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「BABYMETAL THE FORUM 」 その後 ~ この不思議な母性に包まれて・・

Posted by 高見鈴虫 on 22.2019 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments

そしてそれはニューヨークのあまりにもありふれた日曜日の朝。
夜明けを過ぎて犬の散歩を前にした午前6時過ぎ、
闇と光の混じり合うにじんだ空を見上げながら、
そうか今日は雨なのかと気づいたところで意識が薄れ始めた。
昨日の土曜日は一日中を通して雲ひとつない秋晴れ。
早朝の散歩から帰ってから意を決しては
ここ一週間貯めに貯め続けた熱情のすべて、
午後を通してそして夜を徹して、
そしてようやく書き上がった 
「BABYMETAL: THE FORUM 観戦記」 その怒涛の超長文集。


「BABYMETAL THE FORUM で10回泣いた男の話」
その序章~「伸るか反るか2BORNOT2B 天使の街の光と影~LA THE FORUMを前にして」
その1~「ベビーメタルのミッション・インポッシブル」
その2~「ベビーメタルの注目すべき人々との出会い」
その3~「それはまさに考えうる限り最高最上最強の瞬間だった!」
その4~「友よ:そして新たなる旅立ちの時」

 
いまだ冷めやらぬライブの熱狂のその激情に駆られるままに、
書いて書いて打って打って、
掘って掘ってぶちまけにぶちまけ続けては昼も夜も忘れ、
そしてようやくと辿り着いた日曜日の夜明け。

夜のDARKと朝のLIGHTの交錯する空一面に
厚く雨雲の立ち込めたこの曖昧な光の射し込む寝室、
ベッドの中では妻がまだ寝ぼけまなこの上からはしゃぎまわる犬を抱えては、
はいはい判った判ったちょ待ってちょ待っていま起きて散歩に行くから
それはいつもと相も変わぬありふれた日曜日の朝の風景。

そんな妻の隣りにどさりと倒れ伏しては、
終わったの?
ああ終わった。
寝てないの?
ああ寝てない。
でも終わったのね。
ああ終わった。

トラッキングが終わってのミキシング。
その一回目のミックスダウンが終わったってところ。
まだまだあるの?
これからちょっと寝かせて熱を冷まして耳をクリアにして、
で、その後に改めて細かな手直しと補足を繰り返して。
最終のマスタリングを終えたらそれはもう俺の知ったことじゃない。
あとは受け手の問題。
それをどう取られようがどう思われようがなにを言われようが、
それはもうこっちの推し量れるものじゃない。
作者に創作をする自由があるように、
受け手は読み手は鑑賞者は批評者は
それを好きに評価、あるいはすっかり誤解する権利もある。
いずれにしろ俺たちが真骨を削るのはトラッキングからミックスダウンまで。
マスタリングからその先はあとは野となれ山となれ。
それはこっちの知ったことじゃない。
随分と無責任な気もするけど。
創作者は基本的に無責任であるべきなんだよ。
創作者に責任なんて負わせてはいけない。
それが創作者の自由。一種の権利でもある。
それを良いの悪いの言うのは受け手の勝手だが、
少なくともその評価の良し悪しは創作者の責任ではない。
創作者はただ自身の美学と信念とに基づいて、
それを演りきる書ききる創り切るだけ。
そしてマスタリングを終えた後に作品は作品として自立する。
後はまあその作り上げた作品の自由。
作品はすでに自立したひとつの存在。
もうそれは創作者から切り離された一種独立した存在なのだから。
それがどんな成長を遂げるのかどんな運命を辿るのか、
それにどんな位置を与え評価を与えて、どんなレッテルあるいは冠を被せるのか、
それはすべて受け手側の責任。
少なくとも創作者の知ったことではない、知ったことであってはいけない。
創作者はそれを気にすることなく、
さあ終わった終わったと爆睡こいた次の朝には、
すぐに次の作品に向けて動き始めるべきなんだ。
あなたのその「糞ブログ」とやらの「糞駄文」が、
あなたの言うその「作品」とやらであるかないかは別としても、
とりあえずは終わったのね?
ああ終わったよ。ようやく「糞」を出し切った。
本当にここ一週間、いやその前から、
ずっとずっとひどい便秘を抱えていたようなものだからな。
出し切ったよ。ちょっとまじめに「すっきり」した。
ちょっと寝れば良いわ。こいつの散歩には私が行くから。
以前に西海岸に引っ越したジュディさんがいまこっちに帰って来ていて、
憶えてる?あのダルメシアンのオスカー君、
子犬の頃はよくぶっちに纏わり付いて怒られてたあの子がもう六歳になったんだって。
これからセントラルパークて会おうってことになっていて多分そのあとちょっとお茶をして・・
枕に顔を埋めたまま背中に犬に伸し掛かられながら、
そして妻のそんな言葉に頷きながら、
意識が消えて行った、深い深い眠りの底に引き込まれて行った・・・





