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2019年クリスマス狂騒曲 ~ HAPPY HOLIDAYS! MERRY CHRISTMAS! そして、ハッピー・バースデイ。

Posted by 高見鈴虫 on 21.2019 BABYMETAL☆ベビーメタル   0 comments
クリスマスを翌週に控えたニューヨーク・シティ。
観光客でごった返す五番街の午後の雑踏。
ショウウインドウを埋めつくした宝石色のディスプレイと鳴り響くジングルベル。
金銀入り乱れての眩いイルミネーションに照らされては、
街中を包み込むこの沸き立つような祝祭ムードを尻目に、
しかし俺は今日もひとり断末魔の悲鳴を噛み殺しながら、
悪い、悪いがそこをどいてくれ、俺は、俺は俺は、急いでいるんだ!
体感気温零下10℃を越える旋風に煽られながら、
摩天楼の谷底に犇めく末期的な雑踏の狭間を、
コマネズミさながらに駆けずり回るばかり。
この季節のニューヨーク、
浮かれ騒いでいるのは観光客ばかりで、
こいつら、どいつもこいつも好きに勝手に浮かれ騒いでは人の気も知らねえで、
と密かなにそんな悪態をつき続ける地元民:ニューヨーカーたちにとっては、
このクリスマスという時期、
ともすれば、右手と左手がなにをしているか判らなくなるほどに、
錯乱的なまでに徹底的な多忙の中をこれでもかと追い立てられる日々。

仕事納めから挨拶回りからクリスマスカードからご挨拶メールから、
各種パーティから飲み会のお誘いからプレゼントの買い物から
請求から支払いからそしてアパートのメンテナンスたちへのチップから・・
あれやってこれやってそれやってなにやって、
で、なんだよこの、Windows10 アップデートってのはよ・・

そんな末期的な混沌の最中、
世界が祝祭の中に沸き返れば沸き返るほどに、
それと相対しては焦燥と殺伐ばかりを募らせる悪循環。
ついにはおめでとうの言葉が怨念の呪詛と化し、
いつの間にやらジングルベルが運動会の徒競走の定番曲、
天国と地獄に、クスコスポストに、剣の舞に成り代わっては、
ともすればサルベーションアーミーの歳末助け合い募金の鐘の音が、
最後の一周のラストスパートを告げる号令にも聞こえてくる訳で。








というわけでこの師走の只中、
日々何気なくも徒然とした中で積もり積もっていた雑多な由無し事が、
このクリスマスというゴールラインに向けて一挙に雪崩を打って押し寄せてくる
この怒涛の修羅の中にあって、
普段であればそんな世俗の狂騒のすべてが馬耳東風のフール・オンザ・ヒル、
みなさま、いやはやほんとうにほんとうにご苦労さんでございます、と、
薄笑い一つで肩をすくめてはやり過ごす、
そんなライフスタイルを送っている筈のこの丘の上の虚け乙が、
この期に及んでなにを間違えたか、似合わぬパニック状態の中で錐もみ状態。

どけ、どけ、どけ、そこをどいてくれ、
俺は、俺は、俺は、急いでいるのだ!

この自分らしからぬ超多忙ぶりっこのその原因がなににあるのか。
言わずとしれた我が愚妻のこれでもかの悪意、
その結果として押し付けられた我が愛しの名犬ブッチ号である。

年末を前にしたこの時期、
普段からの怠慢のツケ、先延ばしとなっていた屑案件の山が、
よもや鉄砲水となって押し寄せては、
これ、今年中にやっていただける筈でしたよね?
そんな積もり積もった由無し事の在庫一掃セールの大狂騒。
あれやってこれやってそれやってなにやって、
その断末魔にまさに留めを刺すか如く、
なにを思ったのかこの時期のこのタイミングで、
我愚妻が性懲りもなくも無慈悲にも、
ここのところの慣例になった年末の里帰りを強行するに至っては・・・

