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超長文「BABYMETAL THE FORUM で10回泣いた男の話」 その3~「それはまさに考えうる限り最高最上最強の瞬間だった!」

Posted by 高見鈴虫 on 20.2019 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
「BABYMETAL THE FORUM で10回泣いた男の話」
その序章~「伸るか反るか2BORNOT2B 天使の街の光と影~LA THE FORUMを前にして」
その1~「ベビーメタルのミッション・インポッシブル」
その2~「ベビーメタルの注目すべき人々との出会い」
その3~「それはまさに考えうる限り最高最上最強の瞬間だった!」
その4~「友よ:そして新たなる旅立ちの時」

♪    ♪    ♪    ♪    ♪



三っつ目の涙 「 DADA DANCE に泣いた男 」 ~ すべての予想を覆したオープニング、それはまさに考えうる限り最高最上最強の瞬間だった!」


という訳で、お待たせしました。
前回のあれはまあ言うなればその前章。
まあごくごく個人的なこと、
つまりは旅の途中のこぼれ話、その断片。
まあでも、そんなこと、誰も興味なんか無いっすよね。
はい、なので、本当はもっともっと色々なことがあったのですが、
まあ、先を急ぎましょう。

では改めてここからが本番。
10月11日、ベビーメタルの天下分け目の大決戦。
あのLA フォーラムでいったいなにがあったのか。

実はさ、いや、実は、本当の本当に正直な話、
俺、その運命の公演の前の待ち時間、
自分でもおかしなぐらいに、
すごく冷静、というか、あるいはなんていうんだろう、
そうちょっと冷めているな、という気はしていたんだよね。

まあ隣りに立った怪人酋長さん。
そのあまりにも業界然とした風格を前にして、というのもあったのだが、
いや、俺って実はそういう奴。
ライブの前やら、喧嘩の前やら、
そう言えばナンパの時も、そしてその結果のおむあんこの時も、
いざ実際に決定的な瞬間を前にした時、
なんとなくこう、自分でも妙なぐらいに血がさっと引いてしまって、
妙にこう、冷静になってしまうところがあってさ。

そしてそれが、切羽詰まれば詰まるほど、重要な局面であればある程に、
妙に妙に冷めてしまう、冷静になってしまう。

でまあそんな自分の妙な乗り切れなさのその原因がなんなのかな、
なんてことを考えていて、
つまりはまあ、帰りの時間への懸念と、
そしてなにより、メタル・ギャラクシーだろ、と。

そうなんだよ、このメタル・ギャラクシー、
一般発売の前にしてありがたくお送りいただいたのは良いのだが、
その出来栄えがそのクオリティがもうあまりにもぶっちぎり過ぎていて、
末期的クラックヘッドの如くもう聴いて聴いて聴きまくり。

そう、先の駄文に綴ったメタル・ギャラクシー評、
これはビートルズのサージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド、
つまりは音楽史上最高傑作NO1の誉れ高い不朽の名作、
だがこのメタル・ギャラクシーはそれさえも上回る。

つまりは俺にとって、このメタル・ギャラクシーこそが音楽史上ぶっちぎりの最高傑作、
そうぶち上げたのは、よいしょでも誇大妄想でも末期的錯乱状態でもなんでもなくて、
そう、俺はまじめのまじめに、このメタル・ギャラクシーを指して、
音楽史上における最上の最高傑作NO1と、本気の本気でそう思っているのである。

そう、判る奴なら判る!

俺はそれを信じて疑わない訳で、つまりは俺はまだ人類を信じている。

いみじくも音楽家で、これが判らなかった詐欺だろうモグリだろうと。
いや、あの、そう、ドルヲタだなんだ、なんて連中は、糞も味噌も見分けがつかないのだろうが、
そう、バンドマンなら、ミュージシャンなら、音楽家なら判る。判らなければ嘘だ。

これの作品を、メタルだ、メタルじゃないだ、
あるいは、アイドルだ、シティ・ポップだ、売れ線だ、日和見だ、ウケ狙いだ、
ともすれば、そこにユイがいるだいないだ、
そんな低次元の糞のようなところで、この作品を語らないでくれ、穢さないでくれ。

そんなチンケな色眼鏡をすっかり取っ払っては、
ともすればこれがベビーメタルであることさえも忘れて、
この作品を純粋に、初めて聞く音として、認識し直してくれ。

もしも、見たことも聴いたこともないアーティストが、
いきなりこのアルバムをリリースしたら?

もしそうであれば、俺は一言、これは、天才だ!
と叫んだに違いない。
これほど良質なポップスはない。
これほど斬新なアレンジはない。
これほどまでに優れたヴォーカリストはいない!

そして多分、すぅは、最愛は、そして他ならぬコバさんも、
本気の本気で、この作品がベビーメタル史上は愚か、
世界の音楽史そのものを覆す傑作の中の傑作であること、
絶対にそう信じている筈。

で、改めて、あのインタビューがなんであったのか、と思えば思うほど、
それはまさに絶対的な自信の現れ、
ともすれば、この作品でコケたらもう打つ手はないぜ、
そこまで貼り込んで張り込み切った、土壇場の勝負作品であった筈。

判るよ、本当に判る。
これがコケたら、もう人類そのものを疑うしかない。
賭けても良い。全身全霊を込めて俺は言い切ってやる。
このメタル・ギャラクシーは、人類史上の最高傑作。
これを上回る作品は他にはない!

