んだ作家がいた。

誰もが妙に満たされて、誰もが妙に目的を失い、
そして世界を、不気味な不安が包み始める。

そう、このヒステリックなヘイトの連呼も、
火のないところに無理やり炎上を焚きつける放火商法も、
すべてはこの、目的を失った不安感、
それが原因なのだ。

ただこの時代、そんな漠然とした不安、
その意味もなく重い空気は、
ふと手にしたそのIPHONE。
そこで呼び出したグーグルの画面に、
その謎を、その疑問を、その懸念を、
そっくりそのまま打ち込んで見れば、
あら不思議、その答えが、
次から次へとあっけらかんと、
すぐに目の前に転がり出てくれる、
そんな便利な時代、ではあるのだが・・

だがしかし、実はそのあまりに安易な解決策こそが、
この不安の時代のその元凶。
謎から謎、疑念から疑念、
その隠された真相を、
掘り下げればば掘り下げるほど、
その蜘蛛の巣のように絡み合う糸に雁字搦めにされては、
ますますと無駄な不安を募らせるばかり。

この複雑怪奇な現実を前にして
呆然としたまま不安と苛立ちを募らせるばかりの日々にあって、
そこで必要とされるのはジグゾーパズルというよりは実は機織り。

いったい、俺は、なにがこれほど不安なのか、
そのひとつひとつの要因を、
ひとつひとつ、書き留めてはリストにしてまとめ、
その絡まった糸をひとつひとつに番号をつけては、
辛抱強く解きほぐして、そしてそれを織り合わせていく、
実はその単純作業。

そんな機械作業の中で、
いつしかすっかりと瞑想状態に陥りながら、
改めて、自身に問う。

お前の、その不安の、その恐怖の、そのコアとはなんなのか?・・

つまりは虚栄。
つまりは強欲。
つまりは虚勢。
つまりは・・つまりは、ただの見栄?それだけの話。
ただそれだけのこと、なんじゃないのか?・・・

そう、その不安のひとつひとつを、
改めて自身に問う。
それを、明文化し、リストにしてしまうことによって、
なんだよ、結局、そんなことかよ、
その、真相に至る、その緒:いとぐちが、掴めてくる、
きっと、その筈なのだ。

つまりは、自分自身を整理してみる、その作業。

それができるひと、それができないひと、
不安の時代と言われるこの現代に、
無様にも押しつぶされてはヒステリックにヘイトを叫ぶ亡者たちと、
そんな喧騒を尻目に、ひとり勝手にほくそ笑んでは漁夫の利を狙う者、
その違いが、実はそこにある筈なのだ。

では、と改めて自身に問う。

では、改めて、いまこの俺の抱えた得も言えぬ不安感。
その原因を、その根源を、その元凶を、
突き詰めて突き詰めて、掘り下げ掘り下げた、
そして辿り着いた、その不安の大元。

それがいったい、なんなのか・・

つまりは?つまりはそれって・・・ベビーメタル・・!?









メイトの諸君。

これまで、こんなご経験を、これでもか、
と積み重ねて来たであろう歴戦の勇士である皆々様においては、
この愚かなる子羊の陥った俄な混乱状態。

この妙な不安感、この妙な胸騒ぎ、この妙な落ち着きの無さ、
その理由が、この不安の世紀の先行き不透明さ、
なんてものになるのではなく、

ぶっちゃけた話、

なんだよこいつ、俺達も知ったよくあるあれ
ベビーメタルのライブを前に、
これでもかと緊張していやがる、

つまりは、そういうことなんじゃねえのか?・・・

その真相に、あっけらかんとお気づきになられている、たぶんその筈であろう。

緊張?
なんで?

まさか自分がステージに上る訳でもあるまいに。
たかが観客のひとりである俺が、
どういう理由で、わざわざ緊張なんか、しなくちゃいけないんだよ。

そう、普通であればそう思う筈。
あるいは、いままでにも、まさに星の数ほどに、
やれロックだジャズだオペラだミュージカルだ、
ライブハウスから劇場からアリーナからスタジアムから、
それこそ数限りないほどにそんな公演、
まさに、日常的に、観戦観劇鑑賞して来た、そんな俺じゃないか。

それがどうしたことなんだろう。

俺はいま、ベビーメタルの全米公演、
それを前にして、明らかに、確実に、
まざまざと、緊張を、しているのである。

言っちゃなんだが、俺はこれまで、
自分自身のライブにおいても、
小僧時代のアマチュア時代ならいざ知らず、
喉仏もおっ立ち毛も逆立てて以来、
勝負を前に自身が緊張している、
そんなものを自覚したことは
一度としてなかった。

ライブは喧嘩だ、祭りだ、戦いだ、
そんなことを嘯きながらも、
だがしかし、心の底のどこかでは
始まってしまえばこっちのもの。
あるいは、出たところ勝負のやったもの勝ち。

そして俺はそんなぶっつけ本番の土壇場勝負が、
好きで好きで堪らなかった、
そんな筋金入りのお祭り男的性向を持ち合わせている、
それさえも十分に自覚していた筈なのだ。

そんな俺が、たかが、アイドルとメタルの融合の、
そんな出鱈目なちんどん屋バンド、
そのライブを前に、どうした訳が、
それは不思議なほどにまで、明らかに、緊張を、している訳なのだ・・
いったい、このオレ、どうしてしまったのか?・・

という訳で、この無騒ぎの不安の、その元凶、

つまりは?と自身に問いかける。
つまりはその落ち着かなさの要因がなにか、
ひとつひとつ、解きほぐして、
それをリストにして、まとめる、
たったそれだけの、ことじゃねえかよ、と。