ええ?なんで?なんでよりによってこんなときに・・
よりによってって、前から言ってたじゃないの。
ええ、聞いてないよ。
言ったわよ、言ってたわよね、ねえ、ブー君、あなたも聞いてたでしょ?
でもさ、俺、いま真面目に忙しくて。それどころじゃなくて・・
なに言ってんのよ、こんな仕事で人は死なねえ、まじめにやるほうがアフォだ馬鹿だ粕だって、
普段からあれだけ余裕ぶっこいていたのはあなたじゃないの。
だからその成果がツケがしわ寄せがいまになって集中しているわけで・・
知ったことじゃないわよ。それはあなたの事情。そして私の事情は・・
で、本当に帰るの?
帰るわよ。もうチケット買っちゃったし。
で、いつ帰って来るの?
さあね、気が向いたら、って感じかな。
で、ブー君どうするつもりだよ。
あなたの犬じゃないの。あなたが見つけてあなたが勝手に連れてきた、
そもそもこの子を貰い受けたときだって、散歩も世話もすべて自分でするって、
あなたは確かにそう言ったわよね。
なあブー君、そうなのか?
犬に聞かないでよ。
出発は来週の土曜日。空港まではいつものリムジンを頼んだから見送りは結構。
私のいない間、ブー君の世話はよろしくね。
あとはなにをしていようがあなたの自由。私の知ったことじゃないから。
でもさ、俺、まじで、仕事、本当の本当に・・
ご飯はすでに一食ずつパックに入れてある。
あと毎日のサプリメントも一応ここに書いておいたから。
ねえ、なんか頂戴って言われても、変なおやつばかりあげないでね。
もうこの子も老犬なんだから。
妙なものを食べさせるとその毒素が確実に身体に堆積していくことになるんだからね。
あなたもそう。ねえ、言っちゃなんだけどそのお腹、
このあいだ帰ってきたときにはちょっとはましになっていたかと思ったら、
あっという間にあれよあれよと元通り。
これを機会にちょっとは自分のこともまじめに考え直してみたら?
そんな自堕落を続けていたらまじで死ぬわよ。私知らないからね。面倒なんか見ないからね。
それだけは言っておくからね。

という訳で、毎度のことでありながら、
この目を覆うばかりの錯綜的錯乱。
ただでさえ殺人的な多忙さに加えて、
朝6時に起きての犬の散歩に始まっては、
青色吐息で辿り着いたオフィス。
あれやってこれやってそれやってなにやって、
そのどう考えても社会的影響度など微塵もある筈もない
あまりにも微小な瑣末な由無し事その雑務のゴミの砂嵐。
普段からはこんな屑仕事、
余裕の余裕で受け流しては鼻くそと一緒に爪の先で飛ばして、
とは鼻で笑いながらも、
そんな微小な瑣末な由無し事がこれでもかとばかりに津波となって押し寄せては
いつしか三時を過ぎ四時を回りふとするうちに五時を疾うに過ぎて。
そして六時を回り七時を前にしては、
悪い、悪いが、冗談はこれまでだ、もうちょっとこれ以上は付き合いきれない。
残件のすべてをぶっちぎってでも、
その社会的責任も立場も自覚もプライドも一挙にかなぐり捨てても、
俺には俺には俺には、唯一絶対の愛の結晶、雑種の捨て犬シェルターの御曹司、
ぶっち号君がおしっこを我慢してお腹を減らしては、
俺の帰りを待ちわびているのだ。
こんな仕事など誰でもできるだろう。
いや、誰もやらなくたって実は誰も困ったりもしない。
そう、こんな仕事はそれぐらいのものだ。
そんな仕事をしている俺もつまりはそれぐらいのものなのだ。
だがしかし、俺の犬は俺だけのもの。
俺が散歩をし、俺がおしっこをさせ、俺がうんちを拾わない限り、
あの齢11歳を過ぎた偏屈者の老犬、
あの乱暴者の雑種の捨て犬のことなど、
面倒を見てくれる物好きはこの世には誰もいない。
だからもう、俺のことは忘れてくれ諦めてくれ最初から勘定にいれないでくれ。
俺が望むことはただひとつ。
なにも要らないなにを思われても何を言われても構わない。
ただ一刻も早く家に帰りついては犬の散歩をしなくては、
俺がこの生活に望むのはただそれだけなのに・・・

そんな微小な瑣末な願いを嘲笑うかのように、
末期的なまでの錯乱的焦燥に追い立てられる錐もみ状態の日々。
ともすれば、もういいやこんな人生、
そのすべてを一思いに投げ出したくなるほどなまでに、
周囲をかこんだその同調圧力の悪意のタールのプール、
その白い目の針の筵の巷をこれでもかとのたうち回っては、
なにからなにまでが茶番的なまでに悪い目しか出やがらない。