という訳で、いやはや、初聴きの直後からもうはまりにはまりまくっては、
寝て覚めての24時間、やめられないとまらないぶっ続けに聴き続けに聴き続け。
今朝も空港への道すがらからゲートのでの待ち時間からそしてフライト中も、
耳に突っ込んだイヤフォンを片時も外すことなく。

さすがにLAに到着してからは不慣れな場所とあっていきなりパーンと弾かれてもつまらない。
イヤフォンだけは外したものの、
ただ、耳からの注入が無くなったとたんに今度は脳内で廻りまくり響きまくり。
これもう完全な禁断症状だろう、と。
ともすれば今回のこの公演、
俺的には、その傍若無人な俺の俺による俺だけの希望を言わせて貰えば、
最初から最後まで、すべて、このメタル・ギャラクシー。
FUTUREから始まって、そしてアルカディアに至る、
その全16曲を、そのままの曲順でそのままの演奏で、
そのままそっくりとなぞって頂けたらどんなに良かったことか。

ただ、そう、ただ、それこそがギャップなのである。

公的な意味では、このアルバムの一般発売日はまさしく今日。
つまりはなんらかの方法でそのフラゲを手に入れた筋金入りのメイト達以外には、
このアルバムの曲目を知っている人はいない筈、なのである。

ベビーメタルが二人か三人か、どころか、それがメタルかアイドルか、
ともすれば下手をすれば、すぅめたると最愛めたるの区別がつかない
そんな次元の初観の人々を前に、
せっかく予習してきたその古き良きレパートリーのすべてを反故にしては、
見たことも聴いたこともない新曲だけで押し通す、
そんな無茶が許される訳もなく。

ただ本心では実はそう思っていた。
俺の中にあって、嘗てのベビーメタル既に終わったもの、なのである。

メギツネも良い。ギミチョコもKARATEもRORも確かに必要だろう。
だがしかし、その本心、その剥き出しの本心だけで言わせて貰えば、
俺はもうこのメタル・ギャラクシーだけで十分なのである。
もうそれ以外のベビーメタルは捨ててしまっても構わない。
そしてなにより、たぶん、すぅは、そしてコバさんも、
実は本心ではそう思っている筈、それを確信していたのである。

ただ現実問題として、今日のライブは、このライブだけは落とせない。滑れない。
それを考えれば考える程に、取り敢えずは確実に堅実に、の妥協案。
せめてそのラストだけは、メタル・ギャラクシーを飾った珠玉のエンディング、
SHINEからARCADIAへと続く、あの感動のクライマックス、
これだけは譲れない、そう、それを確信していたのである。




であれば、と考えていた。
一曲目は多分、ROR。
この勝負曲をいきなり初っ端にぶちかましては、
メギツネ、エレガ、と今回の北米ツアーのプログラムをたどり、
そしてヘドバンでの怒涛のラストからTHEONEの壮絶なフィニッシュを決めた後、
そして鳴り止まないアンコールの中から、
突如として披露するこの二曲。
であれば、披露するのは全十五曲。
演奏時間はきっと、一時間40分。
であれば、9時に始まればギリギリのギリギリで、
待ち合わせ時間にたどり着くことができるかもしれない、
その筈だったのだが・・

ただ・・・
ただ、もしもそうだとしたら、
果たして、すぅめたるは、その一種守りに回った選択。
その一曲目を敢えて、嘗ての勝負曲を持ってくる、
その絶対値的無難な決断を、
いったいどう思うのだろうか。

つまりはお客様あっての私達です、
その顧客第一のサービス精神と割り切るのか、
あるいは・・

俺にはなんとなく、その選択を告げられた時、
すぅはまた、はい、わかりました、とお行儀よくも素直に頷きながら、
しかしその内心では、一種、ちょっとした落胆、
それはつまりは、ベビーメタルの将来に対する、
ちょっとした不安さえもを感じたかもしれない。

それが判っていながら、
コバさんは敢えて、その一種後ろ向きな決断を下す、
その度胸が、分別が、あるのだろうか、と。

改めて、このFORUM。
あのネイトとの会話にもあるように、
一曲目こそが勝負、と思っていた。

この一曲目ですべてが判る。

ともすれば、今後のベビーメタル、
その進路を、その展開を、その礎となる精神そのものが、
この一曲目の選択で筒抜けになるだろう、と。

という訳で、当初の7時半開演から、
突如として組み込まれたこのDJセット。
その帰りのフライトのことを考えれば考えるほど、
そしてなによりいまも脳内に響き続けるメタル・ギャラクシーからのレパートリー、
そのギャップに思わず唖然としながら、
いまにも腸が煮えくり返りそうな苛立ちを覚えていた。

この糞DJ、なんだって、こんな退屈な曲ばかりを回し続けるのか。
メタルだ、ロックだ、ポップだ、
もうそんなものはベビーメタルには必要ない。

ベビーメタルはすでにメタル・ギャラクシーなのだ。

この名作を世に出してしまった以上、
それ以外のすべての音楽は過去の遺物なのだ。
このDJ、それが、まったく、判ってねえ。
そう思えば思うほどにこの退屈な構成に腹立たしくてならず。
こんなカビの生えきった糞曲を流し続けるぐらいなら、
どうせならこの場でメタル・ギャラクシーをかけてくれれば良いものの・・

だがまあ、ギグの前のMCに自分のバンド曲をかけてしまうことほどダサいこともない。
判っている、それが判っていながらも・・・

そう、改めて言わせて頂ければ、
今回のこのFORUM公演において、
唯一の不満点があるとすればなによりこのDJセット。
あれ、まじで、ちょっと退屈過ぎて・笑

まあそう、あれだけ退屈だったから仕方なくもあの怪人酋長と、
あんな他愛もない話に盛り上がれた、というのはあるのだが。
なにはともあれのこのシンデレラ・ボーイ。
そう、12時のフライトを逃した時点で、かぼちゃのバスに揺られての大陸横断、
下手をすれば自殺覚悟のヒッチハイク旅行なんてことも覚悟せざるを得ない、
そんな切羽詰まった状況にある俺にとって、
コバさん、なんでや、なんでやねん!
なんでこんな糞のようなDJを回す時間があったら、
そのまま当初の予告通りに、7:30とは言わないまでも、
せめて8時ぐらいから初めてもらえなかったのか。
つまりはまあ、日本向けのLVの都合とかがあったのか、
あるいは何かに付けて時間にルーズなLAっこに合わせて、
譲りに譲っての苦肉の決断だったのか。

であれば、せめてあのAVATOR、
アイツラにだって、このFORUMを経験させてやりたかった、と。

という訳で、まさかまさか、
開演予定時間9時を過ぎても一向に始まる気配の見えないそのステージ。
その沈黙が3分5分と長引く長引くごとに、
その最後の最後のクライマックス、
その勝負曲が一曲二曲と削られて行くことを意味する。

こばさん、頼む、お願いだから、一刻も早く初めてくれ・・
でなければともすれば、俺はこのコンサートのクライマックス、
その目的そのものである筈のアンコールの二曲、
SHINEを、そしてアルカディアを諦めなければならないことになる・

このジリジリ、この焦燥、この苛立ち。
どうしたベビーメタル、もしかして、まさかまさかのテクニカル・ディフィカルティ?
おいおいおい・・

そう、苛立っていたのは俺だけじゃない。
まだか、ベビーメタルはまだなのか?
いつまでこんな退屈なMCを流し続けるつもりなのだ・・

待ちかねた観客がベビーメタルコールを叫び、
そしてIPHONEのライトを翳しては会場中が星屑の海。

ベビーメタル、早く出てこい、お願いだから・・

その苛立ちが頂点に達した、まさに、その一瞬だった!