目が覚めたのは正午を疾うに過ぎて。
枕元に背中を向けて座った犬が素知らぬ顔で耳の後ろを掻いている。
さっきまで散々に顔中を舐められつくしていたらしく、
鼻先が口元がその顎の先がいまだに芝生の匂いのする涎で濡れている。
おお、お帰り。朝飯は食べたのか?で、ご主人さまはどこに行った?
そうこうするうちにシャワーを出た妻が濡れた髪を拭いながら、
いやもう、ボートハウスのカフェでお茶をしていたら、
オスカーがいきなり池に飛び込んじゃって。
ほらこの夏に殺人藻が大量発生してなんて話があったでしょ?
ジュディさんはそれ知らなくて。
で、みんなでオスカーを捕まえてって大騒ぎ。
ボートハウスの人も手伝ってくれて裏のホースで水かけて
身体中ゴシゴシ水で洗ってみんな頭からびしょ濡れ。
そしてたら帰りがけにまた雨降ってきちゃってさ。
で、いま帰って来たところ。
いま何時?
お昼過ぎよ。ああお腹減った。ねえなんか食べに行かない?
カフェでコーヒーと一緒にクロワッサンを頼んだのだけれど、
ほとんどブッチとオスカーに食べられちゃって・・

正午前に降った驟雨も上がり、家を出たところでは薄日の刺していた筈の空が、
で、なに食べる?と歩きはじめたころには再び流れる雨雲に光りが遮られ、
ご飯食べているうちにまた雨が降るかもね。
いったん部屋に帰って傘を持ってこようか?
いや、いいよ、面倒くさい。傘なんてあってもどうせささないし。
ぶぅをおいて来て良かったわ。雨が降り始めたらまた帰りたいって言い出すから。
たまには犬の居ないのも良いものだな。
だったら普段は犬連れでは入れない、
ちゃんとした屋根のあるところでご飯を食べようよ。
だったらいつも行列のできているあのイスラエルの地中海風カフェ。
イスラエルか、とそれだけで顔をしかめる俺に、
メディタリアンよ、地中海料理。ギリシャやらトルコやらレバノンやら、
そのうちのひとつと思っていれば良いのよ。

と向かったそのイスラエル、じゃなかったその地中海風ダイナー。
普段からの通りに溢れた大行列が降ったばかりの雨のせいなのか、
今日はなぜか妙に閑散として人待ち顔のウエイターが生あくび。
奥の席に案内されては出されたメニューを覗き込みながら、
あれまあなんか割りと値段高いんだね。
それほど高級な店には思えないけれど、と首をかしげる妻に、
いや、あのさ、と、そんなことではなく、
そんなことではなく?
あのさ、あの、この音楽
音楽?
そう、この音、なんだよ、これ、この音、これどうにかならないのかよ、と。
音?これ?この音楽ってこと?
そうだよ、なに言ってんだよ、音だよ音。
おい、とウエイターを呼ぶ。おいちょっと来い。
なんだよこれ、この音。この音楽。
どこのバカが日曜日の朝のブランチに、
こんならりらりのジャングル・ラップなんか聴きたがる奴がいるものか、と。
どうでも良いけどもうちょっとこのボリューム下げてくれねえか、と。
音楽と聞いて、おうおうおう、とにやにや笑いのそのウエイター。
これ?ああ、これね、YOUNGBOYの新譜。
先週発売されたばかりの新譜が発表される前からビルボードNO1。
どうだ、凄いだろ、とちょっと得意そうな顔。
なんで発売される前から売り上げがNO1なるのか、
その理屈がさっぱり訳判んねえけど、まあいいか。
で、これ、このボリューム、と見上げる天上のスピーカー。
ああ、やっぱりBOSEか、と。
BOSE? とそのウエイター。
ああ、これ、このスピーカー、BOSEだろ?しかも客席に直接向けやがって。
この音、このゴリゴリの低音。このいかにもマッシーンっていうゴツゴツした音。
これ、これだよ、これ、このラップと安いデジドラとこのBOSEの組み合わせ。
最悪だと思わねえか?耐えられねえと思わねえか、と。
あんた、音楽やってるひと?
俺が音楽をやってるとかやってねえとかじゃなくて、
こんな糞みてえな音を、寝起きの頭で聴かされちゃたまらねえよ、と。
誰も日曜の朝からこんなもの聴きたがる訳が・・
と、ふと見回したテーブル。
え?そう、誰も気にしていない、気にする素振りさえ見せない、
このありふれた日曜の朝のダイナー、その風景そのもの。
この席が問題なんじゃない?
この席、ほら、ちょうどスピーカーの真下だし。
だったらあの窓際の席に変えてもらおうよ、とかみさん。
で、ウエイターくん、
ねえ、これ、この特性メディタリアン・サラダっていったいなにが入ってるの?
いや、知らない、とそのウエイター君。オレは料理を出すだけだから。
でもほら、このお店、この間まで凄く混んでたでしょ?凄く美味しいのかと思って。
ああ、あれは、ほら、クーポンだよ、と。
クーポン?
そう、クーポン。フェイスブックとTWITTERで半額クーポンばらまいてさ。
フェイスブック?ツイッター?
そう。FBとTWでクーポンばら撒いたらいきなりの大行列で。
で、それが終わったら?
そう、それが終わったら誰も来ない。当然のこと。
そういうこと?
そう、そういうこと。
じゃあこの店が特に美味しいわけでも特別な訳でもないの?
さあ、オレも食ったことねえし。
それほど美味しそうにも見えないしな。
そうそう、それそれ。奥で作っている奴もそんな感じ。
このラップ聴きながら?
そうそう、このラップ聴きながら、ご機嫌に、適当に。
あらま、とかみさん。そういうこと?
だから、と俺。
いまの時代、評判の、やら、黒山の行列とか、
大人気のとか、最高のとか、一番の、とか、
そういうのってみんなSNS。
ツイッターやら、FBやら、インスタやら、なんちゃらやらで、
そういう表からは良く判らないところで割引クーポンをばら撒いて、
評判フェイクして、行列フェイクして、レビューをフェイクして、
フェイク、フェイク、フェイク、ばかり。
ただそんなトリックを理屈を真相を知らねえやつは、
おお、評判だ、行列だ、最高だ、一番だ、ですぐに騙されちまう。
で、あのよ、と、そのウエイター君に。
で、あのよ、だったらこの店、なに食ったら良いんだよ、と。
さあな、とウエイター君。だからオレも食ったことねえし。
オレ、マクドナルドしか食ったことねえし、ってどうせそんな感じだろ?
そうそう、オレ、個人的にはマックしか食わねえし。
ガキの頃からそれしか食ってなかったんだろうしな。
そうそう、オレもそう。みんなそう。フード・クーポン育ち。
なに食ったって、味なんかなんにも判らねえもん、はっはっは。
で、あのよ、どうでも良いけどこの音なんだけどさ。
あ?ああ、この音?これ、だから、ヤング・ボーイ。新譜だよ、凄えだろ。
ああ、なんでも良いけど、なに聴いても同じなんだろうけどさ、
で、これボリュームだけはどうにかしろよ。煩くて話もできねえ。
話?なんの?
だから。
もう良いじゃない、とかみさん。
ごめんなさい、また来ます。
ああ、そうだね、次にクーポン出たときにまた来れば良いよ。
この値段、クーポンばら撒いたときに合わせてあってさ。
それからまた前の料金に戻すの忘れてるんだよ。
クーポン出たらまた来なよ。