俺はいったいなにをしているのか、とは常々思っていることながら、
こんな糞仕事と俺の犬、どっちが大切かと言えば、
そんなことは判りきっている筈だろう、
とそんな言葉をなんどもなんども繰り返しながら、
目の前の現実と俺自身の抱える現実とが、
徹底的なまでに離反と隔絶と相反を繰り返しては勝手なオーバーヒートを繰り返す、
それはまさに悪い冗談という程までに錯乱し続ける日々。

そしてようやくと青色吐息のままに辿り着いた金曜日。
えっとえっとえっと、今日が何日かと言えばそれは12月の20日。
つまりはこれで事実上の取り合えずの仕事納め。
この土日から、来週月曜日の23日は開店休業状態、
つまりは25日のクリスマスまでの間、総計5日間の連休ということか・・

そして夜8時を過ぎて、
最後の最後に残ったその今年中のお約束のというその案件、
ラストスパートとばかりに追い込んで追い込んでは
最後の最後に見直しの総チェックを入れたやることリスト。
終わった、これですべて終わった。
これでもなにも思い残すことはない、誰に文句を言われる筋合いもない。
だから、と思っていた。
だから、もう俺のことは放っておいてくれ。
もう誰にも会いたくない、もう誰にも話しかけられたくない。
ただただ静寂に満たされた沈黙の底、
誰一人にも邪魔されることのないまま、
その深い深い井戸の底にたったひとりで身を隠していたい・・
そんな気分に襲われていた金曜日の夜。

終わりましたか。
はい、終わりました。
問題は、懸念点は、残件は、なにもない、と。
はい、問題も残件も懸念点もなにも・・・ ありません! と口先ばかりで断言しては、
そんな俺のうしろめたさを見透かしたようににやりと笑った若い担当者。
お疲れ様でした。で、あの、今更なんですが、これ、いったい、なにをなさっていたんですかね?
は?
あの、まあ、はい、非常にお恥ずかしいのですが、いったいなにをされていたのか、
その作業内容というか重要性というか緊急性というか、
ぶっちゃけ、それをこの時期にやらねばならなかったのか、その必然性というか理由というか。
いや、あの、それは他ならぬあなた様からのたってのご要望という奴で・・
わたしから?まさか、と担当者。
このクソ忙しいときに、なにをわざわざ自分の首を締めるようなことをするわけもない。
だったら、つまりは?
ああ、つまりは、そう、あの御社の営業の方の・・
その営業成績の報告書のその水増しの帳尻合わせの・・
まあどこもこの時期みなさん大変なようですので・・
でまあそんな事情もあって、
実は今回のお仕事のその内容がどうしてもこうわたくしども素人には判りかねる部分がありまして・・
で、これから本部に連絡をする手前、変に突っ込まれたりしたらどうしようか、と。
つまりは、本部への報告書もこちらで作成しろ、と。
まあぶっちゃけその通り、といいうか、いやあ、ははは、さすがお察しが早い。
つまりは、その宛先はこちらあて、そのccに・・
はいはい、いやあ、はい、その通り、そうして頂けると非常に助かる、というか。

では、とすでにバッグを抱えたご担当者さん。
申し訳ないのですが実はこれからまだ予定がありまして。
はい、こんな時期に本当にご迷惑をおかけしてしまったようで。
それを言ったらそちらも同じ。
こんな時期にこんな時間ですので報告書は簡単なもので結構です。
ただ、CCに本部のあの連中。
はい存じてます。
突っ込まれないように、粗探しををされないように、地雷を踏まないように、
内容はできるだけ簡潔にできるだけ的確にできるだけ正確に・・
英語でも構いませんか?
ああ、そうそう、英語だ、英語でお願いします。であればだれも読みはしない・・
では、私たちは引き上げますが、いつものように何時まで居て頂いても結構です。
ただ、お出になられる前に鍵を閉めて入口の電気を消して、そしてそこにある・・
はいはい、すべて判っています。いつもの通り、普段の通りに。
ありがとうございます、本当の本当になにからなにまで・・
では、と走り出した担当者の背中を見送っては、
その空虚な伽藍の只中にただひとり取り残されて、
ああ、やっとひとりになれた、
その窓一面に広がる摩天楼の大夜景。
まったくこんなクソ仕事、と改めてネクタイを引きちぎるように緩めながら、
誰に喜ばれるわけでもなく誰に必要とされる訳でもなく、
強いて言えばできの悪い営業の帳尻合わせのダシのひとつ。
そんなものが俺の人生にいったいなんの意味があるというのか。
キッチンのテーブルで新しくコーヒーを淹れては、
くそったれ、今日の今日だけは予定通り7時できっかりと引き上げる予定が、
まったくなにからなにまで思い通りにならないのがこの世の常。
この分だと、今日の帰りはまた9時を過ぎてしまうだろうな・・