時間は忘れもしない9時10分。
これまで漆黒の闇に包まれたステージ、
その全面に、いきなり浮かび上がった超巨大スクリーン。
見上げれば天まで届くほどの大画面に、
いきなり映し出された惑星衝突の映像。
赤い炎と青い炎、と、
そして、DON’T THINK.FEEL の謎のメッセージ。

湧き上がる歓声、そして絶叫。

ええええ、FUTURE METAL!?
えええ、ってことは、一曲目、もしかして、ギミチョコ?まさか・・・

人々の困惑をよそに、
超巨大スクリーンに映し出される見事なCG映像、
ロボット戦士として作り上げられたすぅめたるとそして最愛メタル。
宙を走るレーザービームに焼き尽くされたように刻み込まれるBABYMETALのエンブレム。

来るぞ来るぞ来るぞ、ベビーメタル!

そして暗転した場内に響き渡る、
あのおなじみのデスボイス、
ギミー、ギミー、ギミー、チョッコレイト、
そのモッシュの大爆破の衝撃に身構えていたその耳に、

え!?といきなり響く軽快なジュリアナビート!
ええええ!?

だ、だ、だ、ダダダンス!?!!!!

ええええええええ!!!!???

いやあ、驚いたよ。まじで、これほど驚いたことは無かった。

思わずええええええ、と大絶叫。
思わず、ええええ、なんでえええ、と大爆笑。

突如として白光の炸裂した大画面を背に、
忽然と浮かび上がる二人の影。

そして暗転。そして目潰しの青いビーム、
ぐげ、いきなり、目の前にすぅめたるの加わった三姫の姿。

そして怒涛のように押し寄せてくるダンス・ビート。
まさにビートの津波。まさに鉄砲水のように。
燃え上がる炎。そして宙に浮かぶ三姫の姿。

そして再びの大絶叫。
えええ、百々子?鞘師じゃなく?
そっか、この大一番に、アヴェンジャーは百々、
つまりは今後、百々めたるが正式メンバーとなる、
その可能性が濃厚ということなのか・・

改めて、このなにからなにまでの予想をぶっちぎったオープニング。

知らぬうちに絶叫を上げていた。
知らぬうちに、すぅぅぅぅ! と叫んでいる自分がいた。

行け!ベビーメタル!
行け!行け!行け~!
世界なんて、宇宙なんて、木っ端微塵にぶっ飛ばしてやれ!

サビの出だしで気合の入り過ぎたすぅの声がオーバラン。
この弾け方がまさにハンパではない。
凄い、まじで凄いなこのオープニング。

息が上がる、胸が競り上がる、この緊張感、このスピード感、
これはまさにジェットコースター。止まるに止まれない暴走機関車だ。

あまりの緊張感にただただ絶句を繰り返しながら、
えええ、ふと見れば、百々が、百々メタルが笑っているじゃねえか!

この16歳、この糞度胸、いったいどんな肝っ玉をしてやがるのか。
そして厳かに動き始めたステージ。

すぅが、そして最愛が近づいてくる、近づいてくる、近づいてくるぞ!

ステージ前はもう熱狂も熱狂、とてつもない圧迫である。
そんな俺達の前、その目の前を、あのすぅが通り過ぎていく。
その細い腕が、そのあまりに小さいお顔が、
そして黒いタイツに包まれた長い長い御御足が、
それは紛れもなくすぅめたるであった。
まさに、生身の人間としてのすぅめたる、そのものであった。

すぅめたるは美しい。この人は本当に美しい。
そのシェイプがそのプロポーションがそのスタイルが、
その存在のオーラそのものが例えようもないほどに美しい・・

最愛が髪を振り乱す。
その栗色の長い髪をまるで鞭のように振り回す。
百々が飛ばしている。
すでに全身から汗を飛び散らせるように、
一曲目から飛ばしに飛ばしまくっている。

そしてあっという間に目の前を通り過ぎてしまったステージ。
その背後から見る三姫の姿。
帰って来て!お願いだから帰ってきて。

そしてその向こうに広がるスタジアムの客席。

あり?と。
なんだよ、あいつらみんな座ったままじゃねえか、と。

このステージ下の狂乱と、あの渓谷に張り付いた座席客との、
このあまりのあまりの落差。温度差。思わず大爆笑。

おいおいおい、観ろよあいつら、
こんなものを前にしてまだ座って奴らがいるぜ。
正直、かわいそうになあ、と思う。
あいつら、本当の本当に可愛そうになあ、と。

椅子になんて座らなくてよかった。
遠方から全景を観察して傍観して、
そんな馬鹿なことを考えなくて本当に良かった。

観ろよ、ベビーメタル。
この眼の前のベビーメタル。
振り乱す長い髪の先から、いまにも汗の雫が飛んできそうな、
まさにそれはベビーメタルであった。
まさにベビーメタル、そのものであった。

そしてこのダダダンスの勝負所、
転調した見事な美声が会場中に弾け飛ぶ、響き渡る、轟き渡る。
すぅだ、すぅの声だ、まさしくすぅめたるの声だ。
このなんの揺るぎもない喉を目一杯に広げての大絶唱。
これはできない。
これがそんじょそこらのアーティストにはできないのだ。

自らの音感に、発声に、その力量に徹底的なまでの自信を鍛え上げていない限り、
通常の歌手は、ここで怯む、ここで怖気づく、ここで守りに入る。

だがしかし、すぅは、びびらない。
なにがあって絶対に物怖じすることがない。

そしていま、思い切り喉を開いては胸を開いて、
そして響き渡るこの大絶唱!