という訳で、ほうほうの体で逃げ出したそのラップ地獄。
なによそれ、クーポン?あの行列は割引クーポンだったの?
だから今の時代、みんなそんな感じなんだよ。
フェイクにフェイクを重ねて評判煽って、
で、作ってる奴も食ってる奴も、味なんか判らねえ。
マクドナルドしか食べないって言ってたよね?
そうそう、トニーだってポールだってボビーだってそう言ってたよ。
ガキの頃からフード・クーポンのマクドナルドしか食ってねえから、
なに食っても味がしねえ、何も判らねえって。
そういう人、多いんだよね。
そういう人ばっかり、なんだよ、実は。
で、いまのこの世の中、そういう人に合わせて作られちゃってる訳だよ。
なにを食べても味のしない人たち向けにさ。
それに割引のクーポンばらまいては評判だ、行列だ、最高だ、一番だ、と。
そんなものなのね。
そう、そんなものよ。
ただ、そんなものに俺たちがわざわざ、
騙されてはつきあわされなくっちゃいけない義理もへったくれもねえ。
ちゃんとしたところからちゃんとした情報を得ないとね。
なにがちゃんとしているかは知らないけどさ。
どうせそんな情報って奴だって、
誰かが誰かに金を貰って提灯レビューを書かされているだけだろうし。
そんでその名前やら会社やら目的やらも、
誰にもなんにもわからないステマステマステマだらけ、と。
良いんじゃねえのか、自分の好き嫌いで決めればさ。
そう、それなんだよね、と。
自分の好き嫌いの判らないひとはすぐにそういうフェイクに乗せられるばかり。
良いじゃねえのか?好きにすれば。
そういうフェイクにてめえから率先して騙されるのが
嬉しくてしょうがない奴もいるんだろうしさ。
いずれにしろ俺の知ったことじゃねえよ、って。
で?なに食べる?
なんでも良いけど、
少なくともマクドナルドしか食べないような奴じゃなくて、
一応、自分の食ってるものの味ぐらいは判る奴がいるところ。
例えば?
それが、と思わず。それがさっぱり判らなんだよな、外からでは、と。





という訳で、あまりにも腹の減りすぎてしまった日曜日の午後。
これでまた、割引クーポンの大評判だ行列だ、
最高だ一番だの五つ星なんぞに騙されてはたまらない。
だったら、という訳で、
ここまで来たらもう絶対の絶対の安全パイ。
嘗ては週末のたびにここばかり。
遂には店のメニューのそのほとんどを一巡二巡しては、
さすがにちょっと食傷気味、という気がしなでもなかった、
あの究極の癒やし系のユダヤ飯屋。
-> 日曜の午後の隠れ場所 〜 ニューヨークに安息のカフェテリアを求めて
あそこであれば味も、そして店でかかっている音楽も間違いはない。

嘗て、午後の日だまりの中、黄金色の光に包まれて子犬と戯れる、
そんな場所であった筈のあの地下室の秘密の小部屋。
あの安息のシェルター。
ベルベット・アンダーグラウンドからニーナ・シモンから、
オシビサからピーター・トッシュから、
そう言えばここで裸のラリーズなんてのをご紹介した、
そんなこともあったっけ。

そう、実は今回のベビーメタルの新譜:「METAL GALAXY」
果たして、あの店の筋金入りの音楽亡者たちが、
そしてなによりその選曲担当者であった
あの仙人風ベーシストのあんちゃんが、
BRAND NEW DAYを、NIGHT NIGHT BURNを、
そしてなにより、最近の俺のイチオシである
↑↓←→BBAB のスネアの音(!)を、
いったいどういう評価するのか、
ちょっと、興味が無かった訳ではない。

よしそう思ったら肚は決まった。
あの、死にぞこないのビートニクスたち、
あの、筋金入りの音楽極道の奴らに、
改めて、ベビーメタルの「METAL GALAXY」
その真価を問おうではないか。

としたところ、そのドアを開けた途端、
え?なにこれ。。

なぬ?これ、テクノ?
えええ、これ、KPOP、じゃねえのか?