あいつ、と思わず犬の姿が目に浮かぶ。
あいつ、待ってるだろうな、腹を空かせて・・
俺はいったい、と思わず口癖になっている言葉をつぶやく。
俺はいったい、こんなところでなにをしているのだろうか・・

そして改めて見渡す窓一面の大夜景。
戸外の喧噪も届かない超高層ビルのその空の突端にぶら下がったまま、
そのあまりの必然のなさ、必要のなさ、その脈絡のなさに、
改めて空虚な苦笑いでお茶を濁すばかり。

ついこの間までは世界屈指の大企業、
宙に浮いた透明なガラスケースの中から、
下界の雑踏を見下ろすような、
そんな浮世離れした安息の中に暮らしていたあの時代。
毎日4時半のハッピーアワーを前にしては、
仕事のすべてをベンダーに丸投げ。
終わったら報告書を忘れるなよ、
へまだけはするんじゃないぞ、手間だけはかけさせるなよ、
そう言い捨ててはタクシーに飛び乗り、
そんな暮らしを普通に続けていたその筈が、
その因果か業かはたまた罰なのか、
いつしかすっかりとその立場が入れ替わっては、
そしてクリスマスを前にして、
じゃ、あとはよろしく、とたった一人取り残された
この見知らぬ会社の見知らぬ会議室。

俺の人生、どこでどう間違えたんだろうな。
まあ今更いくらそんなことを並べても、
なにがどうなる訳でもないのだが・・

ただ、不憫なのはあの犬。
おしっこは床にしてくれてもよい。
うんこだってどこにして貰っても結構だ。
空腹の苛立ちで部屋中を滅茶苦茶にしてしまったって、
なにを文句を言えた義理でもない。

ただ、元気でいてほしい、死なずに待っていて欲しい
俺が望むのはただそれだけなのだ。

そして9時を疾うに過ぎて、
焦燥も苛立ちも無力感も遣る瀬無さもすっかりと燃えて尽きた後、
ようやくと転がり出たミッドタウンの雑踏の中。
ふと見上げればその目の前に、
聳え立つロックフェラーのクリスマス・ツリーがあった。

なんだこりゃ、と今更ながら。
ここ数週間、朝な夕なにずっと目の前を通り過ぎていた筈のこのクリスマス・ツリーを前にして、
今更になって、なんじゃこりゃ、そんなことに驚いているほどまでに、
改めて俺のこの暮らし、そのあまりの現実感の無さ。
仕事上のカレンダー、そのスケジューラーの上では、
その予定のすべてが分単位で刻み込まれているものの、
そこに表示された数字がいざ実際に俺自身の生活になにを意味するのか、
目の前の現実と俺の抱える現実がまったく噛み合っていない、
そんな末期的に隔世的な仮想現実的日常の不思議に唖然茫然を繰り返すばかり。
かみさんが出ていってしまうのも、まあわからないわけじゃないよな、と。

という訳で、改めて見渡すこの外界の俗世間、
そうか、そうそう、世間はクリスマスなんだよな。
だからこうしてこれほどまでに糞忙しいことにもなっていたのだが・・
今更そんなことに気が付いてどうするんだよ、と。