この糞度胸!この開放感!
この揺るぎなき自信、
それに裏打ちされたこの手加減知らずのパワー
この惚れ惚れとするまでの吹っ切り、
この見事なまでのぶっち切り。

すぅだ、まさしくすぅだ、これこそがすぅだ。
ベビーメタルの魅力とは、まさに、これ。
すべての躊躇を、恐れを、怯えを、ブッちぎった、
この何気ない転調からの大爆発!

それこそが、すぅめたるのすべてなのだ。
それこそがベビーメタルのパワーのすべてなのだ。

全身を鳥肌が走った。
全身が震えた。
全身にパワーが漲った。

すぅめたるの気合に、ベビーメタルのそのパワーに、
会場中が震撼するこの瞬間。

すぅううう! 行け!すぅう、このままぶっ飛ばせ!!

これこそがライブだ。
これ、この瞬間、この突き抜け感、この臨場感、
ステージの演者の、その気合いを、その突破を、そのバイブレーションを、
思い切り全身で体感し、疑似体験することこそが、ライブの最大の歓び。

ライブは良いな、と思った。
やはりベビーメタルはライブだろう、と。

こばさん、やっぱり勝てないよ。
やっぱりスタジオ版ではライブには勝てない。

改めてこのオープニング。
ベビーメタルを初めてみたあの2016年のプレイステーション。
地獄の戦車隊のように轟き渡るBMDのイントロの中、
シルエットになって浮かび上がった三姫の姿、
そして幕が、文字通り、落ちた、その向こう、
お立ち台に立つ、すぅ、最愛、そしてユイの姿。
これまで経験したどんなライブよりもどんなパフォーマンスよりも、
あのベビーメタルほどまでに格好良い光景を見たことがなかった、
その衝撃の凄まじさ、ではあったのだが・・・

いやはや、このメタル・ギャラクシー、
このDA DA DANCEのオープニング、
まさに、あのBMDを、
ともすれば、RORの出だしさえもを凌駕する、
まさに最高に最高の決定打!

この緊張感、このドライブ感、なによりもこの祝祭感。
これはもう、ハンパじゃない。

凄いなあ、ベビーメタル。
ますます、ますます、とてつもなく凄くなっていく!

改めて断言しよう。

このFORUMにおけるダダ・ダンスのオープニング、
これほど麗しくも凄まじい光景を俺はこれまで見たことがない。

いまになってもダダ・ダンスを聴くと、
ともすれば、聴けば聴くほどに、
あのときの胸の高鳴りが、あの緊張に、あの至福感に、
思わず息を飲んでは涙が滲んでくる、
それをずっと繰り返している。

メイトの諸君、楽しみにしていてくれ。
このダダ・ダンスのオープニング、
凄いぞ、本当の本当に凄いぞ。

コンサートの開始の瞬間から脳味噌炸裂して真っ白け。
それはまさに、惑星衝突。
眩い白光に包まれたまま意識をなくし思考をなくし、
あとはもう、熱狂あるのみ。

DON’T THINK.FEEL

つまりはそういうことか、と・・・


♪    ♪    ♪    ♪     ♪    ♪    ♪    ♪



「BABYMETAL THE FORUM で10回泣いた男の話」

四つ目の涙 「 メギツネで泣いた男」 ~ 三姫の絆:ベビーメタル黄金のピラミッド、その鉄則はいまも変わらず!」


そして暗転した場内。
あまりの衝撃に呆気にとられて穴に落ちたような空白、
そこに間髪をいれずに響き渡る、
き~つ~ね~、き~つ~ね~!
おおおやはりメギツネか!
この鉄壁のおなじみレパートリーに、
会場中のボルテージが一挙に跳ね上がる。

くっそお、初っ端からいきなりのダダダンス、
そのものの見事な不意打ちの先制攻撃。
不覚にも遅れをとったその借りを、
ここで一気に倍返しだ!

やにわにスタンド中から、ぬおおおおおおお! 
地鳴りのような凄まじい歓声が湧き上がる。

き~つ~ね~、き~つ~ね

暗いステージの上、後方の譜面台のような飲み物台を前にちょこりと座った三姫。
右にすぅと最愛が、そして左にひとりで百々子が、
この一瞬の合間に、荒い息を沈め水分を補給する。

その姿勢、まるで峠の道端の道祖神に手をあわせる旅の娘、
神様、キツネの神様、わたしに力をお与えください。

百々子の一種突き詰めたような切実な様子、
あるいは、最愛の慎重に自身のバロメーターを図るスポーツ選手のような、
その緊迫感をよそに、
すぅがふと顔を上げる。
ふと顎を上げたすぅの表情、
さっきまでのあの熱狂が嘘のように、
割と何事もないかのように、あっけらかんとお澄まししては平静そのもの。

へええ、と思わず拍子抜け。
この一世一代の勝負時の中にあって、
このすぅめたるという人のメンタリティ、いったいどうなっているのだ。

その束の間、一瞬に目潰しのスポットライト。
赤い血の海と化した場内をうねるように睨め回すサーチライト。

響き渡るメギツネのイントロに乗せて、拳を上げての、ヘイ、ヘイ、の歓声が轟く。
まるで世界中が巨大生物の内蔵の中、繊毛が覆っては揺れ動くようだ。

ガラガラと不穏な振動を伴って天高くに登りつめたジェットコースター、
その緊張が極に達したその瞬間、弾け散るスネアドラムの轟音と共に、
眩い白光の中に塗り込められたステージ、三姫の姿が忽然と浮かび上がる。

キツネのポーズの灯籠を前に、仁王立ちをしたすぅめたるの姿、
その一種悠然とした佇まいの中、ツーアウト満塁のバッターボックに向かう、
不動の四番打者、ホームランバッターの余裕さえも伺われる。

そして始まるおなじみのリフ、
その一拍目で思い切りのジャンプ、そのフルスイング。
その気合に弾かれるように、それ、それ、それ、それ! 
世界が揺れ動く、波打つ、弾け飛ぶ。

ふと見れば巨大スクリーン、
その超大画面いっぱいに映し出されたすぅめたるの表情。

え?
思わずその意外さに息を飲んだ。

そのステージ上、背後から見れば、余裕さえも感じられたそのすぅが、
真正面からの特大アップの大写し画面。

その表情、その視線、その気合。
後れ毛が顔中に貼り付いたその修羅の表情の中、
ともすれば眉間に縦筋を刻みそうなまで、
徹底的に研ぎ澄まされては、
鬼のような気迫に満ち満ちたすぅめたるのその面構え。