やあ、と嘗て見知ったその顔。
つまりは前には新入りであったあのエルサルバドル人のウエイター君。
やあ、久しぶり。元気だったかい?
とその満面の笑顔をふりまきながら。

だが、と困った風に肩を竦めては、
おっと、テーブルが一杯。席が満杯。

なら待ってなよ。そのうち開くから、とそのままレジの脇で立ち話。

なんか儲かってるね。
前に来たときはいつもガラガラだったのに。
なんだけどさ、とふと見渡す天上。
な、なんだよ、これ、この音?
なんかまるでまったく別の店みたいな・・

あ?音?音楽?
さあ、知らない。なんだろう。
そう言えばこの前に来たお客さん、
多分その人、日本の人だと思うけど、
その人がチューニングしてくれたIPHONE。
無料のストリーミングとかでさ、
で、なんかそう言えば、
ここのところずっとこんなのばっかりだね。

おい、あいつ、あいつはどうしたんだよ。
あの、髪の長い、あのベーシストのあいつ。

ああ、ジェフリーのこと?
ああ、彼はいま旅に出てるんだよ。
もしかしてツアー?
ツアーかどうかは知らないけど。
ああ確かに、あのベース、持っていったみたいだね。
と見れば、嘗ていつもレジの裏に立て掛けてあった、
あのサイレント・ベース。
コンパクト型のエレクトリック・コントラバスが見当たらない。

で?どこに?
さあ、聞いていない。
シカゴからLAに行って、
ああそう言えば、その後に、シアトルから日本にも行くかもととか、
なんてことを言ってたような・・

あんたのこと、探していたんだよ。
最近来ないねって。来たら連絡先を聞いておいてって。
そういうことか、と。

で、この音楽、という訳か・・
ん?これ、これ、そう、これなに?
これ、KPOP。
KPOP?
そう、KPOP。コリアンのヒップホップ。
ああ、そうなんだ。これコリアンなんだね。日本人かと思ってたよ。

そして見渡す店内。
いつの間にか、どこぞの旅行ガイドにでも載ったのか、
そのテーブルを埋めた人々。
さり気なくも鳴り続けるKPOPをBGMに、
そんなものがこの世に存在するのかしないのか、
それさえも気づかない風に、
つかの間のニューヨーク滞在を楽しんでいるようだ。

やっぱ凄いねニューヨークって。
アッパーウエストサイドのユダヤ料理屋に行ったら、
そこでKPOPのSuperMがかかってたんだよ。
KPOP世界中で人気です。
SuperM、いまや世界の隅々を席巻中!

今頃そんな勘違いツィートが世界中に拡散されているのかもしれない。

そうか、あいつ、旅に出てしまったのか。
はい、これ、ジェフリーの連絡先のEMAIL。
いまどこにいるか知らないけど。

という訳で、いつまで待ってもテーブルも開かず、
そしてなによりこのKPOPを聴かされるのがなによりも苦痛で、
だったら悪い、また来るぜ、と。

ああ、ジェフリーに連絡してみると良いよ。
彼も逢いたがっていたから。

そして再び歩き始めたニューヨーク・シティ。

なんで?と俄にご立腹のかみさん。
なんで、もうちょっと待っていたテーブル開いたのに。
お前、KPOPだぞ。
そんなもの聴きながら飯が食えるかよ。
ねえ、お腹減って死にそう。もう一歩だって歩けない。
あのなあ、と。
なんでお前らって、音楽にそれほど無頓着でいれるんだ?
音楽だぞ。水だぞ、空気だぞ。
それがラップやらテクノやらKPOPなんてのに汚染されて、
それが口から入って耳から入って身体中が毒されている、
そんな気にならないのか?
俺は嫌だ。俺は少なくとも、そんな毒みたいなもの、
聴きたいくない、飲みたくない、食いたくもない。
そんな音楽の流れている空気を吸いたくない。
バカみたい、とかみさん。
あなた本当に馬鹿みたい。
行くところいくところで、音楽が良いの悪いの、って。
あのね、普通の人はね、そんなこと気にしないの。
そこでどんな音楽がかかってようが、
そのスピーカーがBOSEであろうがSONYであろうがトヨタであろうがニッシンであろうが、
そんなこと気にする人はこの世にはひとりもいないの。
いるさ。ここにひとり。それが俺が。
いいか、お前らにとってはどうでもよいことなんだろうが、
俺はそれを、その音の良し悪しを、
好き嫌いで言っている訳じゃないんだよ。
耐えられないんだよ。
俺にとってはそういう音が殺人超音波、
つまりはそれは俺にとっては死活問題なんだよ。
バカみたい。ああ、なんでわたし、よりによってこんな人と・・

とそんな不機嫌な会話を交わしながら、
そう自分でも判っている。

これはまさにベビーメタル病である。
ベビーメタルを知って以来、すべての女が野獣に見え、
そしてなにより、すべての音楽がとことん陳腐化してしまう、
これはなにもいまに始まったことでもないのだが。