現実に直面すること、その勇気さえあれば、
この意味不明な不安、その要因のひとつひとつを、
解きほぐしては解き放つ、それが可能な筈なのだ。

という訳で、
1.チケットはあるか?=なくした時にどうするか?
2.開演場所とその交通手段=それがコケた時の二の手三の手。
3.現地における場所取りとその開演時間までの過ごし方
4.食事はどうするのか?
5.金はいくら持っていくべきか。
6.いったいなにを持っていくべきか?
7.まさかの負傷時の応急処置は?
8.IPHONEは、その使用は、充電方法は、どうするのか。
9.服装はどうするのか?なにを着ていくべきなのか?そしてそれを失ってしまった時、帰りはどうするのか?
10.キツネのお面は持っていくべきか?ヘルメットは被っていくべきなのか?コルセットは本当に必要か?
11.日章旗の持ち込みは可能なのか?もし可能であればその掲示場所をどう確保するか。その前にその入手方法は?
12.現地で妙な野郎に出くわした時にどう対処するべきか。あるいはいまの時代そんな奴は果たしてまだいるのか?俺はこの21世紀的現実に対してなにかとても大きな考え違いをしているのではないのか?
13.であれば、あるいはそれがなくても、なにより、公演後、どうやって、生きて帰り着くか・・・
で?
で?で、俺、次の日、休みとってあったっけ?・・・

改めて、これまで、どれほどのギグ、ライブ、であったとしても、
これほどまでの緊張を感じることはなかった。

ともすれば、前回のあのニューヨーク公演においてでさえも、
期待に胸を膨らませ、てはいたものの、
まさか数日も、数週間も前から、
まさかこんなプレッシャーなんてものを感じては、
不安に期待に胸騒ぎに震えていた、そんな憶えはまるでない。

果たして、と改めて思う。
果たして、俺は、いったい、どうしてしまったのか?・・・

あるいは、これまで星の数ほどこなして来た、
これまでの公演と、そして、今回のベビーメタル、
その根源的な、違い、とは、いったいなんであるのか・・

それはつまりは、端的に言って、愛の比重、
つまりは、それほどまでに、俺にとって、このベビーメタルが、
なににも増して、なににも変えられないほどに、
好きなのだ、大切なのだ、愛しいのだ、つまりは、そういうことだろう。

そうか、愛か、と改めて思う。

この不穏な緊張こそは、まさに、愛、その反動、その証、だったんだな・・

恐ろ、震えろ、戦慄け、泣け、泣きじゃくれ、ベビーメタルを前に。

それこそが、愛の証に、他ならないのだから。

そう思った時、改めてこの不安の、この胸騒ぎの、このなんとも言えぬ落ち着かなさ、
ベビーメタルを前にしてそんな緊張に打ち震える俺自身が、
なんともまあ、可愛らしくも愛おしく、思えて見なかった訳でもない。


そしてここニューヨーク。
予てから熱戦の続くUSOPEN。
選手用控室から廊下を抜け、
そしてメイン・スタジアムへの入り口、
そこに刻まれた、かのビリー・ジーン・キングの名言。

PRESSURE IS A PRIVILEGE
プレッシャーは、特権である。

つまりは?
つまりはそう、天下分け目の一大決戦へと向かう、
そのいまにも押しつぶされそうになる
このプレッシャー、その緊張こそが、
勇者のみに贈られた、なによりの特権なのだ。

そのプレッシャーを、緊張を、愛せ、それを、誇れ!

それこそが、神から与えられた輝かしき名誉なのだから。



改めて言うまでもなく、
ギグを前にした、その不安が、胸騒ぎが、その緊張が、
激しければ激しいほどに、開けてびっくり玉手箱。
その本番のギグは、まさにその倍返しの二乗三乗。

先にあげたあの伝説的大御所の言葉を借りるまでもなく、
この緊張こそは、本番における大化け、その必携条件に他ならない。

果たして、と思う。
果たして、このベビーメタルの全米ライブ、
その来襲を前にして、いったいどれほどのメイトたちが、
不安に慄いては、眠れぬ夜を過ごしているのだろうか・・

つまりは?
つまりは、それこそが、成功の証。

ファンにさえもそんな緊張を強いるこのベビーメタルというバンド。

まさに、とてつもないほどまでに愛されている、
その愛され方の比重が半端ではない、ということだろう。

そしていま、ふと目を向けたIPHONE

米国南部に、未曾有の巨大ハリケーン:ドリアンが来襲する・・
それでこそベビーメタル、これこそがベビーメタルじゃないか!

そしてよく晴れた一日の終わり。
夕闇の迫る摩天楼の向こう、
西の空を覆ったどす黒き悪雲の帯。

雨が近い、その嵐を前にしたこの不穏な慄き・・

嵐が。嵐が、来る・・
この不穏なざわめき。
押し殺したような沈黙の中、
吹けよ風、呼べよ嵐。
その不穏な祝祭の時を、
いまかいまかと待ち続けている、そんな自分がいる・・

ベビーメタル。

それはまさに、未曾有の巨大ハリケーン。
あるいは、漆黒の闇の中、暗く沈んだ水平線に浮かび上がった、
あの、大怪獣ゴジラの、その不穏なシルエット。

改めて思う。

ベビーメタルこそは、ゴジラ、なのだ・・

破壊と創造、愛と殺戮の地獄の女神たち。

その来襲を最大の畏敬を込めて待ち受けるここニューヨーク。

ベビーメタルがやってくる、
至上最強最凶の、大怪獣が、このアメリカを、
木っ端微塵に吹き飛ばす、まさにカテゴリー5の超大型ハリケーンそのもの・・

吹けよ風、呼べよ嵐・・

皆のもの、用意はいいか。
首の準備は、命の覚悟は、できているか・・・!?








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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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