うへえ、怖え、と思った。
この顔、この表情、この面構え、
まさに鬼、まさに般若、まさに、勝負師のそれ。

すぅが、すぅが、すぅが、本気の本気、
そこに余裕なんてひとかけらもない、
まさに、全身全霊をかけたギリギリの表情。

そして響き渡るその声、その美声。
声が出ている。
すぅめたる、まさに絶好調のフルパワー。
入っている、思い切り気合いが入っている。
その全身から100万ボルトの電流を発するかのように、
場内は完全なる感電状態。

そして間奏。
ひとり隊列を離れたすぅめたる。
キツネのお面を翳してはしずしずの進むステージ。
普段はキツネのお面の陰で見えないその表情、
そこで通わせる、すぅと最愛、そのアインコンタクト。

最愛を見つめていたすぅめたるが、そこで一瞬、
キッとして視線を強めては憤懣遣る方無し、
その一瞬のうちに浮かんだ怒りの表情。

そこでいったいなにがあったのか。

ふと見れば最愛が、最愛が笑っている。
まるですぅめたるの気合を、本気を、
その鬼気迫るほどの修羅の形相をからかうように、
まるでひょっとこのような顔をして茶化しているのである。

なにやってんだ最愛!

まったくもう、と振り返るすぅめたる。
その一瞬にちらりと百々に視線を飛ばす。
百々子が笑っている。
あっけらかんとしてあどけない顔を装いながら、
確信を持って、確固たる目的を持って、
百々が満面の笑みを浮かべてすぅめたるを見つめている。

そうか、そうだったのか。
百々子はその幼さから、能天気さから、
出だしのステージで笑っていた訳ではない。

すぅの緊張をほぐすために、
そして最愛に、OKを伝える為に、
あの笑顔は、その伝達の手段だったのだ。

大丈夫?
大丈夫!
負けないわよ。
わたしたち、絶対に負けない。
なにがあっても、絶対に、負けない!

百々が頷く、その一瞬の視線と視線。

そして見上げる巨大スクリーン。

えええ!
その一瞬で、まるで魔法のように魔の解けた、
満面に笑みを浮かべたすぅめたるの表情。
そして思い切りの声を跳ね上げるMCの大絶叫。

えええ、すぅちゃん、その顔つきが、そのオーラが、
さっきまでと全然違う、全然の別人じゃないか!
違う、違うなあ、このステージの印象とそして大画面の表情。

そしてしてやったりとばかりに飛び跳ねる最愛。
ここぞとばかりに弾け飛ぶ百々めたる。

その表情、その笑顔、まさに菩薩。まさに女神のようではないか。

最愛かあ、と思う。
この一瞬の視線と、視線、その壮絶な綱引き。
最愛か、やはり最愛なのか・・
この鉄壁のアイコンタクトを操るのは、
まさにこの最愛だったのか。

最愛の珠玉の笑顔に絆されるように、
既にこの時点で、すぅの肩の力が、
その眉間に刻みこんだような修羅の表情が、
一瞬のうちに消え去っては、
その滑り出しの緊張から解き放たれた三姫。
その三人ともが、満面に笑顔が炸裂、
円形のステージ中をこれでもか跳び回っている。

ARE YOU READY!?
1-2、1-2-3-4!!!

うわあ、スタンドが立った。
あの地蔵たちが遂に一同に立ち上がった。
舐めたら、いかんぜよ!
揺れる、揺れる、揺れる、会場が揺れる、世界が揺れ動く。

それはまさに劇的な変化。
あの最愛めたるの一瞬の笑顔、
あれだけで場内が、会場中が、世界そのものがいきなりのどんでん返し。
それはまさに奇跡の情景だった。
奇跡の大逆転、その二曲目にしていきなり満塁ホームラン。

これがベビーメタルだ。
これこそがベビーメタル、その神降ろしの秘技。

そしてあっけらかんとしては満面の笑顔で踊る最愛めたる。

この野郎、と。この最愛は、この最愛って奴は。

改めてメイトの諸君。
今更ながら、すぅばかりがベビーメタルではない。
百々子はただの助っ人のアヴェンジャーだけではない。

三姫の絆。
その鉄壁のピラミッド、
そこに交錯する一瞬のアイコンタクト、
そのテレパシーのそのシンクロこそが、
ベビーメタルの奇跡、そのパワーの源なのだ。

すぅめたるだけでは、あるいは最愛めたるだけでは、
この奇跡は起こせない。

三姫なのだ。
ベビーメタルはやはりユニットなのだ。

このスポットライトに照らされた土壇場の俎板の上、
そこで交わされる視線、頷き合う目と目。

ベビーメタルの三姫の絆。
その黄金のピラミッド、その鉄則はいまも変わらず、なのだ。


♪    ♪    ♪    ♪     ♪    ♪    ♪    ♪


「BABYMETAL THE FORUM で10回泣いた男の話」

五つ目の涙 「 カゲロウで泣いた男 」 ~ 思わず、鞘師! と叫んだ


そしてエレガ、
いまやすっかりとリラックスした面々。
すぅは声が伸びている。
まさに溌剌と伸び切っている、どこまでも。

まったくこのすぅめたる、
この人には調子の悪い日というのはないのか。
ステージを滑ることがないのか。
その姿、まさに奇跡を見るようである。

そしてKAMI-BAND。
スネアが伸びている。
そのグルーヴが入っている。
良いドラムだ。惚れ惚れするぜ。

再び後進を始めたステージ。
それに連れて後方で早くも始まったモッシュサークルに、
ステージ下はすでにぐしゃぐしゃである。

痛え、痛えぞ、押すな、押すんじゃねえ。
お前ら、まだまだ始まったばかりじゃねえか。

そしてシャンティ。
今更ながらこのいきなりのインド世界。
このシタールの調べ。
いやあ、ここだけの話。
っぱに効く一番の音色はなにか。
ジミヘン?尺八?カールトン・バレットのワンドロップ?
いや、改めて言おう。
それは、シタール・笑
そう、シタール効くんだよ。
まさに内蔵そのものを揺れ動かされては掴み上げられるように。
日本酒に演歌が浪曲があるように、
EXにハウスがテクノがドラムンベースが欠かせないように、
このシタールこそは、っぱの魔力、それを極限までに引き出す、
まさに魔術、まさに鉄板のこのカップリング。