そしてこのメタル・ギャラクシーである。
そしてかのTHE FORUMである。
あれ以来、そしてライブ観戦記を書き綴る間中、
ノンストップで回し続けて来た海賊動画とそしてその海賊音源。
これだけ徹底的なまでにベビーメタル漬けになっていた後となっては、
ベビーメタル以外のすべての音、
その耳にする楽曲のすべてが古臭く邪魔くさく安っぽく浅はかに聞こえてしまう。
なによりその情報量、ぶっちゃけ作り込みの密度が違いすぎるのである。

おいおいおい!
なんで、なんで、なんだ、なんでここでこの音が必要なのだ。
違うだろ、ここではこうで、で次にはこう、なる筈が、
なんだよ、またこれかよ、なんでもっとここでひねりを、智恵を使わないんだよ。
そのなにからなにまでが浅知恵、
そこに必然が、テーマが、世界が、信念が、無さすぎる。
そこにあるのは銭儲けの阿漕な算段と、
あまりにも陳腐な焼き直しと、そして空回りする虚仮威し、
その悲しくなるほどに見え透いた虚栄心、
ただそれだけじゃねえか。
それはまさに、智恵足らずの知恵足らずに向けた智恵足らず用の音楽、
思わず、バカが伝染るぜ、バカが、
と、そう思えて来てしまうのである。

そして改めてMETAL GALAXYである。
そのフラゲをご贈呈頂いてから10日間以上、
ぶっ続けで聴き続けているのだが、
いまだに新しい発見がある。新しい局面がある。
聴くたびに新しいストーリー、その伏線が浮き上がってくる。
それはまさに音の万華鏡、それはまさに知のラビリンス。

まあ確かにこれだけなにもかもをギチギチに凝縮したアルバムである。
これを一回聴いただけで理解できる人間などそうそうと居るものではない。
ありとあらゆるところにトリックがトラップが仕掛けられて、
うわ、そう来るか、で、この音、これはいったいなんなのだ?
まさに旋律のタペストリー、まさに音の洪水、光のシャワー。
その煌めきに満ちた音の粒子、
そのディテイル漁りから開放された時、
ふと気がつくと、そこに漂うひとつの空気。ひとつのイメージ。

それはまさに、優しさ、なのである。

ベビーメタルのメタル・ギャラクシー、
この作品がこれまでの二作、
あるいはこれまでのロック・アルバムと大きな違いがあるとすれば、
それはまさに、音の優しさ、に他ならない。

刺激がない訳ではない。
それはまさに最初から最後まで、
思わず息を飲む壮絶な緊張感に満ち満ちているのだが、
だがしかし、その構成されている音、その音色そのもの、
音に棘がない訳ではないが、ささくれていない。
音が刺さらない訳ではないが、毛羽立ってはいない。
音が抜けていない訳ではないが、それは突き抜けるというよりは、
より受動的な深みを帯びた包容感に満ちている。

そう、このアルバムの特筆すべきものはその包容力である。
それはキワモノ的なゴリ押し的強要と言うよりは、
すべてのジャンルを、すべての音を、包み込む、
その懐の余りの大きさ、なのである。

聴くものは聴くもののその度量として
その懐を、思い切り押し広げなくては
このアルバムは理解できない。

その一曲一曲の品定めをしては品評を繰り返しても、
そのディテイルを分解しては漁り続けては、
その重箱の隅をつつき続けても、
ともすれば、メタルだ、ロックだ、ポップスだ、アイドルだ、
そんなところに拘れば拘るほどにこのアルバムの全景がぼやけてしまう。
それはまさに、群盲象を撫でるが如し。
考えているばかりでは、近視的にこのアルバムを分解しようとしても、
その本来の意味するところからは益々遠ざかるばかり。
そんなことではこのアルバムは推し量れない、
まさにとてつもないほどのスケールを持っているのである。

ではどうすればよいのか。
答えは、委ねること、だと思っていた。
すべての先入観を、思い込みを、偏見を、色眼鏡を取外し、
ただただそれを傍観する達観する聴き流す。
その旋律が身体中に染み込み浸かり浸り切ること。
つまりは五感のすべてを使って感じ切ることなのである。

それはまさにベビーメタルの無我の境地。
そのあまりの世界観、その壮大なスケールの中に、
身体が、脳味噌が、知覚が、オーラが、
その存在のすべてがすっかり包み込まれては、
それはまさに甘い甘い羊水の中、
これ以外の世界を知りたくない、
それはまさにベビーメタルの桃源郷。
或いは虹色のブラックホール。

あるいは、とふと思った。
それは、まさに、母体、ではないのか?

ベビーメタルの母胎回帰、
つまりは母性か・・・

なにが、と妻。
どうしたのまた、間の抜けた顔して。
まるで、夢遊病者みたいよ。

母性だよ、母性。
母なる大地でありマザーネイチャーであり、
そして日本文化の源であるところの母性なんだよ。
あるいはそう、マザー・シップ、
つまりはノアの方舟、つまりは母体。或いは母胎。
ああ、やばい、つまりはそういうことか。

また昼間から何を訳の判らないことを、

と鼻で嗤われたその時・・

なんだこれ、この匂い・

匂い?