そして見上げる空に聳え立つ星屑の巨塔、
ツリーを囲んで犇めき合う人々。
家族連れが、カップルが、若者たちの集団が、
互いに笑顔を弾けさせては写真を撮り合い、
頭上にiphoneをかざしては世界のどこかの人々との実況を繰り返し。
そんな手放しの幸せを謳歌する人々、
それはまるでどこかの映画の一シーン、
あるいは古いアルバムの一ページに飾られたままの、
まるで絵にかいたような幸せの情景。
その末期的な喝采の中に半ば茫然と立ち尽くしながら、
そうか、世間はクリスマスであったのか、
とそんな虚ろな虚脱感に身を任せたまま、
このままふっと神隠し、
すれ違ったどこの誰とも知らぬ異国人の誰かと、
タッチ交代、とばかりに、
ふとそのまま入れ替わってしまっても悪くないかもしれない、
そんな邪悪な妄想に耽りながら、
さあ帰ろう、いまも腹を減らした犬が待ち詫びているであろう、
あの空っぽの小部屋。
そこで待ち受けているであろう一人ぼっちのクリスマスの夜、
その沈黙の底に置き去られた空虚な時間のその底へ・・

どうしたんだろう、
ようやくとたどり着いたクリスマスへの五連休、
その達成感とは程遠いこのあまりの疲労感、徒労感。
俺は、いったい、なにをしてるんだ・・
世界が眩しければ眩しいほどにその光が疎ましく、
祝祭が湧き立てば沸き立つほどに、
この殺伐にざらついたままの心が、
いつしかひりひりと腫れあがっては血が滲むほどに、
この祝祭のすべてが疎ましい、この世界のすべてが呪わしい・・
その末期的なまでの隔世感、嫌世感、嫌悪と苛立ちと、
そしてその元凶となる、この救いようのないほどの孤独感・・

肩から下げたバッグがこれ以上なく重く感じられた。
靴の中ですっかりと浮腫み上がったこの足が、
そしてなにより、疲労と惰性に満ち満ちたこの身体が、
そのすべてをこのままかなぐり捨ててしまえれば、
いったいどれだけ小気味通いだろうか・・

そしてこれ以上なく裏ぶれた気分にひしゃげ切りながら、
人混みから身を隠すように、肩を丸めては暗い小道、
ラジオシティの裏口の脇を抜けて6アヴェニューの信号を待ちながら、
見上げるオフィス街、空高く聳え立つ摩天楼の渓谷に押しつぶされては、
その狭間に身を寄せるように、それはまるでドブネズミ気分。
それはまさにこの街に流れ着いては漂うままに、
冬のつむじ風に舞い上がっては空虚な踊りを舞う塵のように、
俺はいったい、このままどこへ向かっているのだろう、
このままどこへ流れされ流れ着くとでもいうのだろうか。

どうしたんだ、と思わず。
どうしたんだよ、目を覚ませよ。
この不遇も、この逆運も この屈辱も、
そのすべては一時的なもの。
このアヴェニューをひとつ渡るだけで、
この通りを一本抜けるだけで、
もしかしたらまったく別の世界、
まったく別の空気が流れているかもしれないじゃないか。
これぐらいのことで諦めてはいけない。
歩き続けることだ。変わり続けることだ。探し続け続けることだ。

地下鉄の駅までせめて1ブロック、
その間だけでもと耳に押し込んだイヤパッド。
変わった信号に追いやられるように、
曲目も確かめないままに押したPLAYボタン、ではあったのだが、
あれ、どうしたんだろう、音が聴こえて来ない、

まったく、なにからなにまでついていない。
ここに来てIPHONEまでがぶっ壊れやがったのか・・

とそんな中に、ざわめきが聞こえた。
なんだこれ、とボリュームを上げる。
ライブ?どこぞのライブの海賊版?・・

行きかう酔っ払いたちの集団のあげる嬌声と混じりあって、
そして唸り始めた地響きの中から、
メッセージが聞こえてきた。

The metal melodies become a myth
and transcend through time and space for lightyears to come.
Like the starry skies that light up the metal galaxies,
the metal spirits also bring infinite light.
A shining light awaits at the end of the odyssey...