という訳で、この怒涛のモッシュピットが一瞬のうちに別世界。
回る回る、姐ちゃんが回る、踊る踊る、おさんが踊る、
改めて言っておくがここカリフォルニアにおいてっぱは既に合法。
その目的はその意図するところは様々なれど、
取り敢えずっぱでラリっているからと言っていきなりパクられることはない。
品行方正のお薬系フリーで知られるこのベビーメタルのライブにおいても、
露骨にすっぱすぱと演るやつはさすがに見なかったが、
その道すがらあるいは駐車場で思いっきり打ち込んできた奴らきっときっと多かった筈。
という訳でシャンティ。このいきなりの魔境的桃源郷。

ただ、このベビーメタル、
例えそれがインド歌謡であろうとも、
その気品がその可憐さが華麗さが、
肥やし臭いチープドラッグというよりは、
まさに豪華絢爛の宮廷演舞。
その金銀ギラギラのマハラジャ的世界。
次第に天へと向けて競り上がっていくステージ。

超巨大スクリーンいっぱいに映し出された万華鏡的映像の中で、
その広がり、その空間性、そのあまりの見事さ。
いやあ、凄い。まったく凄いぜ、この世界観の劇的な変化。

という訳で、今更ながらこのシャンティ。
俺の独断的偏見では、この曲こそは百々めたるへのプレゼント。
だろ?この曲の百々子めたる、その伝家の宝刀のヘッドスライド。
これ、本当の本当に嬉しそうだからな、と。

という訳で、いきなりインド世界の夢から醒めて、
突如として脳内に響き渡る、
ライララライのライライライ~ OH MAJINAI~おまじない~!
ではなかった、そう、ライブではここでカゲロウ、なのである。

このカゲロウ、このアメリカン・ヘヴィーの真髄。
この曲こそは、今回のUSツアーKAMI-BANDに送られた、
アメリカン・ロックの真髄曲。

そしてこの超巨大スクリーン一杯に映し出されるメンバー個人の超アップ映像。
いやあ、嬉しかっただろうなあ。
この海賊動画、多分、一生の思い出、生涯の家宝となる筈。

という訳で、俺的にはこのフォーラム公演。
遂に遂にこの新生ドラム神のアンソニー・バローンの秘技、
その背後からのドアップ映像が明らかになったわけで。
で、そうか、と。
このやや厚めのじゃーマン・グリップのその理由。
つまりは、バークレイ音楽院。
そこで、ジャズからロックからプログレから、
そしてなによりクラッシクとしての打楽器の奥義、その真髄。
そうこの人、書見一発:楽譜を見ながら一瞬演奏ができる人。
つまりは、体力自慢のお祭り系ツアードラマーというよりは、
バリバリのスタジオ系の人なんじゃねえか、と。
つまりはそう、メタル一徹のツーバス馬鹿一代、というよりは、
ジャンルを問わずメンツを問わず、
北極南極難曲何曲、なんでもござれのサラブレット。
つまりはそう、あの青神さまと同じタイプの方であった、と。

ただ、あの、その映像に思わず、おっ!となってしまったこと。
おい、アンソニー、悪いことは言わない、椅子変えろ、と。
つまりは姿勢を正せ、と。
その姿勢だと、そのうちまじで腰をやられるぞ、と。
そう、すべてのドラマーの持病であり悪魔の罠である、
このヘルニア、という奴。
いずれは嵌る、結局嵌る、やっぱり誰もが嵌まり込むこの地獄の責め苦。
ではありながら、
そう、俺も言われたんだよ。
タイムズ・スクエアの楽器屋の昼休み、
また例によってデモ・ドラムを好きにぶっ叩いては調子こいていたその時、
いきなり背後から、額と背中をぐっと引かれて押されて。
若いの:ヤングマン、とそのしゃがれた声。
ドラマーは姿勢を正せ。
いくら上手くても、どれほどのグルーヴを誇っても、
その姿勢でドラムを叩いていれば、
いつかは必ず、ヘルニアにやられる。キャリアのすべてをふいにする。
多少はパワーを抑えても、多少はビートにブレーキがかかっても、
腰を伸ばせ、姿勢を正せ、自分のフォームを鏡に映しながら練習をしろ。
耳栓と、そしてこの背もたれつきの椅子。
ドラマーにとっての必携だ。忘れるな。私の失敗を繰り返してくれるな。
そんな様子を、両手を口に突っ込んで、頭を抱える店員達一同。
あわわわわわ、大変なことになった。
そんな店員たちに、ヒーイズ・グッド!ヒーズ・グレイト。
俺はこのチャイニーズ、最高に好きだぜ。
いやあありがとう、久々に血が騒いだぜ、と。
そのドラマー、いまだから言える、
まさにニューヨークジャズ界の大御所の大御所、その伝説のドラマー。
高笑いを残してその魔神の去った後、
その真相を聞かされては、で、あのひと、なんだって?と。
ああ、背筋を伸ばせ、と、姿勢を正せ、と。
凄いな、と店員一同。
お前いま、神様からの天恵を頂いたんだぜ、と。
なのだが・・
そう、俺は若かった。あるいは馬鹿だった。
それが誰であろうが何者であろうが、
俺のドラムに口を出すなんざ、十億年早い。
そう、そんじょそこらのちんかすドラマーと違い、
俺は身体を鍛えている。
ガキの頃から健康優良不良少年、
いまも週日はジムでウエイト、そして週末は一日中テニスばかり、
そのトレーニングは片時も欠かしたことがない。
そう、俺は違う、俺だけは絶対に違う、
そう思い込んでいたその矢先。
それはやはりやってきた。
それも、ここぞ、という時にやって来た。
つまりは悪魔の罠。つまりはそう、ドラマーとしての死亡宣告。
あの時、と思ったものだ。
あの時、もう少しだけでも素直にあの天恵、
伝説のドラマー氏からのアドバイスに耳を傾けていれば・・・
背もたれつきのスツール、なんてものは取り敢えずとして、
せめて、鏡を見ながら練習をする、それだけでも実践していたら・・