そう、なんかこれ、このあまりにも生々しくも生魚臭いこの妖しき匂い・・
これぞまさにぶっちゃけあの褐色の娘たちのあのそのあそこの匂いそのもの。
ああ、あれ、あれじゃない?あのお店・・
タイ料理?
ああ、そうか、これこの匂い、魚醤、つまりはニョクマム、
タイで言うところの、ナンプラーだ。

思わずその生臭くも妖しい芳香に誘い込まれるように、
ふと足を踏み入れたその見知らぬタイ料理。
ビルの狭間に押しつぶされるような、
その立て付けの悪い扉をカランと開けると、
その長細くも狭い店内、そのテーブルのすべてがは伽藍堂。
暇を持て余したアジア人のウエイトレスが、
寝ぼけた眼差しで俺たちを振り返る。

開いてますか?
ああ、はいはい、どうぞお好きなところに。
と、通されたその窓際。
隙間風の入る飾り窓の前に、
バーの止り木のように設えたカウンター、その小さなテーブル。
いらっしゃいませ、と持ってきたその紙一枚のメニュー。

カオパット、パッタイ、トムヤムクンに、
これ、すべて、タイのストリート・フード。
おお、カオソイまであるじゃないか。
ってことはチェンマイか。東北料理だな。

うわ、懐かしい、とかみさん。
これ、タイで食べた、あの屋台料理。
うわ、なんか妙なところ見つけたね。

という訳で、あの、と。
あの、メニューに乗っていないのだけど、パパヤ、ありますか?
パパヤ?ああ、ソムタムのこと?
そう、ソムタム、別名、パパヤ、つまりはグリーン・パパイヤ・サラダ。

ああ、メニューにはないけど、
私達の従業員用の
その残り物が・・確か冷蔵庫に。

残り物でもなんでもいいよ。
タイっていったら、パパヤだろ、ソムタムだろ、と。
それがなくっちゃタイの料理は始まらない。

だったら、ソムタム、山盛りで。
そんで・・
クイッティアオでしょ?
そうそう、それそれ。
で、カオパット。
私は、パッタイ。あまり甘くしないでください。
あ、それからそれから、
パクチーと、それからナンプラー。
思い切りたっぷりかけて。

という訳で、その料理の到着を待つ間、
先に届いたタイ・アイスティを啜りながら、
ふと見渡す窓の向こう、その切り取られた風景。
そのニューヨークのありふれた日曜日、
その雨の午後。
その見慣れた風景が、どうしたのだろう、
妙に遠く、妙に離れて、妙に現実感を逸して見える。
まるで透明のベールに包まれてしまったかのように。
まるで、水槽の中から外を見ているように。
そのなにかまるで、の金魚気分。
あるいはそう、これはまるで、透明人間のその気分。

そう言えば旅の間、目に映る景色って、
そう言えばこんなだったよな、まるでどこか夢の中にいるような。

そしてふとしたことで迷いこんだこのこじんまりとしたタイ・レストラン。
その生臭くも妖しいナンプラーの香りに包まれて。
それはちょっとした不思議な遊離観。
それはちょっとした霊的な感覚。
それはちょっとした旅情だった。

そしてふと気づいた。
このBGM。なんだこれ・・・





これラップじゃない?
ああ、ラップだね。
このラップの大丈夫なの?
ああ、このラップは良い。凄く良い。
不思議と気にならない邪魔にならない。
棘が刺さらない。毛羽立っていない。
音量なのかな?
まあ確かに、ほら天上のスピーカーが上を向けられて、
音が直接ぶつからない。音が直接角ばっていない。
ああ、こんなラップだったら悪くないな。
どうしたんだろう、このラップ。
この妙にやさしく、この妙に暖かく、この妙にコミカルな、
この、どこかで聞いたような気のする、このラップ・・・

あのすみません、と、そのおかっぱ頭のウエイトレス。

あの、この曲、この音楽、これって?

ああ、すみません、と照れては、
露骨に顔を赤くして笑うウエイトレスさん。

これ、タイの、歌謡曲で。
ごめんなさい、これ私のIPHONEからの。
やだわ、恥ずかしいわ。いますぐに消します、変えます、
というのを押し留めて、

で、これ、誰、ですか?
は?タイ人の歌手ですけど。
タイ人の、なんて言う人?
え?あ、これは、はい、F.HERO。
F.HERO?
はい、タイのラップ、
F.HERO!?F.HEROってあのF.HERO?
まさか、ご存知なんですか?F.HERO。
この人面白いんです。本当の本当に面白い人なんです。
タイ人はみんな大好き。なんですけど・・
まさか、F.HERO、ご存知なんですか?

ご存知もなにも、F.HEROと言えば。
あ、はい、これ、おまちどうさま。
まずは最初は、前菜のパパイヤサラダ・・

おおお、パ、パ、パ、パッパパパヤー!