そして旋律は神話となり、時間と空間を超越する。
銀河を照らす星々のように、潰えた魂もまた無限の光へと変わる。
そしてこの旅の終わりには、必ずや輝ける光が待っている・・


なんだこれは・・

そして世界が揺れた。
そして見上げる空の摩天楼、その星屑の渓谷が滲んでは崩れ始め、
そしてその旋律は、そのビートは、その歌声が、世界に溶け込んでいった。

凄い、すごいぜ、音が視界に溶けていく、
旋律が風景と完全にまじりあっては溶け込み、
そして、世界がひとつになる・・

忘れもしない、それはクリスマスを前にした金曜日の夜、
観光客の雑踏に犇めき合う五番街からタイムズスクエアへと続く、
ビジネス街の高層ビルの巨塔の建ち並ぶアベニュー・オブ・アメリカス、
人通りの失せた摩天楼の渓谷の底、
見上げた空に並ぶ星屑に包まれたまま、
そして流れ始めた旋律、
包まれていく、溶かされていく、流され、そして舞い上がり、
そして身体が実態を失っていく。

それは追悼歌であった。
それは鎮魂歌であり、
そして、なによりの哀惜に満ちた訣別の歌であった。
潰えていった魂、その愛惜の念を振り切って、
敢えて修羅の道へと向かう旅立ちの歌であった。

情景が情念と溶け合い、
旋律が空気と混ざり合い、
そして世界がその歌声の中に吸い込まれては広がり続け、
そして、魂と物体を、死者と生者を、時間と空間を、
その次元のすべてを超越する、この音楽というものの持つ奇跡。

それは言わずと知れたベビーメタル。
かつてお送り頂いたTHE FORUM講演、
そのLIVE VIEWINGからの海賊生録音、
そのクライマックスとなったアンコールでの、
SHINEの音源であった。

すごいな、この歌、この曲、このスピリッツ、
それままさに音楽の持つ魔力の神髄。
ベビーメタルか、やっぱり、ベビーメタルなんだな。

そして摩天楼の渓谷、
背後の6アヴェニューの雑踏と、
そして前方に待ち受けるタイムズスクエア、
その光源の狭間にある都市の溺れ谷。

俺は閑散とした薄暗がりの中、
通りの真ん中に呆然と立ち尽くしては、
そして改めて見上げる摩天楼の星屑、
その仄かな灯りを浴びながら
ベビーメタルを、中元すず香の魂の歌声にただただ言葉を失っていた。

Shining Sky 飛び立とう
Shining Road どこまでも、
遥か遠く、宇宙の旅へ
Shining Light さあ、行こう
Shining Road どこまでも、
時空を超えて、永遠の旅へ、
時空を超えて、届け・・・
Shining in my heart
Shining in your heart
Shing forever...


そしてアルカディアが始まったとき、
世界は再びタイムズスクエア、その末期的な雑踏の坩堝。

HAPPY HOLIDAYS!
MERRY CHRISTMAS!

はしゃいだ人々の嬌声の中、
俺はついさっきまでの暗澹が信じられないほどに、
まったく別の人間としてその雑踏の中に身を投じる。

HAPPY HOLIDAYS!
MERRY CHRISTMAS!

世界が祝祭に満ち溢れていた。
その喧噪がその狂騒がその祝祭が、
みるみると身体中に広がっては、
そして俺は街に溶け込んでいった。

さあ行こう、Shining road この祝祭の大通りを越えて、
さあ行こう、Shining light 犬が待っているあの部屋へ。

HAPPY HOLIDAYS!
MERRY CHRISTMAS!

救われたな、
また、ベビーメタルに救われちまったな。

ブロードウエイの雑踏を横切っては、
地下鉄への階段を降りようとしたとき、

ん?待てよ、と思い当たった。

12月20日、
それってもしかして・・
あのすぅめたる
中元すず香嬢のお誕生日ではないか。

しまった!思わず身体中に電流が走り抜ける。

決して忘れたわけではないのに、
うかうかしているうちにいつの間にか、
世界はすっかりとそんな季節。

ああ、やばいな、近頃すっかりと現実世界のダークサイド、
お祝いの言葉のひとつも用意していなかった・・

ただ、と思っていた。
すぅちゃん、クリスマスを前にして、
またベビーメタルに救われちまったぜ、

その告白こそが、懺悔こそが、
すぅちゃんに対するなによりの感謝の気持ち、
つまりは、お祝いの言葉、と受け取ってもらえるはずだ。

ありがとうベビーメタル。
ありがとう、すぅめたる。

HAPPY HOLIDAYS!
MERRY CHRISTMAS!
そして、ハッピー・バースデイ。

あなたへの感謝は一生忘れない。
あなたへの愛は一生変わらない。

Shining Light さあ、行こう
Shining Road どこまでも、
時空を超えて ベビーメタル 永遠の旅へ。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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