アンソニー君。
君もきっと既に方々から聞かされているのだろう。
聞かされながら、オレは違う、
あるいは、そう、このステージこそはこのステージだけは、
なにがあっても、腰が砕けようが、腕がもげようが、落とすわけにはいかない、
その全身全霊を込めて、この土壇場を戦っているのだろう。
本当に本当にありがたいことだ。
本当の本当に尊いことだ、とは思いながらも、
言ったぞ、言っておくぞ、アンソニー君、そして世界の若きドラマー諸君。
いますぐに、耳栓を、そして、姿勢を正せ。
それこそが将来への保険、その担保。
そのキャリアの絶好調において地獄の罠にはまり込まない為に、
その寿命を一年でも長引かせる為に、
姿勢を正せ、そして耳栓を忘れるな。
それこそが、ドラマーの生命線なのだから、と。

とまあそんなことを思いながら、
ふと見れば隣の怪人酋長。
いまとなっては全身汗みどろの川から上がった妖怪変化状態。

な?とウィンク。
な?バークレイだろ。いかにもバークレイ小僧って感じじゃねえか、と。
スティック短いな。
しかも逆さ持ちだぜ、と大笑い。
つまりは?
つまりはそう、ジョン・ボーナム、じゃねえかよ、と。
つまりはバディ・リッチ。
つまりはマックス・ローチ。
つまりはジャズ。つまりは打楽器奏者としての基本の基本、と。
どうだ、これを見てもアオヤマの方が好きか?
うーん、と思わず。
うーん、確かに、アンソニー、化けたな、化けきったよな、と。
そしてこの凄まじいばかりのツーバスの連打。
確かに、ここまで来たら、さしもの青神さまもタジタジかもしれず・・

そしてこのカゲロウ、このビート、この情け容赦ないアメリカン・ロック、
いやあ、最初に聴いた時には焦ったよな、と。
唖然呆然の口あんぐりで、この曲、まさかまさかの高校の文化祭。
いやあ正直な話、この曲を渡されたとしたら、
どんな日本のミュージシャンも苦笑いを浮かべて肩を竦めたその筈。
だってこれ、だってこれ、アメリカン・ロック、中学生じゃねえんだぜ、と。
そう、こと、このカゲロウに関しては、
今回の新生KAMI-BANDのぶっち切り。
いやあ、こんな曲を、こんなレアな、
こんなナマモノそのものの剥き出しのアメリカン・ロック、
これを大真面目の大真面目で奏でられる奴ら、
日本にはいないだろう。
それがスタジオ系とあれば尚更だ、と。

という訳でこのUS版KAMI-BAND。
伝家の宝刀のアメリカン・ロック魂その炸裂。
その大蛇ののたうつような重い重いビートの中で、
リズムがうねる、リフがうねる、揺れて揺れて渦を巻く。
凄え、何度聴いても凄えな、このKAMI-BANDのカゲロウ。
思わず頭を振る、腰を揺する、膝が踊る。
イエイと笑う酋長。YEY、ユー・ロック!
そして深碧に染まった海の底、しずしずと進み出た三姫の姿。
来るぞ、来るぞ、来るぞ、ベビーメタル。

その本リフへの入りに、1-2-3-GO、
思わず声を合わせては大笑い。

それはロックであった
まさに手加減なしの本物のロック。
そうミュージシャンである。
そう、バンドマンだから判るこの間合い、この気合い。
ロックの、ビートの、グルーヴの、
その珠玉の一瞬。最高の瞬間。

まるで魔に憑かれたかのように髪を振り乱す三姫。
その踊る髪が、その揺れる腰が、
なんともなんとも生々しく目に焼き付く。
ベビーメタルはロックだ、筋金入りのロック・バンドだ。
ガンズからスティーヴン・アドラーが抜けて以来、
これほど格好良いロックを聴いたことがねえぜ。

思わず絶叫を上げる。思わず飛び跳ねる。
思わずステージに手を伸ばす・・・

え?
俺いま、なんか、妙なもの見なかったか?

あれ、あの子、なんかおかしい。
あの、百々子、なんか違う。

その縮尺が、そのスタイルが、そのプロポーションが、
いや、そんなことではない。
その動き、その身のこなし、その移動から移動への、
腰の座りがスムーズさが滑らかさがそのダイナミックさが、
そう、存在そのもののオーラが、その輝きが妖しさがその匂いが
違う、まったく違う・・・

ええええ!?
あれ、まさか、鞘師!?
ええええ、あの子、鞘師だ!サヤシ・リホ!
あの鞘師が、ここに居る!!!

いやあ、驚いたよ、まじで、ぶっ飛んだ、とはこのことだぜ、と。

なんで?なんでなんでなんで、鞘師がここに居るの?

ただそれは鞘師であった。紛れもない生身の鞘師里保であった。

ニューヨークにおいて近距離から見損ねた、あの苦渋の屈辱の二階席。
ああ、鞘師、あの鞘師を、もっともっと近くで見たかった!
それこそが俺の唯一の心残りだったのだ。

いやあそう、百々子には百々子の魅力がある美学がある素晴らしさがある。
それは判るのだが。
いやあ、このバンドマン上がりの、いまや枯れ果て切ったおさんにとっては、
この鞘師里保の姿、まさに、女の魔性、
その権化、その魅力のすべてその結晶。

いやあ、ガキには、童貞には、
あるいは、黒人のグルーヴを経験していないやつには、
この鞘師は判らない。

アイドルだ?モーニング娘だ?
ちゃんちゃらおかしい。

鞘師はそんな女じゃない。
観ろよこの姿、まさに魔女、まさに夜叉、
まさに黒豹そのものじゃねえか。

思わず、サヤシ、と叫んだ。叫んでしまった。
いやあ、なんと呼んで良いか判らなかった。
リホ~、だとなんだか間が抜けてる。
リホちゃん、という感じではまったくなく、
リホさん、ではますます本末顛倒。