なんということか、なんという奇遇か偶然か。

このまるで絵に描いたようなあまりのドラマ。

知ってますか?
このF.HERO、日本のベビーメタルと共演して。
ああ、ベビーメタル、知ってますよ。
こんどタイにも来るんですよ。みんな大喜び。
大喜び?タイの人がベビーメタルを知っている?
もちろん知ってますよ。
クイーン・オブ・アイドル、
そのメタルの女王でしょ?
でも私、あんまりロックは好きじゃないですけど。
だったらやっぱりヒップホップ?
いえ、このF.HEROってね、実は凄く変な人で、
変な人?
そう、変な人で、ラップ以外にも、
ロックとか、R&B以外にも、凄く色々やっている人なんです。
例えば?
例えばフォークソングとか。
フォークソング?
そう、フォークソングのラップとか。
なんじゃそりゃ。
ほらこれ。



あ、なんか良いね。
本当ですか。なんか笑っちゃう。
なんで?
だって、タイですよ。タイの歌謡曲。
ここニューヨークで、
こんなタイ人しか食べないようなものばかりのレストランで、
日本のお客さんがパパヤを食べながら、
F.HEROについて話してる。

なんかほんとうにおかしい。

良いのよ、とかみさん。
良いんじゃない?だってほらこういう時代だもの。
世界中の人が世界中のものから、
自分の好きなものを勝手に選んで勝手に組み合わせて、
世界中から自分の好きなもの、そのスタイルを見つけ出せば。

そう実はわたし、日本食の、あの、なんて言いましたっけ、
あの、ご飯に玉子焼きに甘いトロトロのかかった、
おおおお、天津丼!
そうそう、その天津丼、あれが大好物で。
ただ、ニューヨークでそれがどうしても見つからない。
だって、天津丼って中華料理だから。
でも、中華料理にも見つからない。
そう、天津丼って実は日本のオリジナルの中華料理だし。
はい、その日本のオリジナルのチャイニーズ、どうしても食べたくて。
ああ、俺も天津丼が食べたくて、自分で作った。
ええ、あなたが?天津丼を?自分で作った?
そう、作ったよ。自分で。
おまえが日本に帰っているときに、どうしても天津丼が食べたくなって。
あ、あの、良かったらその作り方教えてください。わたし自分でやってみる。

とかなんとか話しているうち、
曲は変わって、




これは?
これは・・・
これもタイの?
はい、タイの、タイのポップス。歌謡曲。
良いですねこれも。
本当ですか?
はい、私も好きです。歌詞の意味は判らないけど、なんか凄く懐かしい気がする。
遅れてるんです。タイですから。
いや、違うよ、と俺。
これ遅れてるんじゃなくて、これ80年代の音。
これ80年代のTOKYOの音、なんじゃない?
昔の東京?
そう、俺達がまだ日本に居たとき、東京が一番輝いていた時。
確かこんな曲が、こんな音が、流れていた気がする。
もしかして、このタイのポップス、これ作っているの、日本の人なんじゃないの?
タイのポップは優しいんです。
タイ人ってほら、わたしみたい田舎もので、こんなポヤポヤした人たちだから。

タイって、本当に優しい国ですよね。
なにもかもが優しい。ほんとうに優しい。
私たちタイに居たんですよ。
ずっとずっと旅行してて。
色々行ったけどタイが一番良かった。
どこに行っても、必ずタイに戻って来てしまう。
ああ、俺も、日本に帰るぐらいならタイに帰りたい、
いつもそう言ってるんですよ。






という訳で次々と運ばれて来る、
クイッティアオ:タイうどんと、
そして、カオパット:タイ炒飯と、
そしてパッタイ:タイ焼きそばと、
ガイヤーン:タイ焼き鳥
ホイトート:牡蠣オムレツから、

その香ばしいパクチーの青臭さと、それからこの情け容赦ないナンプラー。

おいしい、とかみさん。
おいしい、これ、まさに、タイの、バンコックで食べていたあの味、そのもの。
ごめんなさい、こんな残り物みたいなものばかりで。
残り物って、これが一番美味しいんじゃないですか。
これこそがタイの味。これこそが本物の味。
ああ、タイに居た時はこればっかり食べてたよな。
ニューヨーク中、世界中、色々な高級タイ料理なんてのができたけど、
タイ料理の基本はこれですよ。パクチーとニョクマムとそして、
そして、ソムタム。つまりはパパヤ、パパイヤ・サラダ。
ああ、俺はタイに居た時ソムタムばかり食べていた。
ははは、わたしたちはいまでもソムタムばかり。毎日毎日パパヤばかり。
だってそれが、タイの、本当のタイの味、なんだから。

という訳で、このふと迷い込んだタイムスリップ。
そうか、タイなのか。
そしてその場所で聞いたあのメロディ。
あの優しくも懐かしい、あの80年代の東京の音。

あれだったらヒップホップのラップのそしてテクノだって邪魔にならない。
すんなりと聴ける、入れる、溶け込める。
タイ・ポップか、
なんかこう言うのも、逆に妙に新鮮だな






昔ってさ、もっとみんな優しかったんだよね。
人が、空気が、そして、音が・・
なんかさ、包容力というか、もっとこう、母性があったんだよ、日本の音って。

そうか、バンコックにはまだあの80年代の音が、流れているのか。

タイに行きたいな、と、つくづく思った。
ああ、タイに行きたいな、とつくづくと呟く妻。
そう、それがタイであったら、
不思議となにもかもが許せてしまうような、
あのなんとも柔らかくも曖昧でそして温かい、
あのタイという国。
まさに国中がひとつの母体のような、
あのなんともほんわかと柔らかい、
あの不思議な包容力。
あの街は雨さえもがやさしかった。