それはまさに、鞘師であった。
つまりは女の子の名字呼び捨て、
それが通常だったあの時代。
高校のクラスメイト、その憧れのマドンナ、
その高嶺の花の、県内一の糞ビッチ。
暮なずむ校門の前、
その真正面にこれみよがしに単車を乗り付けては、
次々の帰宅につく生徒たちを見るともなく見つめながら、
まだかまだかまだか、まだなのか。
そうあの胸騒ぎの放課後、一世一代の大勝負の校門前。
部活の後、荒れた髪を見造作に流しては、
重そうなスポーツバッグをぶら下げては、
きゃはははは、友人たちと声を上げて笑い転げるあの娘の姿。
来た、来たぜ、ついに来た。
おい、と呼ぶ。
おい。
ふと止まる少女たちの会話。
凍りついたような沈黙の中で、
確信を込めてはひとりきっとした顔で見つめるその瞳。
なに?
迎えに来た。
どこに?
お前に見せたいものがある。連れていきたいところがある。
言いたいことがある。山程ある。思い切りある、
その言葉のすべてを飲み下しては、
なにも言わずに、ほらよ、と差し出すヘルメットがひとつ。
あによあんた、といきり立つ廻りの少女たち。
なんなのそれ、ちょっと、なに考えてるの?失礼なんじゃないの?
うるせえ、雑魚は黙ってろ、その言葉さえも飲み下し。
そして見つめる視線と視線。
サヤシ、鞘師。
視線を外さぬまま、ごめん、とつぶやく鞘師。
ごめん、ちょっと・・
ごめん、先に帰ってて。
えええ、と絶句を上げては凍りつく少女たち。
行こ、とそんな少女たちを促すリーダー格の少女。
行こう、さあ、行くわよ、早く。
そのきつい口調。そして歩き出す少女たち。
伏せた顔でニヤニヤと笑うもの。これ見よがしの流し目で舌の先を覗かせるもの。
そしてなにげなく振り返っては肩越しに送られた、その剣を帯びた鋭い視線。
いいのか?と今更ながら。
さあね、と薄く笑う女。
ゴメンな。
なにが?と女。
仕方がないじゃない、と細い肩を揺するその姿。
さあ、行こう、とメットを手に取る少女。
ただそれは被らずに、腕に絡めただけ。肘にぶら下げただけ。
どこに行く?と少女。
海?
OK。
鞘師、と思わず呟くその名前。
これまでこの名前を胸の中でなんど繰り返してきただろう。
鞘師。
なに?
鞘師。
なによ。
鞘師。
だからなに?
鞘師、さやし、サヤシ!
馬鹿みたい。
さあ、行きましょう。あんまり遅くなれないから。
最初からうちの親と揉めたくないでしょ?
第一印象が一番大切なんだからね。

いや、悪い、ごめん、また妄想だった、またいつもの白日夢であった。
ただ、そう、ただ、
俺が鞘師!と叫んだその理由。
そう、俺にとって、鞘師は、リホちゃんでも、リホリホでもなく、まさしく鞘師。
ともすれば、すぅさまでも、最愛ちゃんでもなく、
だがしかし、最大限の親愛と愛情と愛着を込めての、鞘師、
その無骨な名字呼び捨てこそが、不良のダンディズム、
その親近感のすべてなのである。

おい、鞘師だ、鞘師がいるぜ!
そして人々、ステージに目を凝らしながら、そして巨大スクリーンを見上げながら、
ああ、鞘師だ、本当だ、鞘師だ、鞘師がここに居る。
燃え盛る火柱、その赤い炎の中にゆらゆらと揺らめきながら、
鞘師、この正真正銘のメギツネ、あるいは黒豹、出たな妖怪、と思わず。

改めてこの鞘師の魔力というか魔術というか妖力というか、
その術にまんまとはまり込んだのか・・

いやあごめん、悪い、あの本当の本当にごめんなさい。
なんだけど、俺、なんかあれから、
あの鞘師の姿を一瞬見たところから記憶がまったくなくて・・・

それからいったいあの場所でなにがあったのか、
悪い、覚えてないんだお、まじで。
すっかりと、記憶が抜け落ちている。どこかに行っている。

いや、そう、次の曲がSTARLIGHTだった。
照明が赤から青へ。
ただそのイントロの中を、
あれ、鞘師だよな、鞘師だったよな、その不穏なざわめきのなか、
そして始まった一大サークルモッシュ。
その渦に巻き込まれては、ゲラゲラゲラゲラと、喉を晒して笑いながら・・

ただ、と思っていた。
ただ、改めて鞘師里保、その存在、その登場によるあまりのケミカルの変化。

ともすれば下手をすれば、最愛めたるが、そして、すぅめたるが、
すっかりと、脇役、あるいは、伴奏の唄のおねえさんになりさがってしまう。
そう、鞘師はそれだけ存在感がある、華がある、
そしてその華が、ステージに緊張を、テンションを持ち込むのである。

百々子のあの溌剌とした笑顔の中で、
ベビーメタルのステージそのものがさくら学院の延長と化してしまう、
あのなんともほのぼのとしたステージとは対象的に、
鞘師の存在はそこに、一種狂気を帯びるまでの殺気を持ち込むのである。

凄え、と隣の怪人酋長。
凄え、バンドが、その音が、その密度そのものが、一転した・・・

なぜ?
なぜって、あの鞘師里保。
でも鞘師ってダンサーだろ?
音とは関係ないじゃねえか。
だから鞘師なんだよ。そこが鞘師なんだよ。

鞘師の存在そのものが世界の空気、
その比重そのものを変えちまうんだよ。
いまにも泡でも吹きそうな程に荒れ狂うモッシュピット。
やばい、こいつら完全に頭飛んでる。
うわああ、凄ええ、やばい、やばいやばい、このバンド、まじでやばい!

そして見上げる観客席。
立ち上がっては気の触れたように腕を振り踊り狂う人々
それを唖然呆然として凍りついたように見つめる人々。
この天国と地獄、この天使と悪魔、この熱狂と驚愕のコンフリクト。

それはまさにベビーメタルであった。
それはまさに、地獄の天使たち、その姿であった。

OMG!OMG!OMG!

まさに目の前に繰り広げられる天変地異、
その壮絶な様を目を見開いては呆然と見つめるしかないかのように、
ベビーメタル、この圧倒的なパワーと、
それに打ちのめされ、それに押し流されていく人々。

そして狙いすましたように、
ここで極めつけのキラーチューン。

ギミ~、ギミ~、ギミ~、チョッコレイト。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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