そして見上げるニューヨークの街。
この雨に濡れた煉瓦色の町並み。

それはちょっとした旅情だった。
それはちょっとした透明人間感覚。
それはまさにちょっとした、霊的な、感覚だった。

また来ます、とお店を後にして、
ああ、そう言えば、お店の名前聞くのを忘れていた。
ああ、そう言えば、看板も無かったよね。

だったら、と、俺。
だったら、パパヤで良くないか?
勝手に?
そう、勝手に名前をつけて、あの店はこれからパパヤと名付けよう。

そして歩き出した雨の街。
その秋の初めのニューヨーク・シティ。
そのありふれた日曜日の午後。

このなんとも満ち足りた感覚。
このなんとも言えぬ浮遊感。
この妙に妙に柔らかい、そんなやさしい気持ち。
80年代か。
そう、確かに、あの時代にはそんな空気が流れていた。

もしかしてコバさんは、あの街バンコック。
午後の雨に濡れた町並みを眺めながら
もしかしたらこの80年代の東京の音、
あのなんとも優しく柔らかい、
あの音を、聴いていたのかもしれないな。

そしてもしかしたらあのコバさんのことだ。
もしかしてこの先、ベビーメタルの仕事を干される、
なんてことになったとき、
次はオレはタイのミュージシャンのプロデュースがしたい、
そんなことを思っていたりするのだろうか、と。

タイか、タイ。
タイだったら許せる。それがタイであれば、すべてが許せてしまう、
そんなことを思えるあの不思議な国。

あのカオサン通りの道端で、
ふとすれ違った謎の長髪の痩男。
あれ、あなたはもしかして・・・
その絶句をすんなりとやり過ごしてはすり抜けて、
そして肩越しにさり気なくも翳す、あのキツネのサイン・・!!!
ああ、やっぱりコバさんだ・・・
そうか、あの人はまだ、旅を続けているのだな・・
そんな光景が、ふと、脳裏をよぎったりもした。

旅を続けよう。いつになっても、いくつになっても。

そうか、ベビーメタルって旅人の音楽だったんだよな、
メタル・ギャラクシーって、旅がテーマのアルバムだったよな、と、
今更ながらそんなことを、ふと、思ったりもしていた。





そしてそれはニューヨークのあまりにもありふれた日曜日の午後。
すっかりと雨も上がり、さっそく犬の散歩に出た午後6時過ぎ。
そのあまりにも見慣れた、
しかし、以前とは明らかに違う、
この帰り着いたニューヨークの町並みは、
いつしかすっかりと秋模様。
日没を過ぎて光と闇の溶け合う曖昧な空を見上げながら、
そしてようやく、ひとつの旅の終わりを知った。

ただ、未だに流れ続けるこの旋律。
いまだに蒼き光の洪水に包まれたまま、
宙を歩むような浮遊感から身体を包んでいる。

それは、創造的破壊、というよりはもっともっと愛に満ちたもの。
あるいはもっと、霊的、なもの。

その根本にあるのは、慈悲であり、癒やしであり、
治癒であり、そして蘇生。

つまりは?
つまりは母胎回帰?

THE FORUMのステージを包んでいたあの光、
あの蒼き光りは、まさにベビーメタルの母体であったのか。
そして俺は、いまだにあのベビーメタルの羊水の中を漂っている、
そういうことなのか。

犬の散歩から帰り、ジャケットを脱いだところで妻に言われた。

ねえ、それ、その左手首の。

ああ、これ、THE FORUM のピンクの腕輪。

それ、いつまでしているつもり?

ああ、もう10日になるよな。

それ、ずっとつけているつもり?

ああ、一生でも。

ずっとずっと、THE FORUMの中に浸り切って生きるつもりなの?

いや、そういう訳でもないんだけれど。

新しい旅を続けるんじゃないの?

まあそうことだよな。

クリエイターは、一つの作品が完成した時点で、
すぐに次の作品に向けて、進み始めるんじゃないの?

まあそういうこと。

で、あれば、と妻が言った。

そろそろ、切ったら、そのリボン。

つまりはこれ、ベビーメタルのへその緒という奴か。

そしてすべてをぶちまけ吐き出し、
書いて書いて書ききった日曜日の夜。

改めて読み返したその超長文。
自分で言うのもなんなのだが、
これ、この内容、あまりにもとっちらかり過ぎて、
まったく意味をなさないな。

ただ、それこそがこの創造的破壊。
その狐憑きの自動書記。
あるいはこの一週間、貯めに貯め続けた、
その末期的な便秘の宿便、
そのすべてを綺麗サッパリと出し切ったいま、

さあそろそろ目を覚まそう。
さあそろそろとこの旅の余韻から抜け出して、
また新らたなる旅、その構想のネタ探しでも始めるとしよう。

そしていまだに左手首に巻かれたままであった、
この10日間を共にしたピンクのリボン。
THE FORUM
それはまさに、人生最高の瞬間、その刻印。
あのあまりに優美な羊水の中から抜け出して、
その捩れたヘソの緒、プツンと切っては桐の箱、
ならぬ、届いたばかりのベビーメタル「METAL GALAXY」その米国版CD。
その御神体と共に、FUNKA POPのフィギュアの並ぶ神棚に、
恭しくも御貢納することと相成った。

そしていま、ひとつの旅が終わった。
そして、また新しい旅。
BRAND NEW DAYのメロディに乗せて、
残された仮初の人生、その最初の一日が始まる。

さらばTHE FORUM。
そしてしばしの別れぞ、ベビーメタル。
次にお逢いできるのは、
米国ロックの頂点:マディソン・スクエア・ガーデン。

その日が待ち遠しいばかりである